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February 05, 2007

Homeward Bound

Cast昨年の10月からはじめたポッドキャスト「SoccerCast」ですが、どうやらポッドキャストランキングで総合90位を突破したようです。登録していただいた方は10000人を越えました。聞いていただいた皆様、登録してくださったみなさま、本当にありがとうございます。

ポッドキャストという新世代の大海の端っこで、こそこそとやろうと思っていたのに、こんなことになるとどうも緊張してしまいますね。普段10000人を前にしゃべったりすることはありえないじゃないですか(笑)。

さて、そのSoccerCastですが、少し前にサッカーキャスト 第6回 後半 「『JFAテクニカルレポート』と『敗因と』をめぐって」がアップされました。昨年末に相次いで出た「JFAテクニカルレポート」と「敗因と」。この両者以来、各所で「もう一度ドイツW杯の日本代表を振り返ろう」という風潮が出ていますね。私のBLOGでもちょっとやってみましたが、今回のSoccerCastもその一連の流れに連なるものになるでしょう。

ただ、三人で喋るものなので、こういうテーマだとどうしても熱くなりがち(笑)です。「思わず言っちゃった」とか、「勢いで」という部分がいささかあるトークになってしまいました。編集をしてくださった発汗さんも

やれやれ… 編集に苦労しました。 ともすればピーが飛びがちな激論でありまして、過激な方が良いという諸兄姉には物足りないかもしれませんが…

(^_^;)

とおっしゃっています。そういう熱い(?)トークに興味がおありでしたら、ダウンロードして聞いていただけるとうれしいです。


今すぐにでも帰りたい?

Main_1121さて、サッカーマガジン2007/2・13「海外組が待ちきれない!」(しかし、川淵キャプテンが書いたようなタイトルですね・笑)において、中村俊輔選手の興味深いインタビューがあったようです。ネット的にはもう旧聞に属するかもしれませんが、非常に興味深いので、取り上げておきたいと思います。BGMは”Homeward Bound”(SIMON AND GARFUNKEL)で。

タイトルは、独占告白「もう一度、日本で・・・」となっています。海外に挑戦した選手が日本に復帰してプレーするのは珍しくないですから、このように言うこと自体は普通のことといえるでしょう。話題になったのは、中で明言されているその「時機」と「動機」についてです。記事中で中村選手は言っています。

中村: 帰れるものなら、今すぐにでも帰りたいよね。(中略)とにかくトップコンディションでいるうちに、日本に帰りたいんだ。

だれもが「えっ?」と耳を疑うような発言ではないでしょうか?彼はドイツでのあの失望を経て、今年雄雄しく復活し、セルティックでチャンピオンズリーグにも出場し、まさに欧州でのキャリアも順風満帆のはず。いよいよ来シーズンは念願のスペインか?と期待していた人も多いでしょう。それが「今すぐにでも日本に帰りたい」とは?

その動機は何なのでしょうか?

中村: そういう(高いレベルのでいろいろな)経験を、トップレベルでいるうちに日本で出してみたい。ワールドカップでやってみてそう思ったんだ。やっぱり負けたくないじゃない。日本代表をさ、日本のサッカーをもっと強くしたいんだよ。日本らしいサッカーをやって、世界で勝てるようにしたいよね。(中略)そのためには、まだ代表のスタメンでプレーできる力があるうちに帰りたいんだ。(括弧内補足:ケット・シー)

なんと、私はこれには驚きました。中村選手は、日本代表を強くするために日本に帰りたいと言うのです。これはちょっとユニークな、見方によっては素晴らしい考え方だと思います。

多くの選手がこれまでに海外へ挑戦しましたが、日本へ帰るにあたり、「夢破れて」というイメージを与えるケースがほとんどでした。本当はもっと海外でプレーしたいんだけど、プレーさせてくれるところがない。だから日本に帰る。残念なことですが、これまでの帰国の多くの場合はそうだったのではないでしょうか?

