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January 23, 2005
日本にもボスマン判決の波が!
うわさの中田浩二選手のマルセイユへの移籍ですが、中田(浩)選手自身は行きたいようですね。しかし、
鹿島に何年もお世話になっているし、勝手にいくわけにはいかない。うまく話し合えればと思う。とも考えているようです。
中田(浩)選手と鹿島の契約は1月31日まで。新たな契約を結んでいないので、そこを過ぎれば中田(浩)選手はフリーとなり、どこのチームへでも無償で移籍(移籍金ゼロで!)できるのです。それが国際的な現在の移籍のルールになっているそうです。これは「選手の権利を守るため」に、ボスマン判決以降、実施されているルールであるようです。
考えてみれば、「労働者の権利」としては当たり前のことかもしれません。例えば「私がA社との契約を終えた後でも30ヶ月、A社から次の会社との契約について拘束される」と思うと、とんでもないことのように感じられます。かつては「保有権」という形でクラブの力が強かったわけですが、それでいいのか、という見直しが、ボスマン判決以降になされたということでしょうね。
翻って日本では、移籍に際し、まず「年齢別係数」というもので、移籍金を算出します。次のように定められているようです。
移籍先クラブ | J1 | J2 | JFL | ||||||
移籍元クラブ | J1 | J2 | JFL | J1 | J2 | JFL | J1 | J2 | JFL |
満16歳以上 満22歳未満 | 10.0 | 2.5 | 9.0 | 2.5 | 9.0 | ||||
満22歳以上 満25歳未満 | 8.0 | 2.0 | 4.0 | 2.0 | 4.0 | ||||
満25歳以上 満28歳未満 | 6.0 | 1.5 | 3.0 | 1.5 | 3.0 | ||||
満28歳以上 満30歳未満 | 3.0 | 0 | 1.5 | 0 | 1.5 | ||||
満30歳以上 満31歳未満 | 1.0 | 0 | 0.5 | 0 | 0.5 | ||||
満31歳以上 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
中田(浩)選手は25歳以上、28歳未満に相当し、係数は6倍。仮に5500万円の年俸だと、3億3000万円になるのですね。さらにこれは、契約期間満了後も30ヶ月間(2年6ヶ月)は請求できることになっています。しかしこれは日本国内だけのルールであり、国際的には通用しないわけです。
以上のことから、国際的なルールでは「あと2週間たてば無償で移籍できる」中田(浩)選手にたいし、マルセイユは8000万とも、2600万ともいう移籍金を提示しました(ダバディさんは、「3000万は誇張」と言っていますが)。一部では「日本を舐めてる!」という意見もあったようですが、以上の欧州ルールから考えると、そういうわけではないようです。マルセイユの強化担当ドュウフ氏も、単に国際慣行で妥当と思われる金額を算出しただけなのでしょう。
欧州では、「移籍金ゼロでの移籍」を避けるために、有力選手には複数年契約を結ぶことが当たり前になりました。そうすれば、残りの契約期間に応じて移籍金を得ることができるためですね。そうでなければ逆に、契約の切れた選手を、彼の意に反して引きとどめる手段はないわけです。このあたりはJ-KETでの、欧州在住者さんとのやりとりで、理解が深まった部分ですね(リンク先はスレッド全部になっています。真ん中より少し下、[23465]の書き込み以下をご覧ください)。
日本では、まだそれほど選手の大型移籍が一般的ではなく、また終身雇用制度の精神的影響や、「チームから受けた恩」などを選手が重視している状況、そして先の国内での移籍金基準、30ヶ月ルールなどにより、クラブがこのことに危機感を感じることが少なく、複数年契約や、契約途中での契約期間延長がそれほど重視されてこなかったという経緯がありますね。鹿島もそうだったのでしょう。
Masatoさんは-「鹿島のフロントの無策」が原因。-と書かれていますが、さすがにそう言い切ってしまうのはかわいそう(泣笑)と私は思います。が、そういう側面も完全には否定できないなとも感じます。これからは各クラブも、いつこういうことが起こっても大丈夫なように、複数年契約などの方策をもっと練っておかないといけませんね。選手の側の気持ちとしては、やはり、海外でやるのが夢である選手は多いでしょうから。
代理人の田邊伸明さんのBLOGのコメント欄では、より突っ込んだ議論がなされており、「選手が、複数年契約を希望しない」という状況も報告されています。それによって、将来の海外移籍をしやすくしようという考えのようです。これについてはクラブ側ががんばって、「選手の海外へ行きたいという気持ちを上回る条件」を、何とかして提示しないといけないのでしょうね。
それが金銭なのか、契約年数なのか、それ以外のもの、例えば海外に負けないほどのサッカーの質、チャレンジングな目標などなのかは、わからないところですが・・・。世界クラブ選手権への挑戦なども、その中に入ってくることでしょう。それらを含めて、Jリーグが、Jのそれぞれのクラブが、「海外移籍よりもすばらしい」ものとして選手に選ばれるようになる、そういう時代が早く来てほしいものだと思います。
ただ今回は、マルセイユ側の説明不足もあり、鹿島も感情的に受け入れることができない状態となっているように思います。そうなると、中田(浩)も「鹿島から受けた恩」などを考えて、今回は見送るのじゃないかなあ。私も円満に決着すれば移籍したほうがいいと思うけど、もめるようなら、見送ったほうがいいと思いますね。日本代表で活躍すれば、まだまだ海外移籍のチャンスはやってきますよ。
それではまた。
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