June 23, 2006

焼け跡の中から

Image102負けてしまった。ブラジルに負けてしまったというより、「W杯」に負けてしまった。目標の16強進出はならなかった。残念だ。この選手層なら、16強にいけるはず、それどころか、この大会で非常に魅力的なサッカーを見せてくれるはず、と思っていた。それがならなかった。残念だ。

それはともかく、選手、監督、関係者のみなさんにはほんとうにお疲れさまといいたい。今はまだ敗戦の悔しさでまんじりともできないかもしれないが、とにかく体を休めて欲しい。ホームであれアウェーであれ、家庭から離れての1ヶ月に及ぶ合宿生活、それも日本中からの期待というプレッシャーにさらされたそれは、ものすごいストレスだ。選手は炎天下の2試合を含む3つの戦いをこなし、スタッフもおそらく不眠不休に近いサポートをしてきたことと思う。とにかくお疲れさま、そしてゆっくり休んでください。


■コンフェデの再現なるか?

ブラジル戦の立ち上がりはいい感じだった。昨年のコンフェデ杯の後半からできた「下がり過ぎないで我慢するDFラインと、その前方でじっくりと網を張るMF」というカタチができていた。4バック4ボランチに近いような守備の形で、しかも敵にボールが入ればすばやくチェックに行き自由にさせない。特に稲本と中田ヒデの「プレミアセンターハーフコンビ」は強力で、何度もボールを奪っていた。

もちろん敵はブラジルだし、こちらのセンターバックは久しぶりに組むコンビ。何度かペナルティエリア内に進入されるチャンスもあったが、そこは「いつものように神憑った(?)」川口が素晴らしいセーブを見せる。このまま推移すれば敵はあせり始めるだろう。日本のチャンスも出てくるに違いない、と思えた。

実際、コンパクトな布陣で奪えば、敵はラインを上げてきているので広大なスペースがあり、稲本、ヒデ、小笠原、中村と、誰が持っても決定的なラストパスが出そうな面子でもあり、また運動量豊富な玉田、巻というFWでもあり、決定期はいくつか作れた。そして、稲本→三都主→玉田という華麗な得点!ここまでは素晴らしい、16強の座がその先に朧に見えるような気がした瞬間だった。


■ブラジルの本領

ブラジルは、真ん中を地上戦で突破するのが無理と悟ると、とりあえずその外をおおきくパスを回し始めた。そうしてDFラインを広げておいてクロス、ファーの選手が落としたところを真ん中のロナウドが得点してしまう。この「クロスをファーの選手が落として真ん中で(あるいは逆サイドで)シュート」というのはセオリーだ。トルシェ前監督もセットプレーでよく使っていたし、欧州のリーグ戦でもよく見る。マークがずれやすく、ボールウォッチャーになりやすいのだ。急造コンビ、統率役がいないことを見抜かれていたのだろうか。

ここでスタジアムで見たブラジルの特徴について少し触れておくと、「誰も難しいことをしない」ということが上げられると思う(ロナウジーニョは別)。誰もボールをこねず、パスはほとんどダイレクトか1タッチ、それもパスを受けやすいところに移動してきた選手にパッと渡すだけ。ドリブルの時も必ず2人目の選手がそばを走るため、詰められればそちらにわたせばよい。ロングボールも、すぐそばにフォローの選手が来るために、ダイレクトで彼に落とすだけ。

これらをするための、ほんのちょっとの「献身」「ボールを持っていないときの動き」が、ブラジル選手は抜群にうまかった。「走るサッカー」というイメージから程遠い彼らも、ボールが移動するたびに5メートル、時には1メートルでも、スッ、スッ、と移動するのだ。これによって、パスコースが複数できて、その間をパスを通していけるのだ。私はアテネ五輪のサッカーに関して、「動け、ちょっとでいいから」というエントリーを書いたのだが、それを実際に見事にやっていたのがこの日のブラジルだったと言えると思う。ひるがえって後半の日本選手は、ボールを持ってからどこに出そうか考え、その間は回りの選手もあまり動き出さないサッカーになってしまっていた。それがあの多数のパスミスにつながっているのだ。


■後半のブラジルとジーコ采配

後半から、ブラジルはDFラインをわざと下げてしまった。そして、もしかすると日本をおびき寄せていたのかも、と思えるほどに日本が攻撃している時に日本陣内にスペースを作らせ、そこをスピーディーに突いてくる。これはピンチが増えそうだと思った矢先、次のゴールが決まってしまう。ジュニーニョが中盤でボールを持ち、ミドルシュート。この大会で何度も見たあのカタチだ。バイタルエリアでは絶対にフリーで持たせたらいけないのだが・・・。一瞬の気の緩みが、日本を絶望の渕へ落とし込んでしまう。このブラジルから、あと3点とって勝利?スタンドはそれを振り払うようにあらん限りの声で、「ニッポン」コール!

この時、ジーコ監督は「もっと攻めないと」と思ったのだろうか?小笠原選手に代えて中田浩二選手を投入、中田英を一列前にあげ、中村と並べトップ下とする。しかしこれは私には怖かった。前半のソリッドさを演出していた「プレミアセンターハーフコンビ」の一角を崩していいのだろうか?しかも、このカタチで練習した、あるいは試合したことがこの大会に入りほとんどないのに?はたして、中田浩二はどこにポジショニングしていいか、あるいは奪ったボールをどこに出していいかわからずにいるようだった。無理もないと思う。

そしてやはり中盤がルーズになって、ロナウジーニョ→ジウベルトでゴール。もう日本は総攻撃に出るしか仕方がない。15分巻に代えて高原投入、高原が痛んで大黒投入、しかし、時間が経つごとに点を取れる気配が薄れていく。前半のようには敵がスペースを与えてくれない。敵の前でボールを動かすだけなのだが、ボールホルダー以外が動かなくなっていく。途中投入の大黒が動き出すのだが、ボールホルダーとタイミングが合わない。ブラジルが動かなくなり、ただパスを回すだけになる(これをオーストラリア戦でやれていたら)。そして最後は、ロナウドが反転してシュート。川口の神通力も、20本のシュートは防ぎきれなかった。


■これを始まりにしよう

選手たちは真ん中で倒れた。もう何度目だろう、スタンドはあらん限りの声で、「ニッポン」コールをする。スタジアムの音響係を恨めしく思った。どうでもいい音楽をかけるな。俺たちと選手たちの時間にしてくれ。選手たちは、挨拶に来た。私はタオルマフラーをきりきりと掲げて、選手をねぎらった。これは終わりじゃない。ここから始まりなんだ。「下を向くなー!!!!!」私は叫んだ。また見知らぬおじさんが「そうだ!」といって握手を求めてきた。

ヒデが倒れていた。まだ立ち上がらない。私たちはかすれた喉を振り絞ってヒデコールをする。今日も、最後まであきらめずに誰よりも走っていたのは君だったよ。スタジアムのサポはみんなわかっている。スタッフに起こされて、サポーター席に挨拶に来た。ヒデコールがひときわ大きくなる。もしかすると、これでヒデは代表引退をしないかもしれないな、と思った。彼にとっても、これが何度目かの始まりになるのじゃないか。なって欲しい。


■きわめて幅の狭い強化の4年間

これから、もちろんジーコ監督を含めたこの4年間の検証がなされるだろう。さまざまな切り口からのそれがあることだろうと思うが、私がひとつ大きく気になっているのは、ジーコ監督の「功罪」のうちの「功」の部分があったとして、その恩恵を受けられた選手が非常に少ないということだ。自主性の開花でもいい、攻撃力のアップでもいい、勝者のメンタリティでもいい。そのどれであれ、これまでの4年間で中心として起用してきた選手は非常に少なく、彼らにしか伝授されていないものが、今後受け継がれていく可能性は少ない。しかも、この大会に若手も連れてきていない。次代へ受け継ぐものが非常に、非常に少ない。そこが問題だと思う。そして、そういう状態であるならば、この大会で求められるものは「結果」だけであったはずだ。

果たして結果は、2敗1分け、2得点7失点、グループ最下位・・・ということに終わった。これが「黄金世代」の結実かと思うと、さびしすぎる。これは「敗戦」だろう。そして我々に残されたものは、焼け焦げた大地だけ。しかし、しかし大地はある。大地は残っているのだ。我々には、この10年でたくましさを増したJリーグをはじめとする日本サッカーの土台がある。サッカーは終わらない。この日が、終戦ではなく、新たな始まりの日となることを祈念して、この項を終わりとしたいと思う。

ニッポン!!!!!!

それではまた。

10:40 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(4)|

June 21, 2006

ブラジルに勝てばいいんだろー!!

Image074勝ちたかった。勝たせたかった。われわれの声が足りなかった。みんな、ゴメン。

スタンドのサポーターは一様に下を向いた。虚ろな顔で動けなくなる人も多い。勝てなかった。負けたわけではないけど、勝てなかった。次のことを考えれば、勝ちたかった。でも、終わったわけじゃない。

「ブラジルに勝てばいいんだろー!!!!!」

叫んだ。一人だけおじさんサポが振り向いて「そうだ!」と言って笑ってくれたけど、みんなの耳には届かなかった。試合終了まで立って声を出していたサポが、ホイッスルと同時にへたり込んで、動けなくなっていた。帰ろうとし始める人さえいない。いや、いた。中にはホイッスルと同時に記念写真を取り始める人もいた。彼らにとってW杯は一種の「観光」でしかないのだろう。しかしそういう人のことはもう目に入らない。

選手が挨拶に来た。全員じゃないけど、ちゃんとわれわれの真正面まで来た。炎天下で2試合動き回って、しかも負けと引き分け、精も根も尽き果てているだろうに、挨拶に来た。私は思い切り拍手をした。大声で「まだあるぞー!!!」「次だー、次――――!!!!」と叫んだ。試合終了と同時にうるさい音楽をかけるスタジアムのせいで、それはかき消されてしまったけれども。

中には選手にブーイングするサポもいた。それに同調するサポもいれば、選手に拍手するサポもいる。でも一番多かったのは、放心状態になり動けなくなっているサポだった。どう受け止めていいのか分からない。そんな精神状態と、勝てなかった悔しさと、その他にいろいろなものがごちゃ混ぜになり、そんな顔になっていたのだろう。勝てた試合のような気がする。なぜ勝てなかったのか。


■高いラインと抑え気味のパス回し?

キックオフ直後、日本が最終ラインをすごく高く上げているのがわかった。もう上げるぞこのやろうーとでも言うように、高く高く、敵ボール時でもセンターサークル近くまで。コンパクトフィールドからのプレス、ヒデや高原がやって欲しいと言っていたそれが、全体にはまずまず機能していると思われた。しかし、最終合宿が始まってからほとんどやっていない4バックだけに、時々プレスがちぐはぐになり、真ん中をぱっくり割られたり、スルーパスでスパッと裏を取られたりすることもあった。ピンチが多い。そして、一本のロングパスで宮本とFWが1vs1になり、ちょっとした芝目のバウンドでボールをキープされ、後ろからチャージせざるを得なくなりPKを与えてしまう。

これをスーパーセーブした川口にはどんなに感謝してもしきれない。喉も避けよとばかりに「ヨシカツ」コール。このシーンのほかにも、この日は「ヨシカツ」コールを多くした。「人生で一番ヨシカツコールをした日」と、古参サポの友人は言う。日本では、日本のFWの決定力不足が槍玉にあがっているとあとから聞いた。それはもちろんあるだろうが、この試合の前半は、それを言いたかったのはクロアチアサイドだろう。あれだけのチャンスを外しているのだ。お互い様という感じだ。


■持ち味を発揮しやすい相手

クロアチアはやはりロングボールをあまり蹴ってこず、技術とパス回しで日本を下せると思っていたのだろう。日本の弱点を突く戦い方ではなく、「普通にやれば勝てるだろう」というやり方だ。これは日本のキーマンにハードマーク、ハードチャージをしてこないところからでもわかる。ヒディンク監督とはまったく違うアプローチだ。それでも、クラニチャルのヘッドをはじめ、相当なピンチを何度も招いてしまう。ヨシカツ大活躍。

ピンチはあったとは言え、こういうタイプ相手なら、日本は持ち味を発揮できる。じっくりしっかりとしたパス回し、ビルドアップができる。ジーコ監督の指示通り、パスを走らせて敵の体力を奪うやり方だ。前方にスペースがある時でも、日本の選手は動き出さず、キープしてからの横パスを選択していた。周りの何人かのサポは「遅いよ!もっと早く前に入れないと!」「前の選手動こうよ!」などと声を上げていた。確かにもっと縦に速くしたほうが敵を崩しやすいだろうが、前半はあえてそうしないという作戦なのだろうと思った。

果たして、暑さは日本に味方した(半分は)。クロアチアは前半の終盤から動けなくなり始め、後半開始早々から完全に足が止まってしまった。vsアルゼンチンや、vsブラジルで見せたハードさ、ソリッドさ、攻撃の鋭さはどこにもなくなった。日本の作戦勝ちか。日本が攻勢に出る時間が長くなっていく。クロアチアサポは次第におとなしくなり、日本サポの声援が加速していく。勝てる、勝ちパターンだ。私は友人のサポと目をあわせてうなずきあった。


■できなかったペースチェンジ

ところが、暑さのもう半分が日本に不利に働いた。PKを取られてからラインが下がりはじめ、前半攻められた時に守備で走り回ったのがマイナスになってきた。前半は、中村選手がペナルティエリア付近にいて、高原選手でさえ、サイドアタックをサイドバックのような位置でクリアーしていたのだ。それに加えて、2試合続けて暑さの中の試合というところが拍車をかける。後半の中盤から、動けなくなる選手がまた出てきてしまった。

結果的に、前半と同じような「持ってから離すまでが長い」サッカーになってしまった。中田選手が志向する、「奪ってからシンプルに、すばやく攻める」こと、あるいは「じっくりしたパス回しからペースチェンジして敵のゴールへ迫る速攻」が、なかなかできなくなった。すばやい攻撃には、回りの動き出しが必要になる。それが少なくなってしまった。ゆっくりじっくりした攻撃だと、欧州予選でしっかり守ることが身についているクロアチアの守備はなかなか崩れない。アジアレベルや親善試合レベルでは「完全に崩した」と思えるような状態でも、彼らはまだ1枚か2枚、奥を隠していた。ファウルを取られない体の使い方でボールを奪われ、あるいは最後の瞬間に足が出て、パスコース、シュートコースを消されてしまう。

それでも何度かチャンスは作ったが、決められなかった。ただ、決定力不足を嘆くのもいいが、チャンスの数自体も少なかったと思う。中田ヒデが「前に行ってしまったらいいのか、後ろに残ったほうがいいのか、迷った点に悔いが残る」と試合後に語ったらしい。それはそうだろう。彼からすれば後半の試合内容はもどかしかったに違いない。しかし、彼が上がってしまわないことで、この試合ではバランスが取れていたことも確かだ。難しいところだ。


■勝てる試合を落とした?

よく監督が槍玉に上がるのが「采配」だが、この試合では悪くなかったと思う。福西を稲本に代えて後半の守備は安定したし、疲労したヤナギに代えてフレッシュな玉田を入れるのも理にかなっている。大黒の投入が遅いと私の後ろのサポは叫んでいたが、私は無理もないと思っていた。全員が疲労していて、宮本はイエローを一枚もらっている。こういうぎりぎりのバランスで戦っている時は、カードを切ってバランスを崩すのが吉に出るか凶に出るかは微妙なところなのだ(私はシドニー五輪のUSA戦を思い出していた)。

しかし、結果は出なかった。前述のように、スタンドは静まり返った。何故勝てなかったのか。「勝てる試合を落とした」と選手が言ったらしい。確かにそうだ。しかし、チャンスの数では上回ったクロアチア選手だってそう思っていただろう。双方から見て、同じように残念な結果になった。TV局の都合で2試合が昼間の試合になったことをジーコ監督が嘆いたらしい。ただ、それを勝てない原因にするのも違うと思う。それはとうにわかっていたことだし、だいたい暑くなかったら、クロアチアの出来が続いていたら、むしろ向こうに有利たったのではないか?オーストラリア戦でも、先に動けなくなっていたのは向こうだった(そのあと得点で息を吹き返したけど)。


■最高の舞台だよ

これで日本は最低でも2点差でブラジル戦を勝たなければいけなくなった。ブラジルは強い。確かに強い。ただ、クロアチア以上に、「こちらの持ち味を消す」戦い方はしてこないチームだろう。日本とは噛み合うスタイルだと思う。涼しい夜の試合ということもあるし、日本は「強敵と戦うと自然と結束し、モチベーションが上がる」という特徴もある。、ブラジルという強敵を迎えるこの最高の舞台で、これまでで一番の試合内容を見せてくれるに違いない。チャンスも作れるだろう。

ジーコ監督は20日の練習を「シュート練習のみ」にしたそうだ。もうそれで正しいと思う。ここまで来たらあとは自分たちを信じて、これまでやってきたことを信じて、そして思い切り脚を振りぬくしかない。そうすれば、今のブラジル守備陣からなら、2得点は不可能じゃない。

不可能じゃない。まったく不可能じゃない。これは奇跡じゃない。つかみ取ることができる現実なんだ。

ブラジルに勝てばいいんだろー!!!!

ニ゛ィィィィィィィィッッッッポン!!!!!

それではまた。

06:55 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(4)|

June 17, 2006

信じる気持ち

Before現地では悲観論が蔓延しています。

(6月18日AM6時30分訂正。現地を歩き回ると、サポはみんな吹っ切れて「明日は頑張りましょう」と意気盛んでした。クロアチアサポも非常に多いですが、明日は負けません!)

私はそのたびにそばによって行き、「大丈夫だ、信じよう。僕たちが信じなくてどうするんだ!」と諭しています。そして「信じる根拠」をインプットしています。ただし、このタイミングで「信じる根拠」を振りまいているからと言って、これが根拠のない空虚なものだと思われては困ります。以下は、2月に刊行された「ブログキャスター」に私が書いた文章の一部ですが、今でも有効だと思いますので自己引用しておきます。

問題はクロアチアだ。欧州の伝統国のなかには、アジアのサッカーの実力をかなり軽視している国がある。日本が01コンフェデ杯で準優勝しても、05コンフェデ杯でブラジルと引き分けて見せても、それは変わらないようだ。02ワールドカップでは、ベルギーが明らかに日本を研究してきたのに対し、カルピン、モストポイを擁し、サッカー強国を自任するロシアは、「普通にやれば勝てるだろう」と臨んで来たように感じられる。クロアチアはどちらに属するか。

興味深いのは、欧州予選ではクロアチアは、どちらかといえばカウンターチームだったということだ。テクニックのあるチームなのだが、ポゼッションで勝ってきたチームではない。しかし、日本と対戦した時には彼らがボールを持つ時間が相当長くなることが予想される。そうなるとむしろ彼らの調子は狂うかもしれない。押され慣れているジーコ日本は、そこからあわてずにしっかりつなぐサッカーをできるはずだ。クロアチアが日本対策としてのプレスを採らず、「普通にやれば勝てるだろう」というメンタリティで臨んで来たならば・・・。

そして最後に気になってくるのが「気温」だ。日本はクロアチアと98年フランス大会でも対戦をしているが、シュケルの一発にやられたものの、むしろ日本が押しているといってもよい内容だった。その時の問題が気温だったのだ。欧州ではめずらしいほどの暑さに、クロアチア選手たちはコンディションを崩し、動けなくなっていた。05年コンフェデ杯でも、日本が勝利したギリシャ戦は、3試合の中でもっとも暑い日だった(29℃)。日本対策=「高目からのプレス」にとって、高い気温は天敵なのである。

クロアチアがどこまで日本を脅威に思い対策を取ってくるか、そしてそれが有効にできないような気温がその日に襲って来るか、こないか。日本が1次リーグを勝ちあがるために非常に重要なクロアチア戦の行方には、この2点が大きな影響を与えるだろう。


幸い、大会が始まってからはドイツはぐんぐん暑くなりました。初戦の日本は暑さと、大きな相手とのハードなフィジカルコンタクトで疲弊して行ってしまいましたが、それも一試合経験して慣れています。対するクロアチアは、湿潤なアジアの日本よりも弱いのみならず、初戦が涼しい夜のゲームだったためにあの暑さを未体験です。さらに日本人の身体的特性として、持久力はその長所でもあります。先のゲームでは日本の敵となったこの暑さ、次戦では日本に味方するでしょう。させましょう。


■クロアチアの出方は?

また、こうなるとマルタ戦、オーストラリア戦と日本があまりよくない戦いをしたこともむしろプラスに働くと言えます。ニュースでもクロアチア選手が「ガッカリした」などと語っているのが報道されていますね。もちろん、この本番中の本番、本気中の本気の戦いで敵がこっちを「研究してこない」「舐めてかかってくる」などということは期待できません。しかし、私はクロアチアはオーストラリアのような「日本のよさをつぶす」戦略は取ってこず、「自分たち(クロアチア)の良さを発揮する」やりかた、ある程度距離を置いてノーマルに守る、こちらが技術を発揮しやすい戦い方をしてきてくれるのではないか、と思っています。

その根拠は、クロアチアからすると日本は「絶対に勝ち点3を取るべき相手」だからです。彼らは最初から攻めてくるでしょう。そうなればこちらの思い通りです。彼らの攻めをがっちり受け止め、しっかりとボールポゼッションして球を走らせて敵を疲弊させましょう。敵が疲れれば、日本の俊敏性に大男DFの足元はついて来れないはず。そこに玉田や大黒を投入すれば、勝利は見えてくるでしょう(敵を疲れさせ後半勝負と言うのは、かのベルギー戦と同じ戦略ですね)。

クロアチアの監督はやはり、「日本戦は前から攻めに行く」と発言しているようです。ただ、ジーコ監督はそれは「情報戦略としてのウソ」=三味線であり、実際には引いてくると予想しているようです。これは凄い裏の読み合いですね。どちらになるのでしょうか。


■チームの意思の統一を

また、ここで中田選手とジーコ監督宮本選手とジーコ監督に意見の齟齬があるようだということが報道されています(スポーツ新聞報道だから割り引いて考えないといけないですが)。中田選手には「前に行くな」という指示が出ているようですが、これは前へ前へ出て行ってボールを奪おうという中田選手の特性を抑制しろということでしょうか。敵が引いてくるならこちらも攻め急がず、開始30分はボールを回して敵を疲れさせる、という戦略だともっぱら報道されていますね。それはこの暑さの中ではひとつの正解でしょうから、あとは全員でそれを共有して、しっかりと実行して欲しいですね。また、敵の出方が想定と違っていたならば、それに対しての作戦もある程度は共有して、臨機応変に対処して欲しいものです。じっくり話し合えば、大丈夫でしょう。


■任されて来たからこそ

さて最後に、私が周囲に語っている「信じる根拠」は、このチームの「精神性」です。いつも言う「家族は追い詰められてからが強い」というだけではなく、これまで何度も見せてきた「最後まであきらめない気持ち」、ピッチ上のすべてを任され、自立を要求される中で身につけてきたはずの、一体感、強い気持ち、リバウンドメンタリティ、そしてゲームを読む目、それらこそがこのチームの最大の美点だったはずです。それが、それこそが、今最も必要とされるものであり、そしてもちろん、これからまさに最大限に発揮されるだろうものです。それを信じましょう。

さあ、もう泣いても笑っても明日です。私たちサポーターのチカラも今また試されようとしています。クロアチアサポも大挙して参戦しそうですぞ。まずは応援で絶対に負けないようにいたしましょう。

「絶対気持ちで負けんなよ!」

ゴン中山隊長の声を脳裏に響かせながら。

それではまた。

09:01 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(5)|

June 15, 2006

次だーーーー!!!!

Anthemみなさま、オーストラリア戦はお疲れさまでした。

現地では、切り替えられないサポーターが俯いて歩き、今日などは同じレストランで食事していた日本人夫婦が喧嘩を始め、おさめるのがたいへんでした。いやー、落ち込みますね、あの負け方は。私はまだ声が枯れております(笑)。


■リスクを犯したくない?

試合を生で見ていると、まずは前半のラインの非常な低さが目につきました。まあ、「まずは低目からスタートして、プレスがかかれば次第にラインを上げていく」というのは、ドイツ戦でも成功したやり方ですから、それでいいといえばいいのですが・・・。それにしても異様に低い。オーストラリアを過剰に警戒した宮本が個人で下げてしまったのか、ジーコの指示なのか・・・?

私は、ドイツ戦のように低い位置でもコンパクト、プレスがかかればラインを上げ、高い位置にコンパクトを作るやり方なら、この暑さでも先にスタミナ切れを起こすのはオーストラリアだろうと思っていました。しかし、この試合ではディフェンスラインは低いまま、日本ボールになっても押し上げる気配がない。これでは、攻撃性の高い中田が走らせる前線の選手とDFラインの距離が開いてしまい、無駄に体力を消耗するぞ、という懸念が、前半途中で沸いてきました。


■なぜ押し上げられなかったのか?

そのひとつの原因は、あきらかに中田、中村にターゲットを絞っていた敵のハードなチャージです(ヒディンク監督のコメントでもそう言っていますね)。こういう「ボールを持つ」タイプのポゼッション(ボールを回す、のではなく)では、キープする時間の長い選手が狙われるのは必然です。これによって、おそらくは中村選手は次第に「壊れ」(フィジカル的にもメンタル的にも)に陥っていたのではないでしょうか。終盤には本当に動けなくなっていたようでした。

このようにハードにチャージされることで、日本の「低い位置からでもボールを持ちながらじっくりとゾーンを押し上げていく」というやり方がまったくできなくなっていたこと。それにより、ゾーンが低いままで、高い位置からのプレッシングがほとんど機能せず、敵に自由にボールを回されていました。まあ、ある程度は「回させていた」という部分もあると思いますが、あそこまでラインが低いとチャンスを作られやすくなり、シュートも多く打たれてしまいます。

→オーストラリアはロングボールを蹴るだけだった、という意見を目にしますが、「そう?」と私は疑問に思います。ヒディンク監督になってからのオーストラリアはむしろグラウンダーのパスを回すチームで、それも前半からけっこう日本はやられていました。本来なら日本のプレスと相性のいいはずの敵のやり方なのですが、日本チームのラインの引きすぎ、敵のチャージにやられ高いゾーンを保持できなくなっていたことなどから、かなり自由にやらせてしまっていましたね。まあ先制後は、「あえてそうした」という部分もあるでしょうが。(オーストラリアがロングボールを増やしていったのは後半途中からですね。)


■わかりやすいヒディングの戦略

これは、日本は体力勝負に持ち込まれるとやばいかもしれない。リードされたヒディンク監督は、後半途中からFWをどんどん投入し、バンザイアタック(あれ?)に出てくるでしょうから、それに付き合わないようにしないといけない。それにはロングボールの出所を押さえることですね。セオリーです。

また、これまでのオーストラリアのテストマッチを見ていると、ロングボールを入れてくるにしてもそれでそのままヘディングシュートではなく、また裏に抜けるのでもなく、まずは後ろを向いて胸トラップ、キープ、そのまま反転するか、2列目に落としてシュート、というカタチがものすごく多いことに気がついたはずです。それはまったく予想がついたことでした。

案の定、後半途中からどんどん新しいFWが投入され、次第にロングボール攻撃が増えてきます。それにしても、裏に一発で抜けることの少ない敵FWですから、バイタルエリア(DFラインの前、ボランチの後ろぐらいのエリア)を締めておけば、それほど怖くないはず。ダブルボランチの自重が求められる局面でした(1点リードしているんだし)。


■局面を変えた選手交代

さてここで小野投入です。先にも書いたように、中田と中村がハードなマークでボールポゼッションしきれていなく、それがゾーンの低さにつながり、守備にも悪影響を及ぼしている・・・とジーコ監督は考えたのだろうと私は想像します。そこで起点をひとつ増やして、「キープしてほっと一息する時間」を作ろうとした・・・?そうであれば、この采配はあながち間違いではないと思います。ただ、敵がFWの枚数を増やして、また先に書いたようなロングボール→胸トラップ→キープ→2列目という攻撃を狙っている時に、バイタルエリアを開けることは完全に間違いです。ジーコ監督の指示がどうだったのかわかりませんが、結果的にそのパターンで失点していますね。なんとも残念です。

ここで個人的には本当はやってほしかったことは、巻か玉田の投入でした。玉田ならロングボール1発でもカウンターの役に立つ(終盤はカウンターのチャンスに誰一人走っていませんでした)し、敵陣深くでキープしてくれれば時間稼ぎにもなります。あるいは巻なら、かつてのゴン中山を思わせるような、最前線からの「魂の」強烈なチェックをして、ロングボールの出所をつぶし、日本の守備陣を楽にしてくれたでしょう。私はいわゆる「守備的ボランチを入れろ」よりも、こういう交代のほうが勝利に近かったと思っています。


■日本は戦っていたか?

選手たちも、監督も、日本の美点であるボールポゼッションを放棄しようとは思っていなかったでしょう。ただ、予想以上に中盤でのハードなフィジカルコンタクトでそれが分断され、復帰のめどが立たなかった。それはもうひとつにはジーコ監督のハーフタイムの指示「1点を守りきれ」によって、選手が慎重になり、スペースを作り、使う「オフザボールの動き」に参加しにくくなっていたこともあったでしょう。しかし、ヒデは守りきるつもりは全然なく、相変わらずスペースへ鋭いパスをビシッと通していましたね。その辺のジーコとヒデ、ヒデと周囲の選手の意識の乖離が、なんとも残念だったことです。

ただ、試合終盤では(TVには映っていなかったかも知れませんが)、マイボールになった瞬間に走っているのはヒデ一人でした。彼の姿からは「戦っている」事がよく伝わってきました。しかし、他のほとんどの選手は走らないばかりか、守備でマイボールになった瞬間にはボールから目を離して歩いていて、自分にパスが出ると驚く選手もいる。守備陣がようやく敵から絡め奪ったボールを前線にパスをしようとしても、誰も走っていないからただのクリヤーになってしまう(6/15 20時訂正済)。この試合で現地のサポが本当に打ちのめされたのは、同点にされ、逆転された後の選手たちの「あの」姿でした。しまった、書いていてまた涙が出そうです(笑)。


■NEXT TWO WIN!!!!

しかし、しかしです。まだあと2試合あります。

「緒戦で負けたチームが勝ちあがれる確率は4%」ですと????たった2大会のそれではデータが少なすぎますよ。だいたい「緒戦で」というのが統計の嘘です。どういうチームと当たるかということのほうが重要なはずで、そういう意味では「グループリーグで1敗したチームが勝ちあがれる確率」とするべきです。この2大会に限定すると、決勝トーナメントへ上がったのべ32か国中、9カ国が1敗しています。割合にして26%!ですよ。しかもその中には、イングランドやブラジル、結果的に3位になったクロアチア(98年)、トルコ(02)も入っています。そう考えると、悲観することはまったくないでしょう。ないんですよ。

今ごろ選手たちは次へ向けて熱い話し合いの真っ最中でしょう。ある意味これで吹っ切れて、「やることはひとつ」と考えられるはず。次試合は「攻め」に吹っ切った選手たちののびのびとした「自分たちのサッカー」が見られるでしょう。幸い、オーストラリア戦を見て「がっかりした」らしいクロアチアは日本を舐め、オーストラリアほどは激しいチャージをしてこない、日本にとって持ち味を発揮しやすい敵となると予想されます。いいサッカーを見せて、そしてもちろん勝ってほしいですね。いや、勝てるでしょう、勝ちます!

ニ”ィィィィィィィィッッッポン!!!!

それではまた。

01:13 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(3)|

June 07, 2006

ではドイツで!

ドイツワールドカップ2006も開幕まであと少しと迫ってきましたが、まずはじめにご報告です。

私は日本戦3試合を見に、ドイツへ渡ることにしました。

現地に一応インターネット環境は持って行くつもりですが、現地から更新ができるかどうかはわかりません。最悪は、W杯期間中の更新がなくなってしまうかもしれませんが、ご容赦願えれば幸いです。


■最高の試合と・・・

さて、ドイツ戦、マルタ戦と、最高の試合を見せてくれた後に少し気の抜けた試合を見せてくれた日本代表ですが、これらはどれもそれほど驚くようなことではないでしょう。以前にも書いたように、加茂監督の昔から、出てきてスペースを与えてくれる欧州強豪に対してはいい試合を見せられても、引いて守ってくる相手には苦戦するのが日本の特徴でした。さらには、何と言っても現代表は「家族」なのであって、家族は、ドイツ戦のように自然にモチベーションの上がる「危機」には強いが、マルタ戦のような「平時」にはピリッとしなくなってしまう。これは以前から見られたことですね。

ドイツ戦のままオーストラリア戦を迎えるより、マルタ戦を経験しておくことでチーム全体がふたたび「危機」を感じ取ってくれているほうが、W杯に向けてはよかったと言えると思います。そしてまこそ、この「家族」の最大の目標だったW杯に直面しているわけですから、だいじょうぶ、マルタ戦のようにピリッとしない試合は本大会ではないはずです。


■アジアカップ代表+チーム・ヒデ

ドイツ戦は、直前の話し合いの成果が十分に出て、前半のように押し込められた時間にはFWも下がって全体を低い位置でコンパクトにして我慢でき、プレスが利きだしたらラインを上げて積極的に奪いに行く、そういう使い分けができていましたね。前半はアジアカップ仕様、途中からはそこに中田英や高原の要求していたプレス主導~シンプルな速攻仕様を織り交ぜた、というところでしょうか。これはドイツのような「出てきてくれる」敵に対しては実に有効でした。

そして特筆すべきは、このような「プレッシングからのショートカウンター」戦術においては、中田英選手の特徴である「すばやく的確なアプローチ」「力強い1vs1のディフェンス」「視野の広さと大きな展開」が非常によく活きていたことです。そしてそれを引き出すヤナギをはじめとする選手たちの動き出しのよさ。私や中田英が、常々代表に「やってほしかった」「やるべきだと思っていた」サッカーがそこに出現していました。このサッカーができればオーストラリアやクロアチアには十分対抗できるでしょう。


■バーンアウト

ところがマルタ戦です。マルタは先制されても出てこない、5バックで引いてスペースを消し、入ってきたら集中して体を張って止める、攻められ続けてもあわてない、あせらない、という、トルシェの言う「守備の文化」が息づいているような敵でした。「勝って景気をつける」という目的のために選ばれたのでしょうが、「日本と対戦することに恐怖を感じていた」と監督の言う、こういうチーム相手に大勝するのは難しい。

その上、ドイツとの激闘の結果、精神的にややバーンアウトした選手たち。グループリーグにピークを持っていくためにかけている負荷による、フィジカルコンディションの低下、などなどが拍車をかけました。ヒデは「走らないと勝てない」と言っていたようで、確かにその通りなのですが、私は「無理もない」と思ってしまいますね。

この試合ではヒデの「走れよ!」というメッセージの乗ったパスが目に付きましたね。味方選手が動き出していなくても、その前方へ、前方へのパススピードの速い、力強いパス。あるいは、FWの足元につけるビシッとしたクサビのパス。どちらもロジカルで、勝つためにはよい選択肢なのですが、チーム全体となんともフィットしていない感を受けました。

さらには、有限実行というか、最も動き出しが早く、走り回っていたのも中田英でした。しかし、この試合ではこう言っちゃなんですが、それは逆効果の部分もあり、中田がトップスピードで引いた敵の中に入っていっても、トラップがどうしても浮いてしまい、奪われることのほうが多かったですね。ペナルティエリア付近で「なにか」を起こす力は小野や中村、選ばれていませんが松井あたりのほうが上だと思います。

ジーコ監督もそう思ったのはわかりませんが、後半から4バックになり小野投入、しかも中田英を上げるのではなく、小野がオフェンシブに。この3バックから4バックへのシフトチェンジは、アジア予選などでは効果を上げてきたわけですが、ここではうまく行きませんでしたね。さらに玉田に代え小笠原(大黒のワントップ)、福西に代えて稲本(ヒデよりも高い位置にいましたね)、そして大黒に代えて巻のワントップと、日本は完全に「選手に試合を経験させる」モードへ。

ただ、ドイツ戦までで出来た「レギュラー組の話し合い」には彼らは入っていないわけで、また国内で行われたキリンカップの試合には中田英や中村は出ていなく、コンビネーションがまだまだ。フレッシュな選手を投入するほど攻撃がこう着状態に陥るという、やや残念な結果となりました。

まあ、後半の選手交代も「1点をもぎ取って来い!」というよりは、「試合勘を取り戻して来い」だったことは確かですし、ここで出来上がった4-5-1も「オプションを充実」ではなくて、「使うべき選手を投入していたらそうなった」だけでしょうから、ここでできていなくても取り立てて問題視するには当たらないでしょう。点を取りたいときのオプションは他で充実しているはずです(そういえば中村選手はFKをあまり見せていませんでしたね・・・笑)。


■彼らは出てきてくれるか

個人的に少しだけ気になるのは、ドイツ戦をオーストラリアとクロアチアに「見せてしまった」ことです。「日本相手には出て行くとやられる」・・・もし彼らがそう思って、マルタのようなやり方を取ってくると、マルタよりもカウンター時がはるかに鋭いですから、少し困ったことになりますね。ただ、クロアチアは自らを強者と自認してくるでしょうし、「日本から勝ち点3を取らなくては」という状況にあるはずですから、出てきてくれるものと思います。そうなればドイツ戦の再現ができるでしょう。

オーストラリアは激しいフィジカルコンタクトを高い位置からかけてくるチームですね。2002年の韓国を思い出しました(笑)。ただあの時にくらべると、韓国人選手の持っていた凄いスタミナはないでしょうから、後半に日本がポゼッションを回復し、細かいパス回しをしていけば、大男DFの足元を突いていけるでしょう。両チームともセットプレーから得点しようとするでしょうが、コンフェデの時のギリシャも「日本は小さいから高さで勝てばかんたんだ」とばかりそこばかり狙って来て、かえって対処がしやすかったですね。

どちらの試合も、ドイツ戦の再現になれば十二分に勝機があるし、マルタ戦のような試合振りになったら危険でしょう。その最大のポイントはメンタル面と、コンディション、そして「敵が出てくるか、否か」。敵に関すること以外は、こちらで完全にしておくことができるものですから、これまで自分たちがやってきたことを信じて、しっかりと準備をして臨みたいですね。

ではドイツで!

ガンバレガンバレ、日本代表!

それではまた。

02:44 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

May 29, 2006

いよいよドイツへ!

