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October 08, 2006

オシム「総」監督

Image140私は、こちらのエントリーでも書いたように、「日本サッカーの日本化」を提言したオシム監督に期待している。これは、「代表監督」として、でもあるが、同時に「日本サッカーの先導役」としてのことでもある。「ジェフのサッカーが日本人が一番生きる」と考えているU-17の城福監督や、「オシムの練習は金を払ってでも見たい」とかつて言っていた五輪代表の反町監督ら、日本人スタッフもその主体となって、「日本サッカーの日本化」に取り組むべきだと思っている。そして、彼らに哲学やメソッドを伝えていくことも、オシム監督に大いに期待したいことなのだ。

ところで海賊ひでさんの「どうやってオシムを評価するの?」こちらはまさにその点に問題提起をされている。

海賊ひでさん: 代表監督がここまで長期的視点を持つことは正しい姿なのでしょうか?代表監督には試合ごとの結果のみを求めるべきで、長期的視点はテクニカルディレクターが持てば良いのではないでしょうか。

この問題意識は正しいし、指摘は興味深いことと思う。またこれは、金子達仁氏の「協会はオシム監督に何を望むのか」とも共通することだろう。

金子達仁氏: 日本らしいサッカーを構築しようとしているから、負けてもいい――では本末転倒である。オシム監督に何を望むのか。日本サッカー協会の考える具体的な目標をわたしは知りたい。

私は協会にそういう期待はしても仕方がないと(笑)思っているが、金子達仁氏の協会に対するこの要求は正しい。協会はもっときちんとこの点に関してアナウンスしていくべきだろう。それも川淵氏のくだらない囲み取材発言などではなく、小野剛技術委員長の公式なプレスリリースとしてだ。しかし、私は協会のそれを待つよりも、私個人がオシム監督に何を望むのかを、もう一度はっきりさせておきたいと思う。


4年後を睨んで

先の海賊ひでさんの問題提起「代表監督がここまで長期的視点を持つことは正しい姿なのでしょうか?」に対して、私は個人的には、「正しい」と言いたいと思う。

日本はアジアの所属であり、コパアメリカやEUROに比べると、アジアカップはややその趣を異にすると私は思っている。コパやEUROは、「そこで勝つためのチーム作り」と、「W杯で勝つためのチーム作り」が基本的にはシンクロしているのだが、日本がアジアカップで勝つためのチーム作りと、W杯で勝つためのそれはかなり違っていると考えられるからだ。それは先の4年が図らずも証明していることではないか。

もちろん、W杯に出るためにはアジア予選を通過しなくてはならないから、そのためのチーム作りは必要だ。しかし、欧州の国がW杯直後に厳しいEURO予選を戦わなくてはならないのに比べると、2年後、3年後にW杯予選をひかえる日本は、時間的な余裕はあるほうだろう。まだまだレベルの高いとはいえないこの国は、「4年かけて強化、W杯の準備をする」くらいでないと、W杯での成功は望めないのではないだろうか。

予選のなかったトルシェ監督はもちろん、あのドーハの悲劇のあと就任したファルカン監督も、ある意味「勝手に」4年後を睨んで強化をし始めた、と私は見ている。二人とも、契約期間は短く、4年後を睨む必要はまったくなかったのにもかかわらず、である。ただの雇われ監督ならば、自分の契約期間内での成績だけを考えればよさそうなものだが(当初のトルシェ監督の契約は2000年10月まで)、二人はそうしなかった。

Trhikakuこれは、彼らが日本の当時の状況を見て「日本はしっかりした方針の下、時間をかければ強くなる」と考えたからではないだろうか。私は、この二人の「見立て」は正しかった、と今では思っている。1998-2002の間に仮にW杯アジア予選があったとしても、あの理想家のフランス人は同じやり方をしたのではないか、とも思うのだ。欧州や南米の強国では、「代表監督の仕事は勝つこと」であるのかもしれないが、日本では「目先の試合に勝つこと」以上に「4年後に勝つこと」と設定するべきだと思う。

オシム監督は再び「勝手に」(笑)、自分の目標を4年後に(少なくとも3年後に)おいているように見える。上記理由から、私はそれは歓迎なのである。


ユース年代から一貫しようとする強化方針

さて金子達仁氏の問題提起であるが、重要なのは次の部分であると思う。

金子達仁氏: 何度も書いてきたが、代表チームの監督はまず「選抜する者」であって、「強化する者」ではない。クラブチームの監督に求められるものとは、まったく違った資質が必要になってくる。

