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February 22, 2008

協会は断固たる態度をとるべきだ

私は、こちらに書いたように、AFC内での中東の発言力に対抗するために東アジアサッカー連盟を発足させたことには、それなりに理解できるところもあると考えていた。

しかし、昨夜の中国戦を見た後では、もはやそんなことを言っている場合ではない。

中国に反日感情があろうとなかろうと、あのようなサッカーは許してはいけない。日本協会は中国チームに対し厳重に抗議するべきであり、そのような試合を許したジャッジ、および審判を選定、配置した大会実行委員会、ひいては東アジアサッカー連盟にも断固たる態度で臨むべきだ。川淵キャプテンは、

川淵: ああいうレフェリーのひどさは最近見たことがない。あれは完全にレッド。黙って見ている手はない。放置するのもよくないい

コメントし、東アジアサッカー連盟に「事情聴取を求める」という。これはしごくまっとうなことであり、あたりまえでもあるだろう。ただ、「説明を求める」というのではいかにも甘すぎないだろうか。また、こちらでは、

協会からは、中国選手のラフプレーに対する抗議ではなく、危険なプレーを放置するなどした審判の判断について抗議を行うよう伝えたという。

という情報もある。さらに、これまでの協会の「餃子を食え」発言などを鑑みると、協会上層部は「友好のため」などと言って問題をうやむやにしてしまいかねないと感じる。かつては川淵氏はこのようなことも言っていたのだ。

二宮: アジア外交が行き詰っている日本にあって、サッカーだけがうまくいっている。これもぜひ発展させて欲しい。

川淵: 同じ話をソニーの出井伸之さん、電通の成田豊さんからも要請されました。「今、日・中韓の関係が悪いので、サッカーで積極的な交流を図りましょう」と。その第一陣として韓国、中国の協会会長にホーム&アウェイでの試合を持ちかけた。8月7日に中国の秦皇島で行われたU-21の試合もその一環です。

サッカーと政治を混同してはいけない。親善はけっこうなことだが、それよりも選手の安全の方がはるかに重いはずだ。中国戦では、まるでサッカーとはいえない危険なプレーが横行し、あれでは選手生命を失ってもおかしくない。「友好のため」に選手の安全を危機にさらす資格など、誰にもないはずだ。協会トップは、選手のこと、ひいては日本サッカーのことを考えるなら、今回の件についてただ事情説明を求めるだけでなく、もっと問題を重く捉えるべきではないか。

具体的には、まず中国戦についての謝罪は当然として、審判の資格停止を求め、かつ今後は公平を期すため、および選手を守るために、大会に欧州の審判を呼ぶことを主張するべきだろう。そして、それが聞き入れられないならば、東アジア連盟から脱退する、と宣言するくらいまでしたほうがよい。中国や韓国が東アジア連盟を大事だと思うのなら、即刻現在の態度を改めなければならないのだと教えてやらなければならないだろう。

このような悪質な反則、それを許す審判が横行するのが東アジア連盟であり、東アジア選手権であるのなら、そこにとどまる価値はもはやないはずだ。AFC内の発言力の向上?どんなことも、選手の安全を上回る価値があるはずがないではないか。一時的には東アジアで孤立するかもしれないが、AFC内には留まれるのであるし、今回の試合の悪質さをFIFAに訴えるなどすれば、実質的な問題はほとんどないはずだ。

日本協会は、日本の選手を守るために、すぐにでも具体的な、かつ断固たる行動に出るべきだ。


「疎」の罠~中国戦前半

さて、試合である。まずは、あのような劣悪中の劣悪な環境で冷静に戦いぬいた選手、監督、関係者の皆さんに敬意を表したい。ありがとう、御疲れさまでした。

China中国は、4バックをライン状にし、押し上げてくるという、欧州人監督が指導するアジアらしいやり方を採ってきた。北朝鮮のような、試合をクロースするようなやり方ではなく、ある程度オープンに、真っ向勝負に出てきたと言っていいだろう(ただし、もちろんそれは前半限定のことではある。試合内容に関しては、後半の「サッカーをしていない」時間帯のことは除きます)。こういう相手とは、日本は「かみ合う」試合展開となりやすい。

日本は憲剛、山瀬が復帰、左サイドも「テスト」の加地ではなく、駒野が起用され、前の試合で失った連動性をやや取り戻していた。それと中国の「オープンな」やり方がかみ合って、前半から北朝鮮戦よりはずっと良い試合を展開することができていた。また、漫然と試合に入った前試合とはうって変わって、この試合では日本選手も気合十分、キックオフから高めでプレスし、球際の当たりあいでも負けず、ペースを明け渡さないという闘志を十分に感じることができた。

しかし、それはやや裏目に出てしまう。日本は高め、高めから守備時の「接近」=プレスをかけようとしていくのだが、それをかいくぐられると、その後ろでボランチ16番をフリーにしてしまうことが多くなってしまったのだ。そこから正確、かつパワフルなロングボールを入れられ、それをものにする競り合いで体幹の強さに吹っ飛ばされ、あるいは走力で振り切られ、前半の日本はサイドからクロスをかなり多く浴びてしまう。特に内田のサイドが火だるまにされた。楢崎はこの辺、大活躍だった。

