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September 07, 2007
When I think of home...
反町監督率いるU-22代表は、北京五輪アジア最終予選vsサウジアラビア(アウェー)のために、現地に入ったようだ。
各組1位のみが五輪出場権を得るという、非常に厳しいレギュレーションの予選であり、アウェーとは言え、なんとかここで勝ち点を獲得して欲しいところだ。サポーターの間ではあまり評判のよくない反町U-22だが、ことここにいたってはもうそんなことを言っている場合ではない。チームが一つにならなければ何も勝ち取れないのと同じように、我々も一つになって、魂を送るべきだろうと思う。ただ、やはりvsベトナム戦(ホーム)の内容には首を傾げざるを得ないところもあり、それについて「このように改善すべきでは」という形でここに書いておきたい。
(トラックバックをいただいている酩酊さん、dorogubaさん、お返事をするつもりはありますので、もう少しお待ちください)
詰め込みすぎ?
vsベトナム戦は、平山と李の2トップ、OMFとして柏木を配置、広く動いてボールを引き出し、また敵DFラインの裏への飛び出しを狙う。ボランチに梶山と本田(拓)、左サイドは本田(圭)、右サイドに水野、DFラインに青山(直)、水本、細貝。敵が1トップであることがわかると、細貝が右サイドバック、本田(圭)が左サイドバックに入り、図のように4バックを形成、水野は右サイドよりのOHFのような位置に入った。
反町監督のゲームプランとしては、背の低いベトナムに対して、2人のストロングヘッダーを配し、そこへ数多くクロスを入れていく、というものだったのではないだろうか。
いきなり個人的な結論を言うと、反町監督は「いろいろとやり過ぎている」のではないかと思う。この試合でも、敵の出方に応じての3/4バックの併用、家長に代えて柏木の登用、水野のウイング起用、(おそらくは)ベトナム対策としてのゲームプラン・・・実に「いろいろなこと」をトライしようとしているように見えた。もちろん、3/4バックの併用は、これまでこのチームがやり続けてきたことではあり、今回だけのトライと言うわけではない。しかし、私にはどうにも、「いろいろやりすぎて、ベースを見失う」一つの原因になってきているように見えて仕方がなかった。
その「いろいろ」が、結果論だがこの日の試合中のさまざまな問題点の原因になっているようにも、私には思える。4バックにしたことで、本田(圭)の守備の負担が増え、前半はまだしも後半には攻撃への顔出しが激減してしまった。また、選手の間での「誰が上がるのか」についての意思統一もできていなかったのか、攻撃時の押上げも非常に遅くなっていた。プレスの始動もばらばらで、これも選手間のポジショニングの相互理解があいまいだったことをうかがわせる(中盤でのプレスが効かないことで、ますます本田(圭)は守備に追われることになったわけだ)。
柏木に期待されたことは
また、U-20から合流した柏木の起用だが、反町監督の意図はこのようなものだったようだ。
反町監督: まず、陽介(柏木)は攻から守への切り替えが非常に早い。そういうところでディフェンスに回った時に、前線からのプレスを特にやりたかった。
これは主に守備のことを語っているわけだが、攻撃面での柏木へのオリエンテーションはなんだったのだろうか?柏木は精力的に動き回っていたが、中でも敵DFラインの裏への飛び出しが目立っていた。しかし、ボールを持った選手からそこへパスが出ることはまれで、またベトナムもゾーンを崩さすスペースを作らなかったので、あまり実効性があったとはいえない。逆に、2トップの後ろに誰もいないスペースができてしまい(水野は主に右サイドにいるわけで)、FWにボールが入っても受ける選手がいないという状況も作ってしまっていた。ハーフタイムには反町監督もそこを修正しようとしたようだ。
柏木: (監督からは)前半が終わって、裏に飛び出し過ぎということと、もっと足元で受けることを言われた。自分もボールを触ってプレーしたいタイプなので。
私は柏木は大好きだし、よい選手だと思う。しかしこの試合での起用は彼のよさを生かした、あるいは組織としてうまく組み込めたとはいえなかったのではないだろうか。これも「いろいろ」やることがかえってチームのよさを引き出せない結果につながっている例ではないかと思う。サイドへ張る水野、裏を狙う柏木、ボランチは本田(拓)と梶山という組み合わせで、2トップが孤立しがちになってしまっていた。
自分たちの形を「やりきる」
