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October 04, 2005

眼をもっと広く見開こう!

複数の新聞に、「川淵キャプテンが北京五輪代表監督に柱谷哲二氏を有力候補に考えている」という記事が出ました。すでにネットでも相当話題になっていますが、実際のところはどのようになっているのでしょうか。

関連ソースを読み合わせてわかるのは、

1)まずは川淵氏の「北京五輪は日本人にやらせる。」というこだわりが先にあること。

2)柱谷氏が浮上したのは「代表で功績のあった柱谷のような人物に機会を与えたい」という理由からであること。

3)現状は「引退後のコーチ実績などの調査を命じた」というレベル。
  →逆に言えば、コーチとしての高い実績などが先にあって、それによって柱谷氏が候補になったわけでは「ない」ということ。

4)その後理由として、「阪神の岡田監督も2軍監督を経て優勝した」ということが語られた。柱谷氏が現在レッズのサテライトコーチであることが念頭にあるのだろう。
(サテライトリーグなどでの実績はどうなのだろう?)

5)ただこれも、まずは「日本人」→「元代表選手」という順で発想され、「サテライトコーチである」ことは後づけの理由に過ぎないということが、「実績は現在調査中」ということからもわかると思う。
(それが大きな理由なのであれば、他のサテライトコーチたちも同様に候補になるのでは?)

というあたりですね。


■不透明な選考経緯

本来であるならば、世代別であれ国家代表監督というものは、まずその目指すべきサッカースタイル像があり、それを反映して人選がなされるべきものだと思います。ブラジル的なポゼッションサッカーなのか、よりソリッドなプレッシングスタイルを狙うのか。それによって、それぞれを得意とする監督は違うでしょう。

また例えば直近の大会でのミッションとその達成度合い、失敗であるならばその問題点などに対しての洗い出しがあり、それについての修正に向いている指導者を迎えることも考えられてもよいでしょう。戦術指導に問題があったのか、個の力を伸ばす、発揮させるところに問題があったのか、メンタル面なのか。それによって、どういうタイプの指導者が現在望ましいのかが変わって来るはずです。

そして、それらを見極めるためにこそ、代表監督候補には、監督としての豊富な経験があるべきなのです。以前指導していたクラブでの戦術、スタイル、実績、指導法、それらはすでにサンプルとして存在しているものですからね。それらを集め、分析して何人かの候補をあげ絞り込んでいく。それがごく常識的な人事のあり方でしょう。

しかし、この人選にそれはあるでしょうか。そもそも、柱谷氏は札幌でどういうサッカースタイルを取っていて、それは日本五輪代表がとるべきスタイルとどのように相関しているのでしょうか?あるいは、現在浦和サテライトでどのような指導スタイルをとり、それはどのように育成結果に結びついているのでしょうか?それを理解したうえで、このようなリストアップになっているのでしょうか?

「実績は現在調査中」ということは、以上のような選考経緯が「ない」ことを示しているように、私には思えます。まずは「名前」有りき。元代表選手だから、という理由で監督経験がない人物を候補に担ぎ出す、というのはいわば「ブランド主義」でしょう。札幌サポーターの方には大変申し訳ないことを言いますが、札幌の失敗はまさにそれによるものだったのではないでしょうか?

先にあげたような論理的な選考過程を取らず、一人の人物が「元有名選手だから」などの情実的な理由で五輪代表監督を決定するのは、これだけ大きくなった日本サッカー界、それを支えるサポーターのことを考えると、許されることではないと思います。


■新聞辞令?

