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January 10, 2007

高い位置から奪いに行くプレス

みなさまあけましておめでとうございます。前回のエントリーは続き物でしたので、ご挨拶は抜きにさせていただきました。ここであらためて、日頃のご訪問に感謝をささげ、新年のご挨拶に代えさせていただきたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。

「2006大会の趨勢と日本(テクニカルレポートより) 」は結構な反響をいただきました。やはり、2006年のあの悔しさに対するきちんとした総括は、どうしてもやっておくべきなのだな、と感じています。悔しい、思い出したくないですけれども、協会がそれを見ないようにしているのだから、なおさらですね。

さて、前回のエントリーに関し、dorogubaさんからトラックバックをいただきました。非常に興味深いご指摘がありますので、ここでお答えをさせていただきたいと思います。

dorogubaさん: 問題は、高い位置でのフィジカル・コンタクト数なんでしょうか?

私は、ドイツ大会でのジーコジャパンには多くの問題があったと思っています。dorogubaさんが文章中でおっしゃっている「局面局面での判断力の欠如」とか「試合運びのまずさ」とかも問題でしたでしょうし、「敗因と」の中でメインテーマとなる、攻撃陣と守備陣の考え方の「溝」もそうだったでしょう。またフィジカル、メンタル両面のコンディショニングも拙いものでした。さらには、プレスをかけられると機能しなくなるパス回しや、ぽっかりと空くバイタルエリアなど、戦術面も問題でした。それらについてはBLOGで、あるいはJ−KETでずいぶんと考察しているのですが、どれが「もっとも大きな問題」であり、「敗因」だったのかは、意見が分かれるところだろうと思います。

私が前回のエントリーでフィジカル・コンタクトの位置に注目したのは、次のような(テクニカル・レポートでの)文脈があってのことです。

1:この大会での勝ち抜いた国は、「高い位置から奪いに行くプレス」をしていた。
2:そのために「全員の高い技術、ハードワーク、闘う姿勢」が必要とされ、それがないと勝てない時代になった。
3:日本とそういう国との差は、「全員の高い技術、ハードワーク、闘う姿勢」という当たり前のところの差である。

この文脈内で、1、2、3の問題をチェックするために、フィジカル・コンタクトの位置と数をカウントしてみたのです。もちろんそれ「だけ」が重要だとは思っていませんが、一つの指標として、やはり実際に高い位置でのコンタクトは、例えばポルトガル、メキシコでも日本と比べると多く、テクニカルレポートにあるとおり、「(最終ラインは低くても)高い位置から奪いに行くプレス」がドイツ大会の趨勢であるのは間違いがないところだと思います。そして日本は、それとは違うサッカーになっていた、ということが数字にも表れています。

しかし、私は「それが日本の最大の敗因だ」とは思っていませんし、書いてもいません。日本が世界の趨勢と違うサッカーをしても、それで勝てるならかまわないのです(勝てませんでしたが)。ジーコジャパンの問題、敗因に関しては、先にあげたように多岐にわたるものがあり、そのどれもがそれぞれ重要だと思います。ただここでは「テクニカルレポートにある世界の趨勢と違うサッカーであった」ということを確認しているに過ぎません。

ちなみに、私は以前から書いていますように、ジーコジャパンでは「高い位置から奪いに行くプレス」の整備は無理だと思っており、その意味では「コンフェデ・ブラジル戦の後半」にできた、リトリート・プレス(造語)を行うのがよいと思っていましたし、そう書いていました

その意味では、クロアチア戦での「リトリート指示」については、遅きに失してはいるものの「間違っていない」とは思います。ただ、W杯に向けた合宿を始めてから4バックは練習していなかったと聞いていますし、実際試合でも、相当の崩されたピンチを作られています。クロアチアが暑さでやられていたので助かりましたが、前半にはPKも取られましたし、急造の感は否めない、うまく機能したとはいえない、と思っています。


ハードワークと闘う姿勢

dorogubaさん: 「ハードワーク」と「高い位置」の結びつけがちょっと強引なところがあるような気がしたんで。

私は上記テクニカルレポートの文脈の1、2、3が不可分だと考えていました。ドイツW杯の趨勢に関する文脈内では「フィールド全域でのハードワークが必要」と読めたからです(「ハードワーク」は「運動量」も含むと考えました)。したがって、フィジカル・コンタクトの位置をカウントすることで、それらを一つにまとめて検証したつもりでした。が、確かに「高い位置でのフィジカル・コンタクト数は、高い位置で奪うプレスの指標にはなる」、けれども「ハードワークや闘う姿勢の指標には完全にはなっていない」とは言えます。

ですので、全体の論旨は変わりませんが、私の上げたデータは「日本が(大会の趨勢である)高い位置で奪うプレスをしていない」ことの証左だとして、前回のエントリーに付け加えたいと思います。ご指摘ありがとうございました。