Bottleみなさまお久しぶりです。久保落選のショックで更新が空いてしまいました。どうもすみません。

前回のエントリーで書いたように、私は「それでも、ジーコは久保を選ぶ」と思っていました。相当に状態が悪くても、最後の最後で何かをしてしまう。久保をそういう選手だと見込めば、例えばブラジル戦の後半にしか間に合わなくても、久保を選んでしまう。それがジーコ監督の「家族・序列マネジメント」の真骨頂だと思っていたのです。

それには、悪い面もあるでしょうが、いい面もある。コンディションの悪さから試合内容を低下させても、最後の瞬間に「なにか」をしてくれるのはやはりそういう選手なのだ、ということを、ジーコジャパンは示してきたのではないか、と私は感じていました。

しかし、久保は落選。代わりに巻が入る。これはもちろん、JEFファン、巻ファンの私からすると、とてもうれしいことですし、非常に合理的な判断だとも思います。しかし、それと裏腹に、巻との比較ではなく、「日本人にもこんな怪物FWがいるんだよ」ということを世界に示すチャンスがなくなったのは、純粋に残念だと感じている私がいるのです。それはもちろんジーコを非難するというものではありません。しかし、今回奇妙なことに、私はジーコの「非合理性」に、ずいぶんな信頼(?)を置いていたようなのでした。

しかしこれも、もはやネット的には旧聞中の旧聞、繰言の部類に入ってきたことですね(笑)。選手は目前に迫ったW杯という大目標に向けて全力を集中している時です。これからは気持ちを入れ替えて、決まった23人を応援していきたいと思います。


■前か、後ろか

さて、代表合宿では「戦術の話し合い」がどんどん進んでいるようです。やはり出場する選手同士が顔を合わせて、じっくり話をできるようになってから、このチームのチーム作りは急速に仕上がるのでしょう。本番までに完全にすり合わせて、よい戦いを見せて欲しいですね。

こちらは、日本での合宿で一回あった戦術練習での話し合いについての記事です。国内組からなる守備陣は、エクアドル戦で「一回下がって待ち受けてからプレスの網にかける」という戦いを選択し、奏功していましたね。ヒデにもそれを踏襲して欲しいということでしょう。私も、現状ではその方針に賛成です。

戦術練習が中断するたびに、ボランチを務めた中田英の周りに選手が集まった。DF加地、宮本、三都主…。そのたびに中田英は苦笑い。守り方、攻め上がり…。次々に改善を求められた。
 この日は、数的不利な状況での守備を反復。加地が守備につけない状況で、攻撃を受けたときには、中田英が対応することを確認。そこで加地は「ボールにいかないで、スペースを埋めるようにして」と求めた。
 中田英は1対1に強いため、数的不利な状況でも、ボールを奪いにいく傾向がある。だがボールを奪えなければ、決定機を与える危険性が高い。宮本は「ボランチ1人じゃ守れない。出ていかないで!」と訴えた。

中田ヒデ選手のファーストプレスの出足の早さ、その際の1vs1の強さ、戦術眼は大きな武器なのですが、それをチーム全体で後押しするためには、チームの意識が統一されていることが必要です。現状では、中田選手を3-5-2のボランチとして起用する以上、セカンドプレスをチーム全体で整備するよりも、「いったん下がって待ち受けて」を選択せざるを得ないでしょう。

しかし、渡欧してからの練習でもその部分がふたたび焦点になっているようですね。以下5月29日(月)の毎日新聞より

 28日の紅白戦では控え組に展開力のある選手が多く、中盤でボールを回された。W杯でも想定できる場面だ。すると、DFラインは裏のスペースを突かれることを警戒して自陣まで下がった。ジーコ・ジャパンは、11人がコンパクトに守ることが約束である。おのずと、チーム全体が自陣に引かざるを得ない。こうなると、ゴール前で相手をはね返すことはできても、攻めるには相手ゴールが遠い。

これは、日本で行われた話し合いどおりの「いったん下がって待ち受ける」やりかたですね。

 この状況が続き、中田英(ボルトン)が試合を止め、宮本(ガ大阪)、福西(磐田)らと話し合う場面があった。中村(セルティック)は「ヒデさん(中田英)としては『最終ラインを下げすぎだ』という意見だった」と解説する。攻撃陣は最終ラインを押し上げて、ボールを相手ゴールに近い位置で奪取して、攻撃を仕掛けたいと感じる。得点を奪えなければ試合には勝てないという考えだ。

最終予選前にも書いた通り、中田ヒデは「ラインを高く、高い位置で奪う」ことを志向する選手です。攻撃面では「アクション・サッカー」と言われるジーコジャパンですが、守備面でも「アクション」を仕掛けていく守備、積極的な守備をしたい、ということですね。アジアカップ以来、下がって待ち受けること、いわば「リアクション的守備」をよしとするようになったチーム全体と、どう折り合いをつけていくのか、注目ですね。

 一方、宮本は「各国の親善試合を見ても、最終ラインを高い位置まで押し上げているところは少ない」とリスク管理を重んじる。

国内組は、下がって成功したイメージが色濃いのでしょうね。私も、オーストラリア、クロアチア相手には、いったん下がって待ち受けて、敵の自滅を誘う「戦略」のほうが、今回のチームでは正しいのではないか、と思っています。ブラジルを相手にする時はもちろんですが。

福西は「それぞれの意見は違うが、まとまりある決断をしなければならない」と話す。

その通りだと思います。そろそろ決断をして、意識統一を図って欲しいですね。


■完全公開が育てるもの

さてこちらは、ジーコ監督が練習の完全公開方針を貫いているという話題です。宮本は「ありがたいことです」と言っていますね。

前回大会では、若い選手たちが迎える地元開催のW杯ということで、この熱気がダイレクトにぶつかると「上がり」や「入れ込みすぎ」につながりかねない懸念がありました。2004年の1次予選でも、ホームの熱い声援による「いいサッカーをしなきゃあ」とい過緊張、いわゆる「ホーム・ディスアドバンテージ」があったと、宮本も言っていますね。それもあり、トルシェ前監督は非公開を貫いたのですが、今回は平均年齢も上がり、W杯を経験している選手も増えてきました。そういう状況では、公開方針もよいことのように思います。

ブラジルではいつも完全公開なのだそうですね。それはブラジルにおいては、サッカーの代表、特にW杯というものが、国民全体の関心事-いわば「国民代表」の行なう4年に一回の祭典、マツリゴトのようなもの-であるという事なのでしょう。やはりそういう環境があるから、ブラジルの選手は応援をエネルギーに変える強い回路を体内に持っている。今回のこの完全公開方針が、日本の選手にも「国民全体」との一体感を感じさせ、体内に「それ」を大きく育てていく、その端緒になると、それはよいことではないか、と思うのです。

まあさすがに、セットプレーの一番大事なところくらいは隠してもいいんじゃないかと思いますが・・・。

しかしいよいよ本番、W杯まであと少しですね。ドイツのご飯はおいしいでしょうか。私も少々緊張してきました(笑)。

それではまた。

04:20 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(1)|

May 15, 2006

代表発表前夜

もう今日(2時間後)は、ドイツW杯に向けた日本代表の発表の日ですね。昨日から実にいろいろと選手選考について喧しいですが、ここでひとつ、基準となるジーコ監督の選考基準について考えてみましょう。

ジーコジャパンで最も重要なのは、「貢献度」だと一般に言われています。ジーコ監督自身もそう明言していますね。ただ私は、その前にもう一つ重要な基準があると思っています。

それは、うまい言葉ではいえないのですが、「才能」「クオリティ」というようなものです。

かつての超名選手であったジーコ監督がその「目」で選んだ、「この選手には才能がある」「この選手は試合を決めるクオリティを持っている」ということ。それが、実はすべてに優先しているのではないか、と思います。

コンディションのよい普通の選手よりも、コンディションが悪くても才能がある選手を。

ジーコ監督がそう考えているとすると、これまでのさまざまな選考基準、ふるまいにも納得がいきます。というか、理解が進みます。ジーコ監督の中の「序列」も、それによってまずは決まっているのでしょう。「今日本のベストとなるメンバーを」というのはそういうことなのだと思います。

時としてジーコ監督は、「才能」「クオリティ」を重視することで、それまで所属リーグで試合に出場せず、勘を鈍らせているような選手や、熱があって動けない選手も優先的に起用したりします。それが悪い方に出たのが1次予選緒戦オマーン戦でした。

同時に、才能があると「見込んだ」選手に対しては非常に強い信頼を寄せ、結果が出なくても我慢して使い続けたりします。それを「意気」に感じた選手が「これほどに信頼してくれるのだから」と、いつもは出せないレベルのチカラを発揮したりする。それがアジアカップ優勝の一つの力になった(可能性がある)のは、このやり方のよい点だったと言えるでしょう。

私の記憶が確かなら(ちょっとソースが見当たらなくなってしまったのですが)、昔ジーコ監督は、怪我でいくらかブランクがあった中村選手に対し、「彼は試合を必要としている」と、試合に優先的に起用し、その復調に手を貸したことがありましたね。これもいうまでもなく、「その時点」でのコンディションよりも「才能」=クオリティを優先していることから来るものであり、「才能で決められた序列の上位に来る選手」には、代表戦をリハビリに使うような、そのような扱いも「あり」だということなのでしょう。

そういうわけで、今年に入ってからのテストマッチは、私にはあまり「選考」の役に立っているとは思えませんでした。それよりも、久保、小野といった、「才能」により見込まれた「序列上位」の選手たちの「リハビリ」に使われていたのだと考えると、この半年間のマネジメントが非常にしっくりと来ます。そのかいがあって、と考えるべきか、所属クラブのスタッフの努力を褒めるべきかわかりませんが、小野はここに来てずいぶんと復調してきたようですね。もちろん、リハビリだけではなく、彼らを組み込んだ上での連携をなるべく構築しておく、という側面もあります。

(ブルガリア戦、スコットランド戦も、小野と玉田、遠藤のための試合だった、と考えると、しっくり来るのではないでしょうか。)

このやり方を是とするか、非とするかは、意見が分かれるところでしょう。2002年にも、長期にわたって怪我で動けなかったベッカムが選ばれ、メンバーとして出ていますし、1994年大会でも、大会中に負傷したバレージが、期間中に回復し、決勝戦に出場したということもありました。一部の選手に関しては、コンディションよりもクオリティを、という考えが正しいことも、時としてある。

しかし同時に、1次予選緒戦オマーン戦のように、コンディションを重視しないマネジメントがマイナスに働くことも多い。どちらが正しいかは、ポリシーによるのでしょう(もちろん2分法ではなく、どんな監督もその両者の間でバランスをとって考えるのだと思いますが-トルシェ監督@2002年大会も、最初は復帰直後の森岡を先発させていましたしね)。

ジーコ監督は、そうとうな「クオリティ」「貢献度」重視派ですね。それはもうわかっていることで、変わらないこと。明日の発表は、1、2名を除いてほとんど予測はつきますね。怪我上がりの選手を入れることは、ギャンブルの部分は出てしまうかもしれませんが、そういう監督なのだから、それもそれで、一つの方法なのだ、と思います。

ほとんどの方と同じだと思いますが、一応私の予想メンバーです。

GK: 川口、楢崎、土肥

CB: 宮本、中沢、田中誠、坪井
SB: 三都主、加地、中田浩、駒野

DMF: 福西、小野、稲本、  *遠藤
OMF: 中村、小笠原、中田ヒデ  *松井

FW: 久保、高原、大黒、柳沢  *玉田

最後の枠を、遠藤、松井、玉田のうちの二人、というところでしょうか。誰が選ばれても、クオリティにおいて日本を代表する選手たちであることは間違いがありません。今はまだちょっとだけ心がざわざわしているでしょうが、今日にはすべてが決まります。決まってしまえば、泣いても笑っても後1ヶ月。覚悟を決めて、よい強化をしてドイツに臨んで欲しいですね。

それではまた。

12:28 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

March 11, 2006

スタート以前

4093800812まず最初に、また更新に間が空いてしまったことをお詫びいたします。さて、日本代表始動シーズンの締めくくり、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦が終了しました。後半敵にペースを握られ、かなり崩されたこの試合を見て、やや現日本代表の守備に不安を感じられた方もいらっしゃるかもしれませんね。そういう方には、この本はちょっと参考になるものです。

佐藤俊というライターは、選手にくっついてコメントを獲ることがメインであまり好きなタイプではないので、オススメとは言わないですが(笑)。少なくともこの著作に関しては、宮本が日本代表のDF戦術の構築にどのように苦労し、またどのように成功していったかが如実に書かれてあり、現日本代表を考察するのには、かなりよい資料といえるでしょう。

私は2003コンフェデ杯後に書いたこちらのコラムで、ジーコ監督のチーム作りにおける

「今回のようにみんなで話合う時間があればいい。でも、そうでない場合や新しいメンバーが入ってきた時に、意見のすリ合わせが十分にできない恐れがある。ディフェンスだけは感覚でできないから」(サッカーマガジン誌:選手談話)

という問題点を指摘しました。監督がそれほど守備に関する細かい指示を出さず、選手間での話し合いで約束事を詰めていくものである以上、選手が固定されることは必然です。そして、それに参加していない新しい選手が入ったときには、かなり戻ったところから話し合いのやり直しになることもまた当然でしょう。ジーコジャパンの3年間における、その話し合いの過程、またメンバーが変わったときに苦労した点などが、本書では詳細に語られています。

一般的には、選手が多少入れ替わっても守備面での組織が崩れないように、チーム全体(11人だけでなく)に戦術(特に守備の)を浸透させておくことが、監督の大きな仕事となりますね。中澤がいう、「困った時に戻る場所としての戦術」とは、そういう意味でしょう。しかし、現在の日本代表はそうなっていない。発足して3年以上経った今でも、選手同士が集まってから、2週間程度の時間をかけて連携を煮詰めた後でないと、チーム全体としての守備、中盤からの守備が整備されていきません。ぱっと顔を合わせて試合をせざるを得なかった1次予選の初めの頃や、3バックを前提に話し合いを重ねてきたのに、急に4バックになった最終予選イラン戦などで混乱があったのは、当然のことなのですね。

そして、アジアレベルを超えた強豪相手には、そういうチームとして連動した守備ができていないと対抗することは難しいですから、再始動したてのアメリカ戦、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦における、特に守備面での苦戦は、ある意味「織り込み済み」のことと言えます。これは、W杯直前の合宿において、23人の選手が決まり、レギュラーとして出場しそうな選手、3バックか、4バックかというところまで決まったあとで、煮詰めていかざるをえないものと考えるべきなのでしょう。

発足して3年以上経った今、それでいいのか悪いのかは置いておいて、現状はそういう意味では「チーム作りスタート前」なのであって、たとえ悪い試合をしたとしてもあらためて問題視するには当たらないわけですね。問題はいくぶんかはある。もちろんあるのですが、それは本大会前の合宿にならないと解決しないのです。逆に言えば、そこでは解決するはずのものでもある。まあここは気を落ち着けて、本大会を楽しみに待ちましょう。


■前半:戦術的ボランチ中田英

さて、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦ですが、海外組と国内組が今年になって初めて顔をあわせ、しかもほとんど練習が一緒にできなかったということを考えると、(ボスニアが様子を見ていた)前半は十分合格点の試合をできたと言えると思います。守備面では、中田、小笠原の早いチェックが効き、じっくりとつないでくるボスニアの攻撃を寸断することができていました。

攻撃面では、中田選手がボランチに入り、いつもの卓越した戦術眼ですばやい攻守の切り替えをつかさどる事で、こちらも十分以上に対抗できていました。特に、すばやく動き出す高原選手に対して、フィールドを斜めに横切るサイドチェンジ気味のロングフィードを何本も通していましたね。

そこに起点を作ることで敵のDFラインを押し下げ、敵をノン・コンパクトに、フィールドを広げてしまう。そうすると、中村選手をはじめとする日本の中盤選手たちの技巧が生きる。私はロジカルな中田英選手の最適ポジションはボランチであると以前から思っていましたが、この試合でますますその感を強くしました。


■もと「バルカンのブラジル」、ボスニア・ヘルツェゴビナとクロアチア

さて、日本vsボスニア戦の翌日は国際Aマッチデーだったために、各所で親善試合が行われましたが、その一つにクロアチアvsアルゼンチンがありました。クロアチアが3—2と逆転勝ちしたために、代表サポーターの中に衝撃が走りましたね。後半クロアチアが盛り返したのは、ジーコ監督がいうようにアルゼンチンの攻め疲れが大きいと思いますが、クロアチアが引いて守ることを徹底したこと、前線からファウルすれすれのフィジカル・コンタクトを含むハイプレッシャーをかけるようにしたこと、の2点も要因といえると思います。

中田英選手は、試合後のサッカーダイジェストでも、ヒデメールでも

(後半のように)プレッシャーが厳しくなるとボール回しができなくなる。日本の持ち味だけにこれを消されると苦しくなる。(サッカーダイジェスト:括弧内補足筆者)

と語っています。前回も指摘しましたが、ウクライナ戦やアメリカ戦でもまさにそうで、この点はこれから日本が意識して向上していかなくてはいけないことでしょう。

ただ、ボスニア・ヘルツェゴビナもクロアチアも、もとは旧ユーゴスラビア、「バルカンのブラジル」と呼ばれ、個人技を生かしたテクニック重視のつなぐサッカーをする国でした。そしてボスニアは、そういうチームによくあることとして、プレスは実はそれほど整備されていないと見ます。ボスニアvs日本の後半も、激しくはあるのだけど単発で、言うほど整備されたプレスをかけているわけではない。クロアチアも、対アルゼンチンや欧州予選では、強敵を封じるためにはプレスをかけていきましたが、彼らからすると格下だと思っているだろう日本に対しては、あれはやってこないのではないでしょうか。

じっくりとパスをつないでいく現日本代表のサッカーともっとも相性が悪いのは、アメリカがやっていたようなサッカーでしょう。ヒディンク監督率いるオーストラリアは日本をスカウティングし、ハードなフィジカルコンタクトを含んだプレスを整備してくる可能性があります。しかし、「アルゼンチンに勝った」ことで自信を深めたクロアチアはそうせず、自分たちの技術を生かして攻撃的に点を取ろうとしてくるのではないでしょうか。そうなればむしろ日本にとってはチャンスですね。一泡吹かせてやりたいですし、またそうできる可能性も十分あると思います。


■後半:サイドの数的不利

ボスニア・ヘルツェゴビナ戦に話を戻しましょう。前半終了間際に中村のCKから高原が得点を決めたこともあり、後半になるとボスニアは立ち上がりから攻撃的に来ました。特にサイドバックが積極的に上がり始め、中盤と絡みながらサイド攻撃を活発化、日本は数多くのクロスをあげられてしまいました。しかもその際、中でボスニア選手をどフリーにさせていて、自由にヘディングシュートを打たれることが何度もありました。ボスニアがW杯に出られないのは、この決定力不足が原因か、と思わせるほどでしたね。

この問題に関して、サイドバックの三都主と加地を攻める意見が多く出ているようです。もちろん、サイドの守備を第一に見るのは彼らですから、彼らの責任は大きいと言えます。しかし、より大きな問題は、チーム全体での守備のやり方が、冒頭に見たように「久しぶりに組む面子だと、戻ったところから話し合いのしなおし」になるということにあるのです。また、監督の指示によってやや混乱もしていたようです。

DF加地は試合前、ジーコ監督から「サイドの選手につけ」と指示されたことを明かした上で「ハームタイムには外に張りすぎだと言われた」と、位置取り自体に混乱していたことを吐露。

敵がサイドチェンジを含めたサイド攻撃を活発化したことで、問題は顕在化してしまいましたね。

例えば後半開始直後、日本の右サイドでキープされてサイドチェンジされたシーンでは、左サイドで中村選手が後追いの守備になってしまい、それを見た三都主が飛び出て守備をしようとし、クサビを入れられてダイレクトで外に展開され、2本のパスで二人が完全に守備において無効化されてしまいます。これによって、14べジュリアに自由にクロスを上げられ、中央では8グルイッチがフリーでヘディングシュートを放っています。

これはフォーメーションの問題、選手の適性や能力の問題もありますが、「このように攻められたらどうするか」に関する選手間の考え方が、まだ統一されていないからだと考えるべきでしょう。サイドで人数をかけて崩しに来られた時の対応は、サイドバックともう一人、OMFが見るか(この試合では中村、小笠原)、ボランチ(福西、中田)が出るか、センターバックが出るか、ということになります。ここを詰めておかないといけませんね。

4-4-2flat4-4-2boxプレミアリーグなど、欧州でよく見る中盤をフラットにした4−4−2はそこが明快です。また流行であったらしい(笑)4−2−3−1でも、「3」の両サイドがそれを重点的に対応することが多くなるでしょう。4−3−3でも、4−3−1−2でも、そこはかなりはっきりしています。この日のような、中盤をボックス型にした4−2−2−2は、4バックの中でも「人数をかけたサイド攻撃への対処」がもっともあいまいになりやすく、連動性、共通理解が必要なフォーメーションですね。もしこれでいくならば、W杯までにはさらに意識統一を図っておいて欲しいものです。


■もう一つの問題:「行って」しまう中田英

これは、以前から各所で指摘されていることですが、中田選手は「全体をコンパクトにし、高い位置からプレスをかけるというサッカーをするべきだ」と考えている選手です。そして、それを自らも実践し、周囲にも強力に求めていく。例の福西との意見の違いもそれで発生したものだと言えるでしょう。ボスニア戦でも、中田選手ががっと「行って」しまい、福西選手はバイタルエリアを空けないために残っている、というシーンがよく見られました。

そうなると、チーム全体での守備の約束事が再整備されていない現状では、一箇所でのプレスはできるのですが、その逆に展開されると一気に苦しくなります。中田選手が「行く」ならばチーム全体がそれに呼応してポジショニングを修正、DFも距離を開けないようにしてコンパクトを維持すれば、サイドチェンジされても距離が近いために対応ができます(実際そうしているチームはよくあります)。しかし、私は日本代表ではもうそうするべきではないと思います。この3年間でそれを整備できなかったのですから、今から急にやろうとしても、穴が開くだけではないでしょうか。

私は、以前にも書いた「敵ボールになったらいったん下がって、ペナルティエリアのやや外くらいにコンパクトな陣形を敷いて待ち受ける」というブラジル戦後半のやり方を、できれば4バック3ボランチにして、採って欲しいと思います。それならば、今回のようなサイド攻撃、サイドチェンジの多用にも対抗できるでしょう。


W杯前に海外組がそろう最後のチャンスだったボスニア・ヘルツェゴビナ戦。多くの課題と教訓を残してくれましたね。選手一人一人がそれを認識できただけでも収穫です。それを胸に抱いてこれからのリーグ戦を戦い、再集合した時にはそれにしっかりと取り組んで、よく話し合い、解決していって欲しいですね。

それではまた。

01:00 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

February 12, 2006

ベースに帰ろう

みなさまお久しぶりです。本業が尋常じゃない立て込み方で、なかなか更新できませんでした、申し訳ありません。W杯イヤーのサッカーもいよいよ始動し、代表戦も行われたので、さすがにそろそろと更新していこうかと思います。じっくりとしたペースになるかと思いますが、よろしくお願い申しあげます。

さて、vsアメリカ代表戦が終わりましたね。前半日本が押されたものの選手交代と共に次第に盛り返し、最後は3-2まで追いついて終了しました。データでは、ボール支配率で40%:60%、シュート数で7:29という数字になっています。まあ完敗といって良いでしょうが、こちらはまだ始動してフィジカルを追い込んでの1試合目、いわば「底」にあたる時期なのですから、悲観しすぎることもないでしょう。

苦戦の原因は多くあるでしょうが、やはりボールをじっくり保持する日本の戦いぶりが、あのような組織化された、強烈なプレスと相性が悪いことがあるでしょう。次に、3-6-1という慣れないフォーメーションと、そこに当てはめられた選手の相性の問題。さらには、コンディション不良と野球場の芝の問題などが追い討ちをかけた格好ですね。

見ていて興味深かったのが、アメリカの戦いぶりでした。アメリカといえば記憶に残るのは2000年のシドニー五輪での対戦なのですが、あの時よりもさらに最終ラインが「オフサイドルールを利用したFWへの牽制」を多用するようになっていましたね。日本が久保へフィードを行おうとすると、すっとラインを上げる。これによって久保はオフサイドポジションになってボールを受けられない。「久保1トップ」にとって、このやり方は非常に相性が悪い組み合わせでした。

中田選手がいる頃のパルマvsデルネリ監督が率いていたキエーボでも、同じようなシーンが続いたことがありました。その試合でも1トップ2シャドーが採用されていたのですが、どんどん押し上げてくるキエーボの最終ラインにパルマの1トップは孤立し、まるでペースをつかめなかったことを覚えています。あのようなやり方に対抗するには1トップが上手くウェーブの動きをするか、2列め以降が追い越す動きを徹底しなくてはならないと思うのですが、アメリカ戦ではその辺も上手く行きませんでしたね。

ジーコジャパンで1トップが機能したのはやはり、ウェーブのように一人で動いてスペースを作り、使うことのできる柳沢がいたアウェーバーレーン戦が記憶に残っていますね。あのような動きがこれからもっと必要になります。ジーコ監督はまだ久保1トップの構想を強く持っているようですから、その辺は前線の3人で上手く動きを作っていかないといけないでしょう。

プレスに関しては、今回はちょっと苦しかったですね。シドニー五輪では日本もプレッシングをよく整備したチームで、お互いにコンパクトを目指してプレスの掛け合いのようになり、シュート数もほぼ同数の、互角の戦いでしたね。アメリカはその時の方針のまま、熟成を積んできているわけですが、日本はちょっと違った道を歩んできた。前半はその差が、最もよくないカタチで出てしまったように思います。

やはり同じようにプレスに苦しんだウクライナ戦後、中村選手は、

自分たち中盤がFWまで組み立てなきゃいけない場面が多かった。後ろとボランチがつないで半分くらいまで押し上げて持ってきてくれればいいのに。中盤の負担が大きかった。相手は最終ラインがつないだり、サイドバックが持ったり、ボランチがサイドチェンジをしながら押し上げていたけど。こっちは中盤の選手がその仕事もしなければいけなかった。

浩二からヒデさんにつないでいる間に駒野がハーフラインのあたりまで来ているとか、そういう連動した動きが少なすぎる。だから自分たちも前に上がれない。結果的にボールを取られて悪循環になる。最終ラインのパス回しも必要だと思う。中盤とDFの両方が連動したボール回しが必要になってくる。今日はレフリーうんぬんを抜きにして、相手のサイドバックとボランチがうまかった。ダイヤモンド型の中盤をやったけど、結構押し込まれていたから、取った時に出しどころがなかった。1人1人の距離が短すぎたと思う。

と語っていました。これはまったくアメリカ戦でも当てはまることですね。アメリカも、日本の開始10分のプレスをかわすと、後はウクライナと同様、DFラインやサイドバック、ボランチがオートマティックにボールを回して、スピーディーにサイドに展開、日本を苦しめていました。

ハイプレッシャーの中で戦うには、ボールホルダーの回りの選手が連動して動き出し、パスコースを作る動きが重要になります。アメリカやウクライナと日本のDF選手のパス能力に大きな差があるわけではありません。中村選手が言うような、そうした共通理解をチームとして構築できているかどうか、それがこの差だといえるでしょう。DFラインやボランチは国内組が多いのですから、これからさらに話し合いを詰めて、W杯にはこの部分を構築していって欲しいですね。

そんな中でも、後半出場した阿部、長谷部、巻、佐藤が、フレッシュなプレーを見せ、アピールしたのはポジティブですね。阿部は、私は以前から期待しているのですが、攻撃の第一歩のボランチとしての能力は非常に高いものがあると思います。そして長谷部のドリブル。今回「序列の上の選手」のプレーがピリッとしなかったこともあって、このアピールがどのような結果につながるか。ますます興味深くなってきました。

とりあえず、最初の感想はこんなところです。それではまた。

あ、タイトルは三都主の発言を受けてのものです。これからの合宿で、よりどころとなるベースを作らないといけませんね。

10:08 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

October 10, 2005

収穫と課題と「献身」と

いやー、ちょっと悔しかったですね、ラトビア戦。2点先制しているだけに、試合運びによっては十分勝てた試合でしょう。しかしまあ、ジーコ監督もいうようにこれは「課題を見つけ、解決するための強化試合」なのですから、課題が見えたことはむしろよかったとも考えられますね。


■値千金の先制点

ラトビアは、EURO2004でドイツと引き分けるなど、健闘が目立ったチームだった。しているサッカーは、欧州の伝統的なカウンタースタイル。コンパクトに、しっかり守ってそこから左サイドの10ルビンスの突破、9ヴェルバコフスキスが決めるというパターンでしぶとく勝ち上がる。オランダやスペインなどの一部のサッカー強国、大国以外の欧州の国は、彼らに伍して本大会出場を狙うためだろう、だいたいこのスタイルをとっている印象が強い。

ジーコ監督の下、ショートパスを丁寧につなぐポゼッションサッカーを志向する日本は、えてしてこういう相手と相性が悪いと考えられてきた。しかし、W杯本大会でも強国以外の欧州勢と当たる可能性は高い。2002年のベルギーも、超強国とは言えず、こちらの範疇に入るだろう。彼らはカウンターという武器を持つだけでなく、やはり欧州でもまれているだけに、老獪さも併せ持つ。それに慣れておく、経験しておく必要はある。これは実に適切なマッチメークだったと言えると思う。

日本は試合前から言われていたような、稲本を底にするダイヤモンド型の布陣でスタートした。ラトビアは、9ヴェルバコフスキスを1トップ気味に、後ろに10、5、8と並ぶカタチか。ラトビアは最初は完全に引いて守るのではなく、やや高めからプレッシャーをかけてきた。日本はパス回しが得意らしいが、そういう相手こそプレッシャーを厳しくして中盤で奪うのが有効だ・・・と考えたのか。これは先日のホンジュラス戦で日本がやったことと似ているかもしれない(笑)。ホームでもあるし、はじめにガツンとやってやれ・・・そんな意識もあったのだろう。

それによってラトビア側に、先日のホンジュラス戦の日本と同じ弱点が出ていた。中盤が前で奪おうと人数をかけるために、ボランチとDFラインの間がやや空くのだ。ラトビアのDFも、「ま、普通にやってれば守れるだろう」とでも言うように、ゾーンディフェンスでスペースを埋める意識を優先させていた。4分、ヒデがヘッドでボールを前に送ると、柳沢のデコイランの効果もあり、高原はフリーに。そこからGKの位置を見て振りぬくとボールはGKの頭上から落ちてゴールに突き刺さる。ラトビアのような相手に、前に出てこざるを得なくさせる、その意味でもこの1撃は値千金だった。


■前半のパス回しとダイヤモンド

プレスの裏を突かれて失点したラトビア、ここからは日本のパス回しが利いてくる。柳沢、高原が的確にボールを引き出して、ヒデと俊輔、そして松井がくるくるとポジションチェンジ、パスがその間をきれいに回っていく。日本代表の最近の典型的なプレーだが、松井はそれにすんなりと溶け込み、あるいはアクセントにもなるプレーを見せていた。この試合で松井を見直した人も多いのではないか。

稲本の、ダイヤモンド型の中盤の底、アンカーポジションに対する評価はどうだろうか?まだトップフォームではないにしろ、彼の存在によって「DFラインと中盤の間のスペース」という問題は、いくぶん改善を見せていた。パスの散らしも有効だった。彼が納まっていることで、ヒデも松井も安心してあがっていくことができた。守備面、構成面に関して、これは今後一つの有効なパターンを見つけたといえるだろう。

ただし、前半は、という注意書きが必要だ。日本のMFたちはホンジュラス戦の「プレス破られ」の思い出から(?)脱却しようと、この試合でも高い位置からプレッシャーをかけていく。それは前半はある程度は機能した。しかし後半からはラトビアも、アンドレイエフス監督が言うように、プレスの際の差し込みを深く、あたりをハードにして来たのだ。

そうなると、次第にパスがつながらなくなり、また体力的にも消耗していく。DFラインがロングボールに押し下げられ、フィールドは間延びした。運動量の低下した中盤は、こぼれだまをまったく拾えなくなっていく。後半の日本のシュートはPK、FK以外には43分の大久保のシュートだけだった。ラトビアのハードプレスは日本の選手のボール保持の長さを、ロングボールは日本のDF陣の混乱を、それぞれ見て取ったもので、実に的確な判断だったと言えるだろう。

ラトビアの戦い方は「老練」という言葉がぴったり来るもの。足技のレベルは日本が上だと感じるが、日本のDFラインのパス回しが多いこと、パススピードが遅いことを見て取るや、プレスのポイントをそこに絞ってくる。これは前半からそうだったのであって(例:19分、茂庭から田中へのパスが奪われている。31分、日本陣FKからのこぼれだまを不用意に中にいれ、2ステパノフスのシュートにつなげられている)、中田浩二のパスミスだけを「個人のミス」と断じるだけでは、問題が見えてこないだろう。


■老練、ラトビア

試合の流れに話を戻そう。失点後、10分から20分の間は、ラトビアはいったんプレスを緩める。引いてブロックを作って待ち受けることを優先したのだ。日本はこの間は悠々とパスを回していた。ヒデがいう「決定力不足が課題」というのはこの時間帯の印象が強いのだろうと思うが、実はそれほど決定機が多かったわけでもない。前半日本は9本のシュートを放ったが、浮きだまのパスにボレーや、DFラインの外からミドルシュートが多く、人数をかけるラトビアの守備をこじ開けることはできていなかった。しかし、「つなげる」と感じた日本は、この時間帯の意識を試合最後まで持ってしまったようだ。

20分あたりから、ラトビアは特に縦パスに対するあたりを厳しくし始める。ダイヤモンド型の中盤で、ヒデと松井、中村という攻撃型メンバーであることもあり、日本は中央からの攻めが多くなっていて、比較的サイドへの展開が少なかった。ラトビアはそこでまず最初の基点をつぶしにかかったわけだ(そうして外へ展開させれば、クロスに対する守備には自信があるのだろう)。さらには、中盤の松井や中村にも激しくチャージにかかる。それでも何とかパスを回せていた日本だが、こうもあたりが激しいのが続くと、肉体的にきつくなってくるのだ。それが出たのが後半だった。


■ダイヤモンドを輝かせるには

後半の日本の得点は、その中でも日本のよいところが出たと思う。駒野が奪ったボールを中村が高原に速いパス、高原はドリブルからヒデにパス、ヒデはヒールでペナルティエリア内の柳沢に、柳沢が振り向いてシュートしようとしたところにファウルを受け、PKを奪取したもの。パスを回しすぎないスピーディなダイレクトプレーに、個人のアイデアが融合した良い攻撃だったと思う。しかし、ここにもちょっと問題点(というほどでもないが)が見えている。

前半から、ヒデ、松井が前に行くと、中村と稲本が下がっているという状態が目に付いた。もちろんポジションチェンジしながらパスを回すのはよいことだ。こういう上下動がないと、攻撃が停滞してしまうだろう。しかし、しかしである。どうも見たところ、中田ヒデ選手は最近、ペナルティエリア付近での「怖さ」を失っているのではないかと思えるのだ。この得点のときのヒールパスは良いアイデアだった。遅攻からのパスサッカーで点を取るには、こういう意外性が非常に、非常に重要だ。しかし、それをヒデが表現していることは、最近少ないのではないか、と思うのだ。

そういうプレーは、やはり中村選手や松井選手の方が得手だろう。しかしこの試合では、中田選手の攻撃参加が多く、中村選手や松井選手が懸命に下がって守備をするシーン多かったように思う。その運動量が、終盤のガス欠を招いた面もあるだろう。ペナルティエリア付近での細かいアイデアが持ち味の選手と、ロジカルに、攻守の切り替えをつかさどるのが得意な選手。それぞれのそういった持ち味が、今ひとつ生きていないように感じられた。

ダイヤモンド型の中盤は、前半のように流動的に攻撃するのには向いているのだが、できればもう少し選手の前後の意識をはっきりさせた方が良いのではないかと、個人的には思う。具体的には、やはりヒデにはボランチを優先してもらって、松井や中村選手のアイデアを生かす方向に行って欲しいのだ。ボランチこそが、彼のダイレクトプレーへの志向、誰よりもロジカルなプレーの特長を生かすポジションだと個人的には思うからだ。


■流れを失った後半、さらに失った選手交代

後半、ロングボールを増やしたラトビアに対し、間延びし運動量の落ちた日本はこぼれだまを拾えなくなっていく。21分には、こぼれだまを拾われたところから、中村、稲本、茂庭が10ルビンスに交わされ、ペナルティエリア内で駒野が止めた。がそこで与えたCKから失点してしまう。高さの問題だけではなく、前半から再三セットプレーでフリーな選手を作っていた日本の守備。本大会にはしっかりと準備をして欲しいものだ。

後半20分、柳沢に代えて大久保が投入された。欧州でプレーする彼は是非今の代表でも見てみたい。誰もが思う交代だっただろう。しかし、結果的には裏目に出た。柳沢はいうまでもなく、最前線の素晴らしい動き出しで、1人でスペースを作り、使い、ボールを引き出せるFWだ。彼がいなくなったことで、ボールの出しどころが減少し、それまではある程度できていたパス回しが、さらに停滞していくことにつながった。

ラトビアペースで試合が進む後半30分、ジーコ監督は中村に代えて坪井を、松井に代えて三都主を投入する。ロングボールで混乱するDFを3バックに、こぼれを拾えない中盤を一人増やして5MFに、という意図だったとジーコ監督は説明している

ジーコ:中盤でボールを取られる場面が見られて形成が悪かったので(中盤を)1枚増やした。センターバックについても、かなり負担が大きくなっていたので、これも1枚増やそうというのが目的だった。

この意図自体は、間違っていないと思うが、実践はそれに伴わなかった。3バックにしたことでさらにDFは下がって待ってしまい、間延びは助長された。三都主はドリブルを何度か見せたが、中盤での運動量を増やすことにはならず、疲弊した稲本と中田浩二をボランチにおいても、それはこぼれだまの支配には結びつかなかった。むしろ、さらにパス回しがぎこちなくなるなど、弊害の方が目立った選手交代だった。

ただ、これはあくまでも強化試合であるから、このような終盤逃げ切りのテストをしておくことは悪くないだろう。それが、4バックから3バックへの変更、サイドに三都主を入れる、ということでは難しい、とわかっただけでも収穫だ。オールスターとのバッテイングもあり、今野や福西など、逃げ切りに向いた人材がいなかったのもある。ここに今野を中田浩二あたりに代えて入れていたら、効果は劇的だったはずだ。今後は彼らをうまく使っていけばいいのだろう。


■繰り返される「つなぎのミスからの失点」

2点目の失点シーンは、中田浩二と坪井の意思疎通ミス。前半から再三狙われていたDFラインやボランチ間でのゆるい横パスを掻っ攫われたもの。狙われているのはわかっていたのだから、本人も含めまわりも何とか考えないといけないところだ。その時間には外に出ていた中村選手は

中村:今日は親善試合だから無理にでもつなごうとしていた。本番ならセフティに蹴っておこうとしていたはず。そういう積極的なミスはしょうがない。浩二がボールを持っている時に誰も反応しなかったのが問題だ

語っている。その通りだと思う。

ジーコジャパンでは、先日のホンジュラス戦で中田ヒデ選手が、さかのぼって2003コンフェデでは宮本選手が、同じようなミスから得点を献上している。この試合でも、19分や31分など、同様のミスから決定機を敵に与えている。もちろんどちらも、まず本人のミスが責められてしかるべきだが、同時に中村選手の言う「ボールを持っている時に誰も反応しなかったのが問題だ」という点も、そのいずれにも存在していた。

ジーコ監督は基本的にはロングボールを歓迎しない。DFラインからボランチ、そしてトップ下へと丁寧にショートパスをつないでいくことを要求している。またその際に、いつ周りが動いてボールをもらうかを、特に整備しないやり方を取る。そこも自由なのだ。そうなると、コンフェデやホンジュラス戦のように、周りが動いてパスコースを作ってあげるのを休むと、パスコースがなくなり、かっさらわれてしまう可能性が出てくる。

これが本番で出なくてよかったと思う。選手全員、どれほど疲れても、足が棒のようでも、ボールを引き出すことを考え続けなければいけない。そのために動き続けなくてはいけない。そのことが再び、みたびわかったはずだ。かつてはオートマティズムという名で要求されたそれを、今は「献身」という名で求められているのだ。ジーコ監督は就任直後のカンファレンスで記者に「コンセプトは?」と聞かれ、「献身」と答えていたではないか!

いつも、最も献身的にボールを引き出しに走っているのは柳沢とヒデである。それは90分の間、一瞬も休むことなく頭を働かせているからできるのだ。それを「アラート」という。ピッチの隅々まで意識を働かせ、一瞬たりとも休むことなく警戒し続ける。それによって、苦しい時にもパスを引き出し、攻守の切り替えを素早くし、危険を察知することができる。自由なサッカーといえども、「休むのも自由」ではないのだ。選手たちよ、アラートであれ!


■「テスト」なのだから

収穫と課題の程よく散見された、なかなかいい強化試合となったと思います。今ごろはキエフのホテルで、選手同士話し合いが盛んでしょう。それがウクライナ戦までにどう消化されるのか、楽しみにしたいと思います。

それではまた。

12:11 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(9)|

September 07, 2005

いい時期の大苦戦(ホンジュラス戦)

いやー勝ちましたね!TVではさんざん煽っていましたが(笑)、確かに中南米にはここのところ勝っていないので、ここで勝っておいたことは非常によかったと思います。というか、単純にすごくうれしい試合でしたね。4失点かつ5得点という、なかなか見れないスリリングな試合で、もう心臓が疲れました(笑)。以下簡単に感想を。


■「テスト」なのだから

同じホンジュラスが相手ということで、どうしても2002年のホンジュラス戦(3-3で引き分け)と比較する意見が出ると思うが、確かにまるでタイムスリップしたかのように、同じような試合展開だった。ホンジュラスは、全員が三都主かと思うほどに(いい意味で)ボールをキープ、また三都主と同等か、それ以上にボールテクニックがある選手が多く、日本はプレスのかけどころがつかめない。突っ込んでいけばかわされ、ボールを展開されてしまう。これは、3年前も今回も同じだった。

試合序盤のDFラインは、おそらくはコンフェデ杯やイラン戦のイメージで、「アジアカップ仕様の引いて守るスタイル」から、より押上げを積極的にしていくものにトライしていたと思う。私は地上波デジタル放送で見ていたのだが、16:9のワイド画面だと、通常では見えないDFラインまで映ってくるのだ。序盤から確かにそれは高く維持されていた。というか、そうしようという姿勢が見て取れた。しかしそれはやはり「トライ」である以上、機能しない可能性もあり、そこが出てしまったといえるだろう。

1失点目は、ラインを押し上げた中澤と残った選手、引いてくる選手の意識のズレを突かれ、18マルティネスに突破され、折り返しを10ベラスケスに蹴りこまれたもの。この辺は、押し上げ型DFラインをやるなら必ず意識統一をしておかなければならないところだ。宮本はもっと他の選手と密に話し合うべきだろう。2失点目は、14ガルシアが三都主と1vs1を仕掛け、今度はラインが凸の字になったギャップにベラスケスに走りこまれ、そこをパスを通され決められたもの。ベラスケスのマークを誰がするのか、ここではあいまいになってしまっていた。

これは、コンフェデ以来の4バックと、久しぶりの先発となる稲本、中田浩の連携が練れていないことが最大の原因だろう。しかし別に問題視するには当たらない。そもそも親善試合、強化試合というのは何らかのテーマを持ち、それを見極めたり、習熟したりするために使うものでもある。稲本と中田浩二の起用テストを行って、機能のし具合のチェックもできたし、連携も試合中にある程度に詰められただろう。これでいいのだ。

■世界はミスを許してくれない

日本は徐々に試合に入りなおし、ポゼッションを回復、中盤で稲本が強烈なミドルシュートを放つと、それがホンジュラスDFの足に当たってこぼれ、高原の前に。高原はそれを冷静に蹴りこむ。ゴール!1点差に詰め寄る。敵のミスからの得点だが、それを見逃さないのも強いチームの証拠。ジーコ監督が「世界と戦う時は一つのミスが命取りになる」と語っていたが、その逆を行ったカタチだ。よいことだと思う。

しかし、前半ロスタイム、今度は日本がミスを犯してしまう。DFラインから中田ヒデ選手がパスを受け、ビルドアップの第一歩目のパスを出そうとしたところ、ホンジュラス選手に奪われ、今度はマルティネスに決められてしまう。3-1。まさに警戒していたはず、意識付けをしたはずの、選手のミスで失点してしまう。これはいうまでもなく、W杯本大会では絶対にあってはならないシーンだ。そのためのよい教訓となったと思う。世界は、ミスを許してくれない。言われつくしたことだが、もう一度肝に銘じよう。


■時期とコンディションという問題

やはり試合に出ていなかったり、シーズン開幕直後だったりすると、選手も人間であるわけで、コンディションが本調子とは言えず、カラダの切れが悪くなるものだ。今回は海外組を総じて試合に出したわけだが、やはり稲本や中田ヒデは、まだ体が重そうに思えた。やはり長いこと試合に出ていない選手が、試合でいきなりトップパフォーマンスを見せるのは難しいのだろう。この問題は、昨年の1次予選の初期に大きくクローズアップされたことでもある。

しかし、この試合はあくまでも強化試合。ヒデや稲本を試合に出し、テストする、コンビネーションを詰めていくのが目的なのだ。彼らのコンディションが悪くても、出場させる意味は大いにある。試合全体の低内容は、それから来ている部分はあるわけで、そういう目的のために使われたこの試合なのだから、確かに彼らのプレー内容はそれほどよくなかったが、責めるには当たらないだろう。


■オープンな打ち合い

後半開始直後、日本はFKを中村が蹴り、フリーの柳沢がヘディングシュート。ゴール!3-2!ホンジュラスは前半からセットプレーの守備にもろさを見せていた。ここを突いていけば、もっと点が取れる!ところが、その直後、日本の右サイドに長いパスが送られ、加地は一瞬ボールの落下点を見誤ったか、後ろから走りこんできたマルティネスに追い越されてしまう。中央にラストパスが送られると、ベラスケスが走りこんでおり、また失点してしまう。4-2。

その後ふたたび日本が得たFK、中村が蹴ると、ファーサイドにいた宮本の前に。宮本は後から倒されてPKを得る。やはりセットプレー時の守備が、おそらくトレーニング不足だろう、つめ切れていない印象を受けた。日本の得意なカタチが活きて、得点を取れたことは、今後に向けてポジティブだろう。PKキッカーは中村。これで4-3と追いつめる。

ここで稲本に代えて小笠原投入、ヒデがボランチに下がる。私は彼のベストポジションはここじゃないかと思っているのだが、急にチームに芯が入ったように見えたのは私だけだろうか(笑)?彼のビシッとした縦パスが、「縦へのパスが欲しいですね~」と堀池さんが言っている時に通ったのには笑ってしまった。チーム全体が、まあホンジュラスの時差ぼけから来る失速にも助けられたのだろうが、次第にダイレクトプレー、前への推進力を取り戻し、25分には柳沢が自分で前を向き中へ流れてシュートコースを作り、4点目!4-4!

