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October 09, 2007

おかしなおかしな規定適用

川崎フロンターレのメンバー入れ替えに端を発した「ベストメンバー規定」に関する議論ですが、こうやって世間の関心が高まっているところに、まさにジャストミートするような問題が発生しました。


天皇杯より昇格?J2“4強”敗退(スポニチ)

J2のリーグ戦で上位に位置し、昇格を争っている4チーム(東京V、札幌、仙台、京都)が、そろって天皇杯に大幅にメンバーを変えて臨み、JFLのチームや大学勢相手に敗退したのです。川崎は8人の入れ替えでしたが、この4チームは10~11人を入れ替えて戦っています。言うまでもなく彼らがこのようにしたのは、J2のリーグ戦を天皇杯よりも重視し、何よりも昇格にすべてをかけるためです。

これは、サッカー的には当然のこと、と私は思います。クラブは年間にいくつもの大会を戦いますが、その中でどれにプライオリティを置き、どれを(言葉は悪いですが)「軽視」するかは、そのクラブが自分の権限と責任で行うことだからです。消耗の激しいサッカーという競技において、スケジュールが厳しくなってくればすべてに同じメンバーで戦えるはずがない。どのように重要度を判断し、力を「配分」するか、そこがクラブ上層部と、サッカーの監督の腕の見せ所と言っていいでしょう。それこそがまさに「サッカー的」であることなのです。


成長しない川淵キャプテン再び

これに対して、協会からは「容認する」という姿勢が示されました。

川淵キャプテン: 「カップ戦は仕方がない」「3日後に昇格のかかる試合があるなら、そちらを重視するだろう」

私も、J1昇格を重視したJ2各クラブの判断は当然のことと思います。しかし、Jリーグでは「ベストメンバー」で臨むことをあれほど強力に要求する同じ人間が、どのようなロジックを持ってこういうことが言えるのでしょうか?協会の田嶋専務理事は、

田嶋専務理事: 「Jには最強チームという規約があるが、協会にはない」

と言っているようですが、これもまったく理由になっていません。田嶋氏の川淵化もだいぶ進んできたようですね。重要なのは、「なぜJリーグにはそのような規約が適用され、天皇杯には適用されないのか」ということであって、田嶋氏が言っているのは単に現状の矛盾の追認に過ぎません。これはどのような論理を持って言い得ることなのか?

そもそもこれまで見てきたように、ベストメンバー規定は「プロになったからには最高水準のゲームを提供していかなければならない」という川淵チェアマン(当時)の考えに基づいて成立した規定です。さまざまな議論はありますが、少なくとも成立、および維持の根拠はここにあるはずです。そしてそれに準拠して考えれば、天皇杯が除外されるのはまったくおかしいと気づくはずです。

天皇杯も、もちろんお金を取ってお客さんに見せている試合です。そして、今回メンバーを変更したJ2クラブはもちろん「プロ」のクラブです。Jリーグとどこが違うというのでしょうか?天皇杯にはアマチュアも参加できますが、そこが理由なら「彼らだけ」適用を除外すればいいでしょう。まさか、Jリーグには「Jリーグの」スポンサーがいるが、天皇杯には「?」というところが理由ではないでしょう。ないはずです。

この矛盾になぜ現協会トップは気がつかないのか?


一部の大会にだけ「ベストメンバー規定」を押しつける

ここに矛盾が起きてしまう最も大きな原因は、やはりJリーグが世界でも珍しい「ベストメンバー規定」の制限を受けている、ということにあるでしょう。何度も書いていますが、サッカーのクラブはいろいろな大会に参加しつつ、選手をやりくりして「自分たちのクラブにとって最高の結果」を得ようと努力するものです。それが欧州、南米でも普通に行われている、「サッカー的な真実」だということを、さすがにそろそろ協会、Jリーグの幹部も理解するべきでしょう。

もちろん、クラブがどれかの大会を重視し、あるいは別の大会を軽視することにはリスクもあります。そしてそれを評価できるのは、そのクラブのサポーター、ファンだけなのです。リーグ戦を軽視することに疑問のあるサポーターが増えれば、声を上げるでしょうし、観戦に来るお客さんも減るでしょう。そしてそれは、クラブがオウンリスクで解決していかなければならないことなのです。それが、「独立したプロのクラブ」ということです。

