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June 29, 2007

アジアカップ2007に向けて

そろそろアジアカップも近づいて来て、だんだん世間もオシム日本への注目を増してきているようだが、日本サッカー協会専務理事の田嶋氏は、アジアカップに臨むオシム日本へのノルマに関する質問に対して、

田嶋 前回(2004年大会)も今回も(ノルマを)決めたことは一切ございません。

このように答えたそうだ。私はこれはまったく正しい態度だと思う。アジアカップも間近に近づいていることだし、私がそのように考える理由をいくつか述べておきたい。


4年間の航路を見据えて

まず第一に、私が現状の日本代表は4年計画で強化していくべきだ、と考えていることがその理由としてあげられる。

ご存知の通り、日本代表はドイツW杯で一つの区切りを迎えた。ナイジェリアワールドユース準優勝→シドニー五輪ベスト8→2002年W杯ベスト16と経験してきた選手たちは、2010年を睨むと今後も中心としていくわけには行かなくなる。もちろん、前ジーコ監督の方針によって、その下の世代の引き上げが遅れたという理由もあるが、いずれにせよ日本サッカー史上特筆すべき経験を多く積んだ世代の後、日本代表はいったん「リセット」されなければならない状況に置かれていたことは確かだろう。

(つまり、「日本代表は『常に』4年計画で強化していくべきだ」ということではなく、少なくとも2006年~2010年の日本代表はそうすべき、だということだ)

オシム監督がしなければならないことは、世代交代を進めながら4年後に世界と戦えるチームを作ることである。そしてもちろん、2008年にはW杯アジア1次予選、2009年には最終予選があるのだから、その時期にはそれぞれを突破できるチームを作り上げることとなる。いったん「リセット」されたところからそこまで作り上げていくということは、容易なことではない。そのためには、この4年間で「わき見」などをしている暇はないだろう。

就任からこれまでのオシム日本の航路を振り返ってみると、

1)アジアカップ予選を戦いながらチームのベースを作る時期
2)多くの選手を代表に呼びながら、ベース+αを探る時期

と分けられることに気がつくのではないか。このうちの2)の「多くの選手」の中には、その時Jリーグで調子を上げてきた選手や、五輪代表からの引き上げ、そしてもちろん海外のクラブ所属の選手も含まれる。特に海外組に関しては、ようやく「組み込み始めた」レベル、その端緒についた、という段階であって、まだ熟成が必要であることは衆目の一致するところだろう。

(余談だが、「ではもっと早く呼べばよかったではないか」という意見を言う人は、もはやいないだろう。オシム監督が「海外所属選手は、クラブでのレギュラー獲得を優先させるために、あえて呼ばない」という方針を取っているということは、広く知られていることだ。中村俊輔選手や高原選手が所属クラブで前シーズンよりも一段上の結果を残せたのは、クラブに集中できる環境も大きかったのは間違いない)

個人的には、先のキリンカップを通じて「海外組」の、特に中村俊輔、高原の組み込みは予想以上にスムースに進んでいると思っているのだが、それにしてもまだ2試合、その融合は途上にある。ここで拙速に「アジアカップを獲るためのチーム作り」などに走ることなく、しっかりじっくりと融合を進めていってほしいものだと思う。そしてそう考えると、アジアカップはそのためのまたとない機会であるということは言える。2週間以上をともに過ごし、何試合も重ねていくうちに、融合はさらに進むだろう。

アジアカップは先の2)「多くの選手を代表に呼びながら、ベース+αを探る時期」であると同時に、「ベース+α」を実戦で確認しながら、一つの形を仕上げていく時期にもなるだろう。自動車レースに例えるならば、1)は設計図から試作車1号まで、2)は試作車2号のくみ上げ、そしてアジアカップは試作車でコースに出てテストを行うというところか。本番のグランプリはまだ先にある。ここはわき見をせずに、試作車の完成度を上げることに注力したいものだ。


1年の前倒し

次の問題として、やはりアジアカップが1年前倒しになったことを考慮に入れないわけにはいかない。これまでは、W杯とW杯のちょうど中間の時期にアジアカップは設定されており、W杯終了後2年たってからの開催だった。2年の強化期間を経た後ならば、アジアカップにはある程度のチームができていることを期待してもいいだろう。しかし、今回は開催時期が変更され、1年前倒しになっているのだ。

