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August 30, 2007

車は加速する(カメルーン戦)

Ipods私と発汗さん、エルゲラさんの3人でやっているポッドキャスト「SoccerCast」に登録いただいている方が、4万人を突破いたしました。総合ランキングでは42位になっているようです。聞いてくださっている皆様、登録していただいたみなさま、本当にありがとうございます。5月の段階で1万人、90位でしたから、なんだかずいぶん早いテンポですね。以前にも書きましたが、普段4万人を前に喋ったりすることはありえないわけで、それを考えるとちょっと恐い気もします。

そのSoccerCastでも振り返りましたが、フル代表のvsカメルーン戦とU-22のvsベトナム戦(ホーム)が8月22日にありましたね。さらにはU-17ワールドカップまでもが同じ時期にあるという代表戦ラッシュ!アジアカップの振り返りもまだ済ましていないし、酩酊さんからトラックバックをいただいたのでお返事も書かなくてはいけないし、すぐに代表の欧州遠征、U-22のアウェーサウジ戦も迫っているし、我那覇の件についても書いておきたいしで、更新の遅い当ブログでは追いついていけるかどうかわかりません。

まずはとりあえず、直近のフル代表カメルーン戦について、今回は触れておきたいと思います。


準備不足のライオンたち

この試合については、内容がよかった、あるいは新戦力が活躍したということも言われるが、まずは対戦相手であるカメルーンのコンディション、やり方に助けられた部分が大きいと言わねばならないだろう。カメルーンは直前来日、遠距離移動でコンディションがそもそも万全ではなかったが、さらに試合会場である大分の九州石油ドームへの到着も送れ、試合開始前のアップができないという緊急事態だった。

オシム監督は試合直後のTVのインタビューで「前半の方にはっきりと日本の力が表れていたと思う」と言っていたが、私はこれには疑問がある。前半の日本がよく見えたのは(よかった部分も否定しないが)、カメルーンの選手が「アップをしながら試合をしている」というような状態であった部分もかなり影響していると考えられるからだ。もちろんオシム監督も、それは理解していてあえてこのように言ったのだとは思うが。それにしても、カメルーンのアップが終了した後半の方が、彼らの本来の力に近いものだと考えるべきだろう。

また、カメルーンはアジアカップの対戦相手と違い、「ラインを下げて、10人で引いて守ってカウンター」というようなやり方はしてこなかった。これは彼我の力関係を見れば、当たり前ではある。また、言うまでもないが日本を研究もしてこなかっただろう。以前にも何度か書いているように、そういう相手に対して日本がよい試合を見せるのは特別なことではない。いつものことだ。この試合の攻撃陣が、アジアカップで引いた相手に苦しんだ攻撃陣よりもよく見えたとしても、その理由のかなりの部分は「カメルーンのコンディションと、引いて守らないというやり方」が原因であるということを、忘れてはならないと思う。


キリンカップ型強化

これは、「強豪国を日本に招いて試合をする」というキリンカップ/チャレンジ型強化試合が、これからどこまで意味のあるものにできるのか、という問題でもある。以前は、海外の代表チームと対戦することは限られていて、キリンカップ/チャレンジの意義は非常に大きく、スポンサーであるキリンの日本代表の強化への貢献には、いくら感謝してもし過ぎということはないだろう。しかし、これからさらに上を目指すには、来日したてでコンディション不良のチームと単発で試合することが、どこまで強化の役に立つのか、JリーグやACL、A3などとの絡みも含めて、考えていかなくてはならないところだ。

ただ今回は、コンデション不良のカメルーン相手とは言え、この試合をやってよかったと私は思う。アフリカン特有の脚の長さ、身体能力を利したプレッシャーの中で、どこまで「ボールも人も動くサッカー」ができるのか。自分たちがJリーグやアジアレベルではやっている、ほんのちょっとのミスともいえないようなミス、例えばトラップが15センチ浮いたとか、例えばボールの置きどころをちょっとだけ間違えたとか、パスコースが少しだけ意図と外れたとか、パスを受ける前にきちんとルックアップしていなかったとか、それをカメルーンがまったく見逃してくれないということも、再びわかったはずだ。

