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September 06, 2006

早すぎる試金石

アジアカップ最終予選、アウェーのサウジアラビア戦が終了した。0-1と悔しい敗戦だったが、アジア5強の一角、ホームで絶対的強さを誇るサウジアラビアとのアウェー戦である。しかも日本は監督が代わって3試合目、サウジは監督が留任しチームの熟成度は段違い、という条件の中で、オシム監督が言うようにむしろ内容では上回っていたのだから、私は及第点だと思う。

「内容」を計る一つの物差し(もちろんあくまで参考にしかならないが)は、「シュート数」だろう。それを見ると、この試合は13:13とまったくの互角であったことがわかる(ニッカンデータセンター)。ただし、サウジは可能性の低いミドルシュートも多く、枠内シュート数では日本5:サウジ2であることを見ても、観戦中に「内容では押していた」という感覚を持っていた人は正しいといえるだろう。もちろん、だからこそ勝っておきたかった試合であって、悔しいことは確かなのだが。

ところで、就任して試合数が少ない時期がいかにコンセプトを浸透させるのに苦しいものか、過去の事例を一つ見てみよう。ジーコ監督時代にちょうど、4試合目にしてアジア4強(当時)の一角、韓国とのホーム&アウェーの親善試合があった。その試合は、日本も韓国も海外組抜きで行われたアウェー戦でシュート数日本8:韓国16、日本ホームでは日本2:韓国15ということになっている(繰り返すが、シュート数はあくまで参考にしかならないが)。

日本はアジアではトップレベルだが、監督就任して日が浅く、コンセプトの浸透がなされていなければ、他のアジアトップレベルの国に苦戦することはこれまでもあったことだ。毎日練習できるクラブの監督に比べ、代表監督はとびとびにしか選手と接することができない。そういう中での3試合目、しかも連続ではなく、間にJリーグの試合をいくつも挟んで、というのは、まだまだ「チーム立ち上げたて」と考えるべきだ。

私は、ジェフのサッカーを見ていても、また難解な(笑)ビブス練習を見ていても、「選手個々の対応力を練習を通じて向上させる」ことを主たる方法論とするオシムサッカーの浸透には、もっとずっと時間がかかると思っていた。しかし、3試合目にしてサウジアラビア相手に、あれだけの内容のサッカー(開始15分は除く)を見せられるとは、代表の選手の吸収力にむしろ私は驚いたくらいである。今後さらにオシムサッカーへの理解を深めていけば、日本はどのように成長していくのか。この1戦で、私はさらに楽しみになった。


■できたこと、できなかったこと

しかし言うまでもなく、敗戦は敗戦である。そこに問題はあるし、それは改善されていかねばならないだろう。「できたこと」と「できなかったこと」を、いくつかのポイントで見ていこう。

○守備面

開始1分30秒、阿部は早くも3バックの左に入っている。ディフェンスは、この阿部-闘莉王-坪井の3バックに、その前に鈴木を配する形だが、全体としてはうまく機能したと思う。3分には、三都主が高い位置からプレッシャーをかけて奪い、達也へパスを通している。高い位置で奪っての速攻を狙うというかたちは、いくつか作ることができていた。19分ごろの、阿部の前へ出てのインターセプトから、達也とのパス交換、達也へのパスなどはまさにこのチームの「やりたいこと」そのものだろう。

また、11分には敵にドリブル侵入されているが、鈴木と遠藤がバイタルエリアを埋め、左右のアウトサイドもしっかりと絞って対応している。23分には鈴木がバイタルエリアを空け、左サイドへ出て行ってディフェンスしているが、中央には加地が絞ってバイタルエリアを埋めている。鈴木も、加地も、駒野も臨機応変に中盤で守り、あるいは3バックに入り、複雑に役割を分担して、守備を機能させている。この短期間でできることとしてはなかなかのものだと思う。

失点シーンは、後半28分に鈴木がやはりサイドへ出て行って空いたバイタルエリアを、7アミンに使われてシュートを打たれ、こぼれだまが43アルドサリに渡って決められたもの。このシーンでは、空いたバイタルエリアを埋めるべき遠藤、加地の動きがやや遅かった。また、鈴木自身、首を振って後方を確認していればアミンがフリーなのが確認できたはずで、彼なら戻ってケアすることもできただろう。この点では23分にできていたことが、各人できなくなっているわけだ。