これがW杯から見て2年後、2008年のことであれば、「半年後に迫ったW杯最終予選へ臨むためのチームができるかどうか」の中間チェックとすることは妥当だろう。ジーコ監督の場合はまさにその時期であった。もちろん協会はその時も公式なノルマは設けなかったはずだが、2004年のアジアカップで見せた戦いぶりが、アジア最終予選でも見られたのは記憶に新しいところだ。トルシェ日本の場合でも、世代交代、融合を経て、2年後のアジアカップでは一つの完成形を見せたと言っていい。

しかし、今回は2年間隔ではなく、チームを作り始めて1年でアジアカップが開催される。先にも見たように、2006年以後の「リセット」「リ・ビルド」が必要/必然な日本代表にとって、この1年の差が大きいことは、誰にも理解されるのではないか。まだチーム形成途上の日本が、下手に「ノルマ」などを設けて、それを突破するためのチーム作りに汲々としたりするのは、間違っているだろう。この点では、協会の方針は正しい、と私は考える。


準備環境の変化は何を表すのか?

またもう一つの条件として、アジアカップへ向けての日本の準備状況が、参加他国と比べてもかなりプアだということがあげられる。

オシム: 一つの例だが、日本はアジアカップで対戦する(グループリーグ)3カ国(カタール、UAE、ベトナム)の中で、現在もリーグ戦を戦っている唯一の国だ。つまり直前までだ。十分な準備ができない。

とオシム監督が言うように、日本はアジアカップ直前の6月30日までJリーグを戦い、その後はアジアカップ準備のための国際Aマッチを一つも戦わずに本大会を迎える。これは、アジアカップに臨む他のどの国よりもプアな準備状況だと言っても、過言ではないのではないか(こちらは他国の親善試合スケジュール・pdf)。日本と同じグループBの国の準備状況を見ても

国名 日程 親善試合
ベトナム 6月24日 vsジャマイカ
  6月30日 vsバーレーン
UAE 6月21日 vsマレーシア
  6月24日 vsサウジ
カタール 6月14日 vs Kufstein Austria
  6月19日 vsガーナ
  6月25日 vs トルクメニスタン
  6月30日 vsタイ

と、はるかに充実していることが伺える(余談だが、カタールは19日の親善試合で、ガーナを3-0と下している!)。

また、以前の日本のアジアカップに臨む準備もまた、今回よりも充実したものであった。トルシェ監督の場合で

8月19日 Jリーグ中断
9月15日から10月1日 シドニー五輪 (vsUSAは9月23日)
10月4日 アジアカップ壮行試合 vs外国人選抜
10月8日 アジアカップ壮行試合 vsパリ・サンジェルマン
10月14日 アジアカップ初戦vsサウジアラビア

五輪終了(USA戦は9月23日)からアジアカップまで、2週間以上間があり、親善試合が2試合組まれている。また、2004年ジーコジャパンでは、

6月26日 Jリーグ中断
7月9日 スロバキア戦
7月13日 セルビア・モンテネグロ戦
7月20日 アジアカップ初戦 vsオマーン

リーグ中断から初戦まで3週間以上間があり、キリンカップの2試合がそこで準備のために使える状況だった。今回の、ほぼ1週間前までリーグ戦があり、準備のための試合がゼロということがいかに冷遇されているかわかるだろう。

これはもちろん、現在ではACLをはじめ様々な条件が重なりこのようなスケジュール設定になっているものだ。それにしても他国と比べるまでもなく、これまでの日本の取ってきた準備と比べても、まるでアジアカップを「獲るな」と言っているような設定だと思わないだろうか?そして、事実「そう」なのだと思う。「獲るな」とは言わないが「獲らなくてもいい」、獲る必要が薄い。アジアカップの重要性は大きく下がっている。このスケジュールは、協会が「今では」そう捉えているということの表出だろう。

誤解しないで欲しいのだが、競技である以上勝つことを目的としてプレイするのであり、監督をはじめチームがカップを「獲らなくてもいい」という姿勢で大会に臨むことはありえない。しかし、スケジュールを設定する側としてはそこにプライオリティをつけざるを得ないのは自明であり、ここ数年でJリーグやACLの重要性が大きく上がり、相対的にアジアカップの準備の重要性を上回っていると判断されたということなのだろう。オシム監督の発言もそれを裏付けるものとなっていると思う。

