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March 26, 2005
一喜一憂しない
悔しいですね!
敗戦は意外とダメージに感じてしまいました。落ち込みから立ち直るのに時間がかかり、更新が遅れました。申し訳ありません。
■非常に惜しい試合
しかし、勝ち点を取れる可能性があったから「惜しい!」と思うけれども、最強の敵とのアウェイ戦なのだから、この一敗は「想定内」ですよ。そのはずです。ここまで2試合終えて勝ち点3、残り4試合で9以上を取れば、勝ち点12になるわけですから、次のバーレーン戦に勝てば問題なしです。そう思います。
グループ2
順位 | チーム | 試合 | 勝 | 分 | 敗 | 得点 | 失点 | 得失 | 勝点 |
1 | バーレーン | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 | 1 | 1 | 4 |
1 | イラン | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 | 1 | 1 | 4 |
3 | 日本 | 2 | 1 | 0 | 1 | 3 | 3 | 0 | 3 |
4 | 北朝鮮 | 2 | 0 | 0 | 2 | 2 | 4 | -2 | 0 |
■意外と機能した[4-4-2]
この1年関連携を深めて来た[3-5-2]をお休みし、急遽編成された[4-4-2]は、思ったよりも機能していたと思います。練習で約束事の確認をしたというボランチとOMF(特に中田ヒデ)との連携は、それほど大きな穴をあけませんでした。これはまあ、個人能力を活かしてゆっくりと攻めて来るイランの攻撃の特性に助けられた部分はありましたが。北朝鮮のように連携が良く、ぽんぽんとダイレクトパスをつなぐような攻撃にさらされた場合は、昨日のようには行かなかったでしょうね。
選手たちは
(中村) 相手うんぬんというよりも、自分たちのサッカーをちょっと探しているというか。味方がどんなプレーをするんだろうというか、そういう連係がスムーズにいっていなかった。
(宮本) すぐにしっくり来るシステムというわけでもない。
(高原) どのタイミングで動いたらパスをもらえるのか、分からなかった。(中略) 向こうの守備というよりもうちの連係ではないか。お互いの動きやパスのタイミングだとかが、やっぱり良くなかったと思う。
(玉田) 自分もタカさん(高原)も前線で孤立していたというか、もらってもあまりいいプレーができていなかった。
と語っていますが、もちろん合宿で4日間しか練習していないのだから、そうすぐにパーフェクトとは行かないでしょう。しかし、「思ったよりも」うまく行っていたな、と私は感じました。
ヒデを組みこむと「中盤のプレスの再整備」に手をつけるだろう、それはアジアカップで掴んだやり方とは少しく違った物になるだろうと、以前に書きました。この試合はまさにそうなって、FWから、OMFから、ずいぶんとプレッシャーをかけに行っていましたね。イランは個人個人の能力があって、前を向かせてスピードに乗らせると手がつけられないでしょうから、プレッシャーをきつくする、前線からガツガツとチェックに行く、というのは間違っていないと思います。
ただ、それで飛ばしすぎたところがあったでしょうか?失点シーンの直前あたりから、日本選手の体が重そうになり(テヘランは高地です)、コンタクトが淡白になり、イラン選手が前を向いてボールを持つシーンが増えてきましたね。失点は、この時間帯守備に追われた中村選手が、なぜかダエイと中澤と競ってしまい、痛んで退場してしまうプレーから。これが日本のファウルに取られ、そのFKをマハダビキアが精度高く放りこみ、加地がそのボールをイラン選手につぶされてこぼし、それをハシェミアンが蹴りこみました。
失点は加地の個人的ミスの部分が大きいと思いますが、あそこで不用意にFKを与えてしまったプレー、なんといっても味方同士で交錯し、ファウルを犯してしまう、守備面での混乱が問題ですね。これはさらに話し合いを増やして、改善して行って欲しいですね。イランは日本に対してとにかくFKを与えないようにプレーをしていました(日本の獲得した直接FKは8、イランは23)。見習わなくてはいけませんね。
■忙殺された中村選手
前半今一つ日本のサッカーが出来なかった原因は、中村選手が日本の左サイドの守備のケアに忙殺されたことが大きいでしょう。イランはマハダビキア、カエビに加えカリミも(イランから見て)右に流れ、そちらを起点にゴリゴリと攻めてきましたから、どうしても中村も守備にもどってしまいます。さらにイランはアジアカップでの大活躍を覚えているのでしょう、中村を非常に警戒し、厳しくマークしてきましたから、この点でもボールを足元に納めてからプレーを開始する中村選手は持ち味を発揮することができませんでした。