後半には敵がサイドの攻防に人数をかけて来て、鈴木がバイタルエリアを空けることが増え、そのケアができないシーンが増えていく。日本にもチャンスがあったため選手が上がっていたこともあるが、同じ形で何度かやられかけているだけに、試合中にでも修正を施したかったところだ。あるいは、いったんわざと落ち着かせて敵の勢いをそぐか。その辺のゲーム中の対応は、国際試合の経験が少ないだけにまだ時間が必要なのかもしれない。


■ビルドアップ、攻撃面

○ビルドアップ

鈴木や坪井、阿部はグラウンダーのビシッとした楔に入れるパスを何本も狙い、何本も成功させていた。これはイエメン戦で少なかったものでもあり、オシム監督の狙いが選手に浸透し始めている証左だろう。33分の達也のドリブルからの、遠藤の惜しいミドルシュートは、坪井が達也に出した「ビシッとクサビパス」からはじまっている。これは増やして行きたいし、正確性も増したいところだ(狙いはいいが、インターセプトされることもままあった)。

ただ、オシム監督から怒られたらしいが(笑)、特に闘莉王には可能性の低いロングフィードを蹴ってしまうことが目立った。もちろん彼だけの問題ではなく、FWや周りの動き出しのせいもあるのだが、自分がフリーだったり、周りにセーフティーなパスコースがある時は、もっと確実なビルドアップをしていきたい。今日の(もう今日だ!)イエメン戦ではそこを確認しよう。

○攻撃面

DFラインやボランチからの「ビシッとクサビパス」からの攻撃はだいぶできるようになってきた(例えば前半42分にも)。また、サイドからクロスを上げる時には、ペナルティエリア内には2トップだけではなく、多くの人数が入っていくこともできている(イエメン戦の前半はこれができていなかった)。前半29分には加地からのクロスに巻、達也、遠藤、三都主、駒野までペナルティエリア内にいる。これもよいところだろう。

ただ、奪ってからの早い攻撃といういう面では、ジェフのいい時に見せるような、「奪った瞬間に全員が一斉に走り出す」というシーンはあまり見せることができなかった。これは熟成度の問題、一人ひとりの「リスク・チャレンジングマインド」の問題などによるものだろう。オシム監督はここをもっとも重視しているはず。もっと向上して欲しいところだ。

ただ、アウェーであること、サウジが意外と低いDFラインを採っていたこと、それによって敵陣にあまりスペースがなかったことで、そういうサッカーにとって難しい状態ではあったことは付記しておきたい。イエメン戦も同様、敵が自陣にしっかりと陣形を引いてしまうと、2列目からの「追い越し」は難しくなる。イエメンではサイドにはスペースがあったが、サウジではそこもかなりつぶされていた。早いサイドチェンジや、「ビシッとクサビパス」からの攻撃でそこをこじ開けていくことが、今後もっと必要になるだろう。

総じて、就任3試合目にしては、攻守ともになかなかの機能性を見せ、内容面では及第点といいたいところだ。ただ、今後の課題として、

○ボランチがバイタルを空けた時の、周囲のケア(をやり通す)
○ペースを握られた時の、落ち着かせ
○「ビシッとクサビパス」の精度
○可能性の低いフィードを蹴らない
○さらに早い守→攻の切替

といったところがあるだろうか。もちろんまだまだ向上すべき点は多いが、オシム監督第1シーズンとしては、まずはこれらの点をクリアしていって、「考えて走る」オシムサッカー、「日本化された」ムービングフットボールのとりあえずの完成形を見せてほしいと思う。


■さあ、イエメン戦!

さあ、もういよいよイエメン戦だ(早い!)。報道によれば、オシム監督は先発を多少いじるようだ。強行日程を考えれば、このような策は常道でもあるだろう。二川、羽生、長谷部といったあたりを投入するらしい。このような形だろうか?

----巻---達也----
------二川------
三都主-遠藤--長谷部-羽生
--阿部--闘莉王-坪井--
--------------
------川口------

イエメンは2300メートルの高地であり、ホームではサウジに対しても主導権を握り、攻勢に出たチームと聞く。それに対してこの布陣は、「やけに攻撃的だな」と個人的には思うのだが、さて、オシム監督の意図は那辺にあるのだろうか。

それはともかく、アジアカップ予選の確実な通過を得るためには、この試合はぜひ勝っておきたい試合である。詰まりに詰まったリーグ戦からさらに強行日程での、苛酷な環境のアウェー戦。選手もスタッフも本当に大変だろうが、あとひとふんばり、大和魂を見せて、頑張ってほしい。私たちはここから、「魂」を送っている。

それではまた。

08:27 PM [オシム日本] | 固定リンク

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