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October 05, 2007

Jリーグの権威のためにこそ

カズが、川崎フロンターレに対する犬飼チェアマンの発言で始まった騒動に関して、コメントを出しています。

カズ: 選手は全員がレギュラーで、試合でどの選手を使うかは監督が決めること。いろいろな事情があって8人入れ替わっても、スポンサーやサポーターに失礼になるとは思わない。

さすがカズですね。またJリーグ選手協会のゴン中山名誉会長とも連絡を取って、選手総会で取り上げようと話したようです。これによってより突っ込んだ議論、見直しの機運が高まることを期待したいと思います。


スポンサーのために権威を守る

さて、カズのコメントにもありますように、ベストメンバー規定を大本から考えるに当たっては、Jリーグのスポンサーの問題についても、実は避けては通れないところだと思います。

私も詳しくはないのですが、Jリーグには、Jリーグのスポンサードをしてくださっている企業がいます。Jリーグ公式サイトの下の方にバナーが出ている企業ですね。彼らは「Jリーグに」お金を出してくれていて、そのお金はJリーグのそのものの運営と、クラブへの分配金として使われるわけです。放映権料の高騰が望めない現状では、Jリーグ、および分配金を受け取る各クラブにとっても、重要な存在と言えるでしょう(もちろん各クラブには、それぞれの独自の大事なスポンサーもいますね)。

彼らのことを考えると、Jリーグが「Jリーグの権威」を守ろうとする行動には、一定の理解ができます。誰も権威のないものにお金を払おうとは思わないからです。

また、カップ戦にもそれぞれヤマザキナビスコ、ゼロックス、JOMOといったスポンサーがいますね。こちらもスポンサーのことを考えると、ないがしろにするわけにはいきません。実際にピッコリ事件は、ヤマザキナビスコカップの試合で選手を入れ替えたことが原因で起こったものです。ここでも各カップ戦の権威は守られなくてはならないということです。

「ベストメンバー規定」は、「プロになったからには最高水準のゲームを提供していかなければならない」という考えで設けられたものですが、同時にこの「リーグ戦やカップ戦の権威を守る」という機能も果たしているということができると思います。また逆に、ベストメンバー規定の存在意義としては、「スポンサーのためにリーグ戦の権威を守る必要がある」ということを、主張する人もいます。

しかし、本当にこの「ベストメンバー規定によってJリーグの権威は守られる」という考え方は正しいのでしょうか?


ベストメンバー規定で権威は守られるか

前回見たように、ベストメンバー規定は本来は「Jクラブは、その時点における最強のチーム(ベストメンバー)をもって前条の試合に臨まなくてはならない」というものです。そして、川淵チェアマン(当時)の文書による補足によれば、

「最強チームとは、多くのファンに了解された公的なもの」「リーグ戦、リーグカップ戦、天皇杯などのトップカテゴリーの試合の多くに先発出場している選手として、ごく簡単かつ客観的に見てとることができる」

ということですから、「その時ベストコンディションであるメンバー」ではなく、「それまで多く試合に出ていたレギュラーメンバー」と考えられていることが分かります。しかし、ピッコリ監督の意見にあるように、

技術のある選手がベストメンバーではない。90分質の高いプレーをするのが選手がベストだ。

という考えもあるのです。動けないレギュラーメンバーが出ることと、動ける選手が出ることと、どちらがよりレベルの高い試合を保障するのでしょうか?「リーグ戦の権威を守る」ことは本来は、「全力で戦う」ことによって「レベルの高い試合をする」ことであるはずです。そのためにレギュラーメンバーを出すべきか、フレッシュな選手を出すべきかは、「全力で戦う」ことをしようとする限りにおいては、監督の自由であるべきでしょう。

「ベストメンバー規定」というよりも「レギュラーメンバー規定」であるような現状の規定は、それに従ったからといってリーグの権威を高めることにはならない、と思います。現状の、A3、ACL、カップ戦、代表まで含めた過密日程の中ではレギュラーはどんどん疲労していきます。そんな中でレギュラーが出続けたとしても、グダグダの試合では、むしろ試合の、ひいてはリーグの価値を減じるでしょう。