しかしながら、上川主審も述懐し、かつテクニカルレポートで書かれているように、「日本はハードワークや闘う姿勢において、強豪国に劣っていた」のも確かだと思いますし、それが大きな敗因の一つであるとも思います(個人的意見です)。その点では(それ以外の点でも)、選手起用、組織作り、メンタル/フィジカルコンディションの整備において、ジーコ監督の責任は非常に大きく、それにまったく触れないテクニカルレポートには、大きな不備があると考えています。

Japancontact_1

ところでこの図は、三代の日本代表が一試合の中で、フィールドのどの位置でフィジカル・コンタクトを敢行していたかをピッチ上に図示したものです(誤りがあったので図を訂正しました:1/11/16:40pm)。緑から赤に行くにしたがって多くなっています。トルシェ日本についてはロシア戦、いわゆる最終ラインの位置の修正が選手によって行われ、ラインが低くなっていると喧伝された試合のものです。もちろん、コンタクトの数や位置はさまざまな条件によって変わり、それだけが重要なのではありません。しかしこうして図示してみると、いろいろなことが結構わかりやすくなるな、という感想を私は持っています。

dorogubaさん: それをもって「正常な方向」と結論づけるのもどうかなって思いますし、日本代表の進むべき道はそこではない気がします。というか、オシムが向かっているのは「そこ」なんでしょうかね?

「高い位置から奪いに行く」ことについては、オシム監督のチームは、ジェフの時からそれを目指しているように私には思われます。特にボールを失った瞬間の守備が強く意識付けられ、攻撃の選手も自分から奪いに行く姿勢が強い。それはガーナ戦でのフィジカル・コンタクトの位置のカウントでも現れていますね。むしろその姿勢が強すぎて後ろにちょっと不安があり、ジェフは失点の少なくないチームでした。代表ではどうなるか、気になりますね。

また、「全員のハードワークと闘う姿勢」については、オシム監督はそれを最低の前提条件としているのではないでしょうか?特に高い位置から奪いに行く時はそれが必要になりますが、そうでなくてもそれは「当たり前のことの徹底」であって、本来はことさらに取り上げるようなことではないと言ってもいいくらいです。

しかし、テクニカルレポートではそれが「ドイツ大会の日本ではできていなかった」とされていますし、私も同感なのです。ですからまずは、その部分を「正常化」し、それをステップボードとしてその先へ行こうということではないかと思っています(その「先」がどこかというのは興味深いですが、それはまたいずれ)。「走らなければサッカーにならない」「一人でも守備をしない選手がいると勝てない」というのは、オシム監督の口癖ですよね。

dorogubaさん: ジーコ日本代表のFWは守備してませんでしたか?

していましたね。高原はブンデスリーガでは、「守備し過ぎるから点が取れないんだ」と批判されたりする選手ですし。ただ、フィジカル・コンタクトをした位置のカウントを見ていただいてもお分かりのように「多くなかった」ですね。また、ジーコ監督がFWにそのような指導をしていたり、指示をしていたか、という情報は、私は寡聞にして知りません(していたのかもしれませんが)。どちらにせよ、大会の趨勢に比べると、多くなく、組織だってもいなかったと私は思います。

dorogubaさん: オシムのマンマークの3バックの由来?

オシム日本は「3バック」ではないのではありませんか?2CBプラス「阿部」で、敵が2トップなら阿部が下がって3バックになり、敵が1トップや3トップの時は阿部が上がって4バック(2CB)になるという、非常にフレキシブルなやり方ですよね。

さて、前回のエントリーは、テクニカルレポートに書かれた

A:「日本代表は(大会の趨勢である)高い位置から奪いに行くプレスをしていなかった/できていなかった」
B:「(これまでの日本代表ではできていた)連動したプレスは、ブラジル戦の前半以外できていなかった」
C:「ハードワークや闘う姿勢でも、強豪国に劣っていた」

という3点を考察したものでした。私がカウントしたデータは、このうちのAのポイントを補強するものだということです。とはいえ、考察全体の趣旨は変わりません。そしてオシム監督は、AとCをやはり不可分のものとし、強化しようとしているように見えます。攻守の切り替えがますます早くなっていく現代のサッカーでは、それは正しいことだと私には思えますし、それが成功することを心から祈っています。

それではまた。

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前回のKETSEEさんの『2006大会の趨勢と日本(テクニカルレポートより)』について思うところを書いたのですが、それについてのお答えをKETSEEさんよりいただきました。どうもありがとうございます。■、「テクニカルレポートの検証」と「KETSEEさんの見解」を混同ジーコジャパンの問題、敗因に関しては、先にあげたように多岐にわたるものがあり、そのどれもがそれぞれ重要だと思います。ただここでは「テクニカルレポートにある世界の趨勢と違うサッカーであった」ということを確認しているに過ぎません。h...... 続きを読む

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