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June 16, 2005

コンフェデ杯展望~二つの日本代表

ベナン戦は残念でした。しかし、まだまだというか、全然GL勝ちぬけのチャンスは残されているわけで、最後のオーストラリア戦は底力の見せ所、ぜひぜひ勝って、GLを突破して欲しいですね。

さあもうフル代表コンフェデレーションズカップ直前です。日本がその力を世界と比べる大きなチャンスですね。是非いい内容のサッカーをし、世界に日本の力を見せつけて欲しいものです。

ところで、J-KETの方でボヘミアンさんが、「アジアを勝ち抜くサッカーと、世界に伍するサッカーは違う」と書かれていました。中身は違うのですが(笑)、私もまさにそう思っています。そして、それが試されるのがこのコンフェデ杯になってくるでしょう。大会前にその点を考察しておきたいと思います。(ここからコラム文体)


■「引いて守ってくる格下相手に、いかにこじ開けるか」

この課題は、「日本が、アジアではすでにサッカー大国となった」がゆえのものである。

アジアは、日本を相手にする時は基本的には「引いて守ってカウンター」という戦略を取ってきた。これは加茂監督の昔から変わらない。彼らの武器が走る力を生かしたカウンターであること、日本はパスをつなぐわりに、引いて守ればこじ開ける力はないこと、などから、それなりに合理的に考えられた戦略であると思われるし、実際に加茂時代はそれで、アジアカップベスト8敗退(あのマチャラ監督率いるクウェートに敗れる)、W杯予選でも引き分けが続き、苦しめられた。

この場合の日本の課題は「引いて守ってくる格下相手に、いかにこじ開けるか」だったと言える。

これは2000レバノンアジアカップで見事に解決された。同じくマチャラ監督率いるサウジが守備的布陣を引いてきたのを4-1で破り、日本を警戒して8人を入れ替え、FWはおろか、名波や森島にまでマンマークをつけてきたウズベキスタン(これは当時の大住氏の記事)さえ8-1で粉砕した(この両国は必ずしも格下とは言い切れないが)。また、それ以前の日本国内での親善試合でも、UAEに3-1、五輪代表ではクウェートに6-0、モロッコに3-1と、その得点力を見せつけていた。

日本代表のサッカーが、従来のボールを保持するだけのポゼッションから、「速く、大きくボールを動かして」「スペースを作り、使う」ものへの脱皮がなされ、中東やアジア伝統のマンマークだけでは抑えきれなくなってきたことの証明だったと言えるだろう。


■「真っ向から向かってくる中堅国を、いかに上回るか」

逆に、欧州や南米相手の場合はどうだろうか。彼らは日本を少なくとも同格と見ているだろうし、ほとんどの国は格下と捉えてさえいることは間違いないと思う。そういう場合、「自分たちのサッカーをすれば普通に勝つ」という考えの基、彼らはまっすぐに、ある意味、ノーマルに(笑)向かってくる

さかのぼれば、加茂監督時代のアンブロカップ(ブラジル、イングランド、スウェーデンと対戦)でもそうであったし、トルシェ時代のハッサン2世杯、01コンフェデ杯、ジーコ監督になってからの03コンフェデ杯も同様だった。彼らは「格下」の日本に対して、特に警戒することなく向かってきたものだ。

こういう場合、敵はまず中盤でパスをつないでくる。日本のプレスの格好の餌食であった(笑)。さらに、DFラインはもちろん引いて守ってくることもなく、マンマークなどもせず、ゾーンで守り、それで守りきれると信じているようであった。DFラインも中途半端に高く、そこをついて日本が攻撃していくことは、かなりできていたのである。

彼らに対しては「組織的なプレスで高い位置から奪う」「運動量を生かしたパス・サッカー」という加茂監督時代からの特徴を、真っ向から発揮していけば、日本はそれなりに伍していくことができていた。加茂監督時代にもスウェーデンに引き分け、トルシェ時代にもフランスに引き分け、カメルーンに勝ち、ブラジルに引き分け、ジーコ監督もフランスに善戦し、コロンビアを追い詰めた(負けはしたが)。

日本は日本の持ち味を発揮することで、こちらを警戒してこない中堅~強国相手には良いサッカーで対抗し、伍していくことができる。それはここ10年変わらないことであったと言うことができるのだ。


