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September 03, 2006

オシム監督に期待すること

オシム監督は、日本代表監督に就いた二人目の「プロの代表監督」である。私はこの監督の就任を歓迎したいと思う。私が、日本代表監督に望む条件のほとんどを満たしているからだ。

1:経験と実績のあるプロの代表監督であること*1
2:ボールも人も動く、コレクティブなムービング・フットボールを志向していること*2
3:できれば、日本や日本サッカーについて知識を持っている人であること
4:できれば、協会やマスコミなど、日本サッカー全体を改革する意思を持っている人であること

(*1:それは必然的に外国人監督となる=日本人に、経験と実績のあるプロの代表監督はまだいない)
(*2:ここ数年の日本全体の強化方針もこちらであった・・・ジーコジャパン以外は)

以上のような条件である。それも、経験においてはトルシェ監督の持っていたそれよりも一段上のものを求めたい。具体的には、W杯のグループリーグを突破、決勝トーナメントで指揮をとった経験があるとより望ましい。

一目瞭然、オシム監督はこれらの全てを満たしている(「できれば」のものまで含めて)。よい監督が日本代表監督に就いてくれたものだと思っている。


■難しい時期

オシム監督は、難しい時期に日本代表監督に就任した。4年前のような、国際経験のある能力の高い選手たちの豊富なプールは、前監督の固定方針により今回は提供されない。能力のあるJリーグの選手たちも、代表レベルでの国際経験は浅い。また、ドイツW杯を戦った選手たちは、4年後には主力として計算できる年齢ではない。4年後をにらめば、大幅な世代交代が必然となる。

本来であれば、オシム監督には2年~3年の歳月を与え、フリーハンドで日本代表をリ・ビルド(再構築)していってもらいたいところだ。そうすれば、2年後からはじまるアジア予選にある程度のレベルに達したチームで臨むことができるだろうし、同時にその後のベースも作っておくことができるだろう。4年後を見据えながら、アジア予選で戦うチームを作るのは簡単なことではない。それには最初の2年を丸々充てるくらいのことが必要だろう。

しかし、今回はアジアカップが一年前倒しになり、2007年に本大会、今年2006年にアジアカップ予選を行わなくてはならないこととなった。しかも、前回優勝国でも予選は免除されないというレギュレーションに変更された。これによって、オシム監督は就任するとほぼ同時に、アジアカップ予選という公式戦を戦わなくてはならないという、きわめて異例、かつ同情すべき事態に陥っているのだ。


■オシム監督への二つの期待

私は、オシム監督には大きく二つの期待をしたいと思っている。

一つは、主として川淵氏の過度なコマーシャリズムへの傾倒によって歪んでしまった日本代表をめぐる環境を「正常化」すること。

もう一つは、オシム監督のいわゆる日本サッカーの「ジャパナイズ(日本化)」、日本人の特長を生かしたムービング・フットボールを、4年後に完成させ、ワールドカップで披露すること。

一つ目については、前回軽くふれた。今回は二つ目について詳述しよう。

オシム監督: 日本は、ほかのチームにないものを持っているわけで、それを生かすことが大事である。具体的には、素晴らしい敏しょう性、いい意味での攻撃性やアグレッシブさ、そして個人の技術。(中略)例えば走るスピード、展開のスピード。

オシム監督はこれらを日本の長所と認めているようだ。私もそれは正しいと思う。またそれに加えて、組織志向性の高さ、持久力なども長所としてあげることができるだろう。アジリティ、技術、スピード、アグレッシブさ、持久力。それらを生かすことを考えた時、「ボールも人も動くムービング・フットボール」が、日本の目指すべきサッカーとして浮上するのは、ごく素直なことだと思われる。

古くは、トルシェ元監督のチームも大まかに言ってそのようなサッカーを志向していたし、西村監督が率いてアルゼンチン・ワールドユースに臨んだユース代表(後のアテネ世代)も、まさに「ムービング・フットボール」を標榜したチームであった。監督によって多少のぶれはあっても、ここ数年そのようなサッカーを日本全体が目標として掲げ、そちらに向かっていたというのは、日本人の特徴を考えても、正しい方向性であったと私は思う。