次にイランと対戦する時は、中田ヒデを左に、中村選手を右に配置したほうが、チーム全体がスムースに行くかもしれません。中田選手ならば、守備の局面からでも非常に早い動き出し、フリーランニングで攻撃に参加していくこともできたでしょうし、多少のコンタクトではつぶされなかったでしょう。逆に中村選手は、スペースのあるところでボールを持つと、昨日の中田選手よりももっと「違い」を作り出すことができたでしょう。
後半になって、中村選手は右にも顔を出すようになって来ます。ここで中田選手と中村選手の距離が近くなったことで、この時間帯は日本の攻撃が活性化していました。イランを敵陣に押し込むようになったところで、「スペースを作り、使う動き」のうまい柳沢を投入したのは良かったと思います。彼が玉田に代わって前線でボールをおちつけるようになるとさらに攻勢を強めることができ、スローインから中田選手がクロス、柳沢が競ってこぼれ球を福西が豪快にシュート!アウェイで追いついたのは良かったですね。
■攻めるのか、守るのか
中村選手が試合後に述懐しているように、ここで守るのか、さらに攻めるのかの判断があいまいになったところが、もったいなかったと言えば言えると思います。そういう試合のモメンタム(流れ)を掴むのは、昨年のアジアカップ後の日本代表は向上していたはずでした。しかし、今年になってまたいくらかやり方を変え、さらに今回4バックにして選手構成も変わった代表は、昨年掴んだそれを少し失っていたようです。残念ですね。
ただ、97年予選ホーム韓国戦の時のように「守れ」という判断が失点につながることもあるのですから、「引き分けを狙わなかった」ということが問題だとは思いません。そうではなく、選手たちの間で、「チームとして」意思統一ができていなかった点が残念なのです。その点で考え方に差があると、少しずつ選手の動きがかみ合わなくなっていってしまいますから。
■決勝点の失点シーン
決勝点を奪われたシーンは、中澤の大きなクリアが13カエビに入ったところから。カエビに中村が対処し、カエビから2マハダビキアにパス。これを小野がチェックに行き、ボールを突っついて奪い、そのまま前方へ攻撃に上がります。小野の奪ったボールを処理しようとした柳沢を、イランのセンターバック(かと思いますが、ビデオでは背番号が20に見えます。20だと、左サイドバックのノスラティかな?)がハードにチェック、ボールがマハダビキアにおさまります。これが実際の攻撃のスタートですね。
マハダビキアがドリブルし始めると、ヤナギからボールを奪ったCB(仮にそうしておきます)はその勢いのまま、日本の左サイドのライン沿いに上がって行きます。小野はイラン陣に上がろうとしていたので置いていかれ、マハダビキアの前方で少し距離を置いてディレイしようと(?)していたのは福西になりますね。三浦淳は、上がってくるCBと、13カエビのケアのために、下がらないでポジションを取ります。マハダビキアから8カリミにパスが出ると、中澤がついて行く。ラインぎりぎりまで切りこんだカリミは、CKを得ようとしたのか、わざと中澤の足にボールを当てようとします。これがたまたま、中澤の足に当たって残ってしまい、カリミはすかさずそれを拾ってクロス、中央には加地と中田ヒデにはさまれて、「ヘリコプター」9ハシェミアンが入りこんでおり、みごとにへッド、失点となります。
この時、宮本はグラウンダーのパスコースを消しながら、ニアに入りこんで来ている14ナドビキアをフリーにしないポジションを取っており、特にミスとは言えません。三浦淳も、13カエビと上がろうとするもうひとりのCBをケアするポジションを取っていて、ミスとは言えないと思います。中澤はクロスをあげさせてしまいましたが、カリミにきちんとついていて、抜かれたわけではなく、ちょっと不運。問題はやはり、真ん中でハシェミアンにフリーでへッドさせてしまった加地、あるいは加地があそこで競り合いをしなくてはならないようなチーム全体のやり方のほうにあると言えるでしょう。
もともと4バックは、サイドからのクロスにSBがファーで競らなくてはいけない布陣です(CB両方がペナルティエリア内にそろっていても)。その点で能力の高い選手がいないことが、Jリーグで外国人監督が4バックを採用(したいのに、)しない理由の大きな一つであると思います。身長やヘディングの能力もそうですが、特に、今回の加地のように「クロスをあげられる前に首を振って、自分のマークするべき選手がどこにいるかを確認する情報収集能力」において、現代のSBをこなせる能力のある選手は少ない。加地はやはり、ハシェミアンの動き直しを視認することはできていませんでした。
この局面を「人数はそろっているから組織は出来ている」とするのは、難しいと思います。選手にはタイプや、固有の能力、志向性があり、それをうまく組み合わせ、必要な意識づけをして行くのが「組織作り」でしょう。ただ選手を並べて、約束事を与えておしまい、ではないのです。やはりこの局面では、加地の特性を把握し、ハシェミアンのFWとしての能力とのマッチアップを考え、意識づけをしておく必要があったと思います。「相手を視野にいれている部分もある」とジーコ監督が語った4バック、もともとハシェミアンに対峙するのは加地の役割だったはずなのですから。