■二つの課題をクリアした先にあるもの

加茂監督時の問題は、対中堅~強国相手のサッカー(いわゆる「プレス」サッカー)を磨くことに意を砕くあまり、「引いて守ってくる格下相手にいかに点をとるか」がおろそかになったことだった。そのため、アジアカップで敗退し、W杯予選でも非常に苦戦したのだ。トルシェ時代には、引いて守ってくる格下をこじ開けることはできていたし、対等に向かってくる中堅国と伍していくこともできていた。ただ、02W杯本大会で日本はさらにレベルが上の問題に直面することになる。

トルコ戦で現出したそれは、「引いて守ってくる『格上』をいかにこじ開けるか」であった。

アジアレベルでは、敵DFの経験も、個人能力も戦術理解度もワールドクラスではなく、こちらが速く大きいパス回しを発揮していけば得点していくことができた。しかし、ワールドクラスのDFが、真剣勝負に向けてこちらを舐めることなくじっくりと研究し、一瞬のゆるみもなく集中して守り、さらに先制したことで引いて守るようになった場合はどうするか。これは、強豪相手の真剣勝負をめったに経験できない日本にとって、まさに未知の領域であったのだ。

ジーコジャパンはそれを受けて、その次の課題を解決するべく発足した、はずであった。


■ジーコジャパンの対アジア、対強国戦略

興味深いことに、ジーコジャパンの対アジア戦略は、これまで述べたようなものとはだいぶん違うものとなっていた。1次予選、アジアカップ、ホームのバーレーン戦、北朝鮮戦、アウェーイラン戦、対UAE戦と、一部の試合を除くとほとんどが「カバーを重視する守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」で勝ち抜いてきたのだ。それは、これまでの「引いて守ってくる格下相手に、いかにこじ開けるか」とは異質なものであったように思える。

向こうが引いて守ってくるなら、こちらも急がなければ少なくとも負けはしない」とでも言うような、いわば「守備としてのポゼッションサッカー」のような形である。これは西部謙司氏も言うように、「負けにくいが、得点も少ないサッカー」となっていた。選手たちはそれに飽き足らず、高目からボールを奪おうというような意思も見せていたが、それは散発的であり、チーム戦術として結実することは少なく、むしろ最終予選ではそのズレから危機に陥るようなこともあるほどだった。

この「守備としてのポゼッションサッカー」については、また考察できるポイントがいくらでもあるような、なんとも興味深い考え方なのだが、今はそれは置いておこう。

というのは、アウェーバーレーン戦において、日本はそれとはまたかなり違ったサッカーを繰り広げたからだ。中田ヒデと小笠原が強プレスを敢行し、そこからワントップのヤナギが作るスペースを、中村とともに突いていく。ポゼッションとダイレクトプレーのバランスの取れた、なかなか良いサッカーだった。それが、勝つためには引いてばかりはいられないバーレーン相手に、うまく「はまった」と言うことができる。

もう一つ、ヤナギのワントップにはトルシェ時代から、「パッサーをセカンドストライカーに変える」という効能がある。日本ではトップ下にパッサー(こういう単純な分類はいけないのだけど)が多いのだが、ワントップではそういうパッサーたちも「自分がフィニッシャーにならなければ」という意識が強くなり、FWと距離が近いところでプレー、追い越しも多くなる。結果ボールの持ちすぎが減り、前線でも人の「出入り」により、流動的なサッカーができるようになる。

以上の要因により、バーレーン戦は結果が出ると同時に、内容も良いサッカーができていた。これは、中田選手の復帰、小野の怪我などによる偶発的なものだが、ジーコ監督はその「流れ」を逃さないようだ。コンフェデ杯でもバーレーン戦の布陣を基準にすると報道されている。それは正しいと思う。

「ホーム・ディスアドバンテージ」から解き放たれ、選手を集めて話し合いの時間もじっくり取れているコンフェデ杯。ジーコジャパンはこれまでの対アジア用戦略とどれだけ違った内容のサッカーを見せるのか、それは世界に通用するものなのか。たまたまだが、ちょうど世界と対峙しなくてはならない時に日本はその萌芽をバーレーン戦で見せた。今夜はいよいよメキシコ戦、引いて守ってこず、ノーマルに戦いを挑んでくる敵には、良い内容のサッカーを見せてくれることを期待したいと思う。

それではまた。

04:45 PM [ジーコジャパン] | 固定リンク

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