守備時の「接近」=プレスは、密集するからこそ、その外側には「疎」を作り出してしまい、一旦突破されると一気に危機になる可能性がある。それを避けるには、ファーストプレスとセカンドプレスの連動性、秩序が必要なのだが、この試合の前半にはそれはあまりできていなかったと言えるだろう。また、「接近」している場合には、大きめにこぼれたセカンドボールを拾いにくくなるという欠点も、この試合の前半には見せていたように思う。


欠点の多すぎる中国選手

中国は前半このように、走力やあたりの強さ、筋力に裏打ちされたロングキックなど、フィジカル的な強さを前面に出して戦ってきた。これは、10年前に岡田監督がダイナスティ杯で戦った時も、まさに同じであり、中国の伝統的なスタイルと言っていいだろう。体の強さは他でも表れ、サイドをゴリゴリとこじ開けた後、無理な体勢からでもかなりよいクロスを上げていた。

しかし、欧州人監督が指導したがるフラットな4バックを遂行するには、彼らには欠点が多すぎると感じた。一人ひとりの視野が狭く、ゾーンで守備をするのに適していない。ボールウォッチャーになりがちで、かつ集中も欠きがち。日本もかつてはそうだったのだが、中国と比べるとこちらは格段に向上していることがよくわかる。また、どうしても個人で守ろうとしてしまい、組織への貢献意識が薄い。このあたりは、日本人選手とは反対であり、我々の持つ美点と言ってよいのではないか、と思う。

さて、得点は17分。安田が拾ってからのカウンター、山瀬、田代が絡み、遠藤がボールを駒野へ、左サイドを切り込んでからクロスをあげると、ニアで田代がつぶれ、GKがファンブル、こぼれ球が山瀬の元へ。この時、敵ボランチ15番はペナルティエリア角にいるが、山瀬には誰もついておらずフリー、そこからシュート、ゴール!山瀬の落ち着き、シュート技術がよく出たゴールシーンだった。と同時に、中国DFのボールウォッチャー癖を良くつき、フリーになった山瀬の動きもよかったと言えるだろう。

この辺は後半にもつながるのだが、中国はそろそろ選手育成について、もう少し真剣に考える必要があるのではないか。攻撃的選手についてはともかく、守備のこうした癖は、育成でかなり矯正できる部分でもあろう。十年一日のごとく、こういった部分がレベルアップしていかないのでは、ここ数年向上してきたアジア中堅国たちにおいていかれるのも時間の問題だ。そしてメンタル、フェアプレイ精神については言わずもがな。ここを放置していると、本当にアジアの中でも弱小へと転落していくだろう。まあ自ら望んでそうするのだろうから、救いようはないわけであるが。


後半の修正と、カンフーサッカー

後半に日本は修正を施した。前半の守備時に「接近」しすぎる部分を改め、一発で奪いに行こうとせずにバランスを保つ。これによって16番のフリー状態を解消し、そこからのロングボールを封じる。また、敵陣裏にスペースがあるからといって攻め急がず、じっくりとボールをつなぐことを優先した。これらの修正によって、前半の欠点はほぼ解消され、日本は大きくペースを引き戻す。この辺の修正は、岡田監督はやはりうまい。

また、前半飛ばしすぎたのだろう、中国のプレスが一歩、二歩遅れはじめる。そうすると憲剛や遠藤、啓太あたりがボールを離した後のパス&ゴーで敵陣に走りこむ姿も散見されるようになった。オシム時代には常態だったそれが、少しずつとは言え戻ってきたことは、素直にうれしかった。これによって、パスコースが創出され、さらに日本のポゼッションが高まっていく。やや「接近」を控えめにしたことで、「展開」重視のサッカーに近づいたともいえるだろうか。

しかし、もうここからはサッカーにならなくなっていく。列記するのも馬鹿らしいが、安田へのとび蹴りは、決定的な得点機会阻止という点だけでも一発レッドだし、それ以上にあのようなサッカーはといえない危険な行為が許されていいはずはない。また、田代のシュートはオフサイドではない。本来ならば2-0であるのみならず、中国は何人も退場を出しているはずだ。中国の選手たちのメンタルの幼稚さは、本当にどうしようもない。それを助長した北朝鮮人審判も本当に許しがたい。しかし私が最も強く感じるのは、それを乗り越え、冷静にこの試合を乗り切った、闘う姿勢にあふれた選手たちへの誇りである。

最後に選手個人への感想を少し。田代はよかった。難しい1トップをこなし、巻のライバルとしては、十分以上の存在感を見せた。楢崎も素晴らしい安定ぶり。中澤は言うまでもないが、今野がまたよかった。ボランチとセンターバックとサイドバックの中間のようなプレイだが、それがはまった。安田は素晴らしいのだが、大久保や田中達、寿人といったライバルが復帰してきてもこのポジションなのだろうか?内田は、やはり守備面での不安がでたが、いまはこれをいい経験としていけばいいだろう。

しかし、本当に中国(そして北朝鮮の主審)は許しがたい。ただ、2004年の重慶でもそうだったように、この経験はきっと選手の糧になり、チームを一つにしていくように思う。前回のような「ベテラン」役があまりおらず、むしろレギュラー格が欠け、経験の浅い選手が加わっているということを考えると、さらによい経験になるかもしれない。ただしもちろん、怪我がなければ、の話ではある。

韓国戦が良い強化になり、そして何より無事に終わることを祈る。

それではまた。

02:25 PM [岡田日本代表] | 固定リンク

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