オシム: 内容か結果かで言えば、私は結果を重視する。ただし、それがどんな結果か、ここで保証することはできない。個人的には、もちろん日本サッカー協会にとっても、結果より内容の方が重要で、しかも将来、長く戦えるかどうかを重視しているのだろうと思う。もちろん両方が伴われているのがよりいいのだろう。サッカー協会として、今のアジアカップに何を期待しているのか。残念ながら、そういうことを理解しているジャーナリストが多いとは言えないのが現状ではないだろうか。

私は最近、いつまでもオシム監督がジャーナリストに謎かけのような言葉で返答し続けるのが「いかがなものか」という気がしてきていたのだが、このやり取りを読むと「仕方がないかもしれない」と思えてしまう。アジアカップのノルマを問う質問にしろ、この質問にしろ、もう少し自分で考え、様々な条件を理解し、仮説を立てた上で会見に臨むようなジャーナリストがもっと出てきてくれないものか。いや、話がそれた。


オシムのベース+α

そして最後の一つが、以前にも「オシム『総』監督」で書いたように、「アジアで勝つためのサッカーと、世界で勝つためのサッカーは違う」ということだ。アジアの中では日本は強者の側であり、そこで求められるサッカーは「引いてきた敵をどうこじ開けるか」というものになる(ジーコ時代のアジアカップはやや違っていたが)。しかし、世界に対してはまず必要とされるのはそうではない。ほとんどの敵が、オープンに、自分たちのよさを出そうとして戦ってくる中で、どのように守り、攻めていくかが必要となってくる。この両者は、一直線の上にはないものだと私は常々思っている。

アジアカップで勝つことは無論大事だ。「負け」はチームのエネルギーをそぎ、ネガティブなサイクルに陥らせがちだ。しかし、「どのような形でも勝てばよい」試合と、そうではなく、勝敗以外のところも見ていかなくてはならない試合もあるのだ、と思う。W杯アジア予選などは前者であり、今回のアジアカップは後者・・・だと協会は考えているのだろう。私はそれでかまわないと考えるし、むしろそうであるべきだ、と思うのだ。

さて、アジアカップに向けての個人的な願望だが、やはりベスト4くらいまでは食い込んで欲しいと思っている。オーストラリア、韓国、サウジアラビア、イラン、そして日本がアジアの「5強」を構成していると言えるだろうが、ほぼ実力は伯仲している。これらの国に「必ず勝てるはず」というほど、日本が突出しているわけではない。今回の大会ではこの5強にしっかりと伍していけるところを見せてくれればそれでいいと思う。また、ベスト4であれば優勝した場合と同じだけの試合数をこなすことができるわけで、チームの強化のためにも、できればそこまでたどり着いてもらいたいものだと思う。ただしこれはもちろん「ノルマ」ではない(笑)。

内容的には、昨年のアジアカップ予選ホームのサウジ戦、先日のコロンビア戦の先にある「人もボールも動くサッカー」+α、「ベース」の上で「個」が存分にその力を発揮しているような、そういうサッカーが見たいと思う。サウジ戦(ホーム)では、現在のJリーガーの力を集めれば、チームが発展途上でもアジア5強の一角サウジと互角以上に戦えるという手応えがあった。それが今後のオシム日本の「ベース」となっていくだろう。

そしてコロンビア戦では、その「ベース」にプラスして、海外クラブ所属選手の高い「個」の能力を組み込んでいこうという意思が見えてきた。完成したならばなかなかいいサッカーを見せてくれそうな、その将来的な煌めきの一端を、おぼろげながらも垣間見せてくれた、と私は思う。SoccerCastの方でも話したのだが、コロンビア戦では中村俊輔選手も、ボールを持った駒野の回りをフリーランして上がっていた。それがデコイランになってもかまわない、全力疾走でボールを引き出そうとしていく。オシムの「ベース」の上にこれがプラスされていけば、なかなか魅力的な代表になるのではないか。

アジアカップでは、その「融合」が少しずつでも軌道に乗っていく、そういう進化する代表の姿が見られれば、日本の前途は明るいと私は思う。それを期待して、アジアカップを楽しみにしよう。