最後には、完全に足の止まった(にもかかわらず中途半端にラインの高い)ホンジュラスDFの裏へのボールに三都主が抜け出し、折り返しを小笠原がゴール!前半やられた形をやり返してやったようなゴールで、気分よく試合を終えることができた。しかし、ジェットコースターのような、ハラハラとドキドキ、失点の悔しさと得点の歓喜がたっぷり詰まったゲームで、観戦していて本当に疲れましたね(笑)。


■ホンジュラス戦の、その先へ

ブラジルと対戦するジーコジャパンを見ていても感じたのだが、確かに今の日本代表は南米風味になりつつあるように思える。このホンジュラスも、一人一人の細かいところでの技術、フェイントを織り交ぜて、ボールを丁寧につないでくるサッカーをしていた。前半は特に、コネるばかりではなく、周りの選手たちが動き回って、そこをパススピードの速いパスをつないでくる、かなり質のいいサッカーをしていたと思う。こういうチームでも、W杯に出れないのだから、中南米は奥が深い、と思ってしまった。

今回もホンジュラスは、日本のDFラインに対してやや反省点を教えてくれたのだが、同時に「こっちへ行こう」という方向性も見せてくれたような気がする。技術、アイデア、ボール回しに関しては、中南米とかなり近いか、あるいはそれ以上に来つつあるジーコジャパンだが、縦へいれるパスのスピード、選手の動き出し、技術の使いどころ、ペナルティエリアの質、などなどでは、「ポゼッションサッカーの先輩」として、ホンジュラスにも見習うべきところもかなりあったと思う。コンフェデではいい試合をしたジーコジャパン、しかし、まだまだ先へ行ける、発展できる。この時期にこういう苦戦をしたのはいいことだったと、2006年には、きっと思えるだろう。

取り急ぎ、簡単な(そうでもない?笑)雑感でした。それではまた。

10:47 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(4)|

September 06, 2005

門は閉じられていない

9月7日に行われる親善試合ホンジュラス戦にむけた日本代表のメンバーが発表になりましたね。先日の東アジア選手権、最終予選イラン戦(ホーム)などを通して起用された、いわゆる「新戦力」がどの程度含まれるかが期待されましたが、それほど多くはありませんでした。今回は国際Aマッチデーであるために召集できる「欧州組」が多く含まれる、ジーコジャパンにおけるベーシックな陣容となったと言えると思います。

基本的に私は、選手選考は代表監督の専権事項であるし、強化試合においてどのような計画を立てて起用していくかも監督の自由だと思っています。ただ問題となるのは、強化試合ではなく真剣勝負の舞台において、「連携を十分に取れるバックアップ」が維持されているか、ということや、起用法によってチームを闘う集団とすることを損ねていないか、などの点でしょう。この辺はこれからジーコ監督に上手くやってほしいと願うしかない部分ですね。


固定方針と「30人枠」

ジーコ監督は今回の発表では、これからの選手選考の基準や起用の考え方をかなり語ったとのことです。今後予定される強化試合ではなるべく欧州組も召集していきたいということが、その第一となっているようですね。これは、選手間の話し合いや連携が非常に重要な位置を占めるジーコジャパンでは、十分に理解できる考えであると思います。是非なるべく時間をとって、その部分を向上して行ってほしいですね。

ジーコ監督
自分の考えでは、今回のように欧州からも試合毎にメンバーを呼んで、できるだけベストなチームでやりたい。というのも、マッチメークにも苦労するが、選んでもらった相手はかなり強い。今まで以上に自分たちの中での連係も含めた準備として、これからの試合を使っていきたい。

また、今回ジーコ監督は「30人程度」という枠について口にしましたが、これが来年6月のドイツW杯でのメンバーを想像するにあたり、非常に示唆に富んだものとなっています。今回の招集メンバーを基本とし、怪我で休んでいるメンバーがそれに加わり、また巻も今回は実績のあるメンバーが多いために召集を見送ったこと、そして

ジーコ監督
きっかり30人ということではなく、状況において28人であったり、32人あるいは33人という枠。名前で言えば、ここに入っていない鈴木、阿部、今野、田中(達)、茶野、大久保、松井、村井などを含めての枠と考えていただければいいと思う。(中略)左なら村井、右なら駒野など新しい選手も見た。そのすべてがベースとなっている。

と、しばらく代表から離れている松井や大久保のアテネ→欧州組も「30人枠」に入れていることに言及しました。これを総合して現状の「30人(程度)枠」を見てみると、

GK:土肥、楢崎、曽ケ端 + 川口(今回は怪我)

CB:田中誠、宮本、坪井、中澤、茂庭 + 茶野

アウトサイド:三浦淳宏、三都主、加地、駒野 + 村井

ボランチ:福西、中田英(?)、中田浩、稲本、遠藤 + 阿部、今野、小野(今回は怪我)

OMF:中田英(?)、中村、小笠原、本山 + 松井(?)

FW:柳沢、高原、玉田、大黒 + 巻、鈴木、田中達、大久保、久保(今回は怪我)

ということになるでしょうか。ポジションについては、中田英選手はボランチかトップ下か、ジーコ監督も会見でまだ固定していないことを話していたため、松井もジーコ監督が「三都主の代わりとして」と言っているらしく、(?)としています。

攻撃陣では、コンフェデ杯で存在感をあらためて示した欧州組が中心となってくることは間違いないでしょうが、田中達や大黒、巻といった「国内好調組」が彼らとどう響きあうか、これから非常に楽しみです。大久保や松井の新(?)海外組がそこにどう新しい力を加えてくれるかも是非見てみたいですね。そういう意味では「30人で固定」と言っても、まだ最近試されていない復帰組もいるわけで、「門戸が閉ざされた」というようなものではないでしょう。

ただ少しだけ気になるのは、守備陣の陣容、連携の熟成度がやや足りないように見受けられる点です。攻撃は自由でよいし、感性が響き合えば時間がなくても上手く行くこともあるかもしれません。しかし、守備はやはり、中澤が言うように、話し合いによる約束事の積み重ねや、連携が重要なポジションです。この点においては、陣容、熟成において、もっと向上させておく必要があるのではないかと思います。


「ニューヒーロー枠」?

さて、今回の会見でもう一つ注目なのは、ジーコ監督の次の言葉でしょうね。

ジーコ監督
これからとんでもなくいい選手が台頭してほしいと願っている。ブラジルのロビーニョみたいに、とんでもなくいい選手が出てくれば23人の中に入れることもある。心の底からロビーニョのような日本人が出てきてほしいと思っている。

これがいわゆる「ニューヒーロー枠」と世間で騒がれ始めているものですが、別にそういう「枠」があるというわけではなく、そういう選手に出てきてほしい、という望みであって、これには私もまったく同感です。何かもう一つ、枠を壊す、序列を壊すような存在に、是非出て来てほしいという気がします。

この候補になるのは、すでに「30人枠」に入っている松井や大久保、田中達也や巻といったあたりが第一でしょう。また、欧州に渡っている平山も、向こうで大活躍すれば、抜擢も大いにありえるでしょうね。大黒という先例もあるし、Jリーグで実績を積み上げている選手ももちろんその候補になります。あと290日程度、時間はあるようでない、ないようである(笑)。選手たちには是非狭き門を突破するよう、頑張って欲しいですね。


岡田監督と「フランス98後」

ところで、日本がW杯に出るのはこれで3回目になります。参考までに、過去2回の大会出場決定後、どの程度メンバーを「固定」したのかを見てみましょうか。

一度目はもちろんあのジョホールバル、イランとの激戦を制して出場を決めたのは1997年11月16日でした。今回よりもずいぶん遅い決定だったことになります。それまでは、今回と違い集中した日程での予選となるため、基本的にはいったん編成したチームで戦い抜きました。もちろん、途中からゴン中山選手が参加したり、北沢選手がトップ下に、コマネズミ的に起用されてチームの潤滑油になったりと、多少の変化はありましたが。

さてその後、年が変わっての98年、2月8日から、本大会に向けてのチーム作りがスタートします。この時はGK岡中、MF増田、中村俊輔、FW柳沢の5人が初代表に選ばれました。すでに川口、鈴木秀、服部、ヒデ、城といった「アトランタ組」は代表入りしていましたが、中村俊、柳沢は「これからシドニー五輪を戦う世代」でした。今で言う「北京世代」ですね。これを見ると岡田監督も若返りにある程度は意を砕いていたようです。出場決定後にいったん枠を広げる、という意味では、ちょうど今年の東アジア選手権のような位置づけでしょうか。

(これより前に代表入りし、最終予選で大活躍した中田ヒデも、あまりの貫禄に(笑)誰も気づきませんでしたが、非常に若い選手でした。アトランタ五輪(96年)に出場していたとは言え、その世代よりも一つ若い世代で、武藤さんがおっしゃっている通り、現在で言えば「ジュビロの成岡がジーコジャパン入りして中心になるようなもの」でしたから、いかに若かったか想像がつくでしょう。)

さらにその後、4月1日に行われた2002W杯日韓共催記念試合には、当時17歳だった市川、18歳だった小野伸二が招集され、初出場を果たします。何という若さ(笑)!二人ともこれからナイジェリアユースに挑もうという世代でした。ご存知のように、2人はそのままワールドカップキャンプの25人に残り、小野選手はフランスワールドカップ・ジャマイカ戦で出場も果たしました。今で言えば誰だろう、本田君(グランパス)あたりが出場するような感じでしょうか。若い!まさにニューヒーロー枠、あるいは「フランス98後を見通して」の起用と言うのが適当ですね。


トルシェ監督と「生きているチーム」

さて、2002年はトルシェ監督です。トルシェ監督は、まあご存知のように非常に多くの選手を呼び、出場させていましたし、母体がシドニーオリンピックのものであるなど、そもそもが実に若いチームでしたね。というわけで、予選のあった岡田監督時代とは直接の比較は難しいのですが、時期が近いところでは10月4日、7日の欧州遠征があるでしょうか。ここでは、広山や藤本、福西、といったこれまであまり起用されてこなかった選手を「ラボ」に送り込み、久しぶりの宮本のセンターや奥のサイド起用など、いくつかのテストも行われていました。

続いて、11月7日にはイタリア戦があるわけですが、それに先立つ10月22日からの候補キャンプでは、「そろそろ絞込みが必要」という指揮官の言葉とは裏腹に、阿部(ジェフ)や前田(ジュビロ)が召集され、またトルシェフル代表では出場暦のない市川がメンバーに入っていました。しかし、試合自体は基本的には「このイタリア戦がワールドカップの開幕」という言葉どおり、これまで中心と目されてきたメンバーで戦い、いったんチームのベースをしっかりさせようという意図が見えるものでした。やはりこの時期にいったんそうするのは、論理的なことと言えるでしょう。

この時のフル代表は、最初からシドニー五輪世代を中心に若い選手でチームを作ってきたこともあって、そのまま2002年以降も編成できるようなチームでした。しかし逆に、それもあって2002年には「ニューヒーロー枠」は結局活用されなかったように見えます。特に攻撃陣には、「急に輝き始めて現メンバーをしのぐほどの選手」は、若手にはあらわれませんでした。とはいえ2002年になると、三都主選手が帰化を果たし、また市川選手がついにトップフォームを取り戻し、「2001イタリア戦バージョン」に加えて彼らがメンバーに名を連ねることになります。やはり、イタリア戦でいったん完成させたチームも、それからの230日で、進化、発展して行ったわけですね。チームは生きているもの、一つところには、ずっと留まることはできないものなのでしょう。

2006年に実際に「ニューヒーロー枠」(笑)が使われるかどうかはまだまだわかりませんが、今いったんベースをしっかりさせようというジーコ監督も、これからの290日、まだまだチームを進化させることに貪欲でしょう。これからの準備期間、その間のJリーガー、海外リーガーの切磋琢磨が本当に楽しみですね。

それではまた。

06:32 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

August 23, 2005

300日へのスタートライン

V6010114イラン戦勝ちましたね!(←遅い)

これでグループ1位で堂々のドイツワールドカップ出場です。両グループ通じても勝ち点15で首位、アジアカップに続けてアジアでのトップを維持できたのは、本当に良かったと思います。長い予選でしたが、選手、監督、関係者の皆さん、本当にお疲れさまでした。

試合は横浜へ見に行ったのですが(写真は横浜国際にあったなにやらモニュメント)、試合後なかなかビデオを見る時間が取れなくて、イラン戦からちょっと間が開いてしまいました。もうあまり試合の感想など書いても遅きに失しているのでしょうが、東アジア選手権からの流れも含めて、少し書いておきたいと思います。


■ドイツ戦からの宿題

この試合を横浜国際競技場で観戦していて、私の脳裏に去来したのは昨年のドイツ戦の事だった。同じスタジアムで開催された昨年末のその試合、選手たちは格上のドイツを迎え、意外にも前線からチェックに行くサッカーを展開しようとしていた。しかし、アジアに比べると格段に技術が高く、組織的にパスをつないでくる相手にプレスをかいくぐられ、0-3と敗戦した。その時の選手はこう語っている

藤田俊哉
今日のような相手に対しては、高い位置からボールを奪うのが理想的だと思った。

小笠原満男
相手はボール回しが早いし、玉際も強い。前でボールを自分たちが取れたときは、そこからうまくいった場面もあった。(中略)もっとラインに押し上げてほしかった。

イラン戦では、試合が始まると同時に前線からガンガンチェックに行く、プレッシングを厳しくしていく選手たちを見て、「2005年はこの宿題を、1年かけて消化しようとやってきたようなものだな」と思えたのだ。アジアカップやアジア予選ではリスクを負わず、最終ラインも引き気味に位置し、セットプレーなどで勝ちあがってきた。しかし、選手たちはそれに満足してはいず、さらに上を目指したいと模索していた。その宿題の「国内組の」答えがこの試合でようやく出た、と私には思えた。

実は、今年最初のカザフスタン戦からその傾向はあった。そして欧州組が融合し話し合いの時間が取れると、予選でもそれがある程度カタチになり、コンフェデ杯ではポゼッションも高くよいサッカーを展開できた。ところが、キリンカップや東アジア選手権ではまた元に戻ってしまう・・・。それはこれまでのジーコジャパンの不安定さの、一つの症例のようなものだったと言えるだろう。

しかし、このイラン戦では、2トップと小笠原を尖兵として激しいプレスを仕掛けたのみならず、生で見ていてなかなか印象的なほど宮本もラインをコントロール、コンパクトフィールドを狙っていた。そしてそこで奪ったボールをシンプルに、素早く前方へ入れるダイレクトプレーによって、チャンスを多く作り出す。引き気味で守って、横パス、足元パスが多くなる「悪いときのジーコジャパン」のサッカーとは一線を画した、よい内容のサッカーがこの試合の、特に前半ではできていたと思う。宮本は言う。

宮本恒靖
最初からプレッシャーをかけようと飛ばしていったので、最後はへばってしまった。高い位置で(ボールを)奪うプレーはよくできたと思う。あと、シンプルなつなぎを意識した。(中略)今日のような出足の良さは次につなげていきたい。(中略)守備はコンパクトを続けられるようにしたい。


■300日のスタートライン

この試合の(特に)前半の内容のよさは、言うまでもなく例の「総とっかえ」の余波を受けて、これまでの国内組レギュラー陣が奮起した結果生まれたという部分がある。前線からのプレスは体力を使うもの、よほど気力が充実していないと暑い中で続けることは難しい。序盤から全選手が前へ前への意識を持って試合を運んでいったのは、この試合での選手の危機感、モチベーションの高さをうかがわせる。

以前からよく指摘されていた、「選手間の競争がモチベーションを高く保つために有効である」という一つのテーゼが、逆にここで証明された形になった。とことんまで選手目線であり、「テストのために選手起用をするというのは選手に失礼に当たる」とまで考えるジーコ監督が、このような競争原理を導入するとは、これまではなかなか考えられなかったものだ。北朝鮮戦の敗戦を受けた思い切った策がこのような効果を生み出したのは、これから300日間のチーム・マネージメントの入り口としては、良いことだったと思う。

私は個人的には、前身のダイナスティカップをオフト監督時代に獲ってから譲ったことのない、東アジア王者の座(オフト、加茂、岡田と3連覇)を、今回できれば奪回して欲しかった。そういう意味では、ジーコ監督の「東アジア選手権に優勝するための」チーム・マネジメントには問題なしとは思えない。しかし、逆に「東アジア選手権を、ドイツW杯への準備のために使う」という考えもあるだろう。準備のためにある意味捨ててしまう、ということだ。そのような意図があると考えると、この4試合はなかなか収穫の多いものとなったとも言えると思う。

したがってこの収穫―ここで間口を広げ、国内組レギュラーも安泰ではないのだ、と意識付けることができたこと―を生かすも殺すも、これからの300日間の準備しだいということになる。間口は広がったが、前回も見たように中心選手との連携はまだできていない。競争原理は導入されたが、それは上手く維持できるのか。そういったところをこれからしっかりとマネージメントして行って欲しいと切に願う。


■引いてこない相手とプレッシング、ダイレクトプレー

イランは韓国などと並んで、日本と対戦しても引いて守らない、アジアでは珍しい国だ。実際、スタジアムで見るとイランのDFは、奇妙なほど位置取りが高かった。特に前半はゾーンで待ち受けて、人よりもゾーンオリエンテッドな傾向があったくらいである。そういうDF戦術をとる場合、情報収集力、戦術理解、個人での判断力などにおいて高度なものが要求されるのだが、欧州クラブに所属するレザエイを欠くイランDFには、そういう選手は見当たらなかった。

ラインを高くしながら統制は取れていない、そういう相手には、プレッシングからのダイレクトプレーというサッカーが実に効く。スペースがあると生きるタイプの玉田も、持ち味を十分に発揮し、大黒とともに敵陣裏のスペースを蹂躙した。小笠原はもともと、隙があればいつでも裏を狙うというダイレクトプレーへの志向が強い。前に出ようと考えていたという(福西と話したとのこと)遠藤も、同じクラブの大黒との相性がよく、何本もパスを通していた。彼ら二人に主導され、前半の日本は多くのチャンスを築いた。

先取点は前半28分、小笠原から長いパスが左のスペースへ流れた玉田へ、玉田が1vs1に果敢に勝負してグラウンダーのクロスを中に入れると、ニアで大黒とGKが交錯してがつぶれ、そこを通り過ぎたボールに長い距離を走って詰めた加地が軽く流し込む、というもの。やはりこういうシンプルなダイレクトプレー(素早くゴールを目指すプレー)でできるチャンスは、選手をセミフリーにしやすく、決定力も上がりやすいものだ。前半の日本の動き、意気込み、イランDFの出来から考えれば、ロジカルなゴールではあったが、もっと取れてもおかしくない相手でもあったと思う。


■セントラルミッドフィールダーの資質:小笠原

プレスに関しては、すばやく、激しくチェックに行きガツガツと体を当てる小笠原が、主導した部分が大きいと言える。もちろん、それはトップ下の立場だからできることで、抜かれたら後が厳しくなるボランチの立場ではそれは難しい(と、普通の日本選手が思っても不思議ではない)。しかし、後ろのケアがしっかりできていることを確認できれば、プレミアなどのCMF(セントラルミッドフィールダー)は、非常にアグレッシブにガツガツと当たりに行っている。この辺は、ヒデが欧州でトップ下よりもCMFとして評価されるところであると思うし、小笠原にレッチェがCMFとしてオファーを出したのも、そういう能力を買われてのことだろう。

いわゆる日本の「10番」タイプは、世界的に見ても珍しい存在となりつつある。世界では、トップ下ならほとんどFWのような、チャンスを作りつつ点を取るタイプが必要とされ、日本の「10番」のような長短のパスでチャンスを生み出すタイプは、トップ下というよりもCMF、中盤の中央で君臨するようになってきている。後者は、下がり目の中盤でそれこそボランチ(ポルトガル語で「舵取り」の意味)として、「ゲームを作る」という役割をになうのだ。

激しくプレスに行き、そこから直接ゴールにつながるプレーや、ワイドな展開を狙っている小笠原は、「チーム全体のサッカーの内容をよくすることを第一に考える」という、「ヒデタイプ」のCMF的な存在だと思う。だから彼を従来の日本の「トップ下」的なイメージで見ると、評価が下がってしまうのだろう。ただ、ヒデに比べると「俺が!」という意識が薄いのか、「回りを生かす」ことを最重視してしまっているようだ。しかし、もし海外にいくなら、「俺が!」的な部分をもっと出さないと苦しいと思う。外国人は「助っ人」であり、「陰でいいタクトを振っていた」という程度のことでは、まったく満足してもらえないからだ。


■盛り返すイラン

前半の途中から、日本のプレスを避けてロングボールしか入れられなくなったイランだが、後半になると、中盤でパスをつなげるようになり始める。暑さの中で前半飛ばしすぎた日本にツケがやってきた。運動量もそうだが、プレスの時のカラダと頭のキレが、少しずつ悪くなり始める。言われるほど「動けなくなる」というよりは、動いてはいるのだが、一歩遅い、動いた後の反射がちょっと鈍い、という状態になって来る。

そうなると、若手主体とは言え技術はそもそもしっかりしたイランチーム。中盤でパスがつなげるようになり、さらにハーフタイムの指示か、早めにクロスを入れるようになって来た。そうなると、真ん中にダエイという、衰えたりといえども巨塔のそびえるイランの攻撃が、徐々に脅威となり始める。後半開始しばらくの間、アーリークロスを主体とした攻めに日本は苦しめられ、何本かシュートを浴びてしまう。

しかし、そうやってイランが前がかりになってきたところでこそ、日本も返す刀でチャンスを作る。奪ってすぐの遠藤からのすばやいサイドチェンジを受けた三都主は、フェイントを織り交ぜたあと遠目から強シュート!これをGKがはじいてCKを奪取。それをニアで大黒が合わせ、GKがファンブルしたボールがラインを割って得点が認められる、2点目!

日本ホームで2点リード。これでほぼ試合は決したかに思えたのだが、逆にそれがまた選手に一瞬の集中切れを生んだか。この直後、さらに体が重そうになった日本選手の前をパスを回していったイラン、左サイドからのアーリークロス(また!)がダエイにわたり、後ろからマークしていた中澤が手をかけて、PKを与えてしまう。それをダエイ自らが決め、1点差に詰め寄られる。

序盤から飛ばしたという問題はあるが、それにしても、やや流れを明け渡しすぎの嫌いはあった。試合全体でのポゼッション率は、日本51%・イラン49%。日本ホームだということを考えると、これは思ったよりも低い数字だといわなければならないだろう(アウェーでは日本58%)。この時間帯のもどかしさが、一部での試合全体の内容の低評価につながっているのかもしれない。ただ試合は90分トータルしてみるもの。私は前半のできは相当よかったと思っているし、後半の動きの落ち具合も、導入された競争原理の「働きすぎ」によるものだから、今後の修正は可能だろう。


■持ち越された宿題

この試合では、これまでにないほど前線が積極的にイランボールにプレスをかけていった。それは個人的には歓迎なのだが、同時に後半のガス欠を招いた面もある。そうなると、以前から解決されていない問題点も顔を出してしまった。中盤の守備が連動できておらず、また最終ラインの押上げもできないと、時としてDFラインの前、いわゆるバイタルエリアがぽっかりと空いてしまう、という宿痾である。

失点シーンは、ぽっかりと空いたわけではなく、人数はそろっていたのだが、選手がチェックに行くのが遅くなるという、「ホーム北朝鮮戦パターン」。そこをパスを回され、最後はクロスをあげられ、ペナルティエリア真ん中でダエイにボールをコントロールされてしまい、ファウルを取られたもの。PKの判定はやや厳しかったとも言えるが、それ以前にも中盤でパスを回され、浅い位置からクロスをあげられて、真ん中でダエイと1vs1を強いられるというシーンが何度も出ていた。それを試合中に是正できなかったのが悔やまれる。

また例えば前半41分の、あのダエイのポスト直撃!シュートも、サイドへ福西が引っ張られ、真ん中にぽっかりとスペースができ、そこで遠藤が孤立、その横を走りこんできたアラビがシュートし、そのこぼれダマにダエイが反応して足を振りぬいたもの。同様の状態は、スタジアムで見ると後半になって次第に多くなっている。

後半の失点後は、それまで果敢にラインから飛び出していた中澤が自重してしまい、さらに中盤にスペースができてしまった。それを見て取ったジーコ監督は、「ボール狩り職人」今野を投入する。投入直後、今野は右サイドへスピーディなプレスを見せるが、しかしやはり内側が連動しておらず、ふたたびバイタルエリアがぽっかりと空いてしまう。そこを突かれモバリにミドルシュートを浴びている。

(余談だが、「新戦力の層が厚くなった」ことを現段階で絶賛するのは、今はまだスポーツ新聞に任せておきたい(笑)。今野も、阿部も、このメンバーの中に入る経験は浅く、イラン戦で投入されたはいいがあまり連携は練れていなかった。2003コンフェデでも「レギュラーメンバーと組んだことがない」松井がジョーカー起用されたが、機能しなかったことを思い起こそう。新戦力と既存メンバーの融合、連携のすり合わせ、具体的には話し合いや試合経験は、これから詰めていかなくてはならないことなのである)。

下がっていくDFライン(注)と、話し合いによる部分が多く、連動しきれない中盤の守備。それらがあいまって、「DFライン前のぽっかり」という問題がかわらずに持ち越されている。コンフェデ杯ブラジル戦では、4バックが下がり過ぎずに我慢し、その前を3ボランチが埋める、という対応を試合中に発見した選手たちだが、これからはそのような策をしっかりと準備し、事前にトレーニングしておきたい。それもこの300日間に残された重要な宿題ということになるのであろう。

(注:この試合全体では、従来にないほど最終ラインが押し上げていたと思う。ただ、時折いつもの癖が、特に後半にはのぞいてしまっていた、ということだろう)

■いつもこころに

ジーコジャパンは、国内組だけでもドイツ戦で出された宿題に答えを出し、コンパクトなフィールドとアグレッシブなプレス、そこからの速いシンプルな攻めを、イラン相手にはくりだすことができるようになった。コンフェデ杯では海外組が融合して、強豪相手にも可能性を感じられるサッカーを見せてくれるようになった。これからの300日間では、この流れを継続して、コンフェデ杯の内容をしっかりと、何度も再現できるようにしていくことが重要だろう。

それに加えて、いつもチームを冷静に引っ張っているキャプテンの宮本は、今後の課題を

(ワールドカップ本番に向けて)今日のような出足の良さは次につなげていきたい。
あとはフィニッシュの精度。今日はミドルシュートを意識して打った。相手に脅威を与えると思う。
守備はコンパクトを続けられるようにしたい。
あとはもっとプレーの精度を上げていくしかない。

と指摘している。これからの代表の強化試合ではこういった課題(と、バイタルエリアの守備)にどんどんと選手自ら自主的に取り組み、答えを出していってほしい。これまでの3年間を振り返っても、向こう300日間はけして長くはないはずだ。またジーコ監督はさらに、この期間の課題を

ポイントは個人のフィジカル的な資質を上げていくか、ということに尽きると思う。

としている。これは、代表で集まってできることのほかに、クラブで、Jリーグで意識して個々が取り組んでいかなくてはならないことだ。それを今、話しておいたことは正しいと思う。3年間の集大成としてアジア予選が終わり、どうしてもふっと気が緩みかねないこの時期。東アジア選手権、北朝鮮戦で負けたことはちょうどよかった、と思おう。そこから競争意識を高められ、個々が本当にしっかりとやっていかないと、メンバーに残れないことがあらためて浮き彫りになった。いつもこころに昨年末のドイツ戦を。それを持って毎日のJリーグで自分たちを高めていこう。2006年は、もうすぐそこだ。

それではまた。

03:55 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

August 12, 2005

結果オーライ(いい意味で)

日本1-0韓国

ちょっと時間がたってしまいましたが、うれしいですねー。やはり日本と韓国は永遠のライバル。特にアウェーの赤く染まるスタジアム、あの大声援の中で勝つと、これはまた格別ですね!もしやいわゆる「ダービーマッチ」の盛り上がりとはこれのことか?これは「東アジアダービー」とでも呼ぶべきものなのでしょうか?今後も伝統的に、お互いに強いライバルとして、切磋琢磨していきたいですね。もちろん、そのたびに勝つのは日本ですけれども(笑)。


■我慢した前半

ジーコ監督は、優勝がなくなったこともあり、総とっかえ後の中国戦のメンバーをほぼそのまま韓国戦に送り出した。変更は腰を痛めた田中達也を玉田に、GKをこれまで出番のなかった土肥に代えたのみ。一試合こなし、その後もいくらか練習はできているかもしれないが、それでも急造チームであることには変わりないだろう。対して韓国は、3点差以上つけて勝たなければ優勝できない。開催国として、優勝へ向けて意気あがっているに違いない韓国が、開始から飛ばしてくるだろうことは十分予想できた。

試合ははたして、どんどん前線を狙ってくる韓国、それを受けて立つ日本、という形でスタートした。ロングボールを早めに入れてくることもあったが、中盤でのパスも意外と(日本の中盤守備が連携が取れていないこともあり)つなぎ、イ・チョンス、イ・ドングクらにボールをいれ、彼らが積極的にチャレンジしてくる攻撃は、やはり北朝鮮、中国に比べ一段も二段も迫力があるものだった。前半のシュート数は、1:10、なかなかに圧倒されていた試合展開だったと言えるだろう。

しかし、選手たちはこれを予測し、落ち着いて対処していたようだ。

茂庭照幸(FC東京)
日本は我慢をさせたら世界の5本の指に入ると思っている。どんなゲームでも耐えられる。(中略)韓国は引き分けでも駄目なので(優勝できないので)最初から前掛かりで来るのは分かっていた。我慢できた。

今野泰幸(FC東京) アウエーだし、相手は負けたら最下位なので、気合を入れてくるのは分かってた。むしろカウンターのチャンスがあると思った。

駒野友一(サンフレッチェ広島) 前の試合で中国が勝ったので、相手は3点以上取らないと優勝できないので、前掛りに来ることが分かっていた。とにかく最後まで守りきろうと思った。

選手同士でもおそらくは意識統一の話し合いなどがあったことだろう。このように試合展開を予測し、「まずは守りから」と決めてあり、下がり目で守っていると、日本と韓国の選手の力関係ならばそうそうフリーでやられはしない。そして、崩されない中で、最後の瞬間に思い切り体を張っていくことができれば、シュートを打たれてもGKの守備範囲に飛ぶものだ。今年のキリンカップで来日したペルーやUAEが見せ、日本が無得点に抑えられてしまったような守り方である。

土肥洋一(FC東京)
 最初(のシュート)は手が届くところに来たので、リズムを作れてうまく試合に入れた。DFもコースを限定してくれて、やりやすかった。(中略) (かなり押し込まれたが)決定的に崩されてはいない。だから向こうも遠めから打ってきた。

韓国選手はなかなか日本の守りが崩せないのを見て取ると、ミドルシュートやロングシュートを増やすようになった。しかし、それもコースを限定したおかげもあり、土肥がすべて阻む。日本は、攻撃に人数をかけないためにほとんど攻めに出ることはできなかったが、失点も喫さずにハーフタイムを迎えた。


■見覚えがある風景

ハーフタイムにどのような話が選手同士であったのか定かではないが、後半開始から日本は前線の選手が敵ボールを追い回すようになった。また、ジーコ監督が中盤から後ろの守備面の細かい修正の指示を出したこともあり、さらには明らかに飛ばしすぎた韓国の選手たちの失速もあり、次第に日本もペースを握れるようになってきた(後半のシュート数は5:7)。

後半15分には坪井が負傷し中澤と交代、さらに24分に小笠原、33分に大黒が投入される。最後は右サイドで駒野が奮闘しCK奪取、さらにそのこぼれがまたラインを割り再度のCK。小笠原があげたボールを巻がニアでつぶれ役になり、センターに飛び込んできた中澤が左足アウトであわせてゴール!やはり急造チームの連携不足もあり、攻めはなかなか形にならなかったが、日本のお家芸とも言えるセットプレーでのゴールで試合は決した。

この試合を見ていて私が思ったのは、「ああこれはどこかで見た風景だ」ということだった。この感覚を探ってみると、なるほど、例の2004アジアカップでの日本の戦いぶりとかぶってくるのである。かの時も、日本は基本的に下がって守り、そこからのカウンターと得意のセットプレーで勝ち抜いた上での優勝だった。「いい試合内容はできないかもしれないが、あわてずに粘り強く勝利をつかむ」というのが、その後もアジア予選で発揮されたジーコジャパンの一面の美点だが、このBチームは早くもそれを身に着けたのか。

考えてみれば、ジーコ監督は「守備に関しては基本的なことしか言わない」わけで、そうなると(「一人余れ」の指示もあり)このような守備戦術になることは、自明の理なのかもしれない。そしてある程度攻められることを覚悟でこのようなやり方で守れば、実力差がない限り、そうそうは失点しないもの。暑さの中で、ボールは支配できないかもしれないが、落ち着いて試合の流れを読み、セットプレーという武器を生かして粘り強く戦う。それがこの急造のチームでもできたことは、今後に向けてそれなりにポジティブだと思う。


■「個」を評価する試合

私は「中国戦、韓国戦を『総とっかえ』で戦う」と聞いて前回、「旧レギュラー組と新戦力の連携の向上や、ベースの上にプラスオンする、という役には立たない。選手一人一人の『個』の能力を見る試合ということにならざるを得ない」と書いたのだが、ジーコ監督はまさにその狙いを持っていたようだ。

ジーコ監督
今回起用した選手たちが今日のようにライバル国との対戦などの真剣勝負、その雰囲気の中でどれぐらい気持ちをプレーに出せるか見たかったので、彼らを送り出した。今日は連係などは練習があまりできていないので、その分は目をつぶっても、相手に負けないスピリットや球際の強さ、自分の個性をどれだけ出せるかということを中心に見た。

獅子は千尋の谷にわが子を突き落とす、とか、子供に泳ぎを教えるには足の立たないところに突き落としてほっておくのが一番、とかの逸話を思い起こすような(笑)話だが、ジーコ監督のやり方の中で生き残るには、これはそれなりに正しいことだと思う。ジーコ監督がJリーグでの「そのときに調子のよい選手」の起用を急がないのは、こういう試合で自分を発揮できる選手かどうか分からないから、ということがある。それをここでは見ていた、ということだろう。

ジーコ監督
本番の、真剣勝負の中でしか見られない部分が多かったので、そういう面で日本にとって有意義だった。特に駒野、阿部、村井、巻、田中達の5人は良かった。

これに加えて、韓国戦ではもちろん(笑)土肥、そして「ボール狩り」という個性を遺憾なく発揮した今野もよかったと私は思うのだが。

それにしても、ジーコ監督のあげた5人の名前を見てみると、なかなか興味深い。これらの選手は特に「敵に果敢に1vs1を仕掛けていった選手たち」だと言えると思う。阿部も、私の期待する縦へのビシッとしたクサビのパスは出せていなかったのだが、中国戦での田中達のゴールシーンにつながる前方への走り込みをはじめ、「積極的に上がる、攻撃に関与するボランチ」としての姿勢を見せていたことが評価されたのではないだろうか。そう考えると、何人かの選手がジーコ監督に長く使われる理由が理解できるように思う。


■個々の選手の評価

両サイドから試合の流れの中で時として積極的に仕掛けて行き、質の高いクロスを供給した駒野、村井の評価が高いのは頷ける。またもちろん、田中達也はすばらしかった。彼のドリブルは、抜くためのそれではなく、シュートするためのドリブルだ。「さあ抜いてやろう!」というドリブラーは、抜いたあと「さてどうしよう」という間がコンマ何秒かあり(笑)、そこで奪われてしまったりするのだが、田中達は抜ききらないでも一瞬のスペースが開けばシュートに行く。GKに阻まれてしまったが、中国戦のシュートなどはその真骨頂だろう。ジーコ監督にはなかなか選ばれなかったが、国内組FWのかなり上位に位置づけられてもいい。

巻も、中国や韓国が高めに設定するラインの裏への抜け出しを狙い続けたり、ロングボールに競り勝ったり、体を張って個性をアピールし続けた。村井や駒野から良質のクロスが出てくるのだから、巻がもっと彼らと話し合い、狙いどころを定めていくと、得点もこれからできるようになるのではないか。また韓国戦での決勝点のように、巻自身が決めなくても、彼に釣られたDFの隙を他の選手が突いていく、というのも有効だろう。

ただ、今回の試合は「個」を見ることにならざるをえないものだったが、急造チームで連携も何もない状態であったのも事実。ジーコ監督はそこをきちんと斟酌しているようだが、一部サポの間に「やっぱり○○選手はダメだった!」というような評価があるのはおかしいと思う。3年かけてチームを作り、連携を練ってきた選手のプレーと、この急造チームでのプレーは条件が違いすぎるのは明らかではないか。ジーコジャパンにはまだ慣れていない彼らも、十分に個性を発揮しようとがんばっていたと私は思う。


■阿部よ、「動く」より「動かせ」!

さて、阿部である。ジーコ監督には評価されたようだが、私は大いに不満である。期待が高いだけに、非常に不満だ。いうまでもなく、コンフェデ杯で中田ヒデが見せたような、FWへのパススピードの速いビシッとしたクサビのパスを、彼が出すべきだと思っているからだ。2002年のツーロン国際大会(日本は3位!)では出せていたではないか。阿倍のパスを受けて、山瀬が躍動し、中山は得点王に、松井はベストエレガントプレーヤーに輝いたではないか。それが今、出せていないのはなぜなのか。

阿部の美点の一つは、「首振り」である。素早く的確な周囲の情報収集のために、サッカー選手に必須の能力の一つだ。阿部を見ていると、常に首を振って周囲の状況を把握し続けている。特に注目して欲しいのが「自分に向かってパスが出された、パスが届く」にさえ、首をぱっぱっと振って周囲を見回していることである。これが顕著なのが中田ヒデなのだが、他の多くの選手は(代表レベルでさえ)、自分にパスが出るとボールをじっと見てしまうことが多い。

首振りを行って「トラップする前に、すでに狙うべきスペースが見えている」のが中田ヒデなのだ。だから、ワンタッチ、ツータッチでビシッとしたクサビのパスを出したり、逆サイドへ大きな展開を行ったりすることができるのである。逆に、他の多くの選手は「ボールを受けてからルックアップ、出すべきところを探す」となってしまっている。阿部はそれとは違い、「受ける前から出すところを探している」選手だ。にもかかわらす中田ヒデのようなパスが出せていないのはなぜなのか。

パスは、「出す」だけのものではない。パスを出すためには、受け手が動き始めていなくてはならない。しかし、ジーコジャパンでは、「誰がどのように動き出すか」が基本的に選手の自由なので、ある程度の時間がとれ、試合を重ねた後でないと、そこがなかなかうまく行かない。さらには、中田ヒデのように「自分の出したいタイミング」を周囲に強く主張し、回りを動かしていくことができないと、その関係をよくするのにも時間がかかる(逆に、彼が合流すると急速に内容が改善するのは、この「周囲に影響を及ぼすチカラ」によるものでもある)。

私は、ユース代表時代から阿部には大いに期待し、だから逆に大いに不満も抱いている。今でも阿部は誰より早くルックアップし、前線を見ているのだ。そのタイミングで前線が動き出していれば、そしてそこへワンタッチでパスが出れば、一発でチャンスになったり、いい攻撃の基点ができる。しかし、彼のそのタイミングは早すぎ、誰も「パスが来る!」と予測できず、動き出していない。そこで、ボランチレベルでの横パスが続くことに、今はなってしまっている。

もちろん、今回は急造チームであるということも影響しているだろう。だから逆に私は、ジーコ監督の方針を、今回はむしろ歓迎したいと思う。細かい指示はない、必要なら選手同士でガンガン話し合わなくてはならない。そういう状態で今、阿部に必要なのは「このタイミングで走ってくれ!」ということを前線の選手に主張することなのだ。「俺が早めにルックアップしてるんだから、そこで走れば点になるよ!」と説得することなのだ。それができれば、日本代表はさらにもう一人、すばらしいレジスタを手に入れることになるのだが。


■控え組もジーコジャパンになった。そして・・・

いずれにしても、こうして彼らにとっての「ジーコジャパン初陣」2試合は、なかなかジーコジャパンらしいものとなって大会を終えた。寄せ集めからなかなか機能しないという段階。話し合いを増やし、次第に機能する段階。ピッチの上で声を出し、互いに指示をガンガンする段階。攻められてもあわてないで我慢する段階。その中で隙を見て得点する段階。そして、戦術的指示などなくても、自分でどうにか個性を発揮しようと仕掛ける段階・・・。

短い期間ではあったが、ジーコ監督の言うとおり、真剣勝負の中で、彼らはジーコジャパンにフィットするように成長した。少なくとも国内組の先輩たちと比べられる、選ぶに迷うところまで、この大会の中で到達した、と私は思う。もし北朝鮮戦で負けなかったら、あったかどうかわからないこの「総とっかえ」だが(SPORTS Year!誌では「それは答えにくい質問だ」とジーコ監督は答えている)、結果としてなかなかよい成果をもたらした。彼らは名実ともに、「ジーコジャパン」になったのだ。

2大会続けて優勝を逃がした東アジア選手権。それはジーコ監督のチームマネジメントのつたなさから来るものだ、と前回にも書いた。しかし、前回大会では3-5-2の定着、久保の台頭という成果をもたらし、今大会では、さらなるメンバーの充実をもたらした。結果オーライではあるが、これを生かすも殺すも、今後の準備しだいでもある。各所で指摘されているように、現段階では新メンバーとこれまでのレギュラーメンバーの間の連携は錬られていない。それはこれから手をつければいいことでもあるが、これからの1年間はけして長くはないことも確かだろう。

ジーコ監督が、厚くなった選手層を上手くマネージして、ドイツ大会(およびその後)への航路を安定したものとすることを、ここでは祈りたい。

それではまた。

データ(日本:韓国)

ボール支配率 43 : 57
シュート数 前半 1(0) : 10(5)
       後半 5(4) : 7(3)
       全体 6(4) : 17(8)

02:30 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

August 07, 2005

この船の行き先は?