例えば、今回のJ2勢と逆の例も存在しえます。Jリーグで優勝のなくなったあるクラブが、その時勝ち残っていて優勝の可能性のある天皇杯のために、Jリーグのほうを「軽視」し、Jリーグに中心選手を出させず、天皇杯の試合に向けて「温存」するという可能性です。それは今回の例と何か本質的に違うのでしょうか?今回の例が問題ないのなら、この例もなんら問題ないはずです。私はそれも含めて、各クラブがどのように年間を戦うか、それは各クラブに任されているべきだと思うのです。

それぞれのクラブが、年間を通して参加するさまざまな大会に、自分たち(とそのサポーター、ファンと)で戦い方を考え、「自分たちにとっての」最高の結果を求めていく。それはリーグ優勝かもしれないし、カップ戦優勝かもしれないし、ACLの優勝かもしれない。それを決めることができるのは自分たちと、サポーター、ファンだけである。それがプロサッカーというものです。

鬼武チェアマンは「スポーツの基本的な精神というのがある。考え方は変わらない」などと、まったくそれを理解しない発言をしています。川淵キャプテンの意見とはまた矛盾していますが、彼は天皇杯でも「ベストメンバー」で戦うことを要求したようです(10/10 8:46 以下の記事により、この部分の記述を修正しました。鬼武チェアマン天皇杯軽視NO!)驚くべきことです。「レギュラーを常に出せ、過密日程は変えない」というのでは、この国のトップは選手を消耗品とでも思っているのではないか、と思わされます。


なぜリーグ戦が最も価値があるのか

最後にもう一度書いておきますが、プロのサッカークラブとは、年間を通して参加するさまざまな大会に、自分たち(とそのサポーター、ファンと)で戦い方を考え、「自分たちにとっての」最高の結果を求めていくものです。消耗の激しい競技であり、限られた選手でそこを戦っていかざるを得ないがゆえに、クラブは目標設定を厳密に求められますし、監督はマネジメントが厳しく問われていきます。

そのようなプロサッカーのあり方を理解すると、一シーズンを通してしっかりと戦い、結果を出していかなければならない「リーグ戦」の価値があらためて浮かび上がってくるはずです。1試合1試合で結果が出てしまうノックアウト方式のカップ戦は、ジャイアントキリングが起こりやすい大会といわれます。逆に、長期のリーグ戦を制するのは、安定した戦いぶりと、豊富な選手層が必要になってきます。「リーグ戦の覇者が本当の王者」と言われるのはそのためでしょう。

例えば、どんなチームもその時のベストメンバーだけでずっと戦っていくわけには行きません。もしそういうことをすれば、数年後には若手が育っていなく、凋落してしまうことでしょう。実際にそのようなケースも私たちは見てきました。すなわち、クラブはリーグ戦を戦いながら、若手も育てていかなくてはならないのです。選手は「一つ一つの試合でベストを尽くす」のはもちろんですが、クラブは「年間を通じてベストの結果を追求する」ことが必要であり、さらには「先も見通して、ベストの判断をする」ことが要求されてくるのです。

さまざまな大会を睨み、さらにクラブの将来も考えて、力を配分していかなくてはならないサッカーで、長期のリーグ戦で最終的に優勝するということが、どういうことか。それこそがサッカー的に最も価値のあることです。それは、上層部が「ベストメンバー規定」などを無理やりおしつけなくても、各国のリーグ戦にもともと備わっている価値なのです。そしてその価値はリーグ上層部よりも、もはやサポーターたちの方が理解しているのです。


今回の件で、再び、三たび、協会やJリーグの上層部が、「サポーター」においていかれているということが明らかになりました。これまでも何度も、Jリーグは「日本だけの特殊ルール」から、「世界標準のルール」への移行を繰り返してきました。サドンデスの延長戦やPK戦ありの形から、普通の勝ち点制へ。2シーズン、チャンピオンシップありの形から、普通の1シーズン制へ。それは初期の上層部の思いつきで作られた恣意的なルールから、「サッカー的普遍性」への回帰という形でした。この問題も、そろそろそうする時期が来ているのではないでしょうか?

私は時代に取り残されている「ベストメンバー規定」を、早期に撤廃することを望みたいと思います。

それではまた。

10:48 PM [Jリーグ] | 固定リンク

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