問題はそれを「スポンサー」が理解するかどうか、ということですね。


サッカー的真実の啓蒙

スポンサーの(特に)上層部は、そこまでサッカーに詳しい人は少ないかもしれません。そういう人は、「選手をたくさん入れ替えるということは、勝つ気がないんじゃないか?」と思ってしまうかもしれません。90分間全力で走り回らなければならず、ハードなフィジカルコンタクトもあるサッカーというスポーツにおいて、いかにコンディションというものが大事か、そして「勝つ気があるからこそ選手を入れ替える」のだ、ということは彼らには理解できていないかもしれません。

しかし、その現状に甘んじていてよいのでしょうか?そういうスポンサーに配慮して、「グダグダでもレギュラーを出し続ける」ことをJリーグがクラブに押しつけ続けていてよいのでしょうか?そんなことはないはずです。「サッカー的な真実」はやはり、カズも言うように「勝つためにこそ選手を入れ替えることもある」という方にあるはずです。それを、もしかしたらまだ理解していないかもしれないスポンサーに説明し、理解してもらうように努めることこそ、Jリーグ上層部のするべきことです。

今、一選手に過ぎないカズが、それをしようとしてくれています。

Jリーグがすべきことを一選手にさせて、Jリーグ上層部は恥ずかしく思うべきです。


Jリーグの試合を「軽視する」ケース

さて、ここまでは「そのクラブが、その試合に勝つためにこそ、全力で戦うためにこそ、メンバーを入れ替える」という場合の話でした。今回の川崎は、イランへの往復のあと、疲労したメンバーを出場させないことを選択し、8人入れ替えたわけですが、それはまさにそういうケースだったと思います。Jリーグを捨てないためにこそ、動けるメンバーで戦うべきだ。それが監督の判断だったのでしょう。私はそこには問題がないと思います。

しかし、そういうケースではない、他の場合もありえますね。例えば

1)チャンピオンズリーグに勝ち残っているクラブが、優勝のなくなったリーグ戦を「捨てる」場合
2)残留争い真っ最中のクラブが、リーグ戦に注力するためにカップ戦の試合を「捨てる」場合
3)優勝も降格もなくなったクラブが、来期をにらんで大幅に若手に切り替え、育てようとする場合

これらのようなケースも考えられます。これらは、その一試合においてそのクラブは「全力で戦う」ことをしていないと言っていいと思います。しかし、欧州においてはこういうこともかなり行われているのではないでしょうか?ということはそれは、「サッカー的な真実」としては、実は「問題」ではないことなのではないでしょうか?これはどのように考えるべきなのでしょうか?

各クラブは、各国リーグに所属してはいますが、リーグからは独立した企業です。それぞれに、自分たちの発展を考えて、活動を行っていきます。その大きな目標は各国リーグ制覇であり、そのために基本的にはリーグ戦に全力を尽くして戦うことになります。そこまでは、各クラブとリーグの利害は一致しています。

しかし、ここにCLやACLという存在が入ってくると話は違います。


Jリーグからはみ出していく各クラブ

欧州の例で言うCLをイメージするとより分かりやすいでしょう。欧州のクラブはCLで得られる膨大な利益、および名誉を求めて、そちらに注力します。つまり、各クラブは、各国のリーグに所属しながら、そこからはみ出た部分も持っているのです。彼らは、けして各国リーグの「部下」でもないし、「配下」でもないのです。そして各クラブは、シーズン全体で戦うことになるさまざまな大会を通して、最終的に最大の結果を得るために、「全力を尽くす」のです。

1)2)3)に上げたようなケースは、各クラブがそのようにしたとして、おそらくはそのクラブのファン、サポーターからは支持を得られるものではないでしょうか?特に1)2)はそうでしょう。クラブが独自に目標を掲げ、そのためにいろいろな試合を重要度に応じてやり方を変えて戦ったとして、それをそのクラブのファンがどう思うか。それはそのクラブが独自の権限と責任で、独立して行っていくことなのです。

もちろん、1)や2)のようなケースは、それぞれ軽視される形になるカップ戦や、リーグ戦の運営主体にとっては、面白くないことでしょう。皮肉を言ったり、批判をしたりするかもしれません。しかし、各クラブとリーグの利害は完全には一致していないのですから、そのようなことが発生するのはおかしなことではありません。そして、各クラブにとっては、自分たちで自分たちのファンのために目標を設定し、それと共に歩んでいこうとするのであって、それは当たり前のことと考えるべきなのです。

では、もしそのようなケースが発生した場合、「Jリーグの」スポンサーはどう考えるべきでしょうか?