そして、もう一つ大きいのは、アジアカップ4位敗退での閉塞感、もしかしたら選手たちがちょっとだけ自信を失いかねないところだったのを、この試合が払拭してくれたのではないかと思えることだ。2004年アジアカップの後のアルゼンチン戦は、「何故こんな時期に試合を?」とみなが疑問に思ったものだが、今回はむしろよかった。「アジアカップに出場している選手の方が、していない選手よりも動けていた」というのは、彼らの中に残る不完全燃焼感も手伝ってのことだろう。そして、「先はまだまだ長い、こんなところで立ち止まっている場合ではない」ということを、選手もしっかりと理解したことだろう。オシム日本の第2フェーズのたち上げとしては、まずまずだったのではないかと思う。


オシム日本の第2フェーズ

オシム日本の第2フェーズの立ち上げというのは、単純に2年目ということもあるが、アジアカップまでを一区切りとしてこれまでの航路を考えると、なかなか判りやすくなるという意味でもある。

1)まずは、Jリーグベストイレブンクラスでありながら、フル代表での経験の浅い選手に経験を積ませる。(啓太、闘莉王、憲剛、駒野、阿部、我那覇、寿人、達也)
2)ジェフでオシム監督のやり方に慣れた選手をそれに加え、方法論・戦術の浸透を図る。
3)海外の選手は、まずはクラブでのレギュラー取りに専念させる。

4)チームが出来上がりつつあるところで、シーズン終盤の(呼んでも悪影響が少なそうな)海外の選手を融合させる。
5)同じ時期、Jの中からさらに幅の広い選手を合宿に呼ぶ。
6)ジェフの選手を残して、4)5)の「合流して日の浅い海外組および新戦力」への、方法論・戦術の浸透を進める。
7)アジアカップには、それまで合宿には呼んでいた攻撃陣でも、戦術の浸透度の低い選手は呼ばない。

私はこれらについては基本的にロジカルであると思うし、支持することができる考えであったと思っている。そして、このカメルーン戦で第2フェースが始まったということだろう。アジアカップを経て、マスメディアでは「個の力発掘だ!」と喧しいが、単純に2年目になり、「合宿には呼んでいたが、戦術理解の点でアジアカップメンバーから外れた選手」を再び呼んだものと考えると、実はかなり素直な流れなのだとわかるはずだ(純粋な新顔は、大久保だけである)。2年目のこれから、また彼らにじっくりと戦術を理解させていけばいい。そういう時期なのだ。

ただし、ジェフの選手たちに関して、私はいわゆる「インストラクター枠」というような捉え方はしていない。いまだに巻の前線からの守備、ハイボールを納めるポストプレイを上回る選手は多くないし、羽生や山岸の攻守の切り替えの早さは特筆すべきものだ。水野や水本は五輪代表の中心選手であり、次代をにらめば招集して当然でもあるだろう。実際オシム監督も、カメルーン戦にジェフの選手が呼ばれていないのは、怪我などのコンディションの故であると発言しているようだ。彼らも含めて、今後ますます競争が激しくなるだろう。歓迎したいと思う。


新戦力たちの評価

Cameroonさて、新戦力の中では、前田は持ち味を出していたと思う。私は前代表での柳沢の、「動きながらボールを引き出し、足元で納め、そこからの展開でチーム全体を活性化する」というプレーを高く評価しているものだが、前田もそういう存在になれる選手だろう。この試合でも前田はやわらかいポスト、そこから回りをよく見た、ワンタッチをおりまぜた展開を何度か見せて、攻撃をリードしていた。アジアカップ予選でのホームサウジ戦でも、我那覇がそういうプレーを見せていたが、日本の目指す「ボールも人も動くサッカー」では、この「足元での柔らかいポストプレー」ができる選手は必要/重要になってくる。前田もその主要な候補として、名乗りを上げたといえるだろう。

大久保、田中達也もスピードを生かした突破を何度か見せて、観客を沸かせ、持ち味を出していた。彼らに期待された役割は果たしたと言えるだろう。ただ、もう一度言うがそれは、カメルーンが裏のスペースを空けていたことによる部分も大きい。また、個人的には田中達也にシュートがなかったのが少し気になった。達也のドリブルは、以前は「自分がシュートするため、シュートコースを作るため」のものが多かったのではないか?その辺は、今後フィットしていくにつれて、さらに発揮できていくようになることを祈ろう。