日本vs中国2-2
(韓国―北朝鮮が引き分けたため、優勝の可能性は消滅)

悔しいですね。

あまり例のないだろうスターティングメンバーの総とっかえをした後の試合で、中国相手に2点先行され、追いついて引き分け。連携もできていないサブ組は、前半はモチベーション高くいい試合内容を見せたように思われるも、後半次第に失速し、終盤はこちらのイライラを募らせる横パスに終始する・・・。

この試合は、監督の手腕に関しても、選手のプレーも、なんとも評価しづらいものとなってしまいましたね。その結果か、ネット上でも「この試合をどう見るか」でずいぶんと意見が割れてきているようです。

仕方がない結果(気ままに代表ブランク/バステンさん)
国内組のナイーブさ(気ままに代表ブランク/ブランクさん)

私の信頼する二人の論客が、このように異なった意見を持たれている。どこに注目するか、何を重視するかで、この試合の捉え方が変わってくるということでしょうね。
 

■中国戦と、今後の航路

私はこの試合を、二つのパースペクティブ(視点)で見てみたいと思う。
1)東アジア選手権を勝ち取るためのマネジメントとしてどうだったか。
2)ドイツW杯まで1年をきった日本代表の強化の過程として、どうだったか。
ということである。


■メンタル、フィジカルコンディション不良の北朝鮮戦

いうまでもなく、日本は緒戦の北朝鮮戦を落としている。つまり、あと2勝しないとほぼ優勝はない状況だった。若手に切り替えてきているとはいえ、中国は侮れない相手。地力では北朝鮮以上と見るのが妥当だろう。そういう相手に、今回の23人の中で、どのようなチームであたるのが、最も勝利の確率を高めただろうか。

北朝鮮戦は、ジーコの哲学にのっとって、これまでの日本代表ファミリーの中の、ヒエラルキーの高い順にピッチに送り出された。マンU戦の疲労が抜け切れていない小笠原や本山など、個々のコンディションやモチベーションよりも、信頼の度合いの高い選手たちを優先して起用する。それによって「すべて勝ちに行く」という哲学。W杯アジア1次予選初戦オマーン戦でも、発熱よりも試合勘よりも、ヒエラルキーを重視したジーコ監督であることを考えれば、ある意味「予想通り」だった。

しかし、彼らのプレーは(かつてのオマーン戦同様)予想を下回るものだった。北朝鮮にミスから先制を許すと、そこからどうにも攻め倦む。悪いときのジーコ・サッカー。パスは回っても、前に進まない。さらに巻を入れると、ロングクロス一辺倒になってしまう。この試合振り、特に運動量低く、ミスを繰り返す選手たちを見て、ジーコ監督は彼らのモチベーションを非常に問題視したのではないか。記者会見でも、そのように語っている


■モチベーション・コントロール

サッカーの試合が選手たちのモチベーションにいかに左右されるものか、この試合を見てもまさにわかることだ。そのモチベーションをコントロールする能力が、サッカーの監督にとって非常に重要であることは、元フランスサッカー協会テクニカルディレクターにして、リバプール、リヨンの監督を歴任するジェラール・ウリエ氏もとくと語っている

プレーヤーやチームのモチベーションのメカニズムの知識を持たずにこの仕事はつとまらない。ここで問題を「モチベーションの高いプレーヤーとそうでないプレーヤー」という形で提起するのは間違いである。内在的な基本的なモチベーションは、多数の影響力によって育まれるものであり、その中の鍵のいくつかはコーチが握っている。(中略)

したがってコーチは、発奮させる術、チーム全体を興奮状態にさせる術を知っておかなくてはならない。(『フランスサッカーのプロフェッショナル・コーチング』ジェラール・ウリエ)

確かに、プレッシャーのかかる最終予選を勝ち抜き、コンフェデ杯という大一番を戦ったあと、再びアジアレベルに戻る大会と言う難しさはあるが、結局ジーコ監督はこの初戦、レギュラー組のモチベーションを向上させることが、ついにできなかった。大会の初戦は非常に重要なものであるにもかかわらず、ジーコジャパンはいつも漫然と試合に入り、途中からアジャストしていくように見える。アジャストしきれないと、そのまま押し切られてしまう。先日のコンフェデも、今回も、それでつまづいてしまったのだ。


■「総とっかえ」の狙い

ここで、ジーコ監督には選択肢は二つあった。一つは、何らかの手段で北朝鮮戦メンバーのモチベーションを鼓舞し、試合中に見られたいくつかのポイントを修正すること。例えば、玉田や大黒の調子が下降気味なのは見て取れただろうから、他のFWにしておく。ボランチレベルからなかなかパスが前に出ないのを修正するために、何らかの意識付けをしておく、などである。

しかし、ジーコ監督はそれをせず、もう一つの方策を採った。それがなかなか前代未聞ではないかと思われる「総とっかえ」という荒療治だった。この意図については、J-KET BBSの方でDylanさんがなされた考察が秀逸だと思う。要約すると、

)レギュラー組に休みを与える(特に精神的にリフレッシュを)。
)控え組にチャンスを与えつつ、レギュラー組への信頼しているというベースを崩さない。
)かつ、レギュラー組に無言のダメ出しをできる。

特に、2と3に妙味があり、例えば一人二人を入れ替えると、その選手を「切る」ように見えてしまう。ジーコ監督にそういうことをする気はない。しかし、「総とっかえ」すれば、レギュラー組全体に「いかにだめだったかってこと、自分で一番よくわかっているな?」という無言のメッセージを送れる、ということだ。これは、「中期的にどうチームを再活性化するか」という視点で見ると、なかなかよい策のように見える。


■東アジア選手権を勝ち取るためのマネジメント

しかし、では、「東アジア選手権を勝ち取るためのマネジメント」としてはどうだったのだろうか。言うまでもなく、厳しい戦術的な縛りのない、中澤に言わせれば「戦術的なベース」のないジーコジャパンの、それも急に組んだサブ組である。いきなり丸ごとピッチに放り出されれば、そこに連携も何もあったものではないだろう。そのチームが機能し、北朝鮮よりも地力では上の中国に勝てると考えられる理由は、どれだけあったのだろうか?選手たちは振り返る

茂庭照幸(FC東京)
(ぶっつけ本番はDFの選手には難しいのでは?)個々で止められることは今日の3人ならできるし、結局最後は1対1なので。失点シーンはコミュニケーション不足というか、話す時間がない(苦笑)。

駒野友一(サンフレッチェ広島) 出た試合は全部同じなので、思い切りできたと思う。ただ、初めて一緒にやる選手もいたし、自分にパスミスもあった。

本山雅志(鹿島アントラーズ) 残念な結果だけど、特徴をつかめていない選手もいたし、そういう中でも一生懸命やった。どういう動きをしたら、仲間がどうなるのかも把握できた部分はある。もし次のチャンスがあれば、頑張っていきたい。

失点は、いうまでもなく連携ミスからのもの。日本の左サイドからのクロスを、茶野と坪井の間に入った選手がダイビングヘッド。2点目はセットプレー、放り込まれたボールに日本選手は誰も競りに行かず、フリーでヘッドさせてしまう。話し合いでチームを作るジーコジャパンにおいて、その時間もなくぶっつけで臨めば、こうなることは分かりきっていたのではないだろうか。

選手主体で、選手が固定されているから、新しく誰かが入るとまた一から作り上げなければならない。(『サッカー批評』発言要旨/中澤)

また、サブ組はおそらくいわゆる「入れ込みすぎ」により前半から飛ばし、途中からガス欠に陥ったようだった。そして、途中交代で投入された選手もその流れを変えるには至らなかった。ニッカンスポーツの試合データを見ると、後半15分までには日本は4本のシュートを放っているが、21分に玉田と大黒を投入してからは、なんと得点になった田中達の「一本しか」シュートを打てていないのだ!私は03コンフェデ後03東アジア選手権後に、「流れを変えるための途中交代の選手が、レギュラー組と一回も組んだことがない」という問題点を指摘し、むしろ選手交代が流れを悪化させることさえある、それが両大会敗退の原因の一つだ、と書いた。今回はこれまでのサブが先発しているが、投入された「もとレギュラー」も、それと同じことになってしまったようだ。

「東アジア選手権を勝ち取るためのチーム・マネジメント」として中国戦の戦略は、果たして合理的なものだったのかどうか。かろうじてそこに合理を見出すなら、

「疲労の抜けないレギュラー組を出すよりも、サブ組を出した方がまだ勝ちに近い」
「サブ組を出すなら、何回かは紅白戦で組んでいるサブ組同士の連携にかける」

というあたりか。しかしこれが、これまで培ってきたレギュラー組の、連携や話し合いのベースを(特に守備において)上回る理由になるのだろうか。私は大きく疑問に思うのである。


■ドイツW杯まで1年をきった日本代表の強化の過程として

引き分けに終わった中国戦だが、北朝鮮vs韓国も引き分けたことにより、日本代表の優勝の可能性は消滅した。ここでジーコ監督は、次のvs韓国戦も、「中国戦のメンバーで行く」ことを決断したようだ

これはこの大会を「新戦力の発掘大会」と位置づけたものと言うことになるだろう。私はその位置づけに必ずしも反対ではない。ドイツまで、アジア予選やコンフェデを戦ったメンバーだけで行く必要はないし、Jリーグには期待のできる新戦力もどんどん育ってきている。彼らをこれまでできたベースの上に取り入れていくことは、日本サッカーのこれからを考えても、もちろん重要なことだろう。実際、日本以外の3カ国も、この大会をそのように戦っている。

しかし気になるのは、この「総とっかえ」というやり方だと、「これまでのチームのベースとあわせてどのように機能するか」というチェック、あるいは「これまでのチームの<幹>たる選手たちとの連携の向上」にはならないということだ。

私は、「総とっかえ」の話を聞いた時にすぐに、そのように思ったのだが、ジーコ監督が旧レギュラーメンバーに「韓国戦に備えて準備をしておけ」といったと聞いて、「とりあえず一試合、選手の個人能力を見る」というところだろうと理解していた。従って、そこでよかった選手が出れば、これまでの中心だった選手たちと組み合わせて、連携を探るための「韓国戦バージョン」が出来上がるだろうと想像していたのだ。

ところがジーコ監督は、優勝の可能性がなくなったことを受けて、ほぼ中国戦のままのメンバーを投入するらしい(GKに土肥を入れる、腰痛の田中達を外す以外は)。ということはこの試合も中国戦同様、旧レギュラー組と新戦力の連携の向上や、ベースの上にプラスオンする、という役には立たない。選手一人一人の「個」の能力を見る試合ということにならざるを得ない。

私は、例えば「宮本が主導するDFラインの連携に、茂庭を組み込んで慣れさせる」とか、「福西と阿部の役割分担を実践で熟成させる」とか、そういうことを「ドイツへ向けた新戦力の登用の準備」としては行っておくべきだ、と考える。話し合いで作る連携が主であるジーコジャパンでは、そうやって組んで試合をした時間を作ることが、バックアップの準備や新鮮な個性の投入のためにも、非常に重要なことだろう。何でもかんでも新戦力を!というわけでは、むろんない(笑)。

ただ、それをこの大会で終了しておくべきだ、とは言わない。この大会では、連携もなしにピッチに選手を送り出し若手の「個」を見極める。その後、イラン戦や欧州遠征で合格者(!)と<幹>との融合を図る、というスパンで考えられているのなら、それでもよいと思う。ただ、アジアではトップレベルのこの2カ国との試合を2試合ともそれにあてるのは、いかにも贅沢である(笑)。Jリーグでの試合をもっとよく見ていれば、ある程度はわかることのはずだ、とも思うのだが。


■この不安定な航路

総じて、私はこの「総とっかえ、若手テスト路線」を否定はしない。そうすることには、予選通過後の日本代表の強化としては、一定のロジカルさがあると思うからだ(今後の利用法次第ではあるが)。気になるのは、「勝つということを考えると、どうしても固定した形から入っていくと思う。」(ジーコ監督)というカタチから、「大会途中途中でテスト路線に切り替えた」ということである。もちろん韓国戦は、「もう優勝がなくなった」ことがわかっている試合であり、テストに切り替えるのももっともだと言えるだろう。しかし、中国戦はそうではない。

たっぷり優勝の可能性が残っている中国戦で、若手に総とっかえする。それは、「優勝を狙う」「結果も内容もある大会に」という前言、目標設定をくつがえした、ということだろうか?それとも、総とっかえが、優勝への一番の策だと思ったのだろうか?

ジーコ監督は「旧レギュラー組の精神的疲労」を理由にあげるが、それは北朝鮮戦が終わってみないとわからなかったものなのだろうか?練習や宿舎での選手たちの様子を観察して、メンタルがどのような状態にあるかを見て取るのは、監督の仕事の大きな部分である。北朝鮮戦前にはそれはできなかったのだろうか。「やらせてみたら、ダメだったので、目標設定を変えた」ということなのだろうか。それでは、公式大会の戦い方としては、いかにも不安定ではないか。

ジーコ監督は、2回の東アジア選手権で、どちらも優勝を逃している。これは、もはや言ってもせん無いことではあるが、以前から指摘している「目標達成のための合理的なチーム・マネージメントが欠けている」ことが、大きな原因だと思う。ジーコ監督の「家族観マネジメント」には、よいところもあるが、マイナスも大きい。もちろん、ジーコ監督がこのままワールドカップまで指揮を取ることは、規定路線である。それは変わらないだろう。しかし、この東アジア選手権でもふたたび表面化した問題点が、代表の航路をどうにも不安定なものにしていることが、私はいささか不安なのである。

新戦力たちにはぜひぜひ韓国戦で奮起、躍動し勝利して欲しい。そして、それを取り入れたこの1年の航路が、最後には目的地にたどりつくことを、祈ってやまない。

それではまた。

データ(日本:中国)

ボール支配率 59 : 41
シュート数 前半 6(4) : 5(5)
       後半 5(4) : 7(2)
       全体 11(8) : 12(7)

01:03 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

August 01, 2005

次に向かおう!

日本0-1北朝鮮

いやー、残念です。

実力差は歴然だと思うのですが、そういう相手でも時として足元をすくわれるのがサッカー。特に、自分たちのミスで1点を前半に献上してしまうと、敵が守りを固めてきて、こじ開けるのに苦労してしまう。まさにその足元をすくわれる典型的なパターンにはまってしまいましたね。

大黒と玉田との2トップはやはりきついでしょうか。玉田は敵陣にスペースがあれば活きるのですが、スペースがないときは下がってきてポストを試みてつぶされたり、左右に流れてしまったりしてなかなか有効なプレーにつながりませんでした。アジアカップでは日本が下がっていて、敵陣にスペースがあったので活きたのですが。

また、大黒の動き出しのよさは、「ここぞ!」という時にゴールに向かうもの。ヤナギのようにパス回し全体に参加してリズムを作るのはまだもうちょっと、というところ。やはり誰かポスト役のできる選手と組み合わせたほうがより活きるでしょう。それに加えて、小笠原が28日にマンチェスターユナイテッドとの試合をこなして疲労が抜けていなかったこともあり、中盤のパス回しも機能しきれていなく、前半はなかなかチャンスが作れませんでした。

試合を通して気になったのが、「レジスタ」の不在です。中盤の下がり目から長短のパスで試合を作る、ゲームをコントロールする存在。コンフェデ杯での中田ヒデ、以前の日本代表の稲本、小野といった選手たちが担っていた役割が、この試合では空席であるように見えました。

特に、あのUAE戦からコンフェデに至る過程で攻撃が改善された要因として大きかった、中盤の下がり目からFWへの、パススピードの速いビシッとしたクサビのパスが、まったくといっていいほど消えてしまっているのが残念でした。それが入ると、敵バイタルエリアで起点ができ、大黒もゴール近くでの技術を発揮できるわけで、もっとシュートも打てたでしょうに、と思います。

福西も遠藤も、横パスか、でなければ近くにはたいて自分が上がっていく、というプレーを繰り返していました。アジアカップではこれは機能していましたね。しかし、この試合では敵が下がっているところに入っていっても、なかなかチャンスにつながらない。パスはボランチレベルから5メートル程度のものが出て、下がった北朝鮮の前でボールが動いている。これだと、「足元、足元」の遅いサッカーになってしまうのですね。攻撃のスピードアップができない。

これは、福西、遠藤の意識の問題でもあるのですが(能力的には彼らもできるはずです)、同時にヤナギがいなくなったことで、動きながらボールを引き出し、リズムを作る存在が消えたことにもよります。であれば、今後は巻など、クサビのパスのターゲットにある程度なれる選手を起用することを考えた方がいいかもしれません。

失点はミスから。小笠原がペナルティエリア付近でのバックパスをミス。さらに敵が中に入れたボールを、中澤がつなごうとしてミス、グラウンダーで中に流され、9キム・ミョンチョルが落として15キム・ヨンジュンが強シュート!というカタチです。ぺナルティエリア付近で二つミスが重なれば、さすがに失点するでしょう。どうしたのでしょうか、中澤はこんなミスをする選手じゃないと思っていたのですが。

これ以外にも、日本は多くのミスを繰り返していました。コンディションやモチベーションの面で、大会を戦う準備ができていなかったように見えます。何度も言うようですが、大会の初戦は最も難しいもの。今回も漫然と準備し、漫然と試合に臨んでしまった日本代表。この部分は何とか改善して欲しいですね。

もちろん、あと2試合残っています。NEXT TWO WIN!すればいいだけのこと。北朝鮮があと2勝するとは考えにくいですから、勝ち点6を獲れば優勝ができるはずです。切り替えていけば十分に可能でしょう。

ただ、ファミリーのヒエラルキー上位から、順番に出した感のある今日のジーコ采配ですが、これをちょっとでいいから崩した方が、優勝の可能性は高まるように思えます。FW陣をはじめとして、人選をできればもう少し柔軟に考えられないものでしょうか。

それではまた。

データ(日本:北朝鮮)

ボール支配率 61 : 39
シュート数 前半 8(6) : 4(2)
       後半 9(5) : 6(2)
       全体 17(11) : 10(4)

12:38 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(7)|

June 28, 2005

いつか来た道

■各所でのコンフェデ杯評価

コンフェデ杯3試合が終了した。日本代表は1勝1敗1分けで、GL突破はならなかった。ジーコ監督がこの大会やW杯での目標をどこにおいているのか、いろいろと発言が取りざたされているが、個人的にはGL突破を目標にするぐらいでちょうどいいと思っている。しかしそれはできなかった。

ブラジル戦、日本代表は非常にいいサッカーを展開した。それはまさに、ジーコジャパン史上最高のゲームだったと言えるだろう。私も見ていて本当に感動した。しかし、それと同時に、目標であるGL突破はできなかったのだから、プロジェクトとしては成功とは言えない・・・のかどうか?(笑)

今また各所でジーコ監督についての議論が花盛りなようだが、おそらくこの「目標は達成できなかったが、いい試合をした」という微妙な状況に対して、日本サッカー界全体が評価をしかねている、あるいはそれぞれがばらばらな評価をしている、ということがこの侃々諤々の原因なのだろうと思う。今回のコンフェデ杯を「力試しの場」と見るか、「勝ち取るべき目標のあるプロジェクト」と見るかで、その評価が分かれるのだろう。

ジーコ監督は、前回の2003コンフェデも、今回の2005コンフェデも、「力試しの場」と捉えているように私には見える。それぞれに際し、それなりの目標は掲げるのだが、それを達成するための合理的、合目的準備をしているようには、どうも見えないのだ。もちろん、前回は就任後1年、あの「アルゼンチン戦後総とっかえ」の後でもあり、チーム形成途中であったこと、今回はアジアモードからワールドモードへの切り替えの最中であること、という、「GL勝ち抜きを目標としたプロジェクト」とするには難しい条件があることも確かなのだが。


■「勝ち取るべき目標のあるプロジェクト」?

私は前回のコンフェデ杯における、さまざまな「GL勝ち抜きに向けたチーム・マネジメント」の不備からジーコ監督の不支持を決めたのだが、その部分は今回のコンフェデ杯でも特に変わっていないと思う。ただ、もう支持だ不支持だと言っている場合ではないので(笑)、その点については置いておこう。ここから先は、別にジーコ批判ではない、純粋に知的興味による論考である。

前回も今回も、ジーコ監督がコンフェデ杯を「勝ち取るべき目標のあるプロジェクト」としてではなく、「力試しの場」と捉えていた場合は、「目標達成のためのマネジメントの不備」を指弾しても仕方がないことになる。そもそもの前提が違うのだ。そして、「力試し」としては前回も、今回も、フランスやブラジルに内容のある試合をしたのだから、十分合格ということになるだろう。

と同時に、ここで興味深いのは、ではジーコ監督は来年の2006ドイツW杯を、「勝ち取るべき目標のあるプロジェクト」として捉えるかどうか?ということになってくる。そしてまた、そう捉えたとして、それを実際に成功させる能力があるのかどうか?


■プロジェクト完遂を目的とした、チーム・マネジメント

アジア1次予選初戦でも、取り立ててオマーンを研究したそぶりも見せず、自分の理想たる4バックに、「ファミリー」の中のヒエラルキー上位者をあてはめ、熱があるなどの体調不備にもかかわらず先発させる。それは今からは「家族観マネジメント」としてよい部分(結束など)もあることがわかっているのだが、「勝ち抜き」を目的としたマネジメントとしては、なんとも不合理なものに思えたものだ。重要な大会において、「初戦」は非常に難しく、大事であるということはよく知られているのだが。

アジアカップ初戦でも同じようであり、またGL勝ちぬけが決まったあとのイラン戦でも選手を休ませることなく、その理由としては「選手に失礼だから」というものだった。その徹底した選手目線、「出たがる選手を抑えることはできない」とでもいうような、「選手の気持ちになったやり方」には、よい面もある。選手が信頼にこたえようと、普通ではない力を出したりする。しかしこれもなかなかに不合理にも見えるものだ。実際、イラン戦後のヨルダン戦では、非常に苦戦したのだが、その原因のひとつに選手の疲労があったことは間違いないと私は思う。

2003、2005コンフェデ杯は力試しだった。それとは違い、W杯では真剣勝負だから、相手のよさを消すことや、疲労を考えて選手を休ませること、怪我やカードのためにバックアップを充実させておくこと、などなどの「目標達成のためのチーム・マネジメント」を、突然ジーコ監督が始めるはずだ、とは私には、どうも、どうにも思えないのだ。もちろん、私の予想がはずれ、そうしてくれるならそれはありがたいことなのだが、それよりも、ジーコは「ファミリー」の結束、「選手の気持ち」を大事にした「家族観マネジメント」を続けるのではないか、と思えてならない。

敵を研究しよさを消すことを、W杯において、ジーコ監督はするだろうか。例えば、98年W杯のジャマイカ。日本の左サイドが攻撃的であるということを見て、その裏へのボールを徹底し、日本に勝利した。02年大会、セットプレーの際の放り込みを徹底したベルギー、04年アジアカップ、日本の3バックへのプレッシャーを徹底したヨルダン。また「プロジェクト完遂を目的とする」場合には、GLの組み合わせを見て、「この試合では、いい内容よりも負けないことを優先するべきだ」とか、「この試合では、終盤に選手を休ませておくべきだ」など、家族観と相容れないマネジメントを取らなくてはならない場合も多い。

さらに、もう言われつくしたことだが、いわゆるバックアップの問題もそれに含まれるだろう。現在に至るまで、両サイドのバックアップが経験を積んでいない状態は変わっていない。今回のコンフェデ、ブラジル戦まででイエローを2枚累積させた両サイドは、もしGLを勝ち抜いていたら(もし、だが)、バックアッパーの質が問われることになった。おそらく中田浩、三浦淳選手が起用されただろうが、開催国ドイツと相対する時に、彼らの代表のサイドでの経験が十分だとは、さすがに言えない状態だったのではないか。同様なことはセンターバック陣にも言える。

これまでの3年を見てきて、ジーコ監督はやはり「プロジェクト完遂のためのチーム・マネジメント」を重視しないのではないか、と私には思えてならない。あるいは必要性を認めていないか、そのプライオリティを「ファミリーの維持、結束の重視」よりも下に置いているように、どうにも見えるのだ。


■W杯とは、どのような場なのか。

それは・・・代表とは、「勝ち取るべき目標のあるプロジェクト・チーム」、ではなく、「選ばれた選手によるファミリー」であるべきだ、とジーコ監督が捉えるからだ・・・と考えると、実に合点がいく。そう、コンフェデ杯も、アジアカップも、そしてW杯も、「ファミリー」が結束して目の前の一試合一試合、「自分たちのサッカー」で戦っていくものだ、と考えているのではないか。「力試し」は言い過ぎにしても、ただただ自分たちの「ファミリー」のサッカーをぶつける、それを世界に披露する、W杯はそういう場なのだ、と。

もしそうだったとしても(ジーコがそうは考えていない可能性もある)、私はその考え方を完全に否定しようとは思わない。

2002年韓日W杯、自国開催の大会は、決勝トーナメント進出が「絶対の絶対条件」だったと私は思う。「史上初の開催国GL敗退」という汚名は絶対に避けなければならなかった。「金で誘致したW杯」と言われてはならなかった。そのためには、プロジェクト完遂のための合理的なチーム・マネジメントが必要だったし、緊張がこの上ないほど高まるW杯の初戦はリスクを減らす戦いにすることも重要だった。「ホーム・ディスアドバンテージ」のある代表チームには、モチベーション・コントロールも必要だった。しかし、2006年はどうだろうか?

私は個人的には、やはり日本代表は「GL勝ちぬけを目的とするプロジェクト・チーム」であってしかるべきだし、そのためのチーム・マネジメントの能力の高い監督に日本を率いて欲しい、と思っている。とは言え、そうではない考え方も否定しない。「結果は最大化されないかもしれないが、全力は尽くした」・・・これは、妙に、なんとも日本人的な、われわれの心をくすぐるシチュエーションではないか。日本のサッカーファン、代表サポ、そして広く国民一般が、そちらがいいというのなら、それが「日本サッカーの姿」だということだ。それでもよいと思う。

日本は、どちらを選ぶのか。その答えは、結局2006年も終わり、かなり後にならないと出ないものであるかもしれない。

それではまた。

05:33 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(1)|

June 24, 2005

2年おきのマイルストーン

惜しかったですね!後半終盤、ブラジルは明らかにガス欠に陥り、守備も半分パニックになっていましたから、あのままもう数分あれば、という思いがすごくありますね。それに前半最初の加地の得点!あれはオフサイドじゃなかったと思うんだけどなあ。世界王者相手に公式大会で勝利、というこの上ない結果が得られた筈なんですけど・・・まあ、スポーツでタラレバは禁物。なにはともあれ、キリンカップ、W杯予選からこの長い戦いを戦い抜いた選手、監督、スタッフの皆さんには、今は何よりもお疲れさまといいたいです。


■似たもの同志さ(笑)

やはりブラジル人監督ジーコが3年間率いた日本代表、ブラジル代表と戦ってみるとその類似性に驚かされた。と同時に、まだまだ追つけない部分、参考になる部分、逆にまねしない方が良い部分、などがくっきりと見えてきた試合でもあったと思う。

まず似ている点で言えば、やはりボールポゼッションを第1に考え、ショートパスをつなぎ、DFラインからのロングフィードなどを避ける傾向にあるところだろう。ブラジルの前半のポゼッションは非常に質が高いもので、一人一人の技量が高いのはもちろん、周囲の選手たちが献身的にサポートし、動き出すことで、スペースでボールを受けることができていた。この、ポゼッションサッカーでありつつ、周囲の動き出しが整備されている(監督によるものというより、選手の経験知によるものだとは思うが)サッカー、日本代表も大いに参考にするといいのではないだろうか。

もう一つ、共通点と言えば、ブラジルも中盤での組織化された、連動したプレスはあまりかけてこないチームであるということもある。もちろん日本選手がもたもたしていると、するすると囲い込んでくるのだが、それもメキシコほどのアグレッシブさはない。自分たちの得点力に自信があるからだろうが、日本がかなりパスをつなげたのはそういうブラジルの特質による部分もある。これは、あまりまねしない方がいい部分であるような気がする(笑)。

しかし、そういうサッカーでも、ブラジル人選手は一人一人の「パスの流れを読む目」が高く、どこからか出てきてすっとインターセプトして行ったりする。これは、日本人選手がまだ追いつけていない部分だろう。このような「目」や、ポジショニング、インターセプト能力などが日本人選手においてもっと向上するまでは、ブラジルよりはメキシコに近い、しっかりとしたプレスを目指したほうがよいと思う。

そして違う点といえば、実はブラジルは「速い攻撃」もたいへん得意だということだ。ロビーニョの1点目はカウンターであるし、それ以外にもカウンターやショートカウンターからチャンスを量産している。また、ロナウジーニョの2点目も自陣での早いリスタートから、ロナウジーニョ、カカ、ロビーニョと速いテンポでパスをつないで決めたものだ。これらの際の選手たちの、「難しくない、シンプルなプレーを、判断早く、正確に行う」という点は、日本代表が「まだまだ」な点であり、前線の動き出しも含めて、攻撃を「早くできる時」にはもっと速くするべきだろうと思う。大いにまねをしたいところである。


■ブラジルを「見て」しまった前半の日本

前半の日本は、「あれよあれよ」という表現をしたくなるほどに、ブラジルにやりたいプレーをさせてしまっていた。おそらく選手たちはギリシャ戦のいいイメージを持ち、ある程度高めでボールを奪おうと考えたのだろう。前の試合と同じように、最前線からプレッシャーをかけていこうとしていた。しかし、ブラジルはギリシャとは、足技のレベルが3段階か4段階くらい違う(余談だが、日本はギリシャなどの欧州中レベルの国よりも、足技は上になりつつあると思う)。あまり連動していないプレスを難なくかわされると、もう後はDFラインが裸でさらされるのみ。

そうやってプレスが何度も何度もかわされると、今度は飛び込んでいくのが怖くなる。2失点目のシーンは、ヒデと福西がロナウジーニョの前にいたのだが、距離をとって「見て」いるうちに突破され、カカへパスを出されて崩されてしまった。同じようなことは随所に起こり、日本はざざっと引いて守ってしまう、「アジアカップ仕様」のDFをするようになっていた。前半には10本のシュートを浴びたのだが、そのうち4本しか枠に飛ばなかった、ブラジルらしからぬシュート力の低さに感謝しなくてはならないような試合展開だった。

無理もないことだと思う。ブラジルのようなことができるのはブラジルだけ、それを体験できるのはこうした機会に限られる。ここで世界との距離を肌で感じて、それを体で覚えていけばいいのだ。ただ、前半終盤、ブラジルが試合を「閉じよう」と、ゆるいボール回しを始めた時に、日本もそれにつき合って追わなくなってしまっていたのは残念だった。勝たなければトーナメント進出がないのは、日本のほうだったのだが。


■いわば「リトリート・プレス」

後半、玉田に代えて大黒、小笠原に代えて中田浩二選手が投入された。これによって中田ヒデ選手は一列上がるかと思いきや、私の目には彼のオリジナルポジションはボランチのままであるように見えた。後半23分などに、DFラインが画面に映ると、その前に左から中田コ、ヒデ、福西ときれいに並んでいるのだ。これは3ボランチ、3CMF(セントラルミッドフィールダー)ということだろうか?この選手交代と同時に、選手たちは明確な動きを見せ始める。

敵ボールになると、DFライン4人が上述の3人とともに、ペナルティエリアのすぐ外くらいに陣を引くのだ。つまり、ボールを奪う位置を「ペナルティエリアやや外」と決めているわけである。そして、できる限りそこから下がらない、我慢する。何度か画面で確認できるそれは、なかなか整然としたものであった。そこから前に出ながらボールホルダーにプレッシャーをかけに行く。いったん引いて(「リトリート」)それからプレスをかけていく、言わば「リトリート・プレス」(造語)のようなやり方というわけだ。

それは、前半の序盤の、高い位置から追おうとして引いているDFラインとの間を空けてしまう守備とも、途中からの「引いて、見てしまう」「アジアカップ風」の守備とも違っていた。我慢するDFラインにより、コンパクトを実現し、「敵を制限しつつ、すきあらば奪う」ということができていた。これまで選手たちが、あのドイツ戦あたりから「世界で戦うにはもっと高い位置で奪わないと」と言っていたそれが、今ようやくそのカタチを見せ始めたのだ。

これはかなり機能し、前半よりはいいようにやられるシーンは減った。後半、この「リトリート・プレス」をひいてからは、ブラジルを「悪い時のジーコ・ジャパン」のような、足を止めて足元、足元、で止めるサッカーにさせて、日本からは対処しやすいものとなったのだ。宮本が言うように、この戦い方は今後のヒントになるだろう。これが、世界レベルである程度通用する、ということは、大きく自信になったことだと思う。


■そして「ポゼッションカウンターサッカー」

これはずいぶん前にJ-NETの方で議論していたことなのだが、ジーコ監督のサッカーは、ちょっと興味深いものだと思う。一般的には、ラインを下げてセーフティーに守る(リトリート)の場合は、そこから敵陣をスピーディに切り裂くカウンターを主たる戦い方として選ぶものだ。守→攻の切り替えが早いことが、最も得点のチャンスを広げるのだから、当然であるともいえるだろう。今回のブラジルだって再三そうしている。

ところが、ジーコ監督の場合は、ラインを下げて守りながら、スピーディなカウンターよりも、じっくりとしたポゼッションを選ぶ。ショートパスをつなぎながら、徐々にゾーンを押し上げ、自分たちの体制が十分になってから攻撃をしようとする。しかし、そうやって時間をかけるということは、敵にも守備の陣形を整える時間を与えることになり、なかなか点が入らないことになる(私は「そればっかりでは苦しい」と指摘したのだが、最近ではスピーディにゴールを目指すダイレクトプレーもジーコジャパンは織り交ぜるようになった。それは歓迎したいと思う)。

しかし、ブラジル戦を見ていて、このやり方、引いて守った後、じっくりとポゼッションしながら反攻(カウンター)していく「ポゼッションカウンターサッカー」(造語)は、実はジーコ監督の理想に近いのではないかと思ったのだ。ボール保持を長くするそれは、西部謙司氏が書かれているように、「負けにくいが、点も入りにくい」ものとなる。しかし同時に、より「勝ちに近い」ところに自分たちを置くものでもあるのだ。

ブラジル戦でも、すばやいリスタートからの中村のミドル、FKからポストの跳ね返りを大黒、という形で得点が入ったが、どちらも日本がボールを保持し、ショートパスをつなぐという「自分たちの形」でボールを前に進めていたからこそ、起こったことであるといえる。アジアカップでも、アジア予選でも、敵GKのミスやオウンゴールなど、さまざまな形で点が入ったが、それはやはり、日本が「勝ちに近い」ところにいたからだ、というのが西部氏の主張だ。

これは、中田徹氏が書かれているように、現在の世界のサッカーの潮流とは離れているものである。中盤のプレスを厳しくし、そこからのショートカウンター。あるいはポゼッションをするにしても、先日のバルサや、オランダユースを見てもわかるように、高い位置にコンパクトな布陣を引いて、そこからワイドに攻める、などが現在多くのチームが志向するところだろう。それは、攻守一体となったプレッシング戦術、サイドをワイドに使う攻撃の合理性が、広く理解され、それが有効に活用されていることによるのだ。

しかし、それとは違うやり方で、「負けにくく、得点は少ないかもしれないが、勝ちに近い」というサッカーができるのなら、日本がそれをとってもよいだろうか?それが、「意外にも攻撃的でない現実主義のブラジルに焦れたドイツのサッカーファンが、ニッポンコールをしてくれる」ほどに、攻撃的で魅力的だったらどうだろうか?ちょっと古いかもしれないが、サッカーの魅力の原点はそちらにあるように見えたらどうだろうか?

このコンフェデ杯2005は、そういう問題を私たちに提起するものになった。それは、そういうサッカーにはもちろん、現在主流になれないいくつかの欠点があるからだ。遅い攻めは、自分たちの得点の可能性を下げ、中盤でボールを保持している間に敵のプレスにかかる可能性をあげる。プレスにかかってしまえば、そこからの早い守→攻の切り替えで失点する可能性も高くなってしまう。総体として、かなりの実力差がない限り、勝つ可能性を下げるサッカーなのだ(一般的には)。

この大会では、現在の世界で水準レベルのプレスをかけてくるチームは、メキシコしかなかった。そこが、「このサッカーでいいのだ!」と言い切ることをためらわせる。しかしまた、W杯で当たる世界のチームがどこも、メキシコ並みのプレスを持っているわけでもない。緩慢なプレスならば、日本のこのやり方で切り裂いていけるかもしれない。少なくとも、予断を持ったギリシャと、「引き分けなら予選通過」のブラジル相手なら、それができたのである。


■収穫を今後に生かして

最近は中田ヒデ選手も加わり、すばやい守→攻の切り替え、そこからのダイレクトプレーも増えてきたジーコジャパン。ポゼッションとダイレクトプレーのバランスが向上してきたことで、チームとしては一段進化してきたと思う。そして、ブラジル戦では「自分たちのサッカー」を貫くことで自信を手にし、世界に日本の力をアピールした。

課題としては、高度なプレスを持った敵に対したときに、つなぐサッカーでどこまで対抗できるか、ということ。メキシコ戦、ブラジル戦のように、「試合の入り方」を間違えないこと。ブラジル戦で実現した「下がり過ぎないDFライン」を、これからもさらに磨いていくこと。などなどと言ったところだろうか。

プラス面と足りない点、両方を高い次元で日本に見せてくれたことで、本番一年前のこのコンフェデ杯は、実に有意義な大会となった。もちろん重要なのは、これから一年である。ここで垣間見た「世界水準」を自分の体に刻み付けて、1年間を過ごして欲しいと思う。

それではまた。

05:00 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

June 21, 2005

日本代表に加わった「動き」〜ギリシャ戦

greekやりましたね!ギリシャ戦はジーコジャパン史上最高のゲームだったのではないでしょうか?見ていてとても楽しく、そして結果も上々でした。メキシコ戦と何がどう変わったのか、現地に行っている記者の方たちの報告が待ち遠しいですねえ(笑)。とりあえず、ピッチの上に現れた「よさの原因」を考えてみました。それは、二つの「動き」がジーコジャパンに加わったこと、それが深化したことによるものだ、と思えました。


■ムービング2トップが引き出すダイレクトプレー

ギリシャ戦においては、中盤での詰めの早さ、速さが、メキシコ戦(特に後半)に比べると大幅に上昇していた。そしてそこから、ヒデと小笠原という、守備力が高く、守→攻の切り替えの意識の高い2人が前線にパスを送り、柳沢と玉田という動き回りパスを引き出す「ムービング2トップ」が、緩慢に試合に臨んできたギリシャを切り裂いた。前半に得たチャンスの多くが、カウンターやショート・カウンターであった。このような「動き」のある攻撃、これは、以前のジーコ・ジャパンではあまり見られなかったものだ、と思った方も多いのではないか。

この流れは、アウェーバーレーン戦から継続しているものだと思う。アジアカップ当時から「もっと高めで奪いたい」と選手たちは再三繰り返していたものだが、それがヒデや小笠原の主導、フォーメーションの変更、メキシコ戦の「体感」などによって実現したのだ。そして、そこからのダイレクトプレーを、スペースへ走る2トップが確実にチャンスへつなげて行く。こうして、ポゼッションとダイレクトプレーのバランスのとれた、多彩な攻撃が実現した。これはW杯に向かう日本にとって、本当に自信になったに違いない。日本代表に加わった一つ目の「動き」、それが強プレスから発進する、スピードのあるダイレクトプレーであると言えるだろう。


■ヒデのベストポジションは4−4−2のボランチではないか?