中村選手は違います。セルティックでも絶対に必要とされる、セルティック以外からでもおそらくオファーはある(だってCLのGL突破の立役者ですからね)だろうにもかかわらず、日本に帰りたい、という。そしてその理由が「日本代表を強くしたいから」。これは、「より高いレベルのリーグでプレーしたい」という欲求を、「日本代表への思い」が上回ったということですね。ドイツW杯での不完全燃焼感によるものでしょうか。私は、「そこまで代表に思い入れがあるんだ」と少ししみじみとしてしまいました。


現実的に契約は?

さて、このような移籍の時機について、現実的に問題となるのは契約がどうなっているか、ということです。何度かこのBLOGでも、あるいは他のいろいろなところでも話題になったことですが、日本の感覚では掴みきれない部分もあります。文中では、中村選手自身も契約の難しさに触れていますね。

中村: セルティックとの契約はあと1年残っている。今回その契約を更新しないで、次で切れるということになったら、今度はセルティックでどうなるか分からないよね。(中略)きちんと移籍金が発生して、日本に帰るっていうのがベストなんだろうね。

私の理解ではこの場合、移籍金が発生するには、

1)このシーズンオフ(契約が一年残った状態)で移籍するか(一年分なので移籍金は安い)
2)このシーズンオフにあらためて複数年契約を結びなおし、それが残った状態で移籍するか

という必要がありますね。このシーズンオフとは、2006-2007シーズンの終わり、2007年夏ということです。

複数年契約が切れた選手は移籍金ゼロで移籍できますが、それを望んで複数年契約を更新しない選手は、最後の一年間、試合で起用されないなど「飼い殺し」のような目にあうこともあるようです。それでは選手として大きなダメージですし、オシム監督の代表選出基準にも合わなくなる。それもあって中村選手も「きちんと移籍金が発生して、日本に帰るっていうのがベスト」と言っているのでしょう。

ところでこの記事の最後には、中村選手はこう言っています。

中村: とにかく、30歳を迎えるまでには日本に帰るつもりだよ。

中村選手は1978年6月24日生まれであり、今年2007年には29歳になります。そして30歳を迎えるのは来年2008年の6月。と考えると、現行2006-2007シーズンの次、2007-2008シーズンの終わりには、30歳を迎えるわけですね。つまり、遅くとも来シーズンの終わりには、日本に帰るということを発言したわけです。また聞きようによっては先に提示した条件の一つ目、「このシーズンオフ(契約が一年残った状態)で移籍する(一年分なので移籍金は安い)」も視野に入れているとも取れます。


Homeward Bound

これによって、この記事のような騒ぎになったわけですね。

以上に見たサッカーマガジンの彼の発言からすると、「この夏J復帰」はさすがに曲解ですが、記事にあるような「いつかは日本でやりたいと言っただけ。(選手生活の)最後かな…。それが35歳になるかもしれないし」というのも少し食い違っています。まあ、地元サポやメディアの「火消し」のためにもそう言わなければならなかったのかもしれませんね。

もちろん契約のことを考えると、「契約が1年残っていて移籍金の発生するこの夏」という線もないわけではないですが、セルティックの現状を見ると、それはないだろうし、してほしくない。とはいえ、移籍金がからむ契約の問題は非常に微妙です。個人的にはセルティックに残るか、スペインへ挑戦するか、という選択を取って欲しいところですが、契約の問題から電撃的に・・・という可能性もなくはないでしょう。この先の成り行き(まあそれが発生するのは夏でしょうが)に、ちょっと注目する必要がありそうですね。

それにしても、中村選手のこの熱い代表への思いは、意外でもあり、代表サポとしてはうれしくもありました。そして、それだけでもない。オシム監督の「海外組にはクラブでレギュラーをとることに集中してもらうために、当面代表には呼ばない」という方針は、論理的には極めて正しい。しかし同時にそれは、代表への思いが強い選手にとってはうれしくないことでもある。そういうアンビバレント(二律背反)さを私はこの記事から感じたのです。

どうするのが正しいのか。そこに正解はない。オシム監督がいつも言うように、人生すべてがそうなのでしょうね。

それではまた。

03:45 PM [サッカー日本代表] | 固定リンク

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