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September 30, 2006

ガーナ戦に向けて

Ghana前回のエントリーでは、アウェー・イエメン戦での日本代表の向上した点を主に書いたが、もちろんまだできていないことも多々ある。今回は近づいてきたガーナ戦へ向けて、それらを見ていこうと思う。しかし、よく言われるような「最後のワンプレーの精度」についてではない。それは確かに問題だし、「もっと精度の高い選手を選べばいいのに」とも思うが、そこに対する批判、叱咤激励はもう十分いろいろな人がしていると思うので。

Number誌662号で、オシム監督はリトバルスキーのインタビューに次のように答えている。

オシム: 残念なことに、日本人は最後のアイディアだけが唯一だと思っている。例えば5つのコンビネーションについて話している。彼らには、ただ最後のものだけが大切でその前の4つを忘れている。日本のチームのどこでもそうだ。基礎ができていないこと、これが日本人の問題だ。彼らはいまだにサーカスのテクニックでやっていこうとしている。間違っているよ。

ここではなるべく、「その前の4つ」について見て、考えてみたいと思う。


羽生の動き出しのタイミングと周囲のプレー

前回私は、「羽生の動き出しが非常に早いこと」「そこへボールを入れて、基点とすること」について書いた。それは「できていたこと」ではあったのだが、それに集中することによる弊害もまた、あったのだ。サイドのスペースへ先に羽生が侵入してしまうことで、三都主は上がることが減っていった(ニッカンデータセンター:「プレーヤー分析」の羽生と三都主のプレイポジションを参照)。

右サイドでは比較的、「数的有利を作ってのサイドアタック」の意識が高かったのだが、左サイドは羽生がシンプルに侵入していくことの方が多かった。後半、田中達也に代えて佐藤寿人が投入されたのは、その点を改善しようとしてのことだろう(同じくニッカンデータセンター:佐藤のプレーポジションを参照)。そうすると今度は、佐藤、羽生が先に左サイドのスペースを占有してしまうことで「人の渋滞」とでも言うべき現象が起こり、攻撃がやや窮屈になってしまっていった。

これは別の見方をすると「羽生の動き出しが早すぎる」と言うこともできる。ただ、世界レベルでの展開の速いサッカー(YOUTUBE)では、「羽生のタイミングで普通」であると思う。世界レベルでは、素晴らしく早いタイミングの動き出しに呼応し、周り中がパスコースを作ったり、横を併走したり、スペースへ走ったり、ということができる。イエメン戦の日本は、まだまだ羽生のタイミングとテンポを合わせることができなかった。羽生がタイミングをもっと見るべきか、周りがそれに呼応するようにしていくべきか>

前代表時代は、まず「ミスを少なくするように、確実に、無理せずつなぐ」ということが優先され、その限りにおいてスピードを上げていくことが求められていた。言わば「自分のできるスピードで」ということだったわけだ。私はオシム日本では、例えばプレミアに見るような「あの速いスピードで」という目標を掲げて、今は無理でミスが出たとしても、ハイテンポ、ハイスピードのプレーを目指していった方がよいと思う。ややあっぷあっぷしながらでも目標を高く持ちながら過ごしていったほうが、「そこで必要な技術がいかに足りないか」が理解でき、最終的な到達点は高くなると思うからだ。


トップ下地帯の空白

Yemenpointまた、羽生が攻撃的MFの位置から早いタイミングで左サイド前方へ流れることで、いわゆるトップ下地帯に空白ができてしまっていたことも気になる。遠藤は、阿部が下がって3バックを形成したことによってやや下がり目でのプレーが多くなり、また加地の外をオーバーラップするなど、「数的有利を作ってのサイドアタック」への参加を主に意識していたように思える。これは前日の練習で、それを主に練習したことが染み着いていたからだろう。

それ自体は悪いことではない。前の試合でできていなかったことを練習で修正し、それが次の試合でピッチ上に表現される。また別の問題があれば、さらに修正すればよい。そうやって「強化の課程」が目に見えていくというのも、楽しいことではないか。それでこそ、マッチ→トレーニング→マッチの意味があるというものだ。ただ、遠藤がそのようなプレーを多くすることで、トップ下地帯の空白はより顕著となったことは、この試合では確かだろう。

上記のような羽生と遠藤のプレーによりトップ下に空白ができたため、この試合ではそこを基点にする攻撃が少なかった。もちろん、引いた敵をトップ下地点からこじ開けていくことは難しいのだが、「空白がある」=スペースができている、ということでもあるわけで、田中達也や巻がそのスペースに下がってボールを受けてもよかった。そのように人の出入りがあると、ボールが動き、敵のマークを混乱させていくことができるものだ。

これは実は、よい時の柳沢の得意とするプレーでもある。ちょっと下がってクサビの縦パスを受け、はたいてパス&ゴー、それによってまわりの選手が生きるスペースを作り出す。彼の「ムービングポスト」とでも言うようなプレーは、ポジションチェンジや2列目、3列目の攻撃参加を重視するオシムサッカーには、実にフィットするものだと思う。現状の彼のコンディションや、今は若手発掘を優先するオシム日本の方針もあるから、「ヤナギを呼ぶべきだ!」とは言わないが、他のFWもそういうことを意識してもよいのではないだろうか。

また、このスペースはJEF千葉では佐藤勇人(ボランチ)が上がっていって使うところでもある。代表では鈴木啓太や、遠藤、阿部がもっとここに進入し、場合によってはFWを追い越していってもよいだろう。スペースを空けるのは、そこを誰かが使うために行うことだ。敵からするともっとも怖いゾーンであるが故に「バイタルエリア」と呼ばれるのだから、これからはもっとそこを使う意識を高めていってほしいと思う。