これは一面では正しい。時間のない中での代表監督の仕事は「トレイナー」よりも「セレクター」の役割が大きくなるとも言える。しかし、そうではない可能性もあるのではないか。もちろん協会はオシム監督と「代表監督」としての契約を結んでいる。しかし、先にもあげた城福監督や反町監督の志向性を見ていると、それだけでは「もったいない」(笑)と私には思えてくるのだ。

西部謙司氏がサッカー批評22号で書かれていた、「日本代表強化計画<私案>」では、「ユース年代で代表の『ひな形』をつくってしまい、~五輪~フル代表と同じやり方で強化をしていく」という方法の提言がなされていた。これは私は勝手に「チェコ・フランス型」と呼んでいるのだが、今回のW杯のペケルマン・ボーイズ・アルゼンチンもそれに近いものだったと言えるだろう。時間の取れないフル代表で「スタイル」を作るのではなく、下の年代から一貫した方針でそれを作り上げて行こうというのである。

ジーコ監督時代は、五輪以下の強化方針と、フル代表の方針とが乖離していた、とはよく言われるところである。まあ五輪以下の田嶋氏が主導する強化方針もいかがなものかであったから、その乖離自体を大きく問題視するつもりは、私にはいまやない。しかし、本来はそれは共通するものであったほうがよいことは、論を待たないだろう。下の年代で経験を積んでいく選手が、フル代表に上がったとたんまったく別のことを要求されるのでは、非効率的だ(もちろん、大括りな方針=ベクトルがそろっていれば、中での多少の違いは監督の個性であり、あって当然だが)。


集団指導体制の長として

オシム監督の就任で、偶然だが日本には西部氏の<試案>、私の言うチェコ・フランス型強化に近い強化体制が出来上がろうとしている。私が期待するのは、この「一貫した強化方針で指導していく集団指導陣の長」としてのオシム監督なのだ。これは、もちろん本来は小野剛技術委員長や、田嶋幸三専務理事の仕事であるとは言える。しかし、彼らとオシム監督を比較した時、オシムのほうがよりその任にふさわしいと思うのは私だけだろうか?もう一度、城福監督や反町監督の言葉を反芻していただきたい。

オシム監督は現在までのところ、実に精力的にスタッフミーティングを繰り返している。3時間、4時間におよぶそれのなかでは、時にはコーチ陣に試合の反省を述べさせるなど、「指導者への指導」にも見えることを行っているようだ。

 「みんなピリピリしていました。監督は意見を聞きながらやるので、準備不足であの席に座っていられませんね」と苦笑いしたのは小野技術委員長。内容こそ明かされなかったが、試合を振り返っての意見を求められ、そのたびにオシム監督が皮肉まじりにチクリ。プロ野球・楽天の野村克也監督の下でのスタッフ会議を彷彿とさせる内容で、終わったときには約3時間半が経過していた。日本協会・田嶋幸三専務理事も「みんな緊張して疲れてた」と話す。

私は、これを強く歓迎したいと思う。振り返れば、トルシェ監督時は彼自身がユース~五輪~フル代表と一貫した指導を行った。しかし、そのエッセンスは山本氏の中には何も残らなかったのではないか、と私は思っている。今回はそのようなことになってはならない。オシム監督に「頼り切り」にならないためにも、彼の方針に日本人スタッフが喰らいついていって、それを身につけ、自分たち自身で「一貫した指導体制」を作っていかなくてはならないのだ。そう考えると、意欲のある若手指導者たちと、それを導こうとする経験のある代表監督、理想に近い体制ができているのではないか、と私には思える。

金子達仁氏: 日本らしいサッカーを構築しようとしているから、負けてもいい――では本末転倒である。

別に親善試合に全部勝たなくてもいいだろう(笑)。また「日本らしいサッカー」という言葉に引っ張られる必要もない。上述したような、一貫した強化方針を担える集団指導体制を構築、運営しようとしている現状、それこそが「日本らしいサッカー」を作り上げる道なのだ。私の考える「本末」は金子氏のそれとは違う。目先の試合全てに勝たなくてもいい。もっと重要なことを貫いて、そして4年後にこそ勝って欲しい。私はそう思っている。

それではまた。

01:42 PM [オシム日本] | 固定リンク

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