それではまた。

02:29 AM [オシム日本] | 固定リンク | トラックバック (3) |

June 05, 2007

粛々と、そして悠々と

みなさまお久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。

更新に大変間が空いてしまい申し訳ありません。最近めっきり更新しなくなっていたのは、公私にわたるバタバタが主たる原因ですが、実はその他にもいくつかの理由があります。

1)SoccerCastのほうで喋ってしまって、代表やサッカーに関するアウトプット欲がある程度消化できてしまうこと。
2)オシム監督が試合後の会見で、私の言いたい事をほとんど言ってしまっていること。
3)オシム日本の航路が、私から見るとほとんど問題がなく、その通り進んでくれればいいと思えること。

などなどがその理由になるでしょうか。

1)はまあ個人的事情なので置いておいて(笑)、お分かりの通り、2と3は密接に関係しています。私が日本代表にとって正しいと思うことと、オシム監督が実際にしようとしていることがほとんど乖離がないのです。

タイトルにつけた「粛々と」というのは、「大騒ぎせず、しかし着実に、代表を強化していくこと」という意味の言葉です。私はずっと、代表の強化というのは「粛々と」であるべきと思ってきました。オシム監督、トルシェと同様、私も代表における過度の「スターシステム」は、強化の妨げにしかならないと考えているからです。日本の進路がかかった重要な試合ならともかく、親善試合などでは「絶対に負けられない戦い!」などと大騒ぎせず、その時その時のチームの課題を解決するために、試合を「使って」いってかまわない。それが「粛々と」した強化、というものになると思います。

そして、オシム監督はまさにそれをしようとし続けていますね。いわゆる「海外組」を当初は呼ばなかった。代表戦への「集客」を考えれば、スターたる彼らを呼んだほうがいいのは自明です。しかし、一つには彼らをクラブでのプレーに専念させるため、もう一つは、まずは練習の時間の取れる国内組でチームのベースを作っておくために、彼らは最初は招集されませんでした。私はこれは合理的な考え方、やり方であったと思います。


チームがスターだ

それは、「チームがスターだ」という考えを、オシム監督もまた志向していることから来ているのでしょう。

欧州の有名クラブや代表などで、監督がインタビューをされる際、「○○というスター選手がいますが、彼をどう使いますか?」と問われると、よく出てくるのが「確かに彼はスターだ。うちの勝利にとって重要な存在だ。しかし、うちでは『チームがスターだ』。彼一人ではサッカーはできない。同じくらい、あるいはより重要なのは他の10人、チームのほうなんだ」という言葉です。これは組織サッカーを志向する欧州の監督にかなり共通した考えではないでしょうか。

オシム監督は会見で相当に強く、マスコミの「スターシステム」を嫌っているそぶりを見せていますね。マスコミは、コンディションが悪くても、チームにフィットしていなくても「スターを呼べ、使え」と騒ぎ立てます。しかし、、チームの強化のステップやその選手の状況などを考慮せずに無条件に使っていくことは、「チーム」の強化の妨げにしかならない。さらに言えば、「チーム」という微妙な存在に、「スターを使え」と騒ぐマスコミがどれだけの悪影響を与えるのか。経験豊富なオシム監督は、それもよく理解しているのでしょう。


チームのベース作り

そして、その「チーム」は、一朝一夕では作れないものです。有能な選手をぱっと集めてピッチに送り出したらそこにチームが出来上がっている、というようなことはありえない。ある程度時間の取れる国内組でたっぷりと試合前の練習でトレーニングさせ、さらに練習のためだけの合宿も行う。Jリーグに負担をかけながらも、あえてそのようにするのは、「チームは一朝一夕では作れない」からです。このような「あたりまえ」が、オシム監督によって粛々と実行されている。

そして、チームのベースが出来上がって初めて、中村や高原といった「現在好調の」海外の選手を、「少しずつ」招集し、合流させる。海外に移籍した選手たちは確かに高い能力を持っています。しかし、所属クラブで試合に出ていなかったり、怪我明けだったり、コンディションが悪かったりする時には、国内の選手以上のパフォーマンスが発揮できるわけではない。チームのベース作りに参加できていないからこそ、合流するのは現在好調の選手に限るべきだ。それも、一度に大量に入れ替えてはチームのベースが保てない。一度に試合に出場するのは、2、3人ずつにするべきだ。