羽生の卒論

SOCCER UNDERGROUNDさんのところで知ったのだが、羽生の筑波大学の卒業論文は、森島(セレッソ大阪)のプレースタイルについてだったという(Wikipedia)。私は個人的にはモリシのプレースタイルは大変好きであり、これはとてもうれしい話題だった。日本がその特長を生かしたサッカーをするには、モリシのようなプレーヤーを生かしていくことが重要だろう。羽生にもどんどん研究し、盗み、最後には全盛期のモリシをも越えて行ってほしいものだ。

Yemenpoint2その森島のプレースタイルだが、いわゆる「運動量、2列目からの飛び出し」に加え、スペースを作り、使うプレーも非常にうまかった。直線的な速さだけでなく、いったん下がってボールを受けて、はたいた後の「きゅっ」と反転するプレー、ボールホルダーに寄って行った後「すっ」と離れ、自分で作ったスペースに侵入するプレー、そういうプレーが抜群だったと思う。

このオシム日本で言えば、巻がいったん下がってボールをさわり、そこに達也が流れ、空いたスペースに羽生が侵入していく、などのプレーが個人的にはもっと見たかった。前線でくるくるとポジションチェンジをしていってのパス回しは、ヤナギ、モリシがいる時の代表のもっともよいパターンだった。直線的なスピード、動き出しの早さも大事なのだが、そういう曲線的なムーブメントもモリシのプレースタイルの特徴的なところだ、と羽生の卒論に書き加えておいて欲しいと思う。そういうプレーがあると、マークについた相手も混乱し、引かれた相手も崩せて行くものだ。

次のガーナ戦は、イエメン戦とは違い「引いた相手を崩さなくてはならない」という試合にはならないだろうと推測している。よりオープンな試合となるだろうから、羽生の(出場するとしてだが)すばやい動き出しにまわりが呼応していくようなアタックが、より有効となることだろう。しかし、これからまた引かれた相手を崩さなくてはならなかった時には、トップ下の位置をかわるがわる利用してスペースを作り、使うプレーを意識して欲しいと思う。そうすれば全盛期モリシのいた2000レバノンアジアカップのように、連動した攻撃で引いた相手からも得点を奪っていくことができるようになるだろう。


阿部のプレー

羽生がややセンターよりでプレーした場合には、阿部がサイドアタックを担ってもよいだろう。後半右のCB坪井が何度も見せていたように、どんどん上がって攻撃参加してもよいと思う(アウェー・イエメン戦では先に書いたように左サイドは渋滞していたため、あがる必要はなかったが)。またこのポジションには、現在スイスのバーゼルでCBとしてレギュラー出場中の中田浩二選手も入ることができ、彼ならば攻撃参加した後の左足のクロスの精度も非常に高いものがあるだろう。

サイドアタックというとすごいドリブルやすごいスピードの切込みを思い浮かべるが、オシム監督がやろうとしている「数的有利を作ってのサイドアタック」では、それよりもお互いによく走り、タイミングを生かして攻めることが求められる。であれば、坪井や阿部、中田浩二(選ばれれば)がどんどんそれに参加するのも、当然のことになるだろうし、そこで阿部や中田浩二のように精度の高いキックを持っているCB(不足している、とオシムは語る)は、非常に重要になっていくだろう。


中央は使えなかったのか、使わなかったのか?

また、先ほどのトップ下地帯が空白になっていることについてだが、これは「意図的に、わざと」である可能性も実はある。この試合の最大の敵は劣悪なピッチではなかったかと私は思っているのだが(笑)、それによってどうしてもパスミス、トラップミスが出る。中央からの攻撃は、そこで日本選手がミスをして奪われると、一気に数人が置いていかれるカウンターに晒される危険性が高いのだ。サイドでならば、ミスが出てもそういう危険は少ない。それを考慮して、あえてサイド攻撃を主とした、という可能性があるのである。

それは、この試合ではパススピードの速い「ビシッとクサビパス」がほとんど見られなかったこととも関連する。阿部や遠藤、三都主や加地あたりから、「ビシッとクサビパス」がFWに入れば、中央からの効率的な攻撃ももっとできたと思うのだが、それはやはり少なかった。ピッチの影響でミスとなる危険、敵の狙うカウンターにはまる危険を避けたのではないか、とも思えるのだ。

日本で行うガーナ戦ならば、ピッチの問題はないだろう。この試合では思う存分、コンセプトどおりの試合を展開して欲しい。そのためには、阿部にはもっともっとリーダーシップを発揮して欲しいものだと思う。現在のチームには、長短のパスで攻撃のリズムを作り出す「レジスタ」役となれる選手が、前代表と比べてそれほど選ばれていない。それに適任なのはやはり素晴らしい右足の精度を持ち、視野も広い阿部なのだ。DFの都合でCBに下がったとしても、そこからでも「俺が試合を仕切る!」という意思を持って回りを動かして欲しいと思う。


さあ、ガーナ戦!

ガーナ戦、誰がピッチに立つのかはわかりませんが、羽生(的な選手)の動き出しのタイミング、センターを使えているか、ビシッとクサビパスは入るか、そしてサウジ戦からの持ち越しの課題:ボランチがバイタルを空けた時の、周囲のケアをやり通せるかどうか、などに注目してみてみようと思っています。試合ごとに監督や選手が問題を認識し、改善しようという姿勢の見える代表は、継続してウォッチするのが楽しいものですね。あ、それともちろん、個人的にすごく期待している二川と山瀬、もしかしたらそろそろ呼ばれるかもしれない播戸あたりの出場があると、すごくうれしいのですけど。

平日夜の日産スタジアム行きはちょっと大変ですが、楽しみです。

それではまた。

03:37 AM [オシム日本] | 固定リンク

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