中田ヒデがリードする守から攻への切り替え」において、私はバーレーン戦の中田ボランチを賞賛したのだが、この試合ではさらにそのよいところが多く見えた。ヒデは、メキシコ戦に比べると(チームメートの声を聞いたのか?)自重して、攻めあがったりプレスに行ったりするのをやや控えているようだった。それが特に、この試合の好循環に結びついていたと思う。

ヒデの前方の玉田、柳沢、小笠原、中村といった選手たちも、メキシコ戦の教訓からか、これまでにないほどアグレッシブにギリシャ選手に襲い掛かった。そして、その後ろにやや自重したヒデと福西が控え、交互に(←ここが重要!)前線のプレスからこぼれてくるギリシャ選手たちにセカンドプレスをかけた。このバランス、あのメキシコ戦からたった一試合でこれができるとは、たいしたものだ。

そして、ヒデのプレーである。先述した守→攻撃の切り替えはもちろん、遅攻を余儀なくされても、ヒデから高速のグラウンダーのパスが、すっとフリーになった小笠原や中村、動き出しのいい柳沢、裏を狙っている玉田へと、ビシっと通る。その、フリーになった選手を見逃さないピッチを見渡す目、出すべきポイントを的確に見て取る戦術眼、それらがチーム全体の攻撃に、リズムを与えていた

思えば、ヒデのパスはこれまでも、「ここへ走れ!」というような教育的パスだった。それは、彼の考える「よいサッカー」を具現化するには「正しい」ものではあったが、同時にチームメートとの息が合わないと「厳しすぎる」パスともなりうるものであった。それが、この試合では下がり目のボランチからタクトを振る役割を多くしたことで(もちろん長い合宿で意見交換ができたことも大きいだろう)、これまでにないほど機能していたと見える。

日本の中では傑出した経験値と、戦術眼、強い意志を持つ中田ヒデ選手。彼をどこに置くか、どう扱うか、は、これまでも、日本代表の懸案の一つであった。しかし、ついにそのベストポジションが見つかったように思う。あのローマのカペッロ監督(当時)が、「トッティの代役」ではなく、そこより下がり目の中盤の中央で、トッティを、ローマというビッグクラブ全体をコントロールさせようとした、CMF(セントラルミッドフィールダー)としてのヒデ。今、その時に幻想として描かれたそのプレーが、現実のものとなろうとしているのかもしれない。


■最前線のゲームメーカー、柳沢

yanagiこの試合において、もう一つ特筆すべきはやはり柳沢のプレーだろう。バーレーン戦の時にも書いたが、彼は動き出しがよく、しかも動く前からも、動きながらも、周りの状況をよく見て取ってフリーの味方に確実にボールを落とし、さらにそこからのパスを受けるべくフリーランができる選手である。例えば35分のプレー。ヒデからの速いパスを受けた柳沢は弧を描くようにドリブルしながら、小笠原にボールを預け、すぐに動いてまたリターンをもらい、玉田とも同様にワンツー、ペナルティエリアに一瞬のセミフリーを作って侵入、ビッグチャンスを演出した(そこで滑ってこけてしまったのだが)。

ポゼッションサッカーでも、動き出しがなくパスが足元、足元だけでつながっていると、敵も読みやすく、結局は単発の攻めとなって、なかなか攻撃が機能しない。それを打破するため有効なことの一つが、この柳沢のプレーのように、動いて、動きながらパスをもらい、またリターンをもらうためにスペースへ動く、というような、最前線での人の「出入り」を増やすプレーなのだ。これを高いレベルでできるのが、柳沢や森島、藤田といった選手たちだ。

私は、個人的には日本のサッカーはこのような「動き」「走り」のある選手たちを、どう生かすかにかかっている、と思っている。これまでも、日本のサッカーがよい内容を見せた時、そこにはこのような「動き」のある選手がいた。森島や藤田はこれを中盤で行うわけだが、柳沢はそれを最前線で行う。そして、抜群のスペースメーク能力で、味方を楽にし、また自らもスペースに侵入してパスを受け、攻撃を活性化する。このような「動きのあるポゼッションサッカー」ができていたのが、ギリシャ戦の内容の素晴らしさを生んでいたのだと言えるだろう。

これが、日本代表に加わった二つ目の「動き」である。足元、足元につなぐばかりのポゼッションサッカーから、二つの「動き」によって脱皮した日本代表。来年へ向けて自信を持っていい試合内容だったと思う。


■メンタルゲーム

以上のような日本代表の「よさ」が、欧州王者ギリシャを切り裂き、彼らの持ち味をまったく出させず、日本の「完勝」につながった。本当に嬉しい、ジーコジャパン史上最高のゲームだった、と思う。そして、それを支えたのが、メキシコ戦で敗北したことの「悔しさ」、ここで負ければグループリーグ勝ちぬけがなくなるという「追い詰められ」、そして曲がりなりにも欧州王者という「格上」と対戦するのだという、「チャレンジャー精神」だったとも、つくづく思うのである。

思えば、メキシコ戦、日本は漫然と試合に入ってしまったのではないか。何とはなしに「力試しだ」とでもいうような、真剣勝負にかける意気込み(なかったわけではないと思うが)を、どの程度もっていいか図りかねたまま、キックオフのホイッスルを聞いてしまったのではないかと思う。そして、先制したはいいが、どんどんペースを奪われ、精神的に受身になってしまった。もちろんメキシコ戦には、さまざまな敗因が存在するのだが、そのうちの一つがメンタル面での準備不足にあったことは間違いないだろう。

それが、ギリシャ戦ではまったく逆転した。このチームは、追い詰められてからが強い、「家族」だから(笑)。冗談ではなく、それがギリシャ戦での選手たちの出足に影響していたことは確かだと思う。また、前回も見たように日本は昔から、格上と戦う時はメンタルが充実する傾向にある。しかし、メキシコやトルコのような中堅国、すなわち「サッカー・ブランド・ネイション」では「ない」国と対戦する時は、選手の間の意識がバラバラになりやすい。メキシコ戦で一敗地にまみれ、ふたたび選手たちの間に復活したチャレンジャー精神。それが日本の選手たちの「ひたむきさ」を生んでいた

逆に、ギリシャはEURO優勝時のあの「ひたむきさ」を失っていた。それが、格上ばかりといってもいいEUROにおける、ギリシャの最大の武器だったのにもかかわらずである。ギリシャは、メキシコ戦における日本以上に漫然と向かってきた。日本はギリシャのその隙を突き、メキシコ戦とまったく逆、精神的に受身に追い込み、ポゼッションとダイレクトプレーで追い詰め、勝利した。まさに「完勝」であるといってもいいと思う。そして、その背景には、日本がチャレンジャー精神を取り戻したことがあるのだと、つくづく思うのである。そして、それを失って欲しくないと。


次は、あのブラジル。しかも、敵も「勝たないとトーナメント抜け」ができない状況。本気で、予断なく向かってきてくれるでしょう。望むところですよね!まさに「チャレンジャー精神」をしっかり保ったまま、真っ向から向かっていくには最適の相手です。中盤のプレスもメキシコほどきつくはないでしょうし、日本らしいサッカーとガップリ噛み合うと予想します。日本の力を存分に出して、世界に日本のサッカーを見せつけて欲しいですね。

それではまた。

07:08 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

June 16, 2005

コンフェデ杯展望~二つの日本代表

ベナン戦は残念でした。しかし、まだまだというか、全然GL勝ちぬけのチャンスは残されているわけで、最後のオーストラリア戦は底力の見せ所、ぜひぜひ勝って、GLを突破して欲しいですね。

さあもうフル代表コンフェデレーションズカップ直前です。日本がその力を世界と比べる大きなチャンスですね。是非いい内容のサッカーをし、世界に日本の力を見せつけて欲しいものです。

ところで、J-KETの方でボヘミアンさんが、「アジアを勝ち抜くサッカーと、世界に伍するサッカーは違う」と書かれていました。中身は違うのですが(笑)、私もまさにそう思っています。そして、それが試されるのがこのコンフェデ杯になってくるでしょう。大会前にその点を考察しておきたいと思います。(ここからコラム文体)


■「引いて守ってくる格下相手に、いかにこじ開けるか」

この課題は、「日本が、アジアではすでにサッカー大国となった」がゆえのものである。

アジアは、日本を相手にする時は基本的には「引いて守ってカウンター」という戦略を取ってきた。これは加茂監督の昔から変わらない。彼らの武器が走る力を生かしたカウンターであること、日本はパスをつなぐわりに、引いて守ればこじ開ける力はないこと、などから、それなりに合理的に考えられた戦略であると思われるし、実際に加茂時代はそれで、アジアカップベスト8敗退(あのマチャラ監督率いるクウェートに敗れる)、W杯予選でも引き分けが続き、苦しめられた。

この場合の日本の課題は「引いて守ってくる格下相手に、いかにこじ開けるか」だったと言える。

これは2000レバノンアジアカップで見事に解決された。同じくマチャラ監督率いるサウジが守備的布陣を引いてきたのを4-1で破り、日本を警戒して8人を入れ替え、FWはおろか、名波や森島にまでマンマークをつけてきたウズベキスタン(これは当時の大住氏の記事)さえ8-1で粉砕した(この両国は必ずしも格下とは言い切れないが)。また、それ以前の日本国内での親善試合でも、UAEに3-1、五輪代表ではクウェートに6-0、モロッコに3-1と、その得点力を見せつけていた。

日本代表のサッカーが、従来のボールを保持するだけのポゼッションから、「速く、大きくボールを動かして」「スペースを作り、使う」ものへの脱皮がなされ、中東やアジア伝統のマンマークだけでは抑えきれなくなってきたことの証明だったと言えるだろう。


■「真っ向から向かってくる中堅国を、いかに上回るか」

逆に、欧州や南米相手の場合はどうだろうか。彼らは日本を少なくとも同格と見ているだろうし、ほとんどの国は格下と捉えてさえいることは間違いないと思う。そういう場合、「自分たちのサッカーをすれば普通に勝つ」という考えの基、彼らはまっすぐに、ある意味、ノーマルに(笑)向かってくる

さかのぼれば、加茂監督時代のアンブロカップ(ブラジル、イングランド、スウェーデンと対戦)でもそうであったし、トルシェ時代のハッサン2世杯、01コンフェデ杯、ジーコ監督になってからの03コンフェデ杯も同様だった。彼らは「格下」の日本に対して、特に警戒することなく向かってきたものだ。

こういう場合、敵はまず中盤でパスをつないでくる。日本のプレスの格好の餌食であった(笑)。さらに、DFラインはもちろん引いて守ってくることもなく、マンマークなどもせず、ゾーンで守り、それで守りきれると信じているようであった。DFラインも中途半端に高く、そこをついて日本が攻撃していくことは、かなりできていたのである。

彼らに対しては「組織的なプレスで高い位置から奪う」「運動量を生かしたパス・サッカー」という加茂監督時代からの特徴を、真っ向から発揮していけば、日本はそれなりに伍していくことができていた。加茂監督時代にもスウェーデンに引き分け、トルシェ時代にもフランスに引き分け、カメルーンに勝ち、ブラジルに引き分け、ジーコ監督もフランスに善戦し、コロンビアを追い詰めた(負けはしたが)。

日本は日本の持ち味を発揮することで、こちらを警戒してこない中堅~強国相手には良いサッカーで対抗し、伍していくことができる。それはここ10年変わらないことであったと言うことができるのだ。


■二つの課題をクリアした先にあるもの

加茂監督時の問題は、対中堅~強国相手のサッカー(いわゆる「プレス」サッカー)を磨くことに意を砕くあまり、「引いて守ってくる格下相手にいかに点をとるか」がおろそかになったことだった。そのため、アジアカップで敗退し、W杯予選でも非常に苦戦したのだ。トルシェ時代には、引いて守ってくる格下をこじ開けることはできていたし、対等に向かってくる中堅国と伍していくこともできていた。ただ、02W杯本大会で日本はさらにレベルが上の問題に直面することになる。

トルコ戦で現出したそれは、「引いて守ってくる『格上』をいかにこじ開けるか」であった。

アジアレベルでは、敵DFの経験も、個人能力も戦術理解度もワールドクラスではなく、こちらが速く大きいパス回しを発揮していけば得点していくことができた。しかし、ワールドクラスのDFが、真剣勝負に向けてこちらを舐めることなくじっくりと研究し、一瞬のゆるみもなく集中して守り、さらに先制したことで引いて守るようになった場合はどうするか。これは、強豪相手の真剣勝負をめったに経験できない日本にとって、まさに未知の領域であったのだ。

ジーコジャパンはそれを受けて、その次の課題を解決するべく発足した、はずであった。


■ジーコジャパンの対アジア、対強国戦略

興味深いことに、ジーコジャパンの対アジア戦略は、これまで述べたようなものとはだいぶん違うものとなっていた。1次予選、アジアカップ、ホームのバーレーン戦、北朝鮮戦、アウェーイラン戦、対UAE戦と、一部の試合を除くとほとんどが「カバーを重視する守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」で勝ち抜いてきたのだ。それは、これまでの「引いて守ってくる格下相手に、いかにこじ開けるか」とは異質なものであったように思える。

向こうが引いて守ってくるなら、こちらも急がなければ少なくとも負けはしない」とでも言うような、いわば「守備としてのポゼッションサッカー」のような形である。これは西部謙司氏も言うように、「負けにくいが、得点も少ないサッカー」となっていた。選手たちはそれに飽き足らず、高目からボールを奪おうというような意思も見せていたが、それは散発的であり、チーム戦術として結実することは少なく、むしろ最終予選ではそのズレから危機に陥るようなこともあるほどだった。

この「守備としてのポゼッションサッカー」については、また考察できるポイントがいくらでもあるような、なんとも興味深い考え方なのだが、今はそれは置いておこう。

というのは、アウェーバーレーン戦において、日本はそれとはまたかなり違ったサッカーを繰り広げたからだ。中田ヒデと小笠原が強プレスを敢行し、そこからワントップのヤナギが作るスペースを、中村とともに突いていく。ポゼッションとダイレクトプレーのバランスの取れた、なかなか良いサッカーだった。それが、勝つためには引いてばかりはいられないバーレーン相手に、うまく「はまった」と言うことができる。

もう一つ、ヤナギのワントップにはトルシェ時代から、「パッサーをセカンドストライカーに変える」という効能がある。日本ではトップ下にパッサー(こういう単純な分類はいけないのだけど)が多いのだが、ワントップではそういうパッサーたちも「自分がフィニッシャーにならなければ」という意識が強くなり、FWと距離が近いところでプレー、追い越しも多くなる。結果ボールの持ちすぎが減り、前線でも人の「出入り」により、流動的なサッカーができるようになる。

以上の要因により、バーレーン戦は結果が出ると同時に、内容も良いサッカーができていた。これは、中田選手の復帰、小野の怪我などによる偶発的なものだが、ジーコ監督はその「流れ」を逃さないようだ。コンフェデ杯でもバーレーン戦の布陣を基準にすると報道されている。それは正しいと思う。

「ホーム・ディスアドバンテージ」から解き放たれ、選手を集めて話し合いの時間もじっくり取れているコンフェデ杯。ジーコジャパンはこれまでの対アジア用戦略とどれだけ違った内容のサッカーを見せるのか、それは世界に通用するものなのか。たまたまだが、ちょうど世界と対峙しなくてはならない時に日本はその萌芽をバーレーン戦で見せた。今夜はいよいよメキシコ戦、引いて守ってこず、ノーマルに戦いを挑んでくる敵には、良い内容のサッカーを見せてくれることを期待したいと思う。

それではまた。

04:45 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

June 15, 2005

2005後半へ向けて

多忙で北朝鮮戦後の更新ができませんでした。申し訳ない。

簡単に試合を振り返ると、日本が試合運びをうまくやり、完勝したゲームだったといえるでしょう。立ち上がりは、日本もアグレッシブに高めから(FW鈴木から!)ボールを追い回します。これはアジアカップの頃にはなく、2005年になってから時おり選手たちが試みるやり方ですが、荒いピッチに得意のグラウンダーのシュートパスが封じられていた北朝鮮にペースを握らせないためには、うまくはまりました。

前半20分を過ぎる頃から、敵がピッチにも慣れ、また日本が自らの連携ミスからみすみすペースを明け渡したこともあり、日本は前線からのプレッシャーを停止します。それとともに、立ち上がりやりもラインを深めにとる。この辺のメリハリ、使い分けがアジア相手にはできるようになったところが、このチームのよいところでしょう。

後半になると、日本、北朝鮮双方とも攻撃的に出ます。エルゴラッソでは黄慈権さんが「北朝鮮が攻撃的に出たのが残念だった」と振り返ってしていますが、これは「動き出しのいい大黒」を投入した日本にとって、思う壺でした。柳沢、大黒が2人で、あるいはスペースを使い、あるいはそこへ飛び出し、前線を大いに活性化させることができたのです。

1点目は、日本陣内のFKをすばやくスタート、稲本に渡ってそこからのロングフィードを大黒が競り合い、こぼれたところを柳沢がスライディングで決めたもの。これ以前にも後半17分の、中盤で奪ったダイレクトプレーからスペースに抜け出し、強枠内シュート!などのように、「シュートの意識の高まり」を感じさせていた柳沢。バーレーン戦での日本中からの願いが天に届いたのか、ついに「彼の日」(ヒズ・デイ)がやってきたのかもしれませんね。

2点目は田中が前に出ながら奪ったボールを、ダイレクトに前線に送ったロングパスから。北朝鮮が前がかりになったところをついて大黒が抜け出し、素晴らしいドリブルでGKまでかわして2点目!試合を、そして世界で最も早くW杯を決めた、見事なシュートでした。

この日、中田ヒデ、中村、三都主の出場停止を受けて、久しぶりの先発となったのは稲本と、中田浩二ですね。稲本はほとんどOMFのような位置に構え、敵の攻撃をすばやくチェックすることを狙いましたが、そこでの攻撃参加はそれほど機能したようには見えませんでした。まだ連携がこなれていないのですから当然でしょう。中田浩も、三都主に比べると攻撃面での貢献は物足りませんでした。ただ、彼らは前半の守備面ではそれなりに機能し、各所のサブの充実にの一助にはなったとは言えるでしょう。

まあもう、何と言っても、「W杯出場を決めた」ということだけで素晴らしい!ゲームでした。その上にこのような、「格の違い」を見せつける完勝です。日本も強くなったものだと、つくづく思わされる試合でしたね。しかし同時に、試合後に中田ヒデがいみじくも漏らしたように、「このままでは」W杯で勝ち抜いていくだけの実力があるわけでもない、ということも逆にまた見えてきた試合でもあったのではないでしょうか。

「カバーを重視する守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」という現実路線でアジアカップを制し、1次予選突破を決めた2004年の日本。そこから中田ヒデという偉大な「個」を組み込みながら、4バック、1トップ、バーレーン戦のヒデボランチ、などを試み、そして前からの守備やダイレクトプレーを選手たちが模索し続けた2005年。「このままでは」は、今年前半の選手たちにとってのキーワードでもあったでしょう。

私は、バーレーン戦で見せたような、中田ヒデと小笠原が主導する高い位置での守備や、ダイレクトプレー「も」織り交ぜたジーコジャパンが発展していけば、そして、何人かの中心選手が完調であるならば、2006年にGLを勝ち抜くことも可能であると思っています。もうすぐその絶好の試金石であるコンフェデ杯がやってきますね。楽しみに待ちたいと思います。

それではまた。

06:36 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

June 04, 2005

やった!リーチ!

Bahrainいやー、勝ちましたね。勝ち点3を上乗せし、これで次の北朝鮮戦に引き分け以上でドイツW杯出場が決まることとなります。ただ勝っただけではなく、試合内容もこれまでの予選の中では一番よかったのではないでしょうか?もちろんまだ緩んではいけませんが、本当によかったですね。選手、監督、関係者、サポの皆さん、お疲れ様でした。


■中田ヒデがリードする攻守の切り替え

私は、ペルー戦、UAE戦の苦戦の原因として、攻めが遅いことによる敵の守備組織のセットアップをあげたが、中田ヒデのボランチ起用、および小笠原の2シャドーの一員としての起用により、その点が大きく改善されていたのが目を引いた。

中田ヒデはもともと、「よい内容のサッカーができてこそ、勝つ確率が上がる」と考え、自分の考える「よいサッカー」の実現を強力に推進するタイプの選手。そのうちの一つが、「攻守の切り替えを速くする」「その際の判断、動き出しを早くする」というものだった。フランスW杯のころ、川口が「僕がボールをキャッチしてスローしようとすると、いつもヒデが誰よりも先に動き出している」と言っていたのをみてもわかるであろう。

バーレーン戦でも、中田ヒデが誰より先に動き出し、フリーになり、そこへ奪った選手からボールが入り、彼がドリブルや、パススピードの速い長めの縦パスでボールを前線に運び、敵が組織を整えないうちにチャンスを作り出す、という光景が何度も見られた。そして、1トップの柳沢と、前線に配置された小笠原が、それに効果的に絡んでいた。小笠原も、もともとダイレクトプレー志向、奪ったら早く攻めることを考えている選手であると思う。

よかったのが、その小笠原が1トップの下に入ったことだ。彼は2トップ下だと、自分がゲームをコントロールしようとするあまり、下がりすぎてしまったり、持ちすぎてしまったりすることが多いように見える。1トップの下、2シャドー(?)に入ったことで、「FWとの距離を開けてはいけない」と意識、それが効果的に働いていた。ゴールシーンも、彼が非常にFWの近くにいたこと、中村や柳沢がおとりの動きをしたことなど、この布陣のよいところが出ていた。


■ヤナギの1トップ

厳密には、シャドーというよりは2OMFという方がより適切だろうが、バーレーン戦では、1トップ2シャドーの布陣がなかなか機能していた。特に動き出し、状況判断のよい柳沢がトップに入ったこと、またそれを近くでフォローし、時に追い越していく小笠原と中村の動き、そして後ろから中田ヒデが攻守の切り替えをつかさどることで、スピードのある攻撃ができるようになっていた。

五輪代表時代から、柳沢のプレーは、体を張って自分でボールをキープするいわゆる「ポストプレー」というものとは少し違っていた。中盤のボールホルダーの状況をよく見て、いいタイミングで敵DFから離れるように動き出し、セミフリーでボールを受け、一瞬のためを作れるプレーなのだ。これがいわゆる「ヤナギダシ」というものである(笑)。

この「動き出しのよさ」は最近、大黒の登場でよくマスコミをにぎわせるようになったが、私などは大黒を「シュートの意識の高い柳沢」みたいだなと(笑)、最近は思っていたものである(昔はもっとドリブラーだった)。また例えば、オシム監督がジェフに連れてきたFWハースも、すすっと動いてセミフリーでボールを持ち、2列目から駆け上がってくるジェフの選手たちに落とすことが抜群に上手い、ジェフのサッカーに実によくマッチしたFWだと思う。

柳沢は、この動き出しによってボールを引き出すのみならず、その際に非常によく周囲が「見えている」という、ハースとも共通する特徴を持っている。情報収集力が抜群なのだ。それによって、キープするべきか、ダイレクトではたくべきか、誰に落とすべきか、どのタイミングで落とすべきか、などの判断が的確になる。いわば「最前線のゲームメイカー」のような仕事ができる選手なのだ。

今日も柳沢は、自身の絶好のシュートチャンスにもパスを選択してしまっておそらく日本中にため息を蔓延させたと思うのだが、それもこの「周囲がよく見えすぎる」という特質の故である。その特質があるからバーレーン戦では1トップがうまく機能したのだが、しかしそれにしても、もうちょっとシュートの意識を高めてもらいたいと思えてならない・・・というのは、もう何年くらい言っているだろうか(笑)。大黒はもちろん、ハースだって、君よりはもう少し選択肢の中のシュートのプライオリティが高いぞ。柳沢よ、ハースになれ!


■バーレーンはそんなに組織的?

試合序盤は、両チームとも慎重に入り、手の内の探りあいのようにスタートした。アウェーということもあり、日本がそうなるのは当然だが、バーレーンもやはり日本を警戒、下がり目のディフェンスを引き、そこからのカウンターを狙おうという意図を見せていた。フィールドはやや間延びし、バーレーンも特にプレスをかけてくるということもなかった。

記者会見で質問が出、シドカ監督が的確に答えていたように、バーレーンの敗因はやはり欠場選手の問題、そして選手個々がバラバラにプレーしてしまったことだ。人口が六十数万しかおらず、サッカー選手の人数も少ないバーレーン。ごく少数の有力選手の能力はアジアトップレベルに伍するところまで行くが、プロリーグもなく、代わりの選手はまったくいない現状、エースのA・フバイルの怪我による欠場、主力DFフセインの出場停止、サルミーンの負傷などで開いた穴は、埋めることができなかったようだ。

また、昨年のバーレーンの躍進はユリチッチ監督の作り上げたチームのものだったが、彼は3月に辞任し、現シドカ監督が就任した。時間がそれほどなく指導が徹底できなかったこと、選手たちが自国の躍進やスター扱いにより自信を持ちすぎたこともあり、日本戦では、選手たちがそれぞれに個人プレーに走っていた。それも彼らの大きな敗因の一つだろう。1vs1で日本に挑んできてくれれば、個の能力に勝る日本にとっては願ってもない試合展開となるわけである。後半の足が止まってからをのぞけば、安心して見ていられた方も多いのではないだろうか。


■球際のぶつかり合いで負けない「気持ち」

この予選での唯一の敗戦であるイラン戦後、中田ヒデは「敗因はシステム変更ではなく、1対1で負けていたこと」と語り、物議をかもしたが、このアウェーでのバーレーン戦で、その意味を自らはっきりと大きく描き出すようなプレーを見せた。それが球際での激しさ、粘り、絶対に後に引かないこと、などなどである。それはチーム全体に伝播し、実にアグレッシブに敵にぶつかっていく日本代表が、そこに出現した。これだ、これが欲しかったのだ

もともと中田ヒデも、小笠原も、OMFに起用してさえボランチよりも激しく当たり、ボール奪取率が高かったりする選手である。彼ら2人が中盤で並び立つこと、そしてその姿勢がチーム引っ張っていくことで、久しぶりに気持ちを前面に出して、「前から」敵にぶつかっていく日本代表を見ることができた。セーフティーを意識しすぎ、引いて「見て」しまうボールホルダー・ウォッチャーが消えた。これは非常に歓迎したい。

他のアジアとの戦いでも、イラン戦でも、どことはなしに「引いて守ればいい」と思っていたり、迷いながらプレーしていたりするように見えた日本代表だが、ここに来てついに吹っ切れたように思う。これを生むために必要だったのなら、キリンカップのあの2試合の、ちょっと情けない試合内容も、むしろよかったと言えるかもしれない(笑)。


■次は?

2位を争うライバル、バーレーンとの直接対決は、やや代償を要した。中田ヒデ、中村、三都主の3人が出場停止。小野も怪我でいないなか、これまでの中心である中村、バーレーン戦を引っ張った中田ヒデ、ジーコジャパンの左サイドで圧倒的経験値を持つ三都主の欠場はちょっと痛い。やややり方の変更を余儀なくされるかもしれない。

nkyosou1

継続して1トップでいくのなら、このような形だろうか?中盤でつないでくる、運動量のある北朝鮮には、バーレーン戦で見せたような1トップで対抗するのは「あり」だと今のところは思える。いずれにしろ、杉山茂樹氏じゃあるまいし、大事なのはフォーメーションではない。もっとも大事なもの、この日見せた全選手の「気持ち」があれば、北朝鮮から勝ち点1以上を上げることは十分に可能だろう。移動も厳しいが、あと少し、選手たちには頑張って欲しい。

それではまた。

08:05 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(7)|

May 31, 2005

顔を上げて、遠くを見て

UAEsidechange「UAE戦は、ボール保持率が高かったのだから、苦戦ではない。負けたのはカウンターだけ、運が悪かった」というような意見がある。

しかし、ボール保持率が高いことは、現代のサッカーでは必ずしも優位に試合を進めていることとはならない。セットプレーを除けばダイレクトプレーからの得点が大半を占める現在では、よくいう「ボールを持たされている状態」というものがある。むしろレベルの高い試合でも「ボールを持っているほうがピンチ」「ボール保持の押し付け合い」のような戦いが見られることがあるくらいなのだ。

決定力がもともとない日本。それが遅攻を強いられ、敵に帰陣されると、さらにシュートが難しくなる。この悪循環、まさに敵の思う壺にはまってしまっていることになりはしないか。

ただ、言うまでもないがポゼッションサッカーそのものが悪いわけではない。その中でもよい攻撃のできる、点の取れる方策を準備していく必要があるということだ。

遅攻の中でも点を取るためには、「攻撃参加人数を増やす」という手段が一つある。ジーコジャパンでアウトサイドの外側をCB(坪井や田中)が上がっていくのもその一つの例だし、UAE戦では小野と福西が「最低でもどちらか一人は必ず攻撃参加しよう」と話し合っていたという。確かにボランチ(特に終盤の小野)のあがりがチャンスを生んでいたところはあり、これは継続して行ってよいところだと思う。

ただ、攻撃に人数をかけるということは、敵も守備に人数をかけやすくなるということでもあり、Jリーグなどでもよく見られるが、「前線に人が渋滞してしまって、かえって点が入らない」というような状態も起こる。時としてシュートが味方に当たってしまうような、そんな事態は避けた方がよい。またむろん、こちらが多く上がっていけば、敵にカウンターのチャンスを与えることにもなる。この辺は勝ち点との計算で、じっくりとゲームプランを練っておかなくてはならないところだろう。

もう一つ、ポゼッションしつつ得点に結びつけるやり方が、「ボールを速く、大きく動かす」というものである

ペルー戦、加地の怪我を受けて三浦淳宏が右サイドで先発をした。彼のプレーで非常に印象に残ったのが、右でキープしてから左の三都主へ出した大きなサイドチェンジだ。日本代表では、こういうプレーを久しぶりに見た気がした。いうまでもなく、キープすれば敵の守備はそちらに集中する。そこから速く大きなサイドチェンジを入れると、逆サイドの選手にはスペースと時間が潤沢に与えられることとなる。

「チョップ、チョップ、アザーサイド」「ショート、ショート、ロング」というのは、これを常に心がけるべき、ということを示した基本中の基本なのだが、今の日本代表は、これがあまり行われていないように感じる。「チョップ、チョップ、チョップ、チョップ・・・・」なにか日本代表の試合は、そんなリズムで行われてしまっているような気がしないか。パスを大事にする、ショートパスをつなぐのはいいのだが、そればかりでは、敵陣は崩れない。ボールを大きく動かして、スペースを突いていくことを、もっと重視して欲しいと思う。

ここで興味深いデータがある。


90分平均のサイドチェンジ回数

18.2回 山本ジャパン通算
18.7回 ジーコジャパン
24.4回 トルシェジャパン

昨年5月のニッカンに載っていたデータ(6/3追記:当時は4ー4ー2が多かった)なので、その後多少の変化はあるだろうが、ジーコジャパンがアジアカップ、1次予選オマーン戦と、リスクを避けるサッカーに傾いていったことを考えると、サイドチェンジ回数の大きな変化はなかったのではないかと思う。

一目瞭然、見ればわかるとおり、山本ジャパンとジーコジャパンのサイドチェンジ回数は、ほぼ同数なのだ。これはどういうことを意味しているのだろうか。

ガゼッタさんがかつて山本ジャパンを評した通り、山本ジャパンの特徴の一つは「サイドにサイドの専門職をおく」というところであった(後期山本ジャパンが森崎をおいたのは、そこから脱していたが)。それは三都主、加地といった選手を、アウトサイド、(6/3追記:ないしサイドバックとして)配するジーコジャパンでも同様だ。それと対照的なのが、名波、中村、小野という、本来はインサイドのMFをサイドに配置したトルシェジャパンである。3-5-2のアウトサイドを「ミッドフィールダー」と捉える考え方だ。

これはもちろん、どちらが上と言うことではない。サイドの本職をおく場合は、やはりドリブルでサイドを突いていく、崩していく、という狙いがあるだろう。実際ジーコジャパンでも、そういうシーンは目にする。逆に、例えばキープ力やロングパスの正確さのある、もともとはインサイドの選手を起用する考えもある。その場合の狙いがまさに、ボールを速く、大きく動かして、逆サイドのスペースをついていく、という「サイドチェンジの多いサッカー」なのだ。

三浦淳は、もともとサイドの選手ではある(最近はヴィッセルでトップ下もやっているようだが)。と同時に、FKの名手でもあり、正確な両足のキックを持っている。いわゆる「香車」とはやや違ったタイプでもある。彼が入ったことで、ペルー戦では「サイドからサイドへの速く、大きなサイドチェンジ」が見られた(言うまでもないが、これはどちらの選手が優れているということではない。タイプの違いを論じているに過ぎない)。

ジーコジャパンの「ボールポゼッション・サッカー」は、「ゆっくりとした確実なキープから、隙を見つけてスピードアップして得点する」ということを狙いとしている。そこからなかなか得点できてはいないのだが、その狙いがピッチで見られないわけではない。ただ、「縦へのスピードアップ」だけだと、組織が出来上がっている敵の場合、「狭いところへ入っていく」ことになるのは否めない。いったんショートパスをつないでキープしたら、ルックアップして遠くを見て、逆サイドへ、スペースのあるところへ展開する攻撃もおりまぜて欲しいと思うのだ。

UAE戦では、ボランチの小野や福西から大きなサイドチェンジ気味のパスが何度か出ていた(冒頭の写真)。これはよいことだと思うのだが、問題はそれを受けたサイドの選手がスピードアップせずにまたキープしてしまい、敵につめられ、バックパスなどの選択肢を取らざるを得なくなってしまったところだ。サイド攻撃と言っても、じっくりと時間をかけた後、敵が中で準備して待っているところにセンタリングを上げても、なかなか得点になるものではない。


キープしたら、そこから速く、大きくボールを動かしてスペースを突こう。

サイドチェンジをスペースで受けて、そこから敵の体制が整わないうちにクロスを。

こういうプレーがもっと出てくると、ポゼッションサッカーからも得点につながりやすくなると思うのだが。

「決定力不足」はけして単にFWのシュート精度だけの問題ではない。守から攻への早い切り替え、動き出し、そしていったんポゼッションしたら時に大きく、速くボールを動かし、スペースを突いていくこと。チーム全体がこれらを意識すれば、改善されていくものでもある。ぜひバーレーンでは、チーム全体で連動して得点をあげ、勝ち点3を狙って欲しい。

それではまた。

10:26 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(4)|

May 28, 2005

今日は谷間の日(UAE戦)

UAE久しぶりの国立競技場での代表戦、代表を見続けてきたサポには、「聖地」でもあるスタジアムで、日本代表は敗れてしまいました。とても、残念です。しかし、キリンカップというタイトルこそかかっているものの、あくまでもこれは、最終予選前のシミュレーション。ここで落ち込まず、立て直して、バーレーンに向かって欲しいです。以下、簡単に感想を。


■ジーコ流「遅いサッカー」の結実

ペルー戦でもUAE戦でも、次のような意見があった。

「敵があれだけ引いているのだから、点がなかなかはいらないのは仕方がない」

いわゆる「攻撃のカタチはできている、後は決定力不足」という考えだろう。私はこれは「」であると思う。

久しぶりの国立競技場で見てきたが、日本で何より特徴的だったのが、「守→攻の切り替えの遅さ」だった。現代の、DFの能力が上がり、戦術も整備されてきたサッカーでは、いったん守りを組織されてしまうとなかなか点は入らない。そこで最も重要視されるのが、「ボールを奪った瞬間が最大のチャンスである」、という考え方、「守→攻の切り替え」なのだ。その瞬間なら、敵はまだ守備組織を整備しきれていない。そこでこちらの選手がいち早く動き出してその組織の隙間を突き、そこへ奪った選手から鋭いパスを送れば、それが最大の得点チャンスになるのである。

もちろん一発のパスでなくともよい。ボールを奪った瞬間に複数の選手が動き出し、そこへパスを送って攻撃を組み立てていく。ダイレクトプレー、カウンター、ショートカウンター、さまざまな言い方はあるが、それらを含めた「守→攻の切り替え」の早さ、それが現代サッカーで点を取るためにもっとも重要なことの一つなのだ。

思い出して欲しい。最近の日本代表でそのようなシーンはあっただろうか?

UAE戦でも、「奪った瞬間」に動き出しているのはUAE選手のほうだった。日本の選手たちは、本当にその瞬間に動き出さないのだ。味方が奪ったことに対して、おそろしく「アラート」でない。あの動き出しのいい大黒でさえ、最初のうち2、3回「奪った瞬間にDFの裏を狙う動き出し」を見せながら、奪った側の選手がすぐにゴールに結びつくパスを出さないのを見てとると、それを止めてしまったほどである。あの天才パッサー、小野がボールを奪ってさえ、日本の選手は誰一人動き出さないのだ!

先の文言はこのように言い換えられるべきだろう。

「敵にあれだけ引く時間を与えてしまっているのだから、点が入らないのも無理はない」

uae2実際、後半途中までのUAEは、けしてジーコが会見で言うような「べた引きからカウンターを狙う」チームではなく、比較的高い位置でゾーンディフェンスを引いていた(クリックすると大きな写真になります)。むしろ「セーフティーに、8人で守れ」と言われた宮本たちの守備位置のほうが低かったくらいである。それなのに、日本の攻撃が決定的になる頃には、ペナルティエリア内には敵DFが多く帰陣し、シュートに体を投げ出していた。なぜなのか?

それが「守→攻の切り替え」の遅さ、あるいは、攻撃する時の、攻撃自体の遅さによるものなのだ。敵にわざわざ帰陣する時間を与えていることの結果なのだ。

UAE戦のようなポゼッションサッカーが悪いと言っているのではない。奪った瞬間にも敵に隙がないときはある。その場合はしっかりつないで攻めていくことも選択肢だろう。しかし、そればかりでは厳しい。特に中盤の選手たちは、奪ったらすぐに前線の隙を探すことに、ある程度プライオリティを置いて欲しいと思うのだ。そうすれば、勝つために出て来ざるを得ないバーレーンである、点を取ることを「決定力の問題」だけにしないで済むだろう。ただ、中盤で奪うための組織ができているかどうかという問題は残るが・・・。


■失点の原因はカウンターなのか?

失点シーンを「一発のカウンターでやられた」と表現する人がいる。ペルー戦については、まさにそうだったと言えると思う。しかし、UAE戦に関して「一発の」と言うのなら、それもまた間違いであると思う。

失点シーンの流れは、日本の中盤でのパスがミスになって、UAEの8ムバラクに入ったところから始まった(この辺は、発汗さんの分析に詳しい)。日本のDFラインはさささーっと下がってしまう。中盤にぽっかりと大穴があく。ムバラクに対しては加地と福西がルーズマーク、どちらかが当たりに行くということもなく、ムバラクは余裕を持ってボールを運ぶことができた。

ムバラクから前線のフリーの11ハリルにクサビのパス、これに対してあわてて田中と坪井がプレッシャーをかけに行く。後ろから田中に寄せられながら、ハリルはムバラクにパスを戻す。この時には8アロ・アリがフリーランニングを開始している。フリーで(一応横を福西が併走しているが、見てるだけ)、戻しのパスを受けたムバラクはアロ・アリにスルーパス。一瞬ハリルにプレッシャーをかけに行っていた坪井は戻りながらアロ・アリにつこうとするが、競争に負け、失点。

ボールを奪ってからきれいに4本のパスがつながって、ポストとフリーランの選手を活用しての得点。これを「一発のカウンターでやられた」というのは、やはり違うのではないか。「攻めていたのだから、カウンターをされて数的不利になっても仕方がない」というシーンでは、まったく、まったくなかったのだ。問題はこの時の、ムバラクを完全にフリーにしていた中盤の選手たち、ぽっかりと大穴を空けた組織、1トップのハリルのポストに誰が対応するかがあいまいだった点、などなどにあるというべきだろう。

中でも、もっともこの日の守備を象徴していたと思われるのが、「ムバラクを完全にフリーにしていた中盤の選手たち」だと思う。このシーン以外にも、敵中盤のボールホルダーに対して誰もアタックに行かず、「見ながら」下がり続け、結果フリーでプレーさせ、そこを起点にしたパスでDFが攻撃側に対して数的同数になったりする危機がたびたびあったのだ。

特に後半(の失点シーンよりも前)は、UAE選手がおそらくハーフタイムにそう指示をされたのだろう。中盤の選手がフリーでボールを持つたびに前線の選手がフリーランを開始して、そこからシンプルに攻撃をくりだしていた。この、恐ろしいほど敵の中盤の基点をフリーにしてしまう癖は、どうしてついたのだろうか。

私はそれは前日、ジーコ監督が「ボールより後ろに8人いて守るように」という指示をした結果ではないか、と思う。

そもそも、DF時にボールホルダーにアタックに行くのには、「勇気」が必要なのだ。「もしここで自分が抜かれたら」という意識が、どうしてもでてくるものだからだ。しかし、それでは守備は下がり続け、最後は自陣ゴールに入ってしまうから(笑)、その前に誰かがアタックに行かなくてはならない。その時必要になるのは、「自分が抜かれても後ろがいるから大丈夫だ」という「組織への信頼感」というものだろう。それがあるから、個人としてはある種リスクチャレンジである、中盤でのボールホルダーへのアタックを仕掛けていくことができるのだと思う。

しかし、ジーコジャパンの守備時の指示は、「かならず一人余れ」「セーフティーに」というものだった。しかも、それを具現化するための守備練習、戦術練習は非常に少なく、選手同士が「慣れ」で連携を作っていくしかない状況。それが「敵がボールを持ったらさーっと下がってしまうDFライン」を生み、組織への不信につながり、「後ろが気になるからアタックに行かないボランチ」を生んでいるのだ。その結果が、中盤に大穴がぽっかりと空くことにつながっているのは以前にも指摘したとおり

そしてさらに、今回の「ボールより後ろに8人いて守るように」という指示。これによって中盤の選手たちも、「セーフティーに」「下がって対応しなくては」という意識を植え付けられた。多くのシーンで、ボランチも、アウトサイドも、ボールホルダーに対しては(こちらが複数で囲んでいても)ルーズマークしかしない、ある意味「ボールホルダー・ウォッチャー」になってしまっているのだ。奪いに行けばかわされる可能性がある。奪いに行かなければ、かわされない。「かわされないこと=セーフティー」と、組織のできていない中では、選手たちが思ってしまっても無理はない。

失点シーンはまさにその、ルーズマーク・ボールホルダー・ウォッチャーが連続して起こったことによるものだ。そこをUAEの選手たちが見て取り、するどく狙ったことによるものだ。けして「カウンター一発でやられてしまった」ものなどではないのだ。日本の選手たちも、そこは肝に銘じておいたほうがいいだろう。そして、バーレーン戦までには、もう一度「誰がアタックに行くか」の意思統一を、選手たちの間で行っておくことだ。組織が変わる可能性はなく、それしか向上できるところはないのだから。


■それでもバーレーンには勝つ

大丈夫。宮本が言うように、日本には、「ホーム・ディスアドバンテージ」がある。ホームでは観客の声援に押されて攻め急いでしまう。それがむしろ、焦りを生み、悪い結果につながってしまうのだそうだ。バーレーン戦はアウェーである。「ホーム・ディスアドバンテージ」はなくなる。敵が攻めてきてくれたほうが、日本には都合がよい。大丈夫、勝てるだろう。

もう一つ、ジーコジャパンは「機能共同体」ではなく、「親族共同体」である。このような、何もかかっていない親善試合ではその力は発揮されにくい。「家族は危機に陥った時こそ、その最大の力を発揮する」ものではないか。むしろ、この2連敗という危機からこそ、ジーコジャパンは雄雄しく復活するのだろう。

問題は、この2連敗でチーム内の自信が崩れ、自分たちのやり方、やってきたことに対して疑問、不信がわきあがったりした場合である。その時、この集団は家族でいられるか。選手同士、問題点について「共通認識を持って」話し合いができなくなったらどうするか。「あそこはこうするべきだろう」「いやそれは違うだろう」・・・。ネガティブな話し合いは、バラバラになる危険をはらむ。その時の交通整理は、これまではおそらく長男たる藤田の役割だった。今、彼は代表には選ばれていないのだが・・・。

いずれにしろ、ジーコジャパンの再生は、今度こそ選手たち、特に長男たちに托された。ジーコは一つだけ正しいことを言った。ことここに至れば、もう選手たちを応援するしかない。選手全員が副官たる自覚を持ち、時間のすべてを費やして、話し合い続けて欲しい。がんばってくれ、ジーコジャパン!

それではまた。

03:08 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(5)|

May 23, 2005

キリンカップペルー戦

sakura2事前に聞いた、20日前に監督交代したてのチーム、南米予選のサブにも入っていない選手たち、といううわさよりも、ペルーはずっとよい戦いをしてくれましたね(実は監督本人は、就任3日目と言っているようですが)。

TVの中継で言っていたように「ここで活躍すれば(これまでのレギュラーを差し置いて)予選にも呼ばれるかもしれない」という、テルネロ監督による競争意識の植え付けが、ペルー選手たちのモチベーションをずいぶんと高めていたように見えました。

また、初代表がほとんどとは言え、ペルー選手一人一人は、さすが南米、というところを見せてくれました。フィジカル・コンタクトもうまく、技術もそれなりに高く、足元に入ってしまうとなかなかボールが取れなくて、キープされてしまいますね。そして、カウンター一辺倒ではなく、ショートパスをつないで攻めようとし、実際ペルーペースの時間もかなり長く作ってきました。時間がなく、チームはまだまだできていなかったでしょうが、スパーリングとしては、なかなかよいマッチアップとなったと言えますね。


■立ち上がり~前半

立ち上がりからペルー選手は寄せが早く、日本はなかなかボールをつなげません。「立ち上がりこそ一番危険」という共通認識の下、まずは日本に主導権を握らせないために行われたものでしょう。この辺はやはり南米の選手、狡猾というか、サッカーを良く知っていますね。

途中からだんだん日本もそれに慣れ、プレッシャーをいなせるようになり、そうなるとペルーも引いて守るようになります。日本人選手よりも大きく、個人DF戦術も、DF技術も高い選手たちがああやって集中して守っていると、なかなか得点は入らないもの。これは、バーレーン戦に向けていいシミュレーションになりました。

日本は2トップと小笠原の動きがちぐはぐだったでしょうか。FWが2人とも左右に流れてしまうと、小笠原もパスの出しどころがなく、戻さざるを得ない。ボランチやアウトサイドも含め、なかなか攻撃を形作ることができない時間が続きました。いつもの彼らしく果敢に一対一に挑んでいった三都主ですが、南米でああいうドリブラーをたくさん見ているであろうペルーDFにはなかなか通用しませんでしたね。

前半は、ペルーも時々ペースを握り、一進一退の攻防。無得点でしたが、右サイドに回って先発した三浦選手が、少し目立っていましたね。縦に行ってクロス、中に切り込んでシュート、時に三都主まで届くサイドチェンジ。加地とは違った持ち味を出していて、オプションとしての幅の広がりを期待させるものでした。また遠藤と福西のバランスも悪くなく、遠藤のこぼれだまに対する嗅覚はなかなかのものだったと思います。


■後半

さて、後半。8分に玉田が傷んで大黒と交代。大黒はおそらく予定より長いチャンスをもらったことになります。ここでチャンスをつかめるか?