また、今回の記事はいわゆる「リーク」によるマスコミ辞令により、世論を誘導して「候補」を既成事実化しようとする狙いがあるものではないか、という疑いがあります。よく国会議員さんや、野球のチームのオーナーなどが使う「手」なのですが、川淵氏もそういう手段に通じているのではないかと、過去の経緯などから「私には」思えるからです(イヤな想像ですので断定はしません。間違っていることを望みます)。

WEB埼玉の記事によれば、浦和の森GMは

「新聞を見て初めて知った。まだ本人もクラブも何も聞いてない。ああいう報道はどうなのか」と不快感を示した。

ということだそうで、やはりできればきちんと論理的な選考基準が示され、複数の候補などがリストアップされ、その後、公表されたりすることが望ましいと思います。突然たった一人の名前が、クラブへの打診よりも前に新聞をにぎわせたりするのは、先のような疑いや、森GMの感じるような疑問を引き起こす可能性の高いやり方だと思います。


■日本の行く道を決める人事

アテネ五輪、オランダワールドユースで日本代表は成功したとは言えないと思いますが、それに対する総括、何がいけなかったのか、について、何もまとめれらていないことが、「次はどうするのか」について迷走する大きな理由でしょうね。さらには、それらの(サポーター的には満足のいかない)結果について、日本サッカー協会には「危機意識」が薄いのではないか、と感じられます。問題があったと認識できていれば、このような人事になるわけはないでしょう。

日本サッカーはここ10年で大きく発展しましたが、まだまだ謙虚に世界から学ぶ時期ではないでしょうか。そのためには、世界に向けてもっと眼を広く見開いて行く必要があると思います。もちろん「外国人監督でなくてはならぬ」と決めることはないけれども、外国人指導者も日本の五輪代表監督の有力な候補として広く選考の対象にするべきでしょう。頭から「日本人にやらせる」と決めつける理由はどこにあるのでしょうか。

日本サッカーは2002年にベスト16入りを果たした。2005コンフェデではブラジルといい試合をした。しかしそれで思い上がって、「もう学ぶことはない」と世界から目や耳を閉ざしてしまったら・・・。メキシコ五輪後とは状況が違うと思いますが、当時の凋落を招いた原因に「現状に胡坐をかき、その後の向上への努力、真摯に外から学ぶ姿勢などを失った」ことがあるとするなら、今の状態はかなりそれに近いと言えるかもしれません。

また、日本人監督であっても、少なくともJリーグなどにおいて、実績のある指導者はいくらでもいるはずです。彼らならまだ話は違います。しかし、なぜ柱谷氏なのか。サテライトのコーチであるといっても、そういう方はあまたいるでしょう。彼が選ばれた理由が「元有名代表選手であるから」ということだけであるなら、それは「いつか来た道」「いつか誰かが通った道」としか言えないのではないでしょうか。


■「1回の失敗」からの復活

もちろん、「柱谷は札幌で失敗したが、1回だけじゃ失敗に入らない」というのは真実です。「サッカーの監督は3回解任されて1人前」だそうですから(笑)、1回くらいの失敗がなんだ、と思うくらいでいい。しかし、そこからまたチャンスをつかみ、這い上がるのは自分の力でやるべきです。サテライトのコーチでもいい、大学の監督でもいい。そこで実績をあげてからJFL、J2といったチームに望まれるようになり、そこからさらにJ1へ、国家代表へ、と、自分の力で上っていく。いわば「指導者にとっての目標のコース」ができる。そうなってこそ、真の意味で日本のサッカー指導者の育成ができるのだと思います。

それを、いきなり協会トップ、キャプテンの指名、肝いりで、ヘリコプターで山頂に降り立つようなことをして、どうするのでしょうか。年代別代表は、選手の育成の場ではあっても、監督を育成する場ではありません。あってはなりません。大事な年代別代表の監督を、情実で、ブランドで、親分子分意識で決めてしまう。そのようなことは、日本が世界のトップ10へ向かう道を、自ら閉ざしていることに他になりません。もう止めましょう、そんなことは。

さて、最後に一つ言っておきたいのですが、私は柱谷哲二氏については何も含むところはありませんし、今後さらに経験をつんでJ2やJ1の監督に就任される時が来たら、かつて彼が選手として率いた日本代表を熱く応援したものとして、それなりに歓迎、応援したいと思っています。今回の突然の話は、地道にサテライトで指導をする彼にとってもむしろ迷惑な話だったのではないでしょうか。ここに今回の人事についての問題点を指摘はしましたが、それとは関係なく彼の今後の活躍、発展を祈っていることをここに書いておきたいと思います。

それではまた。

12:40 AM [サッカー日本代表] | 固定リンク

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