リーグをスポンサードするということ

先に書いた1)2)の例での、軽視されたリーグやカップ戦の運営主体が不快であるのと同じように、例えば、あるクラブにCLを優先されたセリエAのスポンサーは、基本的には不快に思うでしょう。それは仕方がないことと思います。CLまで含めて自分のチーム(およびファン、サポーター)にとっての最適を実現しようとするクラブと、あくまでも国内リーグを主に考えて欲しいそのリーグの関係者(スポンサー含む)の利害は一致していないからです。

つまり、(今回の川崎のケースはまったく違いますが)、欧州でのCLのように、将来「ACLのためにJリーグの試合を捨てる」という判断は、クラブによってはありうることであるし、ベストメンバーの数的基準があったとしても、それが起こる可能性はある、ということです。また、若手育成のためにその時のベストメンバーを組まない、と言うこともありえます。そして、遠い将来かもしれませんが、大きく見て考えるならば、スポンサーは「それらをも含めて」、リーグをスポンサードする、という考えでなければならないということでしょう。

例え話で考えてみましょう。ある企業が、ある美術館をスポンサードしました。その美術館の売りは、一部の印象派の有名な作品を所蔵していることです。それが常に展示されていることをそのスポンサーは望みました。しかし、その美術館は、美術界の将来的な発展を考えて、若手のアーティストの作品を集めた企画展を開催しました(有名作品はその間は倉庫に行きます)。それはそのスポンサーにとって裏切りでしょうか?そこまで含めて、美術館をスポンサードするべき、という考え方もあるでしょう。

これはリーグをスポンサードする企業に対して、一方的に犠牲を強いるような考え方でしょうか?


Jリーグの「権威」のためにこそ

「Jリーグをサポートするスポンサーは、ACLを優先するクラブに対して、寛容であるべき」というのは、スポンサーにとって受け入れられないことでしょうか?その可能性はありますが、また別の考え方もあると思います。それは例えば、「毎年ACLでグループリーグ敗退をすることは、Jリーグの『権威』を下げることになるのではないか?」ということです。「今年もJの代表がACL敗退!」というニュースは、Jリーグのスポンサーにとってもうれしいことではないでしょう。

そう考えると、ACL出場クラブがACLでいい成績を収めたり、優勝すれば、それは「強いJリーグ」ということにつながり、Jリーグの「権威」を高めることにつながるということが分かります。そうして「そんなに強いなら見に行こうかな」というお客さんが増えれば、Jリーグ全体の利益にもつながるでしょう。注目が増えれば、放映権料も値上げすることができるようになるかもしれません。この点においては、JリーグとACL出場クラブの利害は再び一致させることができます。

もちろん、犬飼専務理事が今年から「ACLサポートプロジェクト」を立ち上げ、それに尽力し、そしてチャーター機を飛ばすようにしたのは、そのように考えたからでしょう。「Jのクラブが、ACLを制することは、Jリーグ全体の利益につながる」ということですね。この点においても、犬飼、鬼武両氏がすべきことは、「川崎FだけでなくJ全体のサポーターがいる」などと詭弁でぐるぐる巻きになることではなく、こうした考え方を持ってスポンサーを説得することでしょう。

折りしも、オシム監督も「1つのクラブの問題ではなく、日本サッカー全体の名誉の問題。みんなが、浦和がアジア王者になることを望んでいる」と言っています(川崎敗退前なら、当然ここに川崎の名も入ったでしょう)。「オシム監督も言う日本サッカー全体の名誉のために、協力をした太っ腹なJリーグのスポンサー」そう言われたほうが、Jリーグのスポンサーとしても本望なのではないですか?


以上見てきたように、本来的、将来的に考えても、スポンサーのことや、Jリーグの権威のことを考えても、もはやベストメンバー規定に存在意義はほとんどないと言えるでしょう。早期に撤廃されることを望みたいと思います。

それではまた。

07:43 PM [Jリーグ] | 固定リンク

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