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January 17, 2005

ヒデとプレス

ジーコ監督が、シリア戦に中田ヒデを呼ぶかもしれないことを示唆したそうです。

(中田ヒデの代表復帰は?)「難しい状況だが、トレーニングマッチが2試合ある。シリア戦に来て、1回出てくれればいいが…」

これは、J-KETで弥七郎さんのおっしゃっているとおり、「そこで合流できなければ、北朝鮮戦には間に合わないだろう」という認識を示したものだと思います。やはりしばらく代表から離れていたわけですから、最低一回はすり合わせの機会を作らないといけないというのは、これはきわめて常識的なことと言えますね。

1月17日 宮崎合宿開始
1月29日 カザフスタン戦(横浜国際)
2月2日  シリア戦(埼玉スタジアム)
2月9日  W杯最終予選 北朝鮮戦(埼玉スタジアム)

ヒデは言うまでもなく、非常に能力の高い、日本代表にふさわしいレベルの選手です。コンディションさえ戻れば、再び代表に名を連ねることは、私は当然だと思います(ついでに言えば、私は彼のプレーが大好きです・笑)。しかし、北朝鮮戦に起用すべきかどうか、あるいは、最終予選の戦いに組み込むべきかどうか、というのは、議論の分かれるところでしょう。

彼は、非常に確固とした「彼のサッカー観」を持っていますし、彼が代表に入るならば必ずそれを実現しようとするでしょう。そしてそれは、去年のジーコジャパンの勝ちパターン「カバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」というものに、多少の修正を強いるものになるのではないかと思えるのです。

ジーコジャパンは、2003年のコンフェデレーションズカップで「プレスが効いたよい試合」を見せたのですが、それはヒデが主導したものだったと、私は思います。ヒデが代表に入るならば、必ずああいうことを実現しようとするでしょう。しかしその後、特にたとえば2004年2月のオマーン戦では、海外組(含むヒデ)との合流が遅れてしまったこともあり、その試合内容は再現されず、低調な試合内容となってしまいました。

それはその後も続く「プレスしようとするMFと下がるラインの間に広がるスペース」という問題が明らかになったものでした。

vital

ぽっかりとあいてしまったバイタルエリア

1: ボランチがプレスに参加している。
2: もう一人のボランチがDFラインの前に帰らない。
3: アウトサイドが絞らない。
4: 攻撃陣は攻め込んだまま戻らない。
(もちろんこれは、ジーコジャパンが常にこうなっている、ということではなくて、時としてこのようになってしまっている典型を図示したものです)

私は2月のオマーン戦も、先日のドイツ戦もスタジアムの上のほうの席から見たのですが、下がっていくディフェンスラインの前にぽっかりと丸い、誰もいないスペースができてしまう現象はまったく一緒でした。オマーンではバシールが、そしてドイツではバラックがそのエリアでフリーになっていたわけです。

ドイツ戦にはもちろんヒデは不在でしたが、試合を見てみると鈴木や小笠原、稲本が高い位置からプレスに行こうとしているのは見て取れますし、選手個々は「今日はプレスしよう」と考えていたことは確かだと思います。しかし、それが組織立っていず、個人で行ってかわされてしまうと、そこには下がっていくDFラインの前にぽっかりと空間が広がってしまっているのですね(これはアルゼンチン戦の記事ですが)。

やはり、「選手間の話し合いでチームを作る」ジーコジャパンの場合、話し合う時間がないと(オマーン戦、ドイツ戦)、プレッシング戦術のための意思疎通は難しいようです。むしろ「高い位置からプレスをかけよう」とすることこそが、「ぽっかりあいたバイタルエリア」を作る原因となってしまっているとも言えます。アウェーオマーン戦前の市原ユース戦での苦戦も、「プレスをかける加減があいまいだった(宮本)」ことによるものでした。

これを避けるためには、アジアカップやアウェーオマーン戦のように、いっそプレスを放棄してしまい、引いて守ることを基本とするほうがいいかもしれません。それならば、「カバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」という、アジアを制した時の特質が、十分に発揮できるでしょう。

しかし、それはヒデのサッカー観とはフィットしないのではないかと、私は疑問に思います。ヒデは、大住さんの考えとは違い、「まずはよい内容のサッカーを求めていく」「それが、勝つ確率を高める」という考え方をする選手だと思えるからです。彼を入れるかどうか、ということは同時に、昨年のやり方にどこまで変更を加えるか、あるいは、ヒデに昨年のやり方を理解してもらうか、ということでもあるのではないでしょうか。

北朝鮮、バーレーン相手には、

あまりプレスしないで待ち受けて奪って、そこから個人技を生かして攻める、あるいはセットプレーを重視する。

というやり方で大丈夫だと私は思います。問題はイラン相手の時でしょうね。イランにどうしても勝たなくてはいけなくなった時は、本当はきちんとプレスができたほうがいい。それを、どこまで作れるか、そのためには、ヒデを入れたほうがいいのか否か。そこまで考えなくてはいけない状態にはならないことを願いたいですが。

以上の考察とは別に、ヒデが一日でも早く回復し、また万全のプレーを見せてくれることを祈ります。

それではまた。

04:18 PM [ジーコジャパン・考察] | 固定リンク

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