やはり大黒のすばらしい動き出しは健在で、うまく体を半身に置きながら細かくステップ、一瞬ごとに体の向きや進行方向を細かく調整することで、自分の周囲にほんのちょっとのスペースを作り出す。それにボールホルダーが気づいてくれると、一気にゴールへ向けて加速することができる。小野や小笠原と合いそうですね。今後が楽しみです。

大黒の動き出しを基点に、そこから攻撃が活性化した後半の日本。しかし、ペルーもそういう時にまた試合巧者振りを発揮します。そう簡単に日本のペースを長くさせない。

そこへ、さらに、これは「テスト」ということでしょうが(笑)、稲本が福西に代わってピッチへ。稲本は持ち味のミドルパスと、力強い前進でチャンスを作り出します。これに三都主、三浦が絡んで、日本は重層的な攻撃を繰り出す。しかし、最後の瞬間に体を張って守るペルー。スパーリングとしてはとてもありがたい状況です。さすがに南米、バーレーンの守備はこれほどではないでしょう。

ロスタイム、5分。これは審判、日本に「点取れ」と言ってくれてるのでしょうか(笑)。日本は人数をかけて攻め上がります。三浦淳のロングスロー、こぼれを田中が放り込む、稲本それに競り負け。そのこぼれがペルーの選手へ。彼はドリブルでボールを運びます。日本DF3人、vsペルー選手3人!バランスを崩したことにより、数的同数のピンチが生まれてしまいました。

こぼれを拾ってドリブルする選手は、(日本から見て)右気味に位置する10番(だと思ったんだけど、どこを見ても22番チロケって書いてありますね)にパス、その外側を駆け上がっていく。(こういう「ボールのない時の動き」、今日のペルー選手では初めて見た!)10番(私的には・笑)の前にいた宮本は、その上がっていく選手のケアのために後退します。10番(22番?)には、田中がルーズマーク。

(日本から見て)左気味に走った9番は坪井がケア。しかし、10番(22番?)が一瞬の隙を突いて、9番バサージョの前、ペナルティエリア内にパスを流す。坪井はその一瞬、9番に先を行かれ、シュートを許してしまう。アウト気味にかけた、前に出ようとした川口の鼻先を抜く技ありのシュート!

失点。

まあこの3人で組むのは、久しぶり(初めて?)。中澤が言っていたように、一人が代わると作り直しになるジーコジャパンです。連携も構築途上だし、カウンターも上手かったし、いい授業料というところでしょう。これを教訓に話し合って、バーレーンにやられなければそれでいいですよね。まあ、バーレーンの選手もカウンターがうまいですが、これはあくまでも強化試合、ここで教訓を得て、さらに修正していければそれでいい。


■今後へ向けて

日本は、格好のスパーリングパートナーを得つつ、アジアカップに比べるとコンパクト志向が明白で、プレスもかけようとし、攻撃もサイドチェンジやワンタッチパスを織り交ぜる、DFラインもゾーン気味で行ってみる、など、バーレーン戦や北朝鮮戦に向けて内容をよくしていこうという意思がはっきりしていましたね。そういう点は良かったと思います。

ただ、いかんせん攻撃が足元、足元で遅いために、クロスを上げる頃には中央に敵DFがしっかりと布陣を引いて待っている。あれではなかなか、こういう相手から点を取ることは難しいように思います。しかし、そのやり方はもう変わらないでしょうから、これでも点を取れる方策を考えなくてはいけない。一つはファウルゲットからセットプレーというものでしょうが、もう一つは大黒のような「一人でスペースを作り、使う」という動きかもしれません。

UAE戦では、今日でた課題の解消をして、しっかりと勝ち、いい準備につなげて欲しいですね。

それではまた。

01:24 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(6)|

May 12, 2005

日本代表スケジュール

前回の記事をフル代表だけのものに直して、コンフェデまでの週単位で書いて見ました。

MON TUE WED THU FRI SUT SUN
          J1 5/15 プレミアリーグ終了 J1
5/16 5/17 代表合宿?       5/21ブンデスリーガ終了 5/22キリンカップ ペルー戦 オランダリーグ終了
5/23       5/27キリンカップ UAE戦   5/29 セリエA終了
5/30       6/3アジア最終予選 vsバーレーン    
6/6   6/8アジア最終予選 vs北朝鮮        
6/13     6/16コンフェデ杯 vsメキシコ     6/19コンフェデ杯 vsギリシャ
6/20   6/22コンフェデ杯 vsブラジル        

・ 5月22日の時点では、ドイツ、オランダ、イタリアの各リーグが終わっておらず、場合によってはペルー戦には、高原や小野も間に合わないかもしれない。

・ キリンカップvsUAE戦後、アウェーでのバーレーン戦までは一週間。現地での合宿をどれだけ取れるか。移動を考えるとかなり慌ただしい。

・ バーレーン→タイ(中4日)という強行軍のあと、1週間で再びコンフェデ(@ドイツ)にいかなくてはならない。アジア予選突破が決まっていたら、この辺から新戦力登用かなと思っていたけど、このスケジュールでは無理かもしれない。

・ コンフェデはいつものように、中2日で3連戦(以上)という厳しいスケジュール。強行軍の後のこのタイトな日程だから、5試合(予選2試合+コンフェデ3試合以上)を同じメンバーで戦い抜くのは無理がある。さすがにこの辺ではプチ(でなくてもいいけど)ターンオーバーを視野に入れておいたほうがよいだろう。

ということがこの日程表から見えてきましたね。

特にコンフェデは、夏場に中2日で3連戦というのは、本当はサッカー的には「あってはならない」スケジュールではないでしょうか。まあドイツは比較的涼しいのですが、各国リーグ戦的にはオフシーズンでもあります。世界的に優秀な選手のスケジュールがどんどんタイトになってきている現在、FIFAは率先して「選手を守る」ことを考えるべきではないかと思います。

そしてdorogubaさんがおっしゃっているように、日本代表監督にももちろんそれを考えてほしいですし、ある程度は選手が自分でも考えるべきだと思います。ほんとうに彼らには厳しい日程ですが、何とか、なんとか大きな怪我などなく、乗り切ってほしいものです。

それではまた。

11:03 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

April 17, 2005

副官発見!

sakuraやはり最終予選は日本サッカー界全体が非常に盛り上がるイベントのようで、さまざまなメディアに選手、監督のインタビューが雨後の竹の子のように(笑)出てきていますね。私は、以前に書いたように「ジーコ監督に(守備担当の)副官をつけるべき」という「要副官論者」になったのですが、最近の記事群、インタビュー群を読んでみて、考えを改めようかな、という気になりました。以下にその理由を書いてみたいと思います(堅い話になるのでコラム文体で書かせていただきます)。


■ジーコジャパンの守備戦術(中澤インタビュー)

まず気になるのが、J-KETでも話題になった、北朝鮮戦後の季刊サッカー批評26号での中澤インタビューである。中で中澤は次のようなことを述べている(私の要約なので、漏れがあったらお許し願いたい。興味のある方は原本にぜひ当たって欲しい)。

:チームとして組織的にディフェンスするベースがない。だから海外組が帰ってくるとバラバラになってしまう。
:国内組だけなら、時間をかけているので連携ができてくる。
:時間がないのをカバーするのが戦術だと思う。
:選手主体で、選手が固定されているから、新しく誰かが入るとまた一から作り上げなければならない。
:戦術というのは困ったときに戻る場所。強い相手と戦うときや苦しい場面では戻る場所が必要になる。
:チームとしての意思統一という部分では、北朝鮮のほうが明確だったのは認めざるをえない。
:最低限のルールは必要。日本代表選手はその最低限のルールでもできるレベルの選手じゃないといけない。

その他にも、オフェンスや「自由」に関してなど、興味深い発言もあるのだが、とりあえずDF戦術に関するものだけを抜き出してみると以上のようなところだろうか。これらは、私も以前に同じように書いている(2003コンフェデ後)(2003東アジア選手権後)が、つぶさに日本代表を見てきたものにとっては、特段目新しいことではない。現在の日本代表のディフェンス組織に、あるいはその作り上げ方に、いくらかの問題があること、それを選手も感じ取っていることは、いまさらながら認めざるを得ないだろう。


■時間がないのをカバーするのが戦術

余談だが、(3)の「時間がないのをカバーするのが戦術」という見解は興味深い。全文を引用すると

インタビュアー:国内組だけなら解決できているということですか?

中澤:合宿、紅白戦、練習試合と、ずっと(一緒に)やりますからね。だから国内組では誰かがボールにアタックしたら、後ろはこういうふうにカバーする、といったことがわかってくる。でも海外組の場合は(試合の)2日前くらいに合流して、そこでコミュニケーションとって、いきなり試合をすることになるわけで、それではやはり伝えきれない部分も絶対出てきます。だから『どうするんだっけ?』という部分がたくさん出てくる。
 時間がないからしょうがないですけど、そこを埋めるのが戦術だと思う。時間がないことをカバーするのが戦術だと思う。これだけ長い時間やっているのだから、10のうち5くらいはみんなが共通認識を持ってやってなきゃいけないと思うんですけど……。

これが興味深いのは、以前から巷間よく耳にした「今の日本代表は海外組が増えて時間がないのだから、ジーコのような戦術を整備しないやり方でも仕方がない(戦術整備は時間がかかるから)」という意見に対する有効な反論となりうるからである。私も以前に、「戦術整備型とセレクト型の監督がいるとして、戦術整備型のほうが時間がかかるというのは本当だろうか?」という問題を提起したことがあるのだが、またぞろ同じ疑問がわきあがってきた。

考えてみれば、トレーニングによって全員に戦術の徹底をしてあれば、それは「一回作り上げれば、次からはそこへ戻ればいい」ものとなるだろう。新しいメンバーが入っても、同様のトレーニングである程度同じ戦術を理解できることになる。いわば基準点ができるわけだ。例えば、2003コンフェデでいい試合展開をできたのであれば、後はそれをベースにして再現/向上していけばいい。しかし、選手が話し合ってその都度連携を作り上げる場合は、それとは違い、新しい選手が一人入るたびに話し合いの時間が必要になる。それがまさに今回のイラン戦で起こったことではないだろうか。

お断りしておきたいのだが、これは別段ジーコ批判ではない(笑)。純粋に「トレーナー(戦術整備)型は時間がかかるというのは本当か?」という知的興味である。一般論としては正しいように見えるその考えも、代表監督という仕事の特性を考えると、また違う見方もできるのではないか、と思うのだ。次の代表監督を選ぶ時には(笑)、中澤の発言も是非参考にするといいのではないだろうか。

閑話休題。日本代表の守備組織の問題点に話を戻そう。


■アジアカップ・スタイルか、否か(イルレタ・インタビュー)

次に興味を引かれたのは、SPORTS Yeah!誌114号の、ハビエル・イルレタ氏(デポルティボ・ラコルーニャ監督)のインタビューである。まず彼は小笠原のプレーを絶賛した後、

W杯予選のような試合で、無闇にラインを上げるのは難しい。私はミヤモトのプレーは気に入った。彼のフィードはいい。ラインコントロールも上手い。よく声が出ているし、自信を持ってプレーしている。彼のようなDFがいるからこそ、ジーコは3バックを選択しているんだと思う。システムというのは選手ありき。確かに3バックは欧州では主流じゃないが、だから4バックがいいというのは間違っている。

と語っている。これは私も非常に同感だ。私はもともと「アジア最終予選もアジアカップのやり方でいいのだ」と思っていた。プレスの整備ができない状態で、不用意にラインを上げる必要はまったくない。また、宮本がほめられたのもとてもうれしい(私は宮本ファン・笑)。そして、3-4バックの問題については、杉山茂樹氏にイルレタ氏の意見を聞いてもらいたいぐらいである(笑)。

その後、北朝鮮の攻勢が強まり日本がずるずる下がったあたり、記者が「あるいはジーコが何らかの手を打つべきだったのではないか」と質問したのを受けて、イルレタ氏は

フットボールにはルールがある。 相手が総攻撃を仕掛けてきた時に、流れを変えるのは難しい。北朝鮮は負けないためには攻めるしかなかった。日本は勝つために、守らなければならなかった。メンタルの差が出た。おそらく、ハーフタイムで北朝鮮の選手は軍隊長にケツを叩かれたんじゃないのかな(笑)。

と冗談めかして言った後、

確かにゴール前に張り付くだけでは、いつか失点する。それもフットボールの定石だ。あるいは日本は押し上げるべきだったかもしれない。だが、プレスの意識を根付かせるためには訓練が必要になるし、まずはその仕事をできる選手がいなければならないんだ。フィジカル的に非常に強靭な選手が必要になるね。前からボールを奪いにいくのもいいが、疲労は激しい。(中略)
だから、ジーコはあえて深く守り、カウンターを狙ったのではないか。彼の決断は極めて論理的だった。

としている。これも私はいちいち同感なのだ。

プレスの意識を根付かせるためには訓練が必要になる」―――まさにそう思う。しかし、ジーコ監督はこの3年間でそれができなかった。そういう訓練をするメソッドを持った副官が欲しいな、と私が思うゆえんである。

まずはその仕事をできる選手がいなければならないんだ。フィジカル的に非常に強靭な選手が必要になるね。」―――Jリーグにはそういう選手もいるのだが。ジーコジャパンにはあまり選ばれていないのだ。

だから、ジーコはあえて深く守り、カウンターを狙ったのではないか。彼の決断は極めて論理的だった。」―――これも同感。あの状況では、アジアカップ・スタイル「カバーを重視する守備、個人能力、セットプレー、そして落ち着き」で行くことで間違いではなかった。ただ問題は、そういう状況でありながら、アジアカップとは違い、中盤から前がプレスのために前進しすぎ、後退するDFラインとの間のスペースを明け渡してしまっていたことなのだ。

この後イルレタ氏は、ジーコ監督の采配を賞賛し(私もあの試合の選手交代策はロジカルなものだと思った)、「きっとW杯には行けるさ」と記者の肩をぽんとたたいたそうである(笑)。

以上のように、このインタビューは、私の意見「アジア最終予選では、無理してプレスを狙ったりせず、アジアカップ・スタイルで慎重に戦えばいい」からみても、「まったく同感」と言えるようなものだった。しかし、カザフ戦、北朝鮮戦の序盤と、中盤から前線の選手たちは「前からの守備」の傾向を強めていき、それは中田選手が入ったイラン戦やバーレーン戦でも続いていた。プレスに行く前線と、引いてしまう最終ライン。最終予選を戦いながら浮上してきたこの問題は、今後解決できるのだろうか。そのためには、副官が必要なのではないだろうか。

そういう意味では、問題視された中田ヒデと福西の話し合い(口論?)も、私はポジティブに捉えている。ヒデは、より前線からのチェックを要求するだろうが、現状の下がるDFラインでそれをやりすぎると、どこかで大穴が空いてしまう(ヒデとプレス)。ボランチの一人は、バイタルエリアを空けないことを優先する方が合理的だと思う。それをDFラインと福西で確認できているのは心強い。そしてまた、それをヒデにもきちんと伝えられたこともポジティブだろう。ただ、本当は監督がそれをしっかりと指導するべきだと思うのだが、話し合いの場からジーコ監督が去ってしまったというのは少し残念ではある。


■副官発見!(中澤インタビューその2)

さて最後に、サッカーマガジン1022号における、福西と中澤のインタビューがある。その中では、イラン戦とバーレーン戦に臨む選手たち、チームに起こったことが、しっかりと描写されている。気になるのが、練習試合で渡されたビブスではじめて4バックでやることがわかった、という状況の問題である。

福西:不安はありませんでした。ただ、ドイツでの練習試合(3月20日、対マインツ05アマ)でいきなり4バックになったことで、戸惑った選手はいたかもしれません。

インタビュアー:ビブスを渡された先発組の顔ぶれで4バックでいくということがわかっただけで、4バックでどう戦うのかの説明があったわけではない。

福西:はい。

私は、イランに対して4バックをひいたことには問題視するつもりはない。イランとの相性の問題もあるし、ジーコ監督が「これまでも4バックでうまく行っているから」と考えるのも、(私と意見は違うが)かまわないと思う。しかし、久しぶりの4バックスタートである。やはりそこに、意図や狙い、敵に対する対処法などに関して、簡単でも説明があってしかるべきではないだろうか?それがなかったことで、選手たちがやはりやや戸惑った部分があるのは否めないだろう。中澤は言う。

中澤:別にシステムとして4バックというのはいいと思います。それでやることに問題はない。でも、いきなりだったですからね。これまで長い間3バックでやってきたし、結果も出してきた。慣れということもある。いきなりだから、約束事といっても二つか三つしかできないよ、みたいな感じだった。

冒頭のインタビューと合わせて読むと(まあ本当は読まなくても)、ここでいう約束事とは、「選手同士が、プレーしながら、顔を合わせて話し合っていくうちにできてくるもの」のことであるとわかる。とすれば、それを作るのにある程度の時間がかかるのは当然であろう。そして、新しい選手(中田ヒデ)が入り、フォーメーションもやや変わったイラン戦では、その時間が絶対的に足りなかったのだ。そして中澤は、

中澤:真ん中に二人しかいないから、前に当たりに出て行くわけにはいかない。だからサイドはサイドで止めてくれということになった。アツさん(三浦)とか俊輔(中村)とかと話をしたけど苦しかったですね。4バックでやるならやるでもっと戦術の練習をやりたかった。シュート練習の時間を割いてでも。

と自分の考えを話している。ここを読んで私は「あっ」と思ったのだ。

「4バックでやるならもっと戦術の練習をやらせて欲しい。シュート練習の時間を割いてでも。」

それをジーコに言えばいいじゃないか、中澤!

ジーコ監督は選手を最大限に尊重する。細かいことは言わず、それは選手同士の話し合いに任せている。そこで自主的に出てくる約束事に任せている。ならば、選手はそれをやりやすい環境を、いっそ練習メニューさえ、練習時間の使い方さえ、監督に要求してしまえばいいじゃないか。いや、するべきなのじゃないか、ジーコジャパンでは。

「シュート練習よりも、守備の戦術練習をしたいですよ、監督」
「今日は紅白戦でいいけど、AチームとBチームで同じ戦い方でやってください、監督」
「プレスの練習メニューはこうしましょう、監督」

2003年コンフェデ杯ごろは、話し合いのリーダーシップを中田ヒデや宮本がとっていたことで、「中田監督」「宮本監督」という揶揄の言葉がサポの口に上っていた。しかし、むしろ「そのほうがよい」「そうであるべき」なのではないだろうか、ジーコジャパンは。それが代表監督として適切なのか、効率的なのか、それで日本代表が強くなるのか、それはもうここでは問わない。最終予選の最中にそんなことを問うている時間はない。それはそれとして、現状のやり方で行く以上、選手一人ひとりが監督、コーチの領分まで食い込んで、自分たちのやりやすいやり方を主張していくべきなのじゃないか。

私は「要副官論者」になろうかと思っていた。ヒデの復帰によるプレスの再構築と、これまでの経験を生かした下がっていくDFラインの関係、これをうまく止揚していくには、プレスの訓練に長けたジーコ以外の指揮官がどうしても必要ではないかと思えたからである。しかし、なかなか適任者がいない、またジーコがそれを受け入れるとは思えない、という問題があった。実際、協会も動いていないように見えるし、アウェーのバーレーン戦までの短い期間で副官就任を実現するのはほとんど無理だろう。では、どうするか。その答えが、ここにあるのではないだろうか。

「選手たちよ、君たちこそが『副官』だ!」

自分たちでどんどん話し合い、考えをまとめ(もちろん選手一人ひとりばらばらじゃダメだが・笑)、それをジーコ監督にぶつけていけ。フォーメーションも、守備の、プレスの連携も、自分たちで決め、作り上げていけ。そのための時間をジーコが取ってくれないなら、練習メニューの変更さえ要求してかまわないはずだ。場合によっては、君たちがクラブでやっている守備の練習のメニューを導入したっていい。そうやって、選手たちみんなが「副官」になる。それが正しいはずだ。「選手がやりやすい形を最大限尊重する」・・・それがジーコ監督のやり方なのだから。

あとは選手ががんばるしかない。そういう趣旨の文章を最近よく目にするように思う。私も同じことを書いているようだが、しかし、少し違う。それこそがジーコの望んだ形であったはずだ。イラン戦からバーレーン戦へ、フォーメーションの変更について、選手からの要求を出すことはできた(ジーコ監督は選手からの要求がなくても戻すつもりだったと言っているが)。それよりも、もっと先へ行け。選手全員が副官たれ。それがジーコジャパンが、あと一段進化するために必要なことなのだと思う。

それではまた。

09:08 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(3)|

March 31, 2005

一安心2(バーレーン戦)

勝ちましたね!
サルミーン、ありがとう!・・・というのは冗談ですが(笑)。

選手、監督、関係者の皆さん、このなんとも大変な強行軍、本当にお疲れさまでした。
プレッシャーもさぞや大きかったことでしょう。
きょうはゆっくり休んでください。

順位チーム試合得点失点得失勝点
1 イラン3 21 0 4 1 3 7
2 日本 3 2 0 1 4 3 1 6
3 バーレーン31112 2 0 4
4 北朝鮮 3 0 0 3 2 6 -4 0

前半の試合内容はちょっと不満の募るものでしたが、後半にかけて改善されましたね。

やはり中田ヒデが入って2試合め、予想どおり次第にプレスを再構築し始めていますね。それが各所に現れていました。その上ヒデがボランチにいるわけで、カウンターのケアも読みの良さを生かして(福西ともうまく分担して)ばっちりでした。

前半は「慎重に行こう」という打ち合わせでもあったのでしょうか?やはりカウンターを警戒してDFラインが低い。また攻撃面でも、福西が上がらない、加地や三都主の攻撃参加のタイミングも遅い。下がってポストに入ろうとする高原や鈴木はほとんどファウルで止められる。なかなか攻撃が機能しませんでしたね。本当はこういう試合は、前線でゲームメイクできる柳沢を入れておくと効果的なんですけどね。

まだお互いに慣れてないから仕方がないですが、ヒデと中村選手は生かしあうところまで行っていない感があります。そのせいで、どこが攻撃のスイッチなのか、チーム全体がわからないでいる感じ。中村だけの時は、彼に入った時が「最終チャレンジの合図」というような共通認識があるような、いっせいに動き出す時があったりしたのですが、ヒデもいるとそうもならない。どうしても攻撃がノッキングし、スムースに流れていかない。そうなると、シュートに至る流れが作れませんね。特に前半は、きれいににやろうとする意識が強すぎたのかな。うまく行きませんでした。

後半になって、いきなりの三都主の上がりでもわかるように、両サイドをどんどん高めに持っていくようになりました。そしてそこへ早めにボールを入れて、どんどん個人で勝負していく。これだ、と叫んでいました(笑)。

ジーコジャパンは、どうしてもみんな足元でもらいたがるから、ヒデがやりたいような「連動した攻撃で敵をこじ開けていく」のは、かなり時間をかけて連携を作った後でないと無理なんです。それならどうするかというと、今日の後半のようにどんどん個人で突っかけていく、しかない。そして、そこでぱっと出る発想、創造性に賭ける。その発想を回りが「感じる」ことで、ゴール近くでの細かい隙を作り出す。ブラジル流というか、たぶん木村和司氏なんかはそういう感でやってたんじゃないでしょうか。おっと話が横道にずれた。

そうやってとにかく仕掛けていくことで、流れが日本に来ましたね。オウンゴールは偶然の産物ですけど、サッカーのゴールにそういうことはつき物。内容的には、日本が勝って不思議はないゲームでした。

気になったのは、セットプレーが同格以上の体格の相手に研究されると、なかなか効果をあげられなかったところですね。ジーコジャパンの大きな武器だったんですけどねえ。

それと、やはり中村と中田ヒデ、鈴木と高原、という組み合わせはきついような気がしてきますね。時間をかければ何とかなるかもしれないですが。ちょっとMFも、FWもタイプがかぶりすぎではないでしょうか。先ほども言ったように前線に、「一人でスペースを作り、使うことができる」柳沢タイプを使うか。それとも、森島のようにヒデ、中村からのパスを受けて動き回って潤滑油になれる選手を投入するか(現在の調子はわかりませんから「のような選手」という意味ですが)。そういうことが必要な気がしますね。

思えば、岡田監督時代、97年予選のころ、中田、名波という2人のパッサーがマークされ、日本の攻撃が停滞したことがありました。その時、2人の前方に北沢選手が配置され、効果を上げたんですね。北沢選手はけして派手なプレーをするわけじゃないんですが、2人の前で動いてパスを受け、またすぐに預けて動き回り、2人からマークを引き剥がして、2人が前を向いてプレーできるようにしたのです。その効果は劇的で、日本が97年予選の終盤戦に上昇していく一つの原因ともなりました。何かそういうものが、2人には組み合わさる必要があるように思いますね。

なにはともあれ、勝てた、勝ち点3を取れたことは大きい、とんでもなく大きいです。今後は、バーレーン、北朝鮮とアウェイで戦うことになります。主力の帰って来るバーレーン、どんどん連携がよくなり、イランを攻めに攻めていた北朝鮮と、まだまだ厳しい戦いが続きそうですね。バーレーンを勝ち点で上回ったとは言え、それはわずかに2に過ぎません。直接対決で負けたらひっくり返ってしまう数字です。もちろん、監督にも選手にも油断などないと信じていますが、これからも、これまで以上にいい準備をしていって欲しいですね。

いや、今日はまだそれは置いておいて、ただただ疲れた体を休めて欲しいですね。本当にお疲れさまでした。

それではまた。

01:53 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(4)|

March 29, 2005

もうワールドカップは始まっている

4バックが問題だったのか

中田ヒデや中村、宮本らの直訴もあって、バーレーン戦では3バックに戻すらしいですね。私も、ヒデやジーコの言う通り「システムがサッカーをやるわけではない」と思っていますから、3でも4でもどっちでもいいのですが、人がサッカーをやるからこそ、意思疎通、共通意識、連携、慣れ、などが重要だと思っています。そして、イラン戦で問題だったのは「4バックである」ことではなく、「慣れない布陣である」ことであったと思います。もしこの1年連携を深めてきたのが4バックの方であったのなら、「急に3バックにすること」の方がリスキーだったでしょう。この辺をごっちゃにしている議論が多いのではないでしょうか。

ジーコ監督は、

今回は田中が出られなかったこと、中田ら欧州組が合流したことで、前をうまく使う形、この2点から考えたことで私は練習を見ている限り、不安もなかったし、これまでも4バックで練習し、試合の流れの中で3から4に変えたこともある。選手と話したが、4だとバランスが大きく崩れるからどうしてもできないということは出てこなかった。

と、4バックに不安も問題もなかったと認識しているようです。確かにこれまでも3から4への変更などもしてきていますが、あれはあくまでも「敵が疲れはじめ、スペースができ始めた時に前方に起点を増やす」という「シフトチェンジ」に選手が慣れて来ていたのであって、それらの時も4バックにした後にDF陣が混乱している様子は見うけられました。そしてさらに、「スタートからの4バック」は、それとは勝手が違い、中村が言うように「自分たちのサッカーを探している」状態になっていました。失点シーンは、特に2点目は「運」の要素が強いと思いますが、それを差し置いても、前回も紹介した選手の談話のように、「慣れない布陣」がチームをギクシャクさせたことは確かだと言えるでしょう。


3バックへの変更

そして、選手の意見「」あり、3バックに戻すことをジーコ監督は選択したようです。これはこれで一つの選択であり、とりたてて非難することはしませんが、個人的には「えっ、戻しちゃうの?」という感じがあります(笑)。

私はこのニュースを聞く前、個人的には「イラン戦は内容は良かった、4バックは失敗ではなかった」と選手に信じさせ、それを継続することが監督としては重要ではないか、と考えていました。そうでないと、「やっぱりあれは失敗だったんだ」「あの時のあのプレーがダメだったんだ」「なんであんなこと(慣れない布陣の採用)をしたんだろう」「あの選手の起用が間違っているんだ」などという、「負のサイクル」に陥ってしまうような気がしたからです。

この辺はやはり非常に微妙な問題であり、どの監督でもナーバスになるところでしょう。実際ジーコ監督も、記者にそのあたりを聞かれ

──3バックにしているが

ジーコ よく言われるがシステムで試合に勝てるなら、監督なんていらないのだ。今回は田中が出られなかったこと、中田ら欧州組が合流したことで、前をうまく使う形、この2点から考えたことで私は練習を見ている限り、不安もなかったし、これまでも4バックで練習し、試合の流れの中で3から4に変えたこともある。選手と話したが、4だとバランスが大きく崩れるからどうしてもできないということは出てこなかった。システムありきではない、あくまでも選手ありきだ。

とかなり熱を込めて答えています。ちなみに、この「田中が使えなかったから4バックにした」という発言について、ちょっと論議を読んでいるようですが、私はこれは、「選手に言われたから3バックにしたのではないか?」という批判をかわすための方便ではないかな、と感じています。こういう方便は多くの監督が弄するもの、あまり騒ぐにはあたらないでしょう。

確かに、次のホームバーレーン戦は本当に「負けられない戦い」となったわけで、ここで選手がやりやすい、慣れた布陣で戦うことは合理的でもあります。選手もそれを希望している以上、そちらを選ぶことは間違っていないでしょう。そして、そうすることで逆に、「この間の試合は、悪かったのは4バックであって、それはもう切り捨てた、忘れよう」と考えること、いわゆる「気持ちを切りかえる」ことが、そのフォーメーションの変更によってできる可能性もありますね。今はそちらに作用することを信じて、そして今まで自分たちが培って来たものを信じて、前に向かうしかないでしょう。


W杯予選は「メディアとの戦い」

もうすでにW杯は始まっています。1997年の予選の時も、まだまだ自力での突破がある時でも、その後、他力とは言え十分な突破の可能性が残っている時にも、「クビの皮いちまい!」とか「赤信号!」とか「絶望!」などなどと大騒ぎになり、それが選手たちのメンタルに悪影響を与え、自分たちで困難な戦いにしてしまった部分がありました。また1998年大会、2002年大会のどちらのワールドカップ期間中も、メディアの狂躁状態は凄いものであり、それがまた選手たちを試合に集中させられなくした部分もありました。ちょっといい過ぎであることを承知で言えば、W杯という事を考えた場合、「メディアは敵である」と言っても良いほどであると思います。

前任者は、W杯であるかどうかを問わず(笑)、メディアを敵に回してしまうタイプの監督でした。まあ欧州を見まわして見れば、そういうタイプの監督はけっこういますね。木村さんが書かれているように、スペインにおいても、「監督vsジャーナリスト」という対立は、常態であるようです。しかし、ジーコ監督はああいう人格者でもあり、平時はなんとかメディアと良好な関係を保とうと努力をしていましたね。そのこと自体は良いことと思います。

しかし、ワールドカップ予選が始まれば、別かもしれません。予選は国民の大きな大きな関心ごとであり、ちょっともらした選手や監督の何気ない一言が、スポーツ新聞の一面をでかでかと飾ってしまうような状態になります。彼らからすれば極めて「おいしい」この時期、選手や監督の一挙手一投足を、メディアは「騒ごう」「持ちあげよう」「叩こう」と虎視坦々と狙っています。この時期にあまりに不用意にメディアと付き合うのは、避けるべきでしょう。

ジーコ監督は、練習後の取材において、先発メンバーを聞き出そうとした記者に対して、非常に怒ったようすを見せたと言います。

ジーコ (非常に怒った様子で)それを聞かれるのは非常に心外だ。私は就任以来、一度も練習を非公開にしたことはない。みなさんは練習を見て、誰が先発なのか、いつでも判断できるはずだ。私は敵をあざむくには、まず味方から、そういったことをしたこともなければ、みなさん報道陣をあざむこうなんて思ったこともない。見た通り書いてもらえば、それがスタメンだということを、一度も変えたことはないだろう。

これは、「真剣勝負でわざわざスタメンを事前発表するような監督」というバッシングを受けることが予想されての答えではないでしょうか?しかし、実際にはジーコ監督は練習試合や紅白戦でのスタメンを隠しもせず、そのまま起用する監督です(そしてそのこと自体は間違いではない)。したがって「予想メンバー」を立てるのはたやすいはずです。しかし、メディアはそれでは満足しない。「ジーコ、先発メンバー明言!」という見出しが欲しいからです。

ジーコ監督が怒ったように、私たちはこの時期のメディアに躍らされないようにしなくてはなりません。イラン戦の敗戦で私は本当に落ちこみましたし、そのやり場を求めてしまいそうな衝動を押し留めるのに苦労しました(笑)。それにつけこもうとしているのがメディアです。加茂監督の時も、岡田監督の時も、トルシェ監督の時も、ジーコ監督の時も、ワールドカップ予選、本大会においては「メディアは敵」なのだと、サポーターであるわれわれももう一度肝に銘じておいた方が良いのではないでしょうか。

中澤が言う、

(報道陣への)監督のコメントを、選手はあまり聞かない方がいい。選手は選手のリズムでやればいい

というのは、以上のような文脈で聞くべき言葉であると、私は信じたいと思います。


イラン戦の反省、追加いくつか(フィジカルコンタクトと審判)

イラン戦について、私は「またあの主審が日本に不利な笛を吹いている!」という印象を持っていたのですが、何度かビデオを見なおして行くうちに、「これは彼なりに統一された基準があるのではないか」と思えて来ました。それは「足でのぶつかりあいは、ものすごく激しくてもノーファウル」逆に「手を使ったり、肩で後ろから押したりすると、どんなに小さくてもファウル、場合によってはイエロー」という基準です。考えて見ると、そういうジャッジが多かったと思いませんか?

思えばオフト監督、加茂監督の昔から、「日本選手はアジア基準のフィジカルコンタクトに弱く、それによってナーバスになり、試合を支配されてしまう」という弱点がありました。イラン戦では、ナーバスになることはなく、試合でも逞しくボール支配をして行くことはできていましたが、やはりコンタクトには「なんでファウルじゃないの?」という不満を審判に表明する選手もいましたし、また「これはファウルだろう」と選手が勝手に判断し足を止めてしまったことが、危機に結びついていた部分もありました(失点シーンで前線にいた選手たちもそうですね)。

これからもアジアとの厳しい戦いは続きます。対戦相手はもちろん、審判もアジア人、アジア基準でジャッジがなされます。アウェーの試合もあり、また、審判はどうも、「アジア最強の日本」に対して辛目に取ることが多いように感じます(これは私の主観ですが・笑)。

それでも、予選は絶対負けられない戦い(笑)です。もうこのコンタクト、それに対する審判基準を折り込んで戦うべきではないでしょうか。具体的には、こちらも足でのコンタクトはハードに、ゴール前では手は使わない、不利なジャッジにもいらだたない、そして、「これはファウルをもらえるだろう」という自己判断をしない(笛がなるまでプレーを続ける)ということですね。


同点後の意識のズレ

goal2前回も書いた、同点後の「攻めるのか、守るのか」という点での意識のズレですが、これが失点シーンにも微妙に影を落としているな、と思えてきました。前回も書いたように、失点シーンの流れは「前方の柳沢にボールが入ったところ」から始まっています。この前、中村と小野が高い位置から敵に対してプレッシャーをかけに行き、奪えたボールを柳沢が拾おうとしていたのですね。この柳沢のポストに対して敵DFがファウルまがいにつぶして、それをマハダビキアにつないで、そこからカリミにスルーパス、というカタチが失点に至る流れです。

この時、小野は自分の奪ったボールが柳沢に納まり、そこから展開されると信じて前方に走り出しています。中村も同様ですね。二人の「攻めへの意識」がうかがえますね。それによって、マハダビキアと対峙した福西は、ハードにあたりに行くことができなくなっています。一発勝負に行って抜かれたらゴール前中央で数的不利になってしまいますからね。福西は距離を置いてディレイをすることしかできなかったわけです。小野が上がっていなければ、という点が一つあります。

また、この時に中央が数的不利になっていなければ、マハダビキアと対峙したのは小野であった可能性もあります。(その直前にマハダビキアからボールを奪ったのも小野)であれば、福西はもう少し下がり目にいることができ、カリミからクロスが上がった時点で中央加地のフォローに入っていることができました。実際にジーコジャパンでそういうシーンは何度か見たことがあります。ヘッドの強い福西があそこにいれば・・・。

以上のように、この失点シーンの前の段階での、中盤の選手の「前へ」の意識と、その割りに上がり切れず、コンパクトを維持できなかったDF陣の意識のズレが、マハダビキアから自由にパスをださせ、中澤の足に当たったボールがカリミの前に転がるという一つの不運で失点してしまう遠因になっていたということが言えるでしょう。今後は、監督の指示の出し方も、それを受けた選手の意識も、もっと試合の流れをよく見て、的確であることが望まれますね。


さあ、バーレーン戦!

pitchbahrainバーレーン戦はホームですし、実力的にもこちらが上、さらにバーレーンは主力を3人欠いています。日本と違い人口67万人の小国で、選手層も薄いバーレーンにとって、この3人の欠場は痛いようです。敵の武器はカウンター、右サイドのM・フバイルの突破、クロスから、中央のアリが決める、というカタチですが、三都主とのマッチアップ、中央でのCB陣のしっかりしたポジショニングがポイントになるでしょうね。もちろん、敵は引き分け狙い、守ってからカウンターで来るでしょう。こちらは慣れた布陣に変えたことですし、3バックはアジアカップでカウンターともずいぶんと戦っています。十分に勝てるでしょう。是非いい準備をして、しっかりと結果を出して欲しいですね。

それではまた。

08:06 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

March 26, 2005

一喜一憂しない

悔しいですね!