この孤立しがちな点は、クロスに対して飛び込む選手が2トップ以外にはあまりいなかったという結果も生んだ。主に水野が上げるわけだが、いい時のオシム日本のように逆サイドのMF(加地が上げる時ならば駒野)が飛び込むというような形が少なかった。前半16分には柏木からのクロスに李、平山、水野、細貝がゴール前に入っていた(この形はよかった)がその後、どんどん運動量が落ち、押し上げが遅くなり、オーバーラップが減ってしまった。これでは「ボールも人も動くサッカー」とはいえないだろう。
これは一つにはもちろん、日本の夏の暑さ、湿気という問題もあるだろう。また、直前までリーグ戦であった日本の選手たちのコンディションの問題もある。しかしどうも私には、「いろいろと目先を変えることで、選手が『これをやりきろう』というものを持てないでいる」のではないかと思えてならないのだ。この試合でも、ピッチの上で選手たちがばらばらのことを考えているように見えた。走る選手、オーバーラップする選手はいるのだが、ボールを持った選手がそれを見ていないためにパスを出せない。本田(圭)がようやく守備から脱して上がってきても、そちらへパスが出ず、もっと狭い方へ攻撃が傾いてしまう。
U-20ワールドカップが終わり、新しい選手の合流が期待される中で、そうした意識の統一を図るのは難しいことかもしれない。しかしだからこそ、はっきりとした一つの「帰る場所」のような形を持った方がよいのではないか、と思うのだ。いやむしろ、この年代ということを考えると、一つ一つの目先の敵や課題で「いろいろと」変えていくよりも、しっかりとした一つの「自分たちの形」を作ることを優先した方がよいのではないだろうか。
「この年代」とは言っても、それぞれもうJリーグでは中核選手としてバリバリやっている層がほとんどである。諸外国で見れば、もうA代表に入って中心になる選手がいてもいいくらいだ。「戦術の対応力を云々するにはまだ早い」ということはない。それは確かにそうだろうと思う。しかし、やはり代表チームというのは、クラブチームと違って時間が無いということは、大きな問題だ。ぱっと集まってぱっと試合をして、ぱっと解散、というスケジュールの中で、あまりに「いろいろと」テーマを与えては、チームが出来上がっていかないのではないか。
Believe in YOURSELF.
その「帰る場所」としては、かつてできたよかった試合のイメージを適用することが、共通理解を深めやすいのではないかと思う(もちろんこれは、それだけが正解なのではない。一つの案に過ぎないが)。このチームで言えば、それは3月28日の2次予選vsシリア戦だろう。なかなかいい「ボールも人も動くサッカー」を見せ、3-0で快勝した試合である。この時のチームは、伊野波が入った3バックで、守備の負担の軽減した本田(圭)も水野も高く上がれ、家長が幅広く動いて起点となり2トップを孤立させなかった。
そしてやはりなによりも、連動した「ボールも人も動くサッカー」をしっかりと90分間やり通したことが重要だろう。コンディションが苦しいのはよくわかる。しかしだからこそ、ベトナム戦でやや見られた「攻め急ぎ」を減らし、一人が動いたら必ず他の選手がそれを理解し、連動するサッカーにしていかなくてはいけない。そのためにも、はっきりとした一つのチームの形を定めて欲しいと思う。
反町監督も、そう考えているようだ。
UAE入りした前日は、気温35度の中、「体は起きていても、精神が眠っている」と、縦パス1本で全選手が50~60メートルを一気に駆け上がるカウンター攻撃の練習を2時間繰り返した。反町監督: 長い距離を走らなければ、前線で数的優位な状況をつくれない。人もボールも動く日本のサッカーの土台を築き直す。
私はそれでいいと思う。前回のベトナム戦は、少し今後が心配になる内容だった。しかし、だからといって余所見をして、この試合限りの対症療法をする必要はない。というよりも、おそらくそれはよくない。反町監督が手をつけているように、まずは一つの自分たちの形を、「帰る場所」を、この合宿で築き上げてほしいと思う。あとは自分たちを信じて、それを「徹底してやりきる」、そうすれば結果はおのずとついてくる。大丈夫、このチームのポテンシャルは、それに十分達している。
北京を賭けたU-22の真剣勝負、それも最強の敵サウジとのアウェー戦という天王山は、今後の日本サッカーにとって非常に重要な1戦になると思う。日程の詰まったリーグ戦から、長距離移動、苛酷な環境でのアウェー戦と、選手、監督、関係者の皆さんには本当に大変だろう。しかしなんとか、自分たちを信じて、自分たちのサッカーをやり抜いて欲しい。私たちはここから、「魂」を送っている。
それではまた。
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