それを踏まえ、4年後、日本人の特長を生かした、そしてどこの真似でもないサッカーを、南アフリカのピッチの上で存分に発揮してくれること、それができるチームを作ることを、私はオシム監督に望みたい。それができる選手を発掘、育成し、またクラブに影響を与え、また日本の指導者陣に、育成に影響を与え、日本全体をそちらに導いていく、そのための船長となってほしいと思う。

もちろんそれは、オシム監督だけに押し付けていいことではない。日本人の側、すなわち協会も、周囲の指導陣も、技術委員会も、もちろん選手も、そしてジャーナリストも、サポーターも。彼とともにそれを作り上げ、また吸収できるものは全て吸収していこうという姿勢がなければならない。少なくとも現在、反町コーチをはじめとする日本人コーチ陣は、オシム監督に食らいついていこうという気持ちを見せていると思う。私たちも負けてはいられない(笑)。

ただし、今言っているようなサッカーをフル代表で行おうとするのは、ずいぶんと久しぶりのこととなる。ムービング・フットボールには、かつての代表で言えば森島、現在では山瀬や羽生のような、運動量豊富で2列目から飛び出していける選手が不可欠なのだが、この4年間そういった選手はほとんど起用されていない。それはやろうとするサッカーが違っていたからだ。フル代表では「ムービング・フットボール」志向の方針が採られなかった結果、そういったタイプの若い選手たちの国際経験も少ない。オシム監督はほぼゼロから、それを組み上げていかなければならないのだ。


■チーム作り優先を

先にも書いたように、オシム監督は難しい時期に日本代表の監督に就任した。世代交代が必然であること。サッカースタイルの変換が必然であること。一朝一夕で達成することのできるはずがないこの2つの課題に手をつけたばかりのところで、早くもアジアトップレベルの強敵サウジアラビアとの、アウェーのアジアカップ予選が待っているのだ。ジーコ監督もトルシェ監督も、これほどの厳しい条件下での試合は経験したことがない。オシム監督があまりに平然とそれに臨もうとしているから、みんな気がつかないが(笑)。

また、今年はワールドカップやそのための親善試合、A3などによるJリーグの中断があったために、この時期選手たちはほぼ休みなしで戦い抜いている。これはとんでもないハードスケジュールであり、選手たちの体には疲労が重くのしかかっているだろう。しかも直前の30日まで試合があり、すぐに飛行機に飛び乗って長時間の移動があり、時差もあり、気候も恐ろしく違う。イエメンに至っては、2300メートルの高地である。

こういった点から、私はオシム監督の就任第1期は「スタイルを浸透させること」「多くの選手にそのエッセンスに触れさせること」「選手の見極めを行うこと」などを優先し、アジアカップ予選に関しては「出場すること」だけを得られればよしと考える。ゼロからのチーム作りと、結果を出すことを並行して行わなければならないわけだが、アジアカップ予選は4チームのグループリーグ中、上位2位に入ればアジアカップのチケットを取れるのである。ここではウェイトをチーム作りにおいてかまわないだろう。

さて、と言うわけで、私はこの中東アウェー2連戦、勝ち点2(以上)を取れればそれでオッケーだと思う。2引き分けか、1勝か。ほぼそれでアジアカップ出場が決まるだろう。そうして最初の、異常に性急な(笑)ハードルをクリアしたところで、あとはじっくりと日本代表の環境の「正常化」、そして日本サッカーの「日本化」に取り組んで欲しい。この8年間の代表狂騒曲のあとは、そろそろじっくりしっかりとした強化が必要だと理解されるべきだ。オシム監督はそれを気づかせてくれる人でもあるだろう。私はそれを期待している。

さて、今夜はもう(もう!)サウジアラビア戦だ。監督も、選手も、スタッフもさぞや大変だろうと思うが、ぜひ頑張って、いい戦いを見せてほしい。私たちはここから、「魂」を送っている。

ニッポン!!!!

それではまた。

11:49 AM [オシム日本] | 固定リンク

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