敗戦は意外とダメージに感じてしまいました。落ち込みから立ち直るのに時間がかかり、更新が遅れました。申し訳ありません。


■非常に惜しい試合

しかし、勝ち点を取れる可能性があったから「惜しい!」と思うけれども、最強の敵とのアウェイ戦なのだから、この一敗は「想定内」ですよ。そのはずです。ここまで2試合終えて勝ち点3、残り4試合で9以上を取れば、勝ち点12になるわけですから、次のバーレーン戦に勝てば問題なしです。そう思います。

グループ2

順位チーム試合得点失点得失勝点
1 バーレーン21102 1 1 4
1 イラン2 11 0 2 1 1 4
3 日本 2 1 0 1 3 3 0 3
4 北朝鮮 2 0 0 2 2 4 -2 0


■意外と機能した[4-4-2]

この1年関連携を深めて来た[3-5-2]をお休みし、急遽編成された[4-4-2]は、思ったよりも機能していたと思います。練習で約束事の確認をしたというボランチとOMF(特に中田ヒデ)との連携は、それほど大きな穴をあけませんでした。これはまあ、個人能力を活かしてゆっくりと攻めて来るイランの攻撃の特性に助けられた部分はありましたが。北朝鮮のように連携が良く、ぽんぽんとダイレクトパスをつなぐような攻撃にさらされた場合は、昨日のようには行かなかったでしょうね。

選手たちは

(中村) 相手うんぬんというよりも、自分たちのサッカーをちょっと探しているというか。味方がどんなプレーをするんだろうというか、そういう連係がスムーズにいっていなかった。

(宮本) すぐにしっくり来るシステムというわけでもない。

(高原) どのタイミングで動いたらパスをもらえるのか、分からなかった。(中略) 向こうの守備というよりもうちの連係ではないか。お互いの動きやパスのタイミングだとかが、やっぱり良くなかったと思う。

(玉田) 自分もタカさん(高原)も前線で孤立していたというか、もらってもあまりいいプレーができていなかった。

語っていますが、もちろん合宿で4日間しか練習していないのだから、そうすぐにパーフェクトとは行かないでしょう。しかし、「思ったよりも」うまく行っていたな、と私は感じました。

ヒデを組みこむと「中盤のプレスの再整備」に手をつけるだろう、それはアジアカップで掴んだやり方とは少しく違った物になるだろうと、以前に書きました。この試合はまさにそうなって、FWから、OMFから、ずいぶんとプレッシャーをかけに行っていましたね。イランは個人個人の能力があって、前を向かせてスピードに乗らせると手がつけられないでしょうから、プレッシャーをきつくする、前線からガツガツとチェックに行く、というのは間違っていないと思います。

ただ、それで飛ばしすぎたところがあったでしょうか?失点シーンの直前あたりから、日本選手の体が重そうになり(テヘランは高地です)、コンタクトが淡白になり、イラン選手が前を向いてボールを持つシーンが増えてきましたね。失点は、この時間帯守備に追われた中村選手が、なぜかダエイと中澤と競ってしまい、痛んで退場してしまうプレーから。これが日本のファウルに取られ、そのFKをマハダビキアが精度高く放りこみ、加地がそのボールをイラン選手につぶされてこぼし、それをハシェミアンが蹴りこみました。

失点は加地の個人的ミスの部分が大きいと思いますが、あそこで不用意にFKを与えてしまったプレー、なんといっても味方同士で交錯し、ファウルを犯してしまう、守備面での混乱が問題ですね。これはさらに話し合いを増やして、改善して行って欲しいですね。イランは日本に対してとにかくFKを与えないようにプレーをしていました(日本の獲得した直接FKは8、イランは23)。見習わなくてはいけませんね。

■忙殺された中村選手

pitchiranfull2前半今一つ日本のサッカーが出来なかった原因は、中村選手が日本の左サイドの守備のケアに忙殺されたことが大きいでしょう。イランはマハダビキア、カエビに加えカリミも(イランから見て)右に流れ、そちらを起点にゴリゴリと攻めてきましたから、どうしても中村も守備にもどってしまいます。さらにイランはアジアカップでの大活躍を覚えているのでしょう、中村を非常に警戒し、厳しくマークしてきましたから、この点でもボールを足元に納めてからプレーを開始する中村選手は持ち味を発揮することができませんでした。

次にイランと対戦する時は、中田ヒデを左に、中村選手を右に配置したほうが、チーム全体がスムースに行くかもしれません。中田選手ならば、守備の局面からでも非常に早い動き出し、フリーランニングで攻撃に参加していくこともできたでしょうし、多少のコンタクトではつぶされなかったでしょう。逆に中村選手は、スペースのあるところでボールを持つと、昨日の中田選手よりももっと「違い」を作り出すことができたでしょう。

後半になって、中村選手は右にも顔を出すようになって来ます。ここで中田選手と中村選手の距離が近くなったことで、この時間帯は日本の攻撃が活性化していました。イランを敵陣に押し込むようになったところで、「スペースを作り、使う動き」のうまい柳沢を投入したのは良かったと思います。彼が玉田に代わって前線でボールをおちつけるようになるとさらに攻勢を強めることができ、スローインから中田選手がクロス、柳沢が競ってこぼれ球を福西が豪快にシュート!アウェイで追いついたのは良かったですね。

■攻めるのか、守るのか

中村選手が試合後に述懐しているように、ここで守るのか、さらに攻めるのかの判断があいまいになったところが、もったいなかったと言えば言えると思います。そういう試合のモメンタム(流れ)を掴むのは、昨年のアジアカップ後の日本代表は向上していたはずでした。しかし、今年になってまたいくらかやり方を変え、さらに今回4バックにして選手構成も変わった代表は、昨年掴んだそれを少し失っていたようです。残念ですね。

ただ、97年予選ホーム韓国戦の時のように「守れ」という判断が失点につながることもあるのですから、「引き分けを狙わなかった」ということが問題だとは思いません。そうではなく、選手たちの間で、「チームとして」意思統一ができていなかった点が残念なのです。その点で考え方に差があると、少しずつ選手の動きがかみ合わなくなっていってしまいますから。

■決勝点の失点シーン

決勝点を奪われたシーンは、中澤の大きなクリアが13カエビに入ったところから。カエビに中村が対処し、カエビから2マハダビキアにパス。これを小野がチェックに行き、ボールを突っついて奪い、そのまま前方へ攻撃に上がります。小野の奪ったボールを処理しようとした柳沢を、イランのセンターバック(かと思いますが、ビデオでは背番号が20に見えます。20だと、左サイドバックのノスラティかな?)がハードにチェック、ボールがマハダビキアにおさまります。これが実際の攻撃のスタートですね。

goal2マハダビキアがドリブルし始めると、ヤナギからボールを奪ったCB(仮にそうしておきます)はその勢いのまま、日本の左サイドのライン沿いに上がって行きます。小野はイラン陣に上がろうとしていたので置いていかれ、マハダビキアの前方で少し距離を置いてディレイしようと(?)していたのは福西になりますね。三浦淳は、上がってくるCBと、13カエビのケアのために、下がらないでポジションを取ります。マハダビキアから8カリミにパスが出ると、中澤がついて行く。ラインぎりぎりまで切りこんだカリミは、CKを得ようとしたのか、わざと中澤の足にボールを当てようとします。これがたまたま、中澤の足に当たって残ってしまい、カリミはすかさずそれを拾ってクロス、中央には加地と中田ヒデにはさまれて、「ヘリコプター」9ハシェミアンが入りこんでおり、みごとにへッド、失点となります。

この時、宮本はグラウンダーのパスコースを消しながら、ニアに入りこんで来ている14ナドビキアをフリーにしないポジションを取っており、特にミスとは言えません。三浦淳も、13カエビと上がろうとするもうひとりのCBをケアするポジションを取っていて、ミスとは言えないと思います。中澤はクロスをあげさせてしまいましたが、カリミにきちんとついていて、抜かれたわけではなく、ちょっと不運。問題はやはり、真ん中でハシェミアンにフリーでへッドさせてしまった加地、あるいは加地があそこで競り合いをしなくてはならないようなチーム全体のやり方のほうにあると言えるでしょう。

crossもともと4バックは、サイドからのクロスにSBがファーで競らなくてはいけない布陣です(CB両方がペナルティエリア内にそろっていても)。その点で能力の高い選手がいないことが、Jリーグで外国人監督が4バックを採用(したいのに、)しない理由の大きな一つであると思います。身長やヘディングの能力もそうですが、特に、今回の加地のように「クロスをあげられる前に首を振って、自分のマークするべき選手がどこにいるかを確認する情報収集能力」において、現代のSBをこなせる能力のある選手は少ない。加地はやはり、ハシェミアンの動き直しを視認することはできていませんでした。

この局面を「人数はそろっているから組織は出来ている」とするのは、難しいと思います。選手にはタイプや、固有の能力、志向性があり、それをうまく組み合わせ、必要な意識づけをして行くのが「組織作り」でしょう。ただ選手を並べて、約束事を与えておしまい、ではないのです。やはりこの局面では、加地の特性を把握し、ハシェミアンのFWとしての能力とのマッチアップを考え、意識づけをしておく必要があったと思います。「相手を視野にいれている部分もある」とジーコ監督が語った4バック、もともとハシェミアンに対峙するのは加地の役割だったはずなのですから。

■「ジョーカー」のいない日本代表

今回残念だったのは、リードされた時に打てる手が、柳沢以外は効果的ではなかったことです。これまでは、[3-5-2]でスタートし、[4-4-2]に変えることで、「システム変更がジョーカー」というスタイルを作ることに成功していました。前方に起点が増えることで、敵を押しこめ、それまでとマークの狂いをさそう。そういう中で前回の大黒の得点も生まれたのです。今回は、[4-4-2]でスタートしたことで、その後に打てる手が限られていました。柳沢、大黒、小笠原の投入は、リードした後引いて守り始めたイランをこじ開ける手段にはなりませんでした。ジーコ監督は、ヒエラルキーの上位からスタメンにする、というやり方を取り、選手のタイプをいろいろとそろえて、局面に応じて投入できるように連携を熟成させておく、ということをしませんから、仕方がないことですが、今後に向けての一つの不安材料ではありますね。

■ヒデを組みこむという選択

ジーコ監督は、今回あらためて中田ヒデ選手に与えた「長男」の位置の、ジーコ・ヒエラルキーの中の磐石さを周囲に知らしめました。しかし、オマーン戦の時のように、それを問題視しようとは、私は思いません。かの時は、中田選手という「理詰めで良いサッカーを追求し、周囲にもそれを要求する」選手に、長男かつキャプテンという重過ぎる役割を与え、周囲の選手のメンタル・コンディションに悪影響を与えたことが問題だったのです。しかし、アジアカップを経て一体感を増した現在の代表では、その部分は問題にならないでしょう。

逆に、イラン戦では中田選手の重要性があらためて確認できたように思います。特に、FWの選手がずるずるとすべり、トラップが非常に大きくなってまったくボールが納まらないピッチコンディションで、微動だにしない(笑)フィジカルの強さは際立っていました。それはイランの選手とのマッチアップでも表れていましたね(こういうところが海外でやっている経験・・・なのかと思ったのですが、高原選手も滑ったりトラップミスをしていたりしたのはなぜでしょう?)。

ピッチコンディションが悪かったり、審判が不安定だったり、敵選手がラフだったり、何があるかわからない最終予選に、予選の経験もあり、悪い条件も苦にしない中田ヒデのような選手が欲しいのは理解できます。しかし、長いこと代表から離れている。予選を戦いながら彼の組みこみを図るのは、一種の賭けになる。そうなると、その「賭け」に出るタイミングは二つ、今回か、5月のキリンカップか(もっと後でもいいですが、そうなると最終予選の重要な局面でヒデの力が期待できないですね)。今回は、1勝の後の、最強の敵とのアウェイ戦(ある意味、敗戦しても痛手が少ない)、時間もある程度とれますし、海外組もコンディション良く臨める、日本はアウェイで強い、など、好条件がそろっています。強い相手との戦いは、モチベーションも高めやすいですしね。

ヒデが入る以上、彼主導で中盤の守備は作りかえられるでしょう。アジアカップでの戦いよりも前がかりになり、プレスも積極的に、攻撃面でもこれまで以上に早い攻守の切り替え、ダイレクトな攻めが志向されるでしょう。そのようなやり方も、敵が(例えば)引いて守ってくるバーレーンだと試す効果が薄い。そういう戦いの慣熟走向には、実はイランは格好の相手だったと言うことができるのです。

私はジーコのその賭けは、「勝ち点以外はよかった」という結果が出た、と思います、少なくとも現時点では。思ったよりも守りも攻めも機能し、アジア最強かもしれないイランと互角に戦った。チャンスも作った。完全に崩されたシーンは少なかった。問題点も多くあるけど、再スタートとしては悪くない(「こんな時期に再スタートしている事が問題」とか言いっこなしですよ)。これを熟成させて行けば、もっとよくなるかもしれない。

最も重要なのは「これから」だと思います。具体的にはこの4日間。内容は思ったよりも良かったとは言え、敗戦は敗戦。試合後、選手たちの顔は一様に固かったですね。この一敗が、チームにどう言う影響を与えるか。負けた原因を[3-5-2]から[4-4-2]への変更に求めるような意見が、チーム内で出ないか。あるいは試合勘の悪い中田選手が来たらいきなりサブに追いやられた選手が、納得できるかどうか。バーレーンに絶対勝たなくてはいけない状況に陥ったこと、ホームの試合で「いい戦いしなきゃ」というメンタルになりがちなこと、それらがこの正念場でどういう影響を及ぼすか。ここが本当に、この予選での正念場ではないでしょうか。

■勝てる、勝つべき相手バーレーン

pitchbahrainバーレーンは、主力FWのA・フバイルが怪我で欠場の上、有力なトップ下のユースフとSBのジャラルがカードで出場できません。主力が3人欠けていますから、絶対に守って来るでしょうが、ここで勝たないと予選突破の歯車が狂ってきます。勝てる相手ですし、絶対に勝ちましょう!

それではまた。

11:40 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(7)|

March 21, 2005

イラン戦は4バックでしょうか

ドイツ合宿中のジーコジャパンは、ドイツの地域リーグ(3部に相当)のチームと練習試合をし、1−0(前半1−0)で勝ったそうです。前半が4バック、後半が3バックとのこと。これは興味深いですね。そしてさらに、

ジーコ監督は「きょうの動きでは、守備は両方やれる感触をつかめた。システムは、欧州組次第で変わる」と語った。

とのことです。またスポニチでは

布陣は欧州組の状態で決まるかとの質問に「その通り」と発言。

ということで、これはやはり前回

もしジーコ監督が[4-4-2]をする時は、守備から考えるよりも、やはり中盤のタレントを生かすためにすることでしょう

と書いたように、中田ヒデの調子がかなり布陣を決定するようです。

最近あまり見られなかった「スタートからの4バック」ですが、これは守備面でも効果があるかも知れません。ご存じのように、イランがダエイを頂点に据えた1トップ、ないし3トップのような形を取ってくる可能性は高いと思われますから、図のように日本が4バックを採ると、ちょうど各所で1vs1が成立し、さらに宮本が余る形を作れるわけです。これは、攻撃力を誇るイラン封じを考えても、有効な形の一つだと思われますね。

pitchiranfull

(注:選手名のリンクは海外のものが多く、かなり重いです)右のマハダビキアを三浦淳が見て、左のハシュミアン(ここにザンディが来る可能性もあると思います)を加地が見る。ダエイに中澤(コンディション次第で松田とか、茶野の可能性もあり)をぶつけて、そのカバーリングを宮本が担当、もう一つの驚異のカリミ(2004年アジアMVP)には、ネドヴェドをマークして仕事をさせなかった稲本を当てる。こうなると、日本の堅陣はなかなか崩されないような気がしますね。

イラン人の父を持つザンディは、ドイツ生まれでドイツ育ち、ドイツU-21代表にも入った10番タイプの選手ですが、2重国籍のためにイラン代表入り、バーレーン戦でもプレーしましたね。(なかなかカッコイイ顔でも一部で有名です・笑)バーレーン戦ではチームにフィットできず、活躍できなかったようですが、日本同様4日の期間が取れるこの試合ではどうでしょうか。彼が本来の力を発揮すると、もう一つケアしたほうがいいポイントが増えることとなります。ジーコジャパンの[4-4-2]では、どちらかというと左に位置することが多かった中田ヒデ選手を、この図では右に配置しているのはそのためです。彼の守備力でザンディを封じ込めようという意図ですね。

もう一人、驚異になってくるのは、マハダビキアとの連携で上がってくる右SBのカエビでしょうか。彼は、フリーにさせるとさすがに怖いので、今回は守備からはいることを考えているらしい三浦淳にしっかりと抑えてもらいたいところです。ただ引いて守るだけではなく、彼が上がることでカエビとマハダビキア、二人を引っ張って守備させるくらいにできるといいですね。もちろん、それにはボランチ小野やOMF中村、そして宮本の協力も必要になってきますが(ザンディの驚異をあまり心配しない場合には、カエビの対面、日本から見て左にヒデを配することも有効でしょう)。

ジーコ監督はおそらく中田選手の起用面から4バックを考えているのでしょうが、選手の特性や対戦相手との相性などから考えても、実はなかなか合理的な選択かもしれません。ただ、問題となる可能性があるのは、選手も「意外だった」と語るように「これまでの継続性」との兼ね合い、再度の約束事の整備のための選手間の話しあいの時間、そして、選手起用によるチーム内のメンタルのマネジメントでしょうね。アジアカップを経て一つの「ファミリー」のようになっている今の日本代表なら、気にすることはないと思いますが。

そして、アジアカップで見る限り、イランは攻撃も守備も個人頼み。特に攻撃陣は「好きなようにやっている」感が強く、はまれば強力でしょうが、アジアカップにおいて「カバーを重視した守備」と、うまく行かないときでも「落ち着き」を手にした日本ならば、守りきることは不可能ではないでしょう。そして、アジジも言う個人に頼った守備は、おそらく北朝鮮よりも崩しやすいはずです(あれほどの「守備面でのデターミネーション(不退転の決意)」は持っていないでしょう)。欧州から距離的にも近く、海外組もコンディションよく臨めるこの試合。敵は強力ですが、臆することなど無いと感じます。

小野や中田ヒデ、稲本らコンディションが心配された選手たちも、ここに来て90分戦えるようになってチームに合流できそうです。この最大の決戦の場に、ジーコ監督の理想通りの選手がそろうと言うのは、なにか運命的なものも感じますね(笑)。あとは短いですが、合宿を有効に使って各選手のコンディションを見極め、(中澤も心配する)戦術をもうちょっと整備すれば、イラン戦にも勝利できるでしょう。

アウェーの地で、最大の決戦に挑む選手たち。大変でしょうが、是非いい準備をして欲しいですね。

それではまた。

(注:イランがこのような「日本のイラン対策」を読んで、その裏をかこうと別のことを考える可能性もありますね。そこまでは読み切れませんれども・笑)

06:38 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(3)|

March 15, 2005

さあ、最大の決戦へ!

ついに、日本代表候補が発表になりましたね。このメンバーで17日からドイツ合宿、そして25日のイラン戦、30日のバーレーン戦に臨むわけです。「いよいよ」という感じがしてきましたね。試合自体も後10日後に迫ってきました。

GK
楢崎正剛(名古屋)、土肥洋一(FC東京)、曽ヶ端準(鹿島)

DF
宮本恒靖(G大阪)、三都主アレサンドロ、坪井慶介(以上、浦和)、三浦淳宏(神戸)、加地亮(FC東京)、田中誠、茶野隆行(以上、磐田)、松田直樹、中澤佑二(以上、横浜FM)

MF
中田英寿(フィオレンティーナ)、小野伸二(フェイエノールト)、中村俊輔(レッジーナ)、中田浩二(マルセイユ)、稲本潤一(カーディフ・シティ)、遠藤保仁(G大阪)、小笠原満男(鹿島)、福西崇史、藤田俊哉(以上、磐田)

FW
鈴木隆行、本山雅志(以上、鹿島)、玉田圭司(柏)、高原直泰(ハンブルガーSV)、大黒将志(G大阪)


総勢で26名の大所帯ですね。ここから、各試合のために18人が登録されることになります。三都主と田中マコは累積警告のためにイラン戦には出場できないため、ドイツ合宿にも帯同せず、日本で英気を養う(?)ことになるようです。

GKでは、川口が手の骨折から復帰が間に合わなかったようですね。DFは、気合満々だった松田が怪我から復帰、逆に中澤がひざに問題を抱えてしまっているようです。

このちょっとした不安を会見でジーコ監督に聞いた記者の方がいらっしゃいました。

――ディフェンス陣では、中澤選手がひざをけがしていて、坪井選手と松田選手も故障あがりです。DFに関しても不安はありますか?

ジーコ 確かに不安がまったくないということはありませんが、今回の試合は25日ということで、いつもよりは試合まで時間が残されて、多少余裕を持って状態をチェックできます。(ここから各選手の状態について) もし必要があれば、多少コンバートすることが考えられる選手も何人かいますし、非常に楽観的に考えています。

ジーコ監督のこの答えは興味深いですね。誰かの怪我が悪化した場合は、追加召集なのか、今回選ばれている中でのコンバートなのか。

この「コンバートの可能性」は、今回の代表候補を見る一つのキーワードになるかもしれないですね。

現状では[3-5-2]で、中村選手、小笠原選手がトップ下に入ってやってきたわけですが、これまで怪我をしてきた選手たちのようやくの復帰もあり、中盤にそうそうたるメンバーが集まることになりました。しかし、特に[3-5-2]の場合は、攻撃的中盤のポジションは一つしかなく、残りのメンバーを起用しようとすると別の場所に配置する必要がでてきますね。実際にジーコ監督は中田英選手のポジションを聞かれて、

ジーコ 今の状態で彼が一番貢献できるところ。そういったことを含めてこれから考えますけれど、本当にどこのポジションでも非常にいい力を出してくれるんじゃないかという期待を持っています。

と、さまざまなポジションで起用する可能性があることを匂わせています。

また、メンバーを見て誰もが気づくサイドのバックアップメンバーの不在ですが、記者会見でジーコ監督は、

――アレックス選手がイラン戦ではプレーできませんが、このメンバーにはサイドのバックアップメンバーがいません。それについてはどう考えていますか?

ジーコ 自分の時期ではないですが、2人の選手、あえて名前を挙げれば小野、中村選手がこのポジションを過去にやっています。他にも名前を挙げませんが、自分が考えているバックアップのメンバーがこの中にはいると考えています。

と答えており、小野や中村、それ以外にもバックアップ足りうる想定メンバーがジーコ監督の脳裏にはあるようです。これも興味深いことですね。Jリーグでサイドを担当していいパフォーマンスを見せている選手は何人かいると思うのですが、彼らよりも現メンバーの中でのコンバートを優先するということでしょうか。

いずれにしても、選手と監督が合宿でじっくりとよく話し合って、それぞれのポジションを考えていくのでしょう。よい形を見つけて欲しいですね。

pitchiranそういう意味では、今回のメンバーはこれまでのジーコジャパンにないほど、「誰をどう起用するのか」という点で興味深いものとなっていますね。アジアカップ仕様の[3-5-2]もできる。やろうと思えば、2003コンフェデ仕様の[4-4-2]もできる。練習で連携を深めた国内組はもちろん起用できる。欧州組も、移動距離が短く、また時差も少なく、よいコンディションで試合4日前(オフィシャルAマッチデーなので)には合流できる。彼らを起用することも(合流後の練習時間の問題を除けば)無理がない。

熟成を重ねたフォーメーションで行くのか、起用できるメンバーの特性を重視したカタチを選ぶのか。イランという最終予選上最大の敵と戦うこの時に、このようにメンバーがそろって、ある意味目移りのする(笑)状態になるとは、実に有意義なことと感じます。(これはイランも読みにくいでしょうね・笑)

pitchiran2.5

とりあえず、今考えられるのはアジアカップ仕様に小野や稲本を組み込んだものか、2003コンフェデ仕様の[4-4-2]でしょうか。イランはダエイの1トップのやや後ろにカリミやハシュミアンが控える[4-3-3]ないし、[4-5-1]のようなカタチで来ると予想されますから、日本がここで4バックを採るのも論理的ですね。1トップは、4バックの2人のCBでうまく見ることができますから。

とはいえ、もしジーコ監督が[4-4-2]をする時は、守備から考えるよりも、やはり中盤のタレントを生かすためにすることでしょうね。その場合にも、アジアカップを獲った日本の強み、「カバーを重視する守備、個人能力、セットプレー、そして落ち着き」は維持できるのか。それともそれを継承しながら、新しいものを付け加えていこうとするのか。そこも重要なところですね。

あ、そうそう。この26人という召集人数、イラン戦と5日後の長距離移動後のバーレーン戦という強行軍に、もしかするとかなり明白なターンオーバーを敷くことが考えられているかもしれません。イランでは欧州組中心、日本では北朝鮮戦と同じようなメンバー、とか。うまくそれができると、この苦しいスケジュールも乗り越えられるでしょうね。

早くも今年のジーコジャパンの正念場、この3年間の最初の集大成の場ですね。厳しいスケジュールの中、決戦に向かうこのチーム、後はいい準備をして欲しいと祈るばかりです。

それではまた。

02:55 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

February 26, 2005

ジーコ監督に副官を!

V6010038やっと、北朝鮮戦を埼玉スタジアムでホームビデオに友人が取ってきてくれたものを借りて、見ることができました。

TV観戦も選手の表情などが見えて好きなのですが、やはりボールのあるところを中心に映すので、DFラインの動きや、ボールが中盤にある時のFWの動き出しなどが、わかりづらい部分があります。こうやってスタジアムの高いところから見ると、それらがよく分かりますね。

そうして見ると、TV観戦での感想を補強するようなことがけっこう分かりました。まず、宮本の指揮するDFラインが、昨年のドイツ戦での反省を受けてか、試合スタート時にはかなり高目に位置するようになっていたこと。これによって、序盤の日本の前線からのプレスは「後押し」をされていたんですね。そうでないと、前線が追いまわしてもその後ろが間延びしてしまい、上手くいかなくなってしまうのです。

これが意味するのは、宮本がジーコに進言したというアウェーオマーン戦での「引いて守るやり方」は、中澤が「この試合だけだから」というように、かならずしも選手たちも本意とするものではなかったということでしょう。アウェーオマーン戦直前での市原ユースとの練習試合で高めからプレスをかけようとして上手くいかなかったこと、引き分けでも通過できるという状況だったこと、などから「現実的」に1次予選通過のために採用したものだった。しかし、日本のサッカーとしては前線からプレスをかけ、高めでコンパクトを形成するものだと、彼らも思っているということの顕われでしょうね。

highdmflowdmfしかし、前半に何回か、北朝鮮にダイレクトでパスをまわされ、遠藤、福西のボランチ陣がそれを捕まえられず、日本のDFラインが脅かされるシーンが出てくると、3バックはかなり早めに下がってしまうようになります。具体的には、敵がボールを奪った瞬間ぐらいに下がってしまう。アジアカップ・スタイルそのままに回帰したわけですね。そしてボランチも、敵のダイレクトのパス交換を捕まえられないために、DFラインと同調して下がってしまい、さらに敵のパスまわしを楽にするという悪循環がうまれていました。1次予選やアジアカップではボランチの後ろにできていたスペース(図1)、この試合ではボランチの「前」にできていたということですね(図2)。これが、前半の途中から日本の失点まで、北朝鮮にペースを明け渡す原因の一つとなっていました。

これは一つには、遠藤と福西の「タイプ」によるところがあるでしょう。どちらも、バランスを取る能力はあるものの、「ボールを持ってから仕事をする」という、ボールプレイヤーの側面を多く持つ選手です。ジーコ監督は基本的にそういう選手を重用しますね。運動量が多く、目立たないところできっちりを仕事をできるタイプや、中盤でのボール奪取能力の高い選手はJリーグにもいるのですが、あまり代表には選ばれていない。ボールプレイヤータイプを重ねて、さらにDFラインに「セーフティーに」という指示がずうっと出ていて、その上に初戦の重圧があり、敵がなかなか連携を練っていると、どうなるのか。

北朝鮮戦の分析をしたNumber622号、戸塚啓氏の文章に興味深い一節があります。

ハーフタイムを迎えて、宮本恒靖は遠藤に「ラインがちょっと低いか?」と確認している。「そういうときもある」という答えを受け、宮本は前半よりも高めにラインを設定しようとした。受身ではない前向きな姿勢の表れである。

やはり、前半に何度かラインが低くなってしまったこと。それによって中盤との連携に難を生んでいたことは、選手たちにも自覚されていたのですね。

しかし、ジーコジャパンでラインを高くするためには、遠藤、福西の部分が、「一人が当たり、一人がカバーする」などのプレーができていないと難しいです。敵のパス交換が中盤をスイスイ通り過ぎて行くような状態でDFラインだけをあげても、試合のペースを取り戻すことにはならない。後半は上げようと意図が生まれながら、それがなかなか機能しないうちに、さらにアグレッシブに、ファウルすれすれのラフチャージを仕掛けてくるようになった北朝鮮に精神的にも押され、完全に流れを持っていかれてしまいます。

これは、いわゆる「初戦の重圧」によるものであり、かつ、日本代表特有の「ホーム・ディスアドバンテージ(ホームの不利益)」によるものでもあったでしょう。「大きな戦いの初戦」は常に最も緊張するもの、監督、選手は十分な自覚を持ち、準備することが必要です。アテネ五輪、2002年のベルギー戦を見てもそれはわかるでしょう。そして、宮本とジェレミーさんの言うように、日本代表はホームでは「勝たなくては」「点を取らなくては」「いい試合をしなくては」という意識からか、むしろ固くなり、よくない試合をしてしまうことが多い。この両者が、北朝鮮戦の試合内容に影を濃く落としていたのは間違いないと思います。

しかし、それだけでもない。やはり中盤でのプレスが整備されていないこと、ファーストプレスとセカンドプレスの関係、それぞれのポジショニング、攻めている時の守備のバランス、ポジショニング、それらを後ろからささえるDFラインの位置、安定性など、ジーコジャパンでまだ問題を残している点は多々あります。「ボールの取りどころが定まっていない」「日本らしい高い位置で奪うサッカーができていない」・・・これらを選手たちが反省点として口にする状況は、ずうーーっと変わっていません。そして合宿を重ねたあとの北朝鮮戦を見ても同じような問題が噴出する点を見ると、これらに関しては、ジーコ監督ではこれ以上の向上は難しいのではないかと思えます。

昨年、私はジーコ監督を解任して、新しい監督に日本代表を指揮して欲しいと思っていました。それはその時なら「まだ間に合った」からです。しかし今はもう、仮にイラン戦やバーレーン戦によい結果が得られなかったとして(もちろん、そうはならないことを信じていますが)、ジーコ監督を解任しても、後任の監督がチーム作りをする時間はない。それはあまりにもリスキーです。ですから私は今では、ジーコ監督を解任せねばならないような状況になることをまったく望んでいませんし、仮に何かが上手く行かなくなったとしても、これから監督を交代することのリスクを考えると、可能な限りそうするべきではないと思います。

と同時に、このように中盤の守備に問題がある状況は、やはり改善するべきと思います。前回も書いたように、アジア予選を通過するだけなら、もっとラインを下げて守るやり方でもいいでしょう。私は半分くらいそれで行くべきだと思っています。しかし、選手たちの意識は、今はその方向で統一できてはいない。前線はプレスしようとし、DFラインやボランチは上げようという意図を持ちながら、「本能的に」(?)リスクをおそれ下がってしまう。これはあまりよい事ではありません。

もうジーコ監督で行くしかない。しかし、ジーコ監督(およびそのスタッフ)には、長所もあれば欠点もある。欠点を補うためには、協会もそろそろ本格的に「副官」を置くことを考えるべきだと思います。もともと山本氏がおり、アテネ後は復帰が基本路線だったわけですし、そもそもコーチのいない代表というもの自体、ここしばらくでは珍しいことなのですから。オフト氏に清雲コーチ、加茂氏に岡田コーチ、トルシェにサミア、山本コーチがいたように。そしてそのコーチは、ジーコ監督の考え方を理解でき、その上でプレッシングやDFラインの指導が上手くできる人であるべきですね。

そう考えると、ジーコを理解する知性、代表監督の難しさを知っていること、そしてプレッシングやDFラインの指導については現在Jリーグ一であると思われることなどなど、一番いいのは岡田さんですねえ。もちろんマリノスに悪いので、「岡ちゃんを副官に!」とは私は言いませんよ(笑)。言いませんが、彼が理想に近いことも確かですね。誰かいないでしょうか、「岡田さんみたいな人」(笑)。

ジーコ監督に副官を!J-NETでずっと出ていた議論で、私は反対だったのですが、現状から考えるとそれがベストのように思います。

それではまた。

09:25 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

February 17, 2005

アジアカップ・スタイルと今後

glass3どうにも更新が滞って申し訳ありません。本業の方の仕事が増えてきて、時間が取れなくなって来てしまったもので・・・。もうサッカー雑誌も発売になり、そちらで詳しい分析もされているようなので、いまさら私が書くこともないのですが、まあぼちぼちビデオを見直して気がついたことを書いていきたいと思います。

私は北朝鮮戦のジーコ監督のチーム・マネージメントはかなりロジカルなものだったと思っています。合宿で連携を作れ、コンディションも整えることのできた選手たちでチームを作り、それをピッチに送り込む。練習試合で好調を維持していた大黒をメンバーに入れておく。継続性重視のマネージメントでした。そして、長いこと試合に出ていない選手や、病気でコンディションを崩した選手、長時間移動の上に前日合流でコンディションや連携の整わない選手たちを、試合開始から無理して起用するということはありませんでした。1年前に比べると、実にまっとうになったと思います。

これを変化と捉えるか、「ジーコ監督は昔から同じことをしていたのだ」と捉えるかは、人によって違うでしょう。いずれにせよ、私は昨年2月のチーム・マネージメント上の「悪手」について、「ジーコ監督の『哲学』に起因するものであり、繰り返される可能性が高い」と、「オマーン戦の再現可能性」を指摘していたのですが、北朝鮮戦はマネジメント上はそうではありませんでした。私の不明であったと思います。願わくは、このような合理性が今後も続きますように。

また、ジーコ監督の「采配」も、今回はロジカルであり、かつ効果的であったと思います。スターティングメンバーの決定もそうでしたし、同点に追いつかれてから中村や高原といった「違い」を作り出せる選手を投入することもよかった。また、敵陣に押し込み、スペースがなくなったところで、技術が高く細かい局面で仕事のできる大黒が投入されたのも、効果的だったと思います。ロスタイムの得点は「運」の要素もありましたが、このような采配、メンタル面の刺激の妙によるものでもあったでしょう。

そうそう、もう一つ私の不明を恥じておかなければならないのは、「永井さん、おっしゃるとおりでした」というところですね。北朝鮮は、単独チームがベースなだけあって、よく連携の練られたチームでした。トップに入れるパス、それをダイレクトで落とす、それを受けて展開できる角度でMFがサポート、という動きが、かなり訓練されていて、前半の途中から後半同点にされるまで、日本は翻弄されてしまいましたね。確かに北朝鮮は組織的なチームであり、最後に個人能力に勝る日本が勝利を収めるという構図は、予言(笑)の通りでした。これも、今後、続くことを祈りたいと思います。

さて、私は、「アジア最終予選もアジアカップのやり方でいいのだ」と思っていました。具体的には、「カバーを重視する守備、個人能力、セットプレー、そして落ち着き」といったアジアカップを制した武器のことですね。それらがあれば、アジアの(少なくとも)トップ4に入ることは、確実に可能だと思っていたのです。

しかし、興味深いことに、ドイツ戦の反省から小笠原を中心とした選手たちは、プレスの再整備、守備の再整備といったものを始めたように見えました。それがカザフ戦、シリア戦と効果を上げ、そのままの勢いで北朝鮮戦もスタートすることができ、ピッチの上に見て取れたように、前線から敵DFに対してプレッシャーをかけていきましたね。それが、敵DFのパスミスを誘い、三都主へのファウル、そこからの小笠原のFKで得点へとつながっていきます。これは「ニューバージョンの日本代表」になっていくのかな、とそのときは思いました。

しかし、1点取ったことで日本選手がセーフティ志向になったこと、ボランチがしっかりと当たるタイプの選手ではなく、ボールホルダーを「見て」しまうタイプの選手(特に福西)だったこと、北朝鮮のダイレクトを織り交ぜたパス回しが予想以上によかったこと、またガツガツとした北朝鮮の削りに、精神的にも受身に回ってしまったこと、それらによって、特にボランチが小笠原を追い越していくような(シリア戦ではできていた)動きが激減したこと、そうなるとパスの選択肢が減り、敵にパスコースを読まれてインターセプトされてしまったこと、などなどによって、前半の途中から日本は敵にペースを握られてしまいます(前半15分目以降30分まで、日本はシュートゼロなんですね)。

カザフ戦、シリア戦のような「敵がこちらを研究してこない」親善試合ではできることも、このようにみっちりと研究される真剣勝負の舞台ではできなくなってしまう。さらには、重要な最終予選だという意識も動きの重さに影響していましたね。残念ながら「ニューバージョン」は姿を消し、下がっていくDFラインと、それに同調するようにしてどんどん下がり、ほとんどDFラインに吸収されるようなボランチ、という状態になってしまいました。まるでアジアカップ・ヨルダン戦の再現フィルムを見ているようでした。

やはり、1stプレスとセカンドプレスの役割分担、ポジショニングがしっかりとできていないこと、DFラインとボランチが「アプローチ&カバー」の関係を築けず、どんどん下がって敵にスペースを明け渡してしまっていること、前線は前からプレスしようとして、フィールドがなんとも間延びしてしまっていること、など、ジーコジャパンで常に指摘されてきた問題点が、かなり長期の合宿で連携を高めた後でも、メンタル面の不備もあり、表面化してしまったわけですね。

ジーコジャパンで一番大切なのは、「そういうときでもあわてないメンタリティ」であるかもしれません。現チームは今年の親善試合を通じて、「いいサッカー」を構築しようとしてきたわけですが、北朝鮮戦でその流れがうまく行かなくなると、ややあせりが生まれていたように見えました。しかし、失点後投入された中村と高原は(敵が1点取った後それまでの激しいチェックをしなくなったこともあり)、流れを変えることに成功しました。そこから個人技を生かして落ち着いて攻撃を再構築し、最後の得点につなげたのですね。

このような「苦戦」は、これからも続くのではないかと思います。小野や稲本が復帰すれば、チェコ戦やイングランド戦のような試合をできるかもしれませんが、中盤の守備組織の未整備、下がっていくDFラインなどの点はなかなか変わらないでしょう。そうすると敵に中盤を支配されやすくなる。もちろん最後の局面では、中澤や宮本がいますからそうやすやすとは失点しないでしょうが、試合全体としては「苦戦」の印象が強いものになるのではないか、と思います。

そういう状態でも勝って行くためには、やはりアジアカップでの強み、「カバーを重視する守備、個人能力、セットプレー、そして落ち着き」を重視し、それを十分に発揮していくように考えた方が、ドイツへの道を考えた時には、よりロジカルといえるのかもしれません。そして、「それでW杯での結果を期待できるのか」ということに関しては、これは日本サッカー界全体がよく注視し、見極めていく必要があるのでしょうね。

私は、ジーコ監督の美点、ジーコジャパンのよいところもあることを認めつつ、もう少し中盤での守備や攻撃の連動性を高めるためには、実は「要副官論」を唱えた方がよいのではないかな、という気がしてきています。

それではまた。

02:53 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

February 10, 2005

大黒、ありがとう!

hinomaruいやー・・・・・・。

もう、勝ち点3とれたことがとにかくうれしいです。TVの前で叫んでしばらくは仕事になりませんでした。大黒、ありがとう。大黒に落とした福西、ありがとう。クロスをあげた小笠原、ありがとう!

今日の問題は両ボランチにありましたね。下がって行く3バックの前のバイタルエリアを埋めようという意識が強過ぎ、ボランチ二人もどんどん下がって行ってしまう。以前はボランチと3バックの間にできていたスペースが、今度はボランチの前に出来てしまう。そこを北朝鮮に自由に使われていました。

攻撃面では、フリーランニングのなさがまた際立ってしまいました。特に前半の先制後は酷く、リスクチャレンジがないためにパスの出しどころがなく、停滞したパスまわしから奪われるという悪循環。かなり長く北朝鮮の時間帯を作られてしまいましたね。

これは北朝鮮の非常に激しい球際のプレー、あるいはアフターチャージといったものに気押された部分、それをとってくれない(日本に不利な判定が多すぎませんでしたか・怒!)審判に不信感を持った部分、そしてやはり、最終予選初戦の緊張感に動けなくなってしまった部分、などなどからくるものでしょう。もちろん、共通意識の分での問題が根深いこともその一因ではありますが。

とは言え、同点に追いつかれてからは攻撃にかかるようになって、かつ北朝鮮のスタミナも切れてからは、日本がボールを支配して攻勢を強めました。4バックにしたこと、中村と小笠原が共存したこともよく作用しましたね。そして、最後は大黒!彼の素晴らしいボールのない時の動き、動いている時の体勢の良さ、そして高いシュート技術が、あの瞬間に凝縮されていました。昨年の日本人得点王は伊達じゃないですね。

ともかく、これで最終予選突破に、ものすごく大きく前進したと思います。イランvsバーレーンは0-0の引き分け。日本は現時点グループ首位です。これは本当に良い結果でしょう。今日は全力を尽くして戦った選手、スタッフたちに、お疲れさまと言いたいです。ゆっくりと休んでください。

本当によかった。まだ安堵で半分壊れています(笑)。はああああ。

ちょっと感情的なエントリーですみません。またビデオを見なおして詳しく書きますね。

それではまた。

04:40 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(11)|

February 08, 2005

決戦前夜2005

skyball

もう明日はドイツワールドカップアジア最終予選初戦、北朝鮮戦ですね。エルゲラさんも書かれていますが、またあの、腹が底から沁み透るような、決戦の日々が始まるのですね。

昨年の2月、埼玉スタジアムへ向かう道すがら、私は足の裏がふわふわしたような、腹の底当たりに何か冷たいものが沸いてきているような、そんな感覚にとらわれて驚きました。それが97年の最終予選の試合のたびに、あるいは02W杯ベルギー戦のスタジアムで、あるいは98W杯アルゼンチン戦のスタジアムで感じたものと同じだったと気がついたのは、試合が終わってしばらくしてからのことでした。

あれが、某テレビ局ではありませんが「負けることが絶対許されない、真剣勝負の大舞台」での緊張感というものだったのですね。特に初戦は、どんなにそういう舞台に慣れている選手でも緊張するといいます。観戦者が緊張してもどうにもならないのですが(笑)、それでもそういったゲームでは、サポ席も普段と違い、堅くなっていたような、またはそれを振り払うかのように声を張り上げてるような、そういう状態でしたね。

あの日々がまた始まるのですね。私は今回のワールドカップ予選はきっと突破できるものと、固く信じていますが、それでも対戦相手が日本を研究し、必死に立ちふさがってくる予選は、何があるかわかりません。今回は外せない仕事でスタジアムに行かれないのですが、スタジアムに集う、サポーターの皆さんには、97年の予選の時のような一体感のある応援をして欲しいですね。そして私たちも、TVの前から選手に魂を届けたいと思います。

ところで、何しろ相手が北朝鮮ということで、もういろいろな記事(1)(2)が出ていますが、私は、

「スポーツとナショナリズムが密接に関係するのは仕方がない部分もある」
「しかし、政治問題をスポーツに持ち込むのは、止めて欲しい」
「また、世界的に敬意を払うことが一般的である国旗、国歌に対しては、北朝鮮のそれであっても敬意を払おう」
「それ以外の時間は、一つ一つのプレーに全力で、日本を勝たせるためのブーイングをしよう」

と思っています。もう時間がないので一つ一つ詳しくは掘り下げませんが、いちばんのポイントは

「国歌が流れている時のブーイングは止めよう」
「政治問題に絡めたダンマクや野次は止めよう」
「プレーに対しては、盛大なブーイングをしよう」

ということですね。特に最後のものが、対戦国に対する最大の敬意だと私は思います。まあ日本のゴール裏サポーターのことですから、そんなことは私なんかが言わなくても重々承知の方ばかりだと思いますけど・・・。

さて、ジーコ監督が中村、高原選手の先発起用がないことを言明した件についてですが、私は特に問題とは思いません。まあ、本当は練習を見てコンディションをチェックしてから起用を考えればいいのにとは思わなくもありませんが、ジーコ監督はもともとそういうことをするタイプではない。

あらかじめ自分の中で先発メンバーを決めて、彼らに対する信頼を全力で表明する。それによって彼らの「信頼にこたえよう」というパワーを最大限引き出す、というやり方。「家族観マネージメント」。したがって、この時期に先発を考えていてもなにも不思議はないです。そしてそういう状態ですから、聞かれれば答えてしまう。これもいつもどおりですね。

ちなみに高原選手の「先発でなければ帰りたくない」は、ジーコ監督のこの発言を受けてのことでは「ない」ですね。2得点した試合の後のことですから「それぐらい状態はいい、意気込みもある」と言っているだけだと思います。それをジーコ発言を「受けて」のもののように書くやり方がいやらしい(笑)。

「これでは海外組のモチベーションが下がる」という声もありますが、それは1年前(の国内組)もアジアカップでも同じことですね。サブに回る選手は、事前にサブと決まっている。それでも腐らずにチームに貢献しなくてはならない、と言うのがジーコジャパンです。2月のオマーン戦ではそれに失敗した。そして、雰囲気のいい「家族」になってきた今ならば、国内組がサブの場合は、それができているわけです。

今回は中村や高原もまた「家族」の一員になっているはず。彼らの発言がまた大きく取り上げられていますが、それもスポーツ新聞が騒いでいるだけで、ジーコ監督と目を見て話せば問題なく納得できることと思いますよ。そして、これは結果的には、スタメン予定の選手たちを振るい立たせる強烈な「信頼の証」になったはずです。彼らのパフォーマンスに期待したいですね。

最後に、いつも前向きな中澤選手の発言

(ジーコが国内組をスタメンにすると言ったが)うれしいです。国内組はみんなモチベーションが高い。宮崎合宿からみな頑張っている。昨年から見ても気持ちの上でとても充実している。今のチームの状況は、みんないつもリラックスしている。特に力が入っている選手はいない。明日からどう変わるか分からないが、うまくコントロールしていきたい。自分自身もあまり深刻になるのは好きじゃないので、ワイワイやろうと努めている。国内組で作った雰囲気を海外組に違和感なく伝えられればいい。

 今の国内組はアジアカップやキリンカップで苦しい戦いをこなしているので、プレッシャーには負けないと思う。このメンバーでやれる期待が大きい。相手がどこだろうと、勝ち点3を取る。

ものすごく雰囲気がよさそうですね。とても頼もしいです。この「家族」としての力を結晶し、油断せず、引き締めて、明日は是非勝ち点3を上げて欲しいと思います。

それではまた。

12:00 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(6)|

August 11, 2004

アジアカップ総括(2)