■「ジョーカー」のいない日本代表
今回残念だったのは、リードされた時に打てる手が、柳沢以外は効果的ではなかったことです。これまでは、[3-5-2]でスタートし、[4-4-2]に変えることで、「システム変更がジョーカー」というスタイルを作ることに成功していました。前方に起点が増えることで、敵を押しこめ、それまでとマークの狂いをさそう。そういう中で前回の大黒の得点も生まれたのです。今回は、[4-4-2]でスタートしたことで、その後に打てる手が限られていました。柳沢、大黒、小笠原の投入は、リードした後引いて守り始めたイランをこじ開ける手段にはなりませんでした。ジーコ監督は、ヒエラルキーの上位からスタメンにする、というやり方を取り、選手のタイプをいろいろとそろえて、局面に応じて投入できるように連携を熟成させておく、ということをしませんから、仕方がないことですが、今後に向けての一つの不安材料ではありますね。
■ヒデを組みこむという選択
ジーコ監督は、今回あらためて中田ヒデ選手に与えた「長男」の位置の、ジーコ・ヒエラルキーの中の磐石さを周囲に知らしめました。しかし、オマーン戦の時のように、それを問題視しようとは、私は思いません。かの時は、中田選手という「理詰めで良いサッカーを追求し、周囲にもそれを要求する」選手に、長男かつキャプテンという重過ぎる役割を与え、周囲の選手のメンタル・コンディションに悪影響を与えたことが問題だったのです。しかし、アジアカップを経て一体感を増した現在の代表では、その部分は問題にならないでしょう。
逆に、イラン戦では中田選手の重要性があらためて確認できたように思います。特に、FWの選手がずるずるとすべり、トラップが非常に大きくなってまったくボールが納まらないピッチコンディションで、微動だにしない(笑)フィジカルの強さは際立っていました。それはイランの選手とのマッチアップでも表れていましたね(こういうところが海外でやっている経験・・・なのかと思ったのですが、高原選手も滑ったりトラップミスをしていたりしたのはなぜでしょう?)。
ピッチコンディションが悪かったり、審判が不安定だったり、敵選手がラフだったり、何があるかわからない最終予選に、予選の経験もあり、悪い条件も苦にしない中田ヒデのような選手が欲しいのは理解できます。しかし、長いこと代表から離れている。予選を戦いながら彼の組みこみを図るのは、一種の賭けになる。そうなると、その「賭け」に出るタイミングは二つ、今回か、5月のキリンカップか(もっと後でもいいですが、そうなると最終予選の重要な局面でヒデの力が期待できないですね)。今回は、1勝の後の、最強の敵とのアウェイ戦(ある意味、敗戦しても痛手が少ない)、時間もある程度とれますし、海外組もコンディション良く臨める、日本はアウェイで強い、など、好条件がそろっています。強い相手との戦いは、モチベーションも高めやすいですしね。
ヒデが入る以上、彼主導で中盤の守備は作りかえられるでしょう。アジアカップでの戦いよりも前がかりになり、プレスも積極的に、攻撃面でもこれまで以上に早い攻守の切り替え、ダイレクトな攻めが志向されるでしょう。そのようなやり方も、敵が(例えば)引いて守ってくるバーレーンだと試す効果が薄い。そういう戦いの慣熟走向には、実はイランは格好の相手だったと言うことができるのです。
私はジーコのその賭けは、「勝ち点以外はよかった」という結果が出た、と思います、少なくとも現時点では。思ったよりも守りも攻めも機能し、アジア最強かもしれないイランと互角に戦った。チャンスも作った。完全に崩されたシーンは少なかった。問題点も多くあるけど、再スタートとしては悪くない(「こんな時期に再スタートしている事が問題」とか言いっこなしですよ)。これを熟成させて行けば、もっとよくなるかもしれない。
最も重要なのは「これから」だと思います。具体的にはこの4日間。内容は思ったよりも良かったとは言え、敗戦は敗戦。試合後、選手たちの顔は一様に固かったですね。この一敗が、チームにどう言う影響を与えるか。負けた原因を[3-5-2]から[4-4-2]への変更に求めるような意見が、チーム内で出ないか。あるいは試合勘の悪い中田選手が来たらいきなりサブに追いやられた選手が、納得できるかどうか。バーレーンに絶対勝たなくてはいけない状況に陥ったこと、ホームの試合で「いい戦いしなきゃ」というメンタルになりがちなこと、それらがこの正念場でどういう影響を及ぼすか。ここが本当に、この予選での正念場ではないでしょうか。
■勝てる、勝つべき相手バーレーン
バーレーンは、主力FWのA・フバイルが怪我で欠場の上、有力なトップ下のユースフとSBのジャラルがカードで出場できません。主力が3人欠けていますから、絶対に守って来るでしょうが、ここで勝たないと予選突破の歯車が狂ってきます。勝てる相手ですし、絶対に勝ちましょう!
それではまた。
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