あたりまえのこと

オシム監督はまさにそのようにしていますね。「チームがスターだ」「チームは一朝一夕では作れない」と考えると、「あたりまえ」のことなのですが、それがこのように粛々と行われているのは、代表強化にとっては正しい道だと、個人的には思いますね。他にも行われている「あたりまえ」のことは、

・下の世代の代表とコンセプトを共有し、若い選手もフル代表に参加させる
・候補合宿に、Jリーグで活躍する多くの選手を呼んで、代表の戦術に触れさせる

などがあります。また目立たないですが、

・招集している海外組の選手でも、全員を使うわけではなく、起用しないこともある

これも、マスコミの圧力(?)を考えると、実はなかなかの英断だと思います。かつてトルシェは、海外で活躍した広山を呼びながら起用せずバッシングを受けたことがありますが、思えばあれも世間のサッカーに対する無理解から来たものでしたね。モンテネグロ戦では中村俊輔だけでなく、中田浩二も稲本も使われませんでした。コンディションの問題もあり、試合の狙いもあったでしょう。いまではそれも「あたりまえ」と理解することができますね。


オシム会見~生きたグループとしてのチーム

オシム監督はこのように粛々と「あたりまえ」の強化をして行っている。私はこれを歓迎するものです。そして同時に、会見を通じてそれを極めてはっきりと、わかりやすく提示してくれています。「チームがスターだ」「チームは一朝一夕には作れない」、そして、特定の選手を持ち上げるだけの「スターシステム」は、時として強化の妨げになることもある・・・。これだけ代表監督がしっかりはっきりと言い続けてくれているのですから、私などが何を付け足すこともないと感じてしまいますね(笑)。

キリンカップ’07コロンビア戦前の会見では、また興味深いことを言っています。

オシム: 今回、20数人招集しているが、全員を出せるわけではない。3人くらい、2試合とも出られない選手が出てくる可能性がある。しかし、そういう選手を含めて、代表チームはできている。試合だけではなく、チームの一部として機能しているかどうかも私は見ている。(中略) 試合もそうだし、それ以外の代表の活動の中でも、選手の能力や個性というものは出てくる。そこで、必ずしも良いプレーをしなくても、必要な選手はいる。つまりプレーそのもの以外でも、重要な要素が存在している。生きたグループとしてのチーム、そういった必要な要素を選手たちは持っているか。サッカーのプレーさえできればいい、という話ではないのだ。

男がほとんどの40人以上の集団が、一定期間こもって生活する「代表チーム」という存在の心理マネジメントが、いかに難しいか。ドイツW杯本大会では、まさにその「生きたグループとしてのチーム」に関して、「プレーそのもの以外での重要な要素」にいささかの問題があったのではないか、ということが語られていましたし、最近では重要な証言もまた出てきたようです。オシム監督はそういった要素の重要性を理解し、少なくともそこに取り組もうという意欲を持った監督ですね。この点も、私が歓迎したいと思うポイントのひとつです。


粛々と、そして悠々と

モンテネグロ戦、コロンビア戦も、こういった「粛々とした強化」の一環です。課題があり、狙いがあり、そして成果もあり、おそらくは次の課題もでることでしょう。代表チームのスタッフにはそれをしっかりと(粛々と)実行し、また次へのプランを練って、着実に強化をしていって欲しいですね。そして私たちも、その狙いを理解し、その上で代表の強化ぶりを論じていきたいものです。

そうそう、モンテネグロ戦は98年以来最低の観客動員となったそうですね。私はむしろちょっと意外でした。96年くらいから代表バブルが始まったと思っていたので、96~98年の間にモンテネグロ戦よりも集客の悪かった試合があったとは思いませんでした。いずれにしろ、96(マイアミの奇跡)~06(ドイツW杯)の間の「代表ビジネスモデル」はもはや終焉を迎えていることは明らかでしょう。金曜の夜の静岡で、あのチケット値段での、親善に過ぎない試合に、無条件で観客が集まると考えるほうがどうかしています。まあ、これから重要な試合が増えてくればまた盛り上がるでしょうけどね。

普段は粛々と、そして重要な試合では魂をこめて、それがノーマルなんですよ。

それではまた。

02:18 PM [オシム日本] | 固定リンク | トラックバック (3) |