湘南蹴鞠屋さんや武藤さんが、「ジーコジャパンの強さ」について検証しようとしておられる。これは非常に重要なことであるし、私もそこに加わりたいと思うのだが、一足飛びにそこに行く前に、まずは日本代表の6試合を、駆け足であるけれども振り返ってみたい。

■オマーン戦

オマーンは組織的にプレスをかけて来て日本を高い位置から自由にさせず、さらに連動した第3の動きでパスをまわしていく攻撃を仕掛けてきた。結果、シュート数で16対8と、ほぼ圧倒された試合展開となった。

苦戦の原因はまず何よりも選手が動けなかったことであろう。次にオマーンが守ってくるのではないかという予断があったこと。そして、もちろん、オマーンの連動した攻撃に対抗するプレスの組織力を持っていなかったことでもある。

これは意図した大人の戦い方なのだ、という意見もあったが、選手の反省の弁を聞いているとそうは思われない。もちろん大人の戦い方をしようとした部分はあったが、それ以上にやられてしまったという感が強い。オマーンの最後の詰めの甘さに助けられた部分は大きいと思う。

この試合での中村の得点は敵のクリアミスから。そこから素晴らしい切り返しでペナルティエリアに侵入、アウトにかけた素晴らしいシュートを敵ゴールに流し込んだ。圧倒されながらも勝利したこの試合の勝因は、敵のミスを見逃さない、そこできっちり決めることのできる中村選手の存在であるということができるだろう。以前は日本代表は、「ミスに漬け込まれ」「敵はミスからのチャンスをきっちりと決めてくる」「それが世界との壁なのだ」と言われていたものだが、オマーンとの間ではそれが逆転していたわけである。

■タイ戦

試合は先制されて始まった。オマーン戦でも同様だったが、プレスがかかっていない時には、カバーを重視する3バックはどうしても押し上げられない。ボランチとの連携が取れていないとバイタルエリアを明け渡してしまうことになる。そこを突かれスティーにミドルシュートを決められてしまう。

その直後、中村選手のFKで同点。さらに試合を優勢に進め、FKやCKがらみで中澤、福西、中澤と点を追加、実力差どおりの危なげない勝利と言えた。勝因は、セットプレーからの4得点。日本のセットプレーは大きな武器となった。

■イラン戦

一進一退の攻防ながら、イランも無理せずとも決勝トーナメントに進めるわけで、注文どおりの引き分けとなる。この試合、決勝トーナメント進出は決まっていたにもかかわらず、先発メンバーは変更がなかった。

■ヨルダン戦

そのつけは決勝トーナメント一回戦のヨルダン戦で出たのではないか。韓国との試合では雨あられとシュートを打たれながらGKのセーブで引き分けに持ち込んだヨルダンだったが、日本との試合では開始から攻勢に出た。中盤の高い位置からのプレスも精力的だった。運動量で大きく劣る日本はそれを打開できなかった。先制はヨルダン。日本も直後にFKからゴール。

その後はヨルダンペースとなり、日本はボールポゼッションを確保できない。単発のチャンスはあったが、全体としては圧倒されたといっていい出来だった。この試合もプレスがかからず、中盤は間延びし、2トップは孤立し、フォローや押し上げも少なく、前線にボールが納まらないために波状攻撃を受けるという悪循環だった。川口のセーブをはじめ守備陣の奮闘で、何とか失点を最小限に抑えていたが、得点もできず、120分間戦い抜いた後のPK戦で、二人はずした後の驚異的な巻き返しは記憶に新しい。

PKはかなりが運であるともいう。この試合の勝因をあげれば、なんとか失点を抑えたこと、PK戦で圧倒的不利になっても選手が落ち着いて決めることができたことがあげられるだろう。ひるがえって、PKを2本先に決めた後のヨルダンの選手は精神的に緩んでしまったように感じられる。この辺は若さが出たか。

■バーレーン戦

これまでに比べると(選手が「入り方を考えよう」と話し合ったという)試合の入り方はよかったと思われるが、ここでも先制される。取り立ててすごいパス、スーパーシュートというわけではない。中盤でパスを出されたMF、ペナルティエリア内でマークしていながらシュートを許したDF、どちらも疲労から来るミスではないかと思う。

その後は日本も当然攻勢に出る。バーレーンはオマーンやヨルダンに比べるとプレスもゆるく、守備陣もバランスを崩しており、攻略が難しいチームではなかったが、前半は得点できないうちに、遠藤が退場になってしまう。

10人になったことで、選手たちが一人一人より「走る」ようになり、後半には小笠原を入れて起点を増やす。後半開始直後、FKから中田浩二選手のヘディングシュート、同点。さらに中田から玉田へのスルーパス、玉田の素晴らしいシュートで逆転。このあたりは内容もよくなってきていたのだが、リードしたことで気が緩んだか、再びバーレーンにチャンスを多く作られ、そのうちのひとつ、Aフバイルのスライディングシュートを決められてしまう。ここで同点なのだが、日本はカウンターの掛け合いに応じてしまい、やはり見事なカウンターで逆転されてしまう。この被カウンターの際も、DF陣の足が疲労からよれているように見える。

後半終了間際の逆転弾に、もう巻き返すことは難しいかと思われたのだが、日本は三都主のクロスにセンターバックの中澤が思い切った攻め上がりを見せ、終了ぎりぎりに同点弾!さらに延長開始後、玉田がロングボールにうまく体を入れ、そのまま敵陣裏に抜け出しGKと1対1になり、ゴール。その後はバーレーンも最後の攻勢に出て、延長だけで7本のシュートを(日本は2本)打つが、日本は何とか逃げ切った。

バーレーンは、少なくともこの試合ではプレスもかけず、最終ラインも不安定なチームであった。ただ、日本のDF陣も疲労からか機能性を低下させており、もちろん10人になってしまったことの不利はあろうが、先制点をはじめ3点を奪われたことで苦戦してしまった。日本の勝因としては「最後まであきらめない気持ち」と言われる。確かに中澤の同点弾はそのたまものであろう。

■決勝中国戦

中国のレベルは、この大会では韓国、イランに比べると一段落ちるという印象だ。組織的ではあるが、攻撃に怖さがない。ホームであることから決勝に進出したという部分は否めないだろう。

日本は序盤から攻勢をかける。再びFKから、鈴木が折り返し福西がゴール。サイド攻撃から1点を失うが、やはりセットプレーから中田浩二選手が押し込んでゴール。中国は次第に焦りからかバランスを崩して行き、サイド攻撃も遅くなり、どんどん怖さがなくなった。守備も集中力を失い、終了間際にはラインコントロールを忘れたラインの裏へ玉田が抜け出し、そこへ中村が見事なパス、とどめの3点目を奪った。

以上、簡単にアジアカップの各試合を振り返ってみた。これまで書いてきたことの繰り返しになった部分もあるが、こうしてみてみると2004年アジアカップにおける日本代表の戦いぶりのキーワードが浮かび上がってくるのではないだろうか。それはカバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き、である。

(続く)

03:39 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

August 09, 2004

アジアカップ総括(1)

アジアカップ2004は、日本の優勝で幕を閉じた。

この大会を終えて、「アジアのレベルは下がったのか、上がったのか」という議論が見られる。確かに4年前と比べて、この優勝はどのように考えるべきなのか、という視点に立つと、そういう疑問がわいて来るのも当然というべきだろう。

結論からいうと、私は「2000年大会とレベルは変わらない」と考えている。

個別に見ていくと、かつて中間レベルだった国は真摯に努力をし、レベルアップをはたしているが、かつての「強豪国」はさまざまな理由により停滞し、レベルを向上しえていない、という状態であるように私には見えた。つまり「底上げ」はあったが、「総合してのレベルアップ」があるわけではない、ということになる。そういう意味では「グループリーグ突破がより厳しくなった大会である」という事が出来るだろう。

日本と対戦した中間層の国でもそのレベルアップは見られ、オマーンとヨルダンでそれが顕著であった。ただしヨルダンは、日本との対戦以前は守備をしっかり固めるタイプであり、韓国との試合ではシュートを多く受けながらGKのセーブで切りぬける、という戦い方だった(参考:韓国0-0ヨルダン、ヨルダン2-0クウェート、ヨルダン0-0UAE)。日本との対戦時にそのよさがさらに発揮された(日本の調子の悪さが彼らをよく見せた)という部分は忘れてはならないが。

どちらの国も、守備においても攻撃においても組織的に行ない、守備では前線から精力的なプレッシングをかけ、攻撃でも何人もが連動して動きながら、ボールを動かしていくサッカーを実現していた。オマーン戦後に選手が「日本のやりたいサッカーをやられてしまった」と言ったとおりである。どちらの国とも日本はほぼ互角、オマーンにはシュート数で倍を打たれ、ヨルダンとは120分で決着がつかなかった(PK戦で勝利)。

逆に、日本やイラン、韓国、サウジアラビアといった「アジア4強」は、それぞれさまざまな理由により停滞しているようだ。どの国も組織よりも個人で打開を図るチームになっていた。もちろんそれがもともとのアジアのサッカーであり、4年前の日本をはじめ、今回のオマーンやヨルダンのサッカーの方が新風であるということも言えるのだが。そういう「個に頼った」やり方では、レベルアップのためには新しい強力な「個」が出てこないとはじまらないわけで、何人かの「個」は素晴らしかったが、全盛期を凌駕するまでにはいたらなかったということだろう。

ここで特に一つ記しておきたいのが、2002年の韓国の躍進についてである。「コンディションのワールドカップ」(2002年W杯総括)にも書いたのだが、2002年W杯前、韓国は半年間自国リーグを休止し、数ヶ月に及ぶ特別強化合宿を行なった、という事に注目したい。

コンディション作りの重要性や、連携を作るための合宿の期間が大事であることなどは、この2年で(ジーコジャパンの不振の原因を追求する中で)日本のサポの間でも強調されるようになって来たことである。その現在の認識から考えると、高音多湿のアジアで、チャンピオンズリーグ終結からまもなく行なわれたW杯において、そのような特殊強化を行ったチームが躍進するのは、これは非常にロジカルなことと言えないだろうか?

私は韓国のベスト4の背景には、この長期間の特殊合宿、そこで行なわれた集中フィジカルコンディション・トレーニングが、かなり影響していたと考えている。それがなければ、あそこまでの躍進は難しかったのではないだろうか。韓国の「W杯ベスト4」は、そのような強化法による瞬間最大風速なのであって(それが悪いと言うわけではない・笑)、韓国のサッカー全体がそこまでレベルアップしたわけではないのである。

このように考えると、「2000年レバノンアジアカップで3位に入賞した時に比べ、2002年W杯ベスト4を通過したあとでも、韓国の実力はそれほど変わらない」、ということが言えるだろう。今回のアジアカップでのベスト8敗退は、韓国の人々にとっては不満だろうが、監督後退直後でもあり、不思議なことではないのである。もちろん、W杯で得た自信、海外で活躍する選手たちを輩出する選手層のレベルアップというものはあるが、それは強化策をおろそかにすれば、打ち消されてしまう可能性もある、ということだろう。

さて、本題にもどると、

「アジアカップ2004は、2000に比べて同程度のレベルである」
「中間層のレベルアップはあったが、強豪国は停滞していた」

と私は考える。

日本のグループリーグ突破は中間層のレベルアップにより難しくなった。サウジアラビアはウズベキスタンに行く手を阻まれ、クウェート、UAEはヨルダンの後塵を配した。ベスト4はそれでも日本、中国、イラン、バーレーンであり、やはり選手層の厚い、経験豊富な強国がからんで来ることになったが、これは中間層のレベルアップも、まだその壁を突破するにはもう一歩ということだろうか。

今回の結果を受けて、オマーン、ヨルダン、ウズベキスタン、バーレーンといった国々が合理的な強化策の効用を再認識し、それに力を入れ続けると、アジアの底上げはさらに進むであろう。また、今回はさまざまな理由により停滞したかつての強国たちが、やはり合理的な強化プログラムの必要性に気づき、それに邁進すれば全体としてのレベルアップも進むことになろう。しかし、後者については、日本を筆頭に、なかなかそのような合理的強化に専念できない事情もあり、向上できない可能性も高いと考えられる。

このように、「底上げはあったが全体としてのレベルは変わらない」という2004アジアカップであった。では、そこでの日本代表の戦いぶりはどのように考えられるべきだろうか。

(続く)

09:46 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(1)|

優勝おめでとう!

まずは優勝おめでとうございます、ジーコジャパン!

昨夜は喜びのあまり痛飲、今日はそのまま出かけてしまい、更新が遅くなってしまいました。どうもすみません。

中国戦は、ようやくいい試合ができましたね。優勝は最高の結果です。あれだけの大アウェーで堂々と勝ち抜いた選手たち、素晴らしい戦いぶりでした。ジーコ監督もよく選手たちをまとめてくれました。スタッフ、関係者も素晴らしい働きを示してくれたと思います。おめでとう、そしてありがとうございました。

昨日の追記部分にも書いたように、ジーコの人間性、周囲が完全アウェーであったこと、サブのメンバーの尽力などにより、このチームは完全に一つの家族のようなチームになったように思えます。2月のオマーン戦では、時間もなく、海外組みも急遽合流するだけという条件下で、このようなチームにはできていませんでしたが、ついにさまざまな条件が一つに重なり、なんとも一体感のあるチームになりました。それがなければ今回は優勝できなかったでしょう。この部分に関してはジーコ監督に大きな賛辞を送りたいと思います。

中国は、「トルシェ日本の夢を見る」かのようなチームでしたね(笑)。トルシェ日本と違うのは、組織サッカーを目指しながら、それに適合した選手の数が少ないというジレンマを抱えているところでした。

最終ラインは4人のDFをフラットに並べた形。どんどん押し上げて、コンパクトフィールドで戦おうとしていましたね。ただこの場合、中盤でプレスがかかっていない状態になったらいち早く敵FWのポジショニングやプレー意図を確認しながら後退しはじめなければならないのですが、DFたちの「プレスがかかっている/いない」を見て取る能力が低いという問題がありました。また、バックミラーも真ん中の選手がかろうじてできている程度。一言でいえば、「中国には宮本や森岡がいなかった」というところでしょうか(笑)。

中盤低めででぽんぽんとダイレクトパスをつなぎ、サイドへ展開する組み立ては悪くありませんでしたが、後半日本がサイドへのケアに人数をかけるようになると、とたんに突破の回数が減りました。本当はインサイドへいったん入れてパスアンドゴーなどをしたほうがいい場面でも、ルックアップができていない上に、ボールを受けたときの体勢が悪いから、前方へ突っかけていくしかなくなる。前半はまだしも、後半の中国の攻撃にはほとんど怖さがありませんでしたね。また、コンパクトにしている割にプレスもゆるい。あれではラインを上げている意味がありません。

対して日本は、散発的に攻撃はしているんだけれども、中国がプレスをかけてこない割には攻め手が少ないな、という印象でした。3-5-2でノンコンパクトでは、中村選手が下がってボールを受け、FWへのパス供給にこだわっていると、高い位置でのFWのフォローをする選手が足りなくなります。特に今大会では全体が下がってDFをすることが多く、そこからではボランチの上がりも時間がかかる。高い位置に起点を作りやすいやり方のほうがいいのではないかな、と思いました。

とはいえ、セットプレーという絶対の武器を持っているのは強い!流れ全体では、試合は互角の展開かなと思いましたが、セットプレーのたびにほとんど点になりそうな予感がするというのは素晴らしいものです(笑)。そういう意味では私は意外と中村選手のMVPにも納得気味だったりします。

中国戦は、レベルの高い選手たちが、(アウェーで)現実的にラインを下げつつ守り抜き、セットプレーという自らの強みを生かして勝利するという、ある種理想的な展開でした。アジアカップのこれまでの試合と比べても、特にメンタル面で成長の感じられる、よい試合でした。こういう試合で優勝できたことがなお素晴らしいですね。

大会全体、日本代表の戦い全体の検証はまた後日じっくりとしなければならないと思いますが、いまはとりあえず、優勝という最大の結果を残した日本代表の選手、ジーコ監督、スタッフ、そしてこれらの選手を生んだ日本サッカーに携わるかたがたすべてに、感謝と賛辞を送りたいと思います。ありがとう、おつかれさまでした。しばらくゆっくりと休んでくださいね。

それではまた。

12:40 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(0)|

August 02, 2004

というわけで

さて、この件ですが、どのような内容でも、PK戦でも、ベスト4には到達したので、私は「解任を唱えることを止める」ことにしたいと思います。

「解任」という二文字は、J-NETでも「何か悪いことをした場合に懲罰的に行われるもの」などと思っている方もおり、非常に扇情的な、人のネガティブな気持ちを煽り立てるものであると思います。そこで私は「私的基準」を定め、ベスト4を達成したら「解任を唱えることを止める」ことにしました。

ただ、以前にもJ-NETには書きましたように

ただ、申し訳ないのですが、アジアカップベスト4をクリアしたとしても、私が「支持派」に鞍替えすることはありません。ジーコ監督の手法の問題点、また、現在はさまざまな外的要因により解消されている、春先の「とんでもない悪手」が、時間のないときに復活してしまう可能性などが、色濃く残るからです(この問題に対する対処は「時間のたっぷり取れる」アジアカップで見ることはできないのです)。

このようにも思っています。今回のアジアカップではもう既に、「悪手」@重慶バージョンが復活しているようですが・・・。

いずれにせよ、私は主体的に「解任」を求めることは、今後はしないつもりです。日本サッカー協会がジーコ監督に就任を要請し、それをメディアも一部のサポも歓迎し、これまで容認してきたのですから、今後もジーコ監督でいくことを見守らざるを得ないのでしょう。私は、これからは「解任要求」ではなく、ジーコ監督の方針や手法、ピッチの上のサッカーに問題があったらそれを指摘することに留めたいと思います。

多くの方から、それでは甘すぎるのではないか、という問題提起をいただきましたが、やはり一度口に出してしまったことですので、そのままにしたいと思います。ただ、この監督の下で戦わなくてはならない選手の体が、本当に心配ですが・・・。

それではまた。

01:42 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(5)|

July 28, 2004

さまざまな見方

もうイラン戦ですね。なかなか更新ができなくてすみません。

タイ戦は、オマーン戦よりは動けていましたが、先制されて動かなくてはならなくなっていたわけで、コンディションがどれほど上向いていたかは今ひとつ、わからないところですね。セットプレーがらみとは言え4得点、結果としてはグループリーグ突破を2試合で決めたのですから、上出来というところでしょうか。

さて、今週のサッカーマガジンでは、当然そのアジアカップに関する記事が多かったのですが、まずは田中誠選手の談話が興味深かったですね。オマーン戦に関して、

実は僕たちは、終始余裕を持って守れていたのだ。見る側はハラハラしたかもしれないが、プレーヤー・サイドとしては「追い付かれるのではないか」といった恐怖感はまったくなかった。むしろ思惑通りの展開だった。

と言っています。私たちは「見る側」ですから(笑)、ハラハラしましたし、Jリーグの選手の談話などでも「追いつかれるとは思っていなかったが、一瞬の隙を突かれた」などという談話はよくあるので、ちょっと「ホントかなあ」と思ってしまいますね。

タイ戦の被先制点には、

明らかに油断があったことを認めなければならない。先制点を許した場面は、相手の攻撃を遅らせるつもりであえてドリブルで持たせた。ところが結果的に寄せが甘くなり、そのままシュートを叩き込まれてしまった。

とのことです。「○○したつもりだったが、結果的に・・・」という言葉は、オマーン戦と真逆(笑)。ちょっと、どのように受け止めればいいのか迷うところです。

私は、いろいろな方と意見交換をして、「オマーン戦では大人の戦い方を目指したが、予想外に押し込まれ、思った以上にピンチを作られた」という見方が、総合すると正しいのではないか、と今では思っています。

さて、後藤健生さんは、オマーン戦の前半については「あのコンディションを考えたら理想的な展開」「日本がいちばん大人のチームだね」と大絶賛です。ところが後半については、「あそこまで攻め込まれ続けていては、リスクは大きい」「引きすぎて苦しい試合にしてしまったのは失敗だった」とのことです。

これはちょっと妙だなあ、と私は思いました。「大人のサッカー」「成熟した試合運び」と評するには、それが90分トータルして、一試合コントロールできてはじめてそう言えるのではないでしょうか?前半は素晴らしい「大人のサッカー」、後半はそうではない、というのは、「大人のチーム」なのかなあ?

後藤さんは前半と後半とを引き合いに出して、

「ジーコ原理主義」の長所と弱点の両者が見えたのがオマーン戦だったのではないか。

とまとめていらっしゃいますが、ちょっと前半だけをもって「大人のサッカー」と言い切るのは強引のような気がしますね。

最後に、どちらかというとジーコ監督を擁護する論説が目立っていた西部謙司さんですが、「こういう試合もある」でいいの?と題して、オマーン戦について、オマーンに押し込まれた理由を分析しています。まずは次の3つの要因をあげ、

1.選手の力量差
2.FWのキープ力不足
3.判断の甘さ

そして、

一番大きな原因は日本選手にあった“予断”だったのではないだろうか。

としています。結びは、

サッカーは言葉ではなんとでも言える。オマーン戦をどう言い表すこともできるが、自分の言葉にごまかされてはいけない。厳しいぞ、油断するなと言いながら、オマーンに圧倒された事実を深刻にとらえる様子もなく、ムードだけが非常にいいという状況に、重慶の暑さの中、多少薄ら寒い感触を覚えた。

チームのムードがいいのはよいことですが、なぜオマーンに圧倒されたのか、の分析も、10月を見据えてしっかりとしておいて欲しいものですね。

以上、なんとも興味深い、三者三様の意見でした。

さて、今日はもうイラン戦です。強敵ですが、よい内容ですっきりと勝つ、という試合がそろそろ見たいですね(笑)。また、グループリーグ突破は決まりましたが、ジーコ監督がメンバーをどうマネジメントするか。それが最終的な、この大会自体の成績につながるだろうことはもちろんですが、この酷暑の大会では、選手のためにも、うまくやって欲しいものだと願わずに入られません。

それではまた。

04:27 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

July 23, 2004

能動的に引いて守ったのか?

私は、2月のオマーン戦では心底落ち込みました。しかし同時に、あれほどひどいサッカーはもう見ないで済むだろう、あそこが「底」だろう、と思っていたのですが・・・。

世間では、いくつかポジティブな意見も見られるみたいですね。

1)優勝をにらんで、グループリーグ初戦にはコンディションのピークを持ってきてない。その状態で勝てたのだから、よしとするべきだ。これからコンディションは徐々に上昇する(それに伴って試合内容も改善するのだ)。
1´)優勝をにらんで、選手が自主的に6試合分のスタミナ配分をしたのだ。つまり「動けなかった」のではなく「動かなかった」のである。もちろん、必要な時はもっと動き、決勝までスタミナは持つのである。
2)このような酷暑の大会では、人もボールも動くサッカー、あるいはスタミナを要するプレッシングサッカーは無理だ。それは放棄し、意図的にわざと引いて、敵を引き出してのカウンターサッカーをしたのだ。それが成熟した大人の戦い方というものだ。

なるほど、どれも一理あるように聞こえます(考えの内容が一部違う、というような場合にはお教えください)。

1)については、「理論的にはありますね」「そうだといいですね」と私も思います。これは実際にこれからの試合での、選手の動きを見ていけばわかることでしょう。

ただ、「チーム・ジーコ」は、コンディションに関して、2月のオマーン戦でも国内の選手が動けていないとか、シンガポール戦へ向けた暑熱対策とか、私から見ると疑問の残る仕事ぶりが多かったのも確かです。大会全体でのコンディショニングがうまくできるのかどうか、ちょっと心配ではありますが、それもこれからの試合を見ていけばおのずと判明することでしょう。

1´)と2)については、どちらも「意図的にそうしたのだ」という点で共通点があるように思います。確かにジーコ監督も、引いて守ってカウンターという指示を出していたようです。特に先制できた場合には、これは間違った戦い方ではないでしょう。

しかし、私はこのやり方が機能していて、「成熟した大人の戦い方」であるとするには、条件があると思います。

A)決定的なチャンスをあまり作らせないこと。
B)跳ね返したボールを有効な攻撃につなげられること。

言うまでもなく、人数をかけて引いて守るのは、ラインを上げて攻撃的に守るのよりも、そちらのほうが守りやすいのでなくては意味がありません。裏を取られることが少なく、DFが前を向いてボールと敵を同時に視野にいれて守れる。だから守りやすく、ピンチになりにくい。それを求めて「人数をかけて引いて守る」わけですね。

また、どれほど実力差があろうと、ゴール前で波状攻撃を受け続けたら、何らかのきっかけ(単純なミス、ボールの跳ね返りなどのちょっとした偶然)で失点してしまう危険性も高くなります。さらには1点はセーフティーリードではない。引いて守るにしても、そこから効率的なカウンターにつなげられないと、やはり問題だと思います。

では、アジアカップでのvsオマーン戦の戦い方は、その2条件に合致していたのでしょうか?

私は、人数かけている割に、ずいぶんと決定的なチャンスを作られているし、また攻撃に関しても、効果的なカウンターはほとんどなく、ゆっくりしたボール回しでポゼッションを回復することもできなかったなあ、という印象を持っています。みなさんはどうでしょうか。

選手の談話を見てみると、

本山:「後ろが薄くなってた。もうすこし守備をしっかりやらないといけない。」

川口:「(反省点は?)相手にボールが渡ったときに近くに寄るのが遅かった。」

宮本:「後半になって、こぼれ球を拾えなくなっていた。ここから攻めに行く、ってときに(ボールを)取られたりしたことが、あんなに攻め込まれた理由だと思う」

福西:「(プレスが甘かったように見えたが?)前(の選手)を使って方向を限定しないと、あれ以上はいけない。そういうのはみんなで直したい。」

中村:「一個一個の寄せが遅れていた。ゴールのあと、もう1点行きたかったけど、自分たちで苦しんでしまった。後ろから押し上げられなくて、孤立してしまった。」

などなど、どうも「自分たちの作戦としてわざと引いて守った」というものには聞こえないものが多いですね。川口の「DFラインはしっかりしていた。攻め込まれたけど、要所要所できっちり対応できていた。」はその中ではポジティブな印象を残すものですが・・・。

宮本もやはり、

「中盤の守りがないと、守備ラインをゴール前まで下げざるを得ない。思い通りの(守備の)陣形も作れない」

と言っているようです。以前からも「ボールの奪いどころ」がこのチームの課題だと彼は語っていましたが、まだ改善されていないのでしょうか。

思えばやはりシンガポール戦も、DFラインが下がりすぎ、バイタルエリアを開けてしまい、そこを利用されてミドルシュートを打たれ、失点していますね。ホームでのオマーン戦でも、バイタルエリアにぽっかりと空間が広がっていました。どうもこの辺はジーコジャパンの伝統(?)であるような気もします。心配なところです。

いずれにしても、この戦い方が意図してわざとした「成熟した大人の戦い方」だったのかどうか、あるいは大会の初戦だからコンディションを上げていないことによるものなのかどうか、それはこの大会を通じて明らかになるでしょうね。私も日本代表があそこまで弱くなったとは思いたくないので、その意見が正しいことを切に祈ります。

アジアカップは始まったばかり、一試合で「結果が出た」ということもないですし、一試合の内容の悪さで「もうダメだ」という必要もない。大会が終わった時点でどういう「結果」になるのか、それを求めるチームマネージメントはどうなのか、ということを、しっかりと見て行きたいと思います。

それではまた。

04:04 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(1)|

July 20, 2004

選手名表記が!

えーと、私の展望は大外しだったのでしょうか(泣笑)。

いや、あの展望は6試合トータルで考えたもの。これからよくなるに違いない!そう思うことにしましょう。

しかし、見ているとなんだか悲しくなる試合でしたね。私は本気で落ち込んでしまいました。

よほど暑いんでしょうね、現地は。そうとしか思えない。そこで90分間戦い抜いた選手たちには、とにもかくにもお疲れさまといいたいです。今日はゆっくりじっくりと休んで欲しいですね。

それと、大会で上位に行くチームは、グループリーグではわざと調子をとしておくことが多いんですよ。日本が戦った仏W杯でのアルゼンチンなんかもそうでしたよね。コンディションを落とした中でも勝ち点3。ある意味、フィジカルトレーナーの狙い通りなのでは?ここからしり上がりに調子を上げていくのでしょう。きっと、そうでしょう。そう思いましょう。

でも、1次予選のオマーン戦は相当ひどい試合だと思っていましたが、下には下があったとは・・・。

敵にボールを支配され、シュート数もダブルスコアで(8:16)負けている。敵のシュートミスで何とか救われただけ。もちろん勝てばいいんですよ。大会をにらめば、勝ち点3は文句なし!悪い試合内容で勝っても「たくましくなった」という言い方だってできる。でも・・・。

そういえば、オマーン代表はGKを除き、ほぼ全員がアマチュアではなかったでしたっけ。
確か平均年齢、20そこそこではなかったでしたっけ。
オマーンはこれから強くなりそうだなあ。

・・・ということでちょっと調べてみました。

2月の1次予選のときは平均年齢20そこそこでしたが、あれから何人かが誕生日をむかえたようです(笑)。

オマーン代表

FW 8 バデル・ムバラク・サレハ・アル・マイマニ  1984.07.16 20歳
FW 20 イマド・アリ・スレイマン・アル・ホスニ  1984.07.18  20歳

MF 10 フージ・バシル・ラジャブ・バイト・ドゥールビーン 1984.05.06 20歳
MF 21 アハメド・ハディド・トゥワイニ・アル・ムハイニ  1984.07.18 20歳
MF 12 アハメド・ムバラク・オバイド・アル・マハイジリ  1985.02.23 19歳

MF 17 ハサン・ユスフ・ムダフィル・アル・ガイラニ    1980.06.26 24歳 
MF 11 ユセフ・シャーバン・ムバラク・アル・ブサイディ  1982.11.04 (後半途中からFWへ) 21歳

DF  4 サイード・アシューン・スワイレム・アル・ラカディ 1983.08.28  21歳
DF  2 モハメド・ラビア・ジャマン・アル・ヌービ(Cap)  1981.05.10 23歳
DF 25 ハリファ・アイル・アル・ナウファリ        1984.03.01  20歳

GK 26 アリ・アブドラ・ハリブ・アル・ハブシ      1981.12.30   22歳

てことで、現在の平均年齢は20.9歳というところですね。
バシールも20なのかあ・・・。

というか、スポナビとNHKの表記がばらばらで困りました。
10番はバシールなのかフージなのかドゥールビーンなのか?
統一してくれー(笑)。

****

試合の中身は、ちょっと触れる気になれません。とりあえず、川口のセーブと、中村のシュートは一本、素晴らしかった、ということだけは確かですね。

ふう。

それではまた。

11:04 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(3)|

アジアカップ展望

あと出しになる前に書いておかなくちゃ(笑)。駆け足ですが。

私は今回のアジアカップ、日本代表はかなりいいところまでいくだろうと考えています。優勝できるかどうかはともかく、特に問題がなければ、おそらくは決勝まではたどりつけるのではないでしょうか。

そう考える理由はいくつかありますが、まずはこの大会が「時間の取れるもの」であるということが一つです。以前から、「選手が話し合いでチームを作る」というジーコジャパンの特質から、時間がない時や急に選手が入れ替わったりした時に機能させるのは難しいのではないか、と指摘してきましたが、今回はそうではありません。欧州遠征から数えなくても、キリンカップの2試合を戦い、ある程度の時間の取れる合宿の後の大会ですから、ジーコジャパンとしてはいいところを見せることができるのではないでしょうか。

次に、戦術的な問題です。ジーコ監督のサッカーは、一人一人がボールを持つ時間が長い、「持ってから考える」ポゼッションサッカーになる傾向があると思います(最近はパターン練習を増やしているようで、その点も改善されているかもしれませんが)。私は、対強豪国ではそれで大丈夫なのか、と不安なのですが、アジア相手ならばそれでちょうどいい(笑)かもしれません。

日本はアジア相手では、個人能力でほとんどの対戦相手よりも上に行くことができるでしょう。インド戦は極端にしても、例えばオマーンとの1次予選でも右サイドでの中村選手の切り返しにオマーンのDF2人がそろって転んだ(笑)ケースとか、高原選手がペナルティエリア内で敵を背中で吹っ飛ばしてシュートまで行ったシーンなど、枚挙に暇がないですね。

このように能力差があれば、そこを生かした、どちらかといえばルーズなフィールドでセーフティーにボールを奪い、1vs1を頻発させてそれを制することで攻撃を作っていく、そういうやり方で問題がない可能性が高いでしょう。少なくとも、ベスト4以上での対戦相手でなければ、それで大丈夫だろうと私は思います。

最後に、オマーン戦やシンガポール戦で見せたジーコ監督のマネジメント上の「悪手」は、さまざまな要因により、欧州遠征以来一応は影を潜めている、というポジティブな要因があげられます。コンディションの悪い海外組を強行起用することも、特定の選手に大きすぎる役割を与えることも、それらによるモチベーション・コントロールに失敗することも、国内組のコンディショニングに失敗することも、ここしばらくは起こっていないようです(最後の部分は酷暑の重慶でどうなるか、不安ではありますが)。

私は、これらがオマーン戦やシンガポール戦で、日本があれほどの苦戦をしてしまった原因だと思っているのですが、それがない現在の状態なら、日本代表の本来の実力を発揮できるでしょう。

さあ、いよいよオマーン戦ですね。この大会を制するためにも、そして1次予選のアウェーでのオマーン戦のためにも、この試合にはすっきりと、いいカタチで勝つことを期待したいと思います。そして、現在の状態ならばそれは可能だと思いますね。不安は選手の怪我や疲労だけでしょう。

それはさておき、今はただ遠い重慶の空の下にいる選手たちに、私たちの応援を届けたいですね。連覇へ向けて、ガンバレガンバレ、日本代表!

それではまた。

06:51 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(2)|

July 16, 2004

アジアカップの私的基準

アジアカップが近づいてきましたね。選手たちも今日(15日)重慶入り、初戦のオマーン戦は20日(火曜日)です。いよいよアジアの頂点を決める大会が始まります。

日本はディフェンディングチャンピオン、その名に恥ずかしくない戦いを見せて欲しいですね。そして、もちろん優勝を狙って欲しい。

思えばこの4年間、日本はアジアチャンピオンとして2回のコンフェデ杯に出場し、またそれ以外でも、「アジアチャンピオンだから」ということでいくつかの親善試合が組めました。そして、実に多くの経験を積むことができましたね。なかなか列強との真剣勝負を組めない日本の強化に、それらが大きく役立っているのは、いうまでもないことだと思います。

ここでアジアチャンピオンになるか否か、それは今後の4年間の強化過程を左右する大きな問題です。それだけではない、もちろんプライドをかけて、ぜひ引き続きアジアに覇を唱えて欲しいものだと思います。なんと言っても、2002W杯ベスト16ホルダーなのですからね。

・・・・という話とは別に、私は個人的にアジアカップの「私的基準」を定めました。

それは、サポ同士の間で支持だ、解任だ、ということでいがみ合っている現状が、やはりよくないことであると考えるからです。

湘南蹴鞠屋さんは以前に、

その一方で監督が誰であれ、自分は日本代表のサポーターの一人です。今回のように代表チームの成長を見ることは大変嬉しいことですし、そもそも監督の人事に関する混乱で、チームの強化が停滞したり、サッカー界全体にネガティブな空気が蔓延することは決して良いことだとは思いません。

そこで私はこう考えます。JFA、ジーコ監督自身、選手達、それからサポーターの中のジーコ擁護派もジーコ解任派も、それぞれが納得し、腹を据えて、日本代表を強化・応援し続けるには、アジアカップにおけるジーコジャパンに明確なノルマ・目標を設定することではないでしょうか?

このように書かれています。私もこれに完全に同意します。そして、以前にJ-NETにも書いたのですが、その私的基準を私は「べスト4」とすることにしたいと思います。

本来はこれはノルマというより、
「その基準をクリアしたら、解任派は解任を要望することを止める」
「その基準をクリアできなかったら、支持派も解任に同意する」
という「サポの分裂を解消するため」の、われわれの内なる基準を決めようということです。

ただ、これには「不公平である」というような異論もありましたし、支持派の方たちからこの基準に同意もいただけませんでした。なかなかこれをコンセンサスとすることは難しかったようです。しかし、私は私個人として、「少しでもサポ間の無用の対立を解消する役に立てば」と考え、この私的基準により、「その基準をクリアしたら、解任を要望することを止める」ことにします。

少しさかのぼって考えますと、私は2003コンフェデ杯で「不支持」を決めました。それは「ジーコ監督のやり方では、『時間が取れないことがわかっている』アジア最終予選が危険だから」でした(アジア1次予選のことはそのときは少しも心配していませんでした)。

しかし、オマーン戦、シンガポール戦で、コンディション、試合勘を無視した海外組の強行起用、熱のある選手の起用、特定の選手に大きすぎる役割を与えること、それによるモチベーションコントロールの失敗、国内組までもコンディショニング(特に暑熱馴化)に失敗、などなどの、とんでもないマネジメント上の「悪手」をジーコ監督は打ちました。それによって、シンガポール戦でさえ、あれほどの苦戦をしてしまいました。

問題は彼がそれを反省し、改善することを考えていないようであったことです。オマーン戦直後に帰国してしまったり、あるいは会見での内容を聞いていても「正しいことをしている」と思い込んでいるようでした。これでは改善が望めない。同じことがオマーンよりも強い敵と戦いアジア最終予選で起こったら、恐ろしすぎる。それが私が「解任希望」を決めた理由です。

しかし、私はトルシェの解任騒動の時に、「やはり解任という二文字は、サッカー界にネガティブなエネルギーを与えすぎる」と感じていました。そのため、長らく「不支持」ではあっても、「解任」という言葉は避けてきたのです(一部の人に煽られながらも、ですね)。あまりに「悪手」がひどかったために私は「解任希望」を決めましたが、その後の各所の掲示板やサポの現状を見ていると、やはりあまり歓迎すべき状態とはいえないと思います。

そこで私は先にも述べたように、「アジアカップでベスト4に入ったら、解任を唱えることを止める」こととしたいと思います。

これは低すぎる目標という人もいるかもしれません。しかし、一応アジア予選をクリアできるはずの目標値ではあるわけです。そして、「解任」という非常にインパクトのあることを要求し続けるのには、「アジア予選がクリアできない」という基準が合理的だと私には思えます。また逆に、さすがに4年前のアジアチャンピオン(当時もヒデ抜きでした)が、このくらいの目標をクリアできなければ、多くの人が解任を納得できるのではないでしょうか。

さて、選手たちはもう戦いの地に赴いています。キリンカップでは、結果もさることながら、雰囲気のよさ、モチベーションの高さを感じられたことが大会への希望でしょうか。ぜひチーム一丸となって、私たちの心配を吹き飛ばすような戦いをして、アジアに日本の実力を見せつけてやって欲しいですね。

それではまた。

12:04 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(8)|

July 10, 2004

キリンカップですねえ

スロバキア戦。

取り立てて言うほど悪くはないし、取り立てていうほどよくもない。
いつもの「キリンカップ」という感じでした(笑)。

前半は少し攻めあぐねましたね。
敵は「チェコを倒した日本」だと思って、ものすごく警戒してきたのでしょう。
さらには日本のホームですし。
あまりプレスはかけず、スロバキア陣内にいったん引いてそこで待ち構えて、入ってきた選手をハードにつぶす、というやりかたでしたね。
攻撃も序盤はなんだかロングボールを蹴ってくるのみで。
そのうちつなごうという意図も出てくるようになりましたが、今度はクロスも明後日のほうへ飛んでいく始末。
そんなスロバキアを攻めきれない日本。
まあ確かに前半はいまいちな試合展開でした。
しかしその終盤にセットプレーで一点取れたことはよかったですね。

後半、フィールドがさらにルーズになって、敵のマークが甘くなると、日本のパスも次第によくつながるようになります

ところが、この辺から敵も疲れが出て、後追いの守備になり、ハードなだけではない、明らかにファウル、ラフなチャージが増えていきます。
そのせいもあるのか、日本の守備が一瞬ボールを見てしまうことが多くなり、敵が前に出る機会がやや増え、そこからCKを与え、失点。
あいかわらずセットプレーからの失点が多いジーコジャパンです。

しかし失点直後、セットプレーを素早くリスタートし、鈴木がナイスゴール!!
点が取れないと揶揄される鈴木ですが、意外とやるじゃん、と思った人も多いのではないでしょうか。
この瞬間、敵の集中が切れていましたね。
そこを突けるのは、チームが大人になってきたということでしょうか。
加茂監督時代のメキシコ戦の、素早いリスタートからの得点を思い出しました。

さらに終盤、腰痛を押して投入されたヤナギ、GKがバックパスの処理にもたつく間に奪ってゴール!
ヤナギらしくない(?)、泥臭いゴールでした。
やるじゃん、ヤナギと思った人も(以下略)。

終始試合を支配して、3得点を奪っての勝利はまあ完勝と言えましょう。
でもまあ、キリンカップって昔からこんな感じです(笑)。
やはり本番はアジアカップととらえ、ここから収穫と課題を見つけて、先につなげて行くことが大事でしょうね。

スロバキアの守備陣は、それほどラインは低くないものの、待ち受けてしっかりと守るタイプでした。しかも、身体も大きく、非常にフィジカルが強い。これからアジアカップで、引いて守るチームを攻め崩さなくてはならない日本代表にとっては、いいレッスンとなりました。

やはり(トルシェが言っていたように)正確なキックを持つ中村からのセットプレーが、一つの大きな武器になりましたね。福西、中澤とヘッドの強い選手もそろっています。アジアカップでもここが非常にクローズアップされてくることになるでしょう。

また、遠藤が言うように、「後ろでボールを回す時と、早く攻める時の区別ができた」というところは、一つの収穫といえるでしょうね。

しかし、その早く攻める時に、パスを受けに走っている選手が少ないところが課題といえるでしょうか。中村が下がり目で、前方の選手へのラストパスばっかり狙っているようなところが、それを助長していたと思います。個人的には、改善して欲しい点ですね。

守備、中盤の構成的には、敵の攻撃も少なく、プレスも甘かったのでちょっと収穫、課題というほどのものは出ませんでした。後はお決まりのセットプレーの守備でしょうか。何とかしてもらいたいものですが・・・。

ジーコ監督は、アジアカップをにらんで多くの選手に経験を積ませようという意図が見えました。これはよいことでしょう。坪井が負傷してしまったのは大変残念ですが、次のセルビア・モンテネグロ戦でもいい強化をして、アジアカップに備えて欲しいですね。

それではまた。

03:27 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク | コメント | トラックバック(1)|