大久保に関しては、サポーターが期待したとおり、何度か鋭い突破を見せていたが、個人的にはそれよりも守備の局面に多く顔を出していたのが印象に残った。オシム日本では、ボランチの選手がサイドバックや攻撃陣をオーバーラップしていくことが主要なコンセプトの一つ(→数的優位を生かしたサイドアタック)になっているが、その場合には当然、攻撃陣の誰かが下がってそのスペースを埋めなければならない。しかし、オシム監督がしばしば嘆くように、多くの攻撃的な選手は、そういう役割にフィットしているとはいえない。その点で大久保がしっかりした守備の意識、クオリティーを見せたのは、今後に向けてポジティブだと私は思う。

オシム監督: 最もアイデアのある選手たちは、よりスピードがあり、より多く走ることができて、選手の全面的な能力を備えている。全面的とは、さまざまな役割を果たすことができるということ。つまり今の中心選手の中には、自分にはできない、あるいは苦手なポジションがあるということだ。


明暗の行間を読む

この試合では、前半と後半で内容が顕著に別れた。原因としては先にもあげた、カメルーン側のアップ不足が上げられるだろう。また、オシム監督も指摘した、「日本の選手の疲労、交代によってバランスが崩れたこと、追いつきたいカメルーンが前に出て、日本にミスが増えたこと」なども大きな原因ということができる。

交代策に関しては、あくまでもテストマッチであり、招集された選手をなるべく多く、それなりの時間を与えて使ってみるのはロジカルなことだ。それによってバランスが崩れてしまったのは残念だが、それも織り込んで見るのがテストマッチの評価の仕方なのだ。その視点を持てば、この試合で「オシム日本はいつも後半にスタミナ切れを起こす」という批判をするのはあたらないだろう。

このような試合では、「テスト」される環境にある新戦力が飛ばしすぎてしまうこと、またテストのための交代によってバランスが崩れてしまうこと、さらには途中投入された新戦力たちがまた、自分のアピールのために前へ前へと行ってしまうこと、などなどがスタミナ切れに見せる要因となってくる。それらは本番の試合では基本的に心配しないでいいことだ。最もスタミナ切れが心配されたアジアカップでは、ホームのベトナムの方が先に動けなくなっていたではないか?


4バックと3バック

Came2ndさて、後半に関してはもう一つ見るべきところがある。カメルーンが2トップにしてきたことで、日本は前半の4バックから阿部が下がり、3バックを形成した。これはオシム監督の指示によるものではなく、選手間の判断で、ピッチ上での話し合いによって行われたことだという。アジアカップ以前のオシム日本は確かにこのように、敵のFWの人数によってDFの数を調整することを臨機応変に行っていたから、それに基づいて選手たちが判断したということなのだろう。このこと自体は間違いではない。

ただ、後半になるといよいよエンジンのかかってきたカメルーンの選手に対して、日本は2人、3人とかかっていかないと、それこそ「個」の力でやられてしまうシーンが増えてきていた。そのためか、3バックといいながら、敵の前線が2人しか張っていないのに、5人がDFラインに残って、5バックの状態になってしまっていることが多くなった。それによって、中盤でカメルーン選手をフリーにし、またこぼれ球も拾えなく、たまに拾えてもフォローの選手が上がってこず、パスをさらわれるか、大きく蹴りださざるを得なくなるか、という状態だった。

オシム監督は、「3バックにするなら遠藤が下がってダブルボランチにするべきだった」という趣旨のことを語っている。それもあるが私は、両サイドや3バックの中の選手も、敵のFWの人数によって臨機応変に中盤へ出て行くべきだったと思う。カメルーンの選手のスピードや1vs1に晒され、また疲労もあり、選手交替によってバランスが崩れている状態では、それは怖くてできなかったことはよくわかる。が、オシム日本のやり方では、そこでも「考えて走る」が求められているはずだ。これをいい教訓にして、また監督とも話し合って、さらに守備の熟成をして行って欲しいと思う。


車は加速する

総体としては、アフリカンの身体能力を体で感じ、甘いプレーが通用しないことを再び刻み、守備の再構築への端緒をつけ、新戦力のフィットもはかれた、よい親善試合だったと思う。このように親善試合をロジカルに「使う」ことは、私は歓迎したい。こうして、アジアカップ後の第2フェーズ、日本代表の選手の選択肢はますます増え、競争は激しくなってきている。そして早くも欧州遠征へ向けての選手の発表が控えている。実に楽しみではないか。

それではまた。

08:41 PM [オシム日本] | 固定リンク

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