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January 27, 2005

マルセイユへの旅

中田浩二選手のマルセイユ移籍が決まりましたね。彼個人としては、念願の海外移籍が実現するのだから、めでたいことですね。本人もとてもうれしそうです。

うれしい。移籍はここ3年いろいろとやってきましたが、最後のチャンスと思った。

しかし、彼を送り出す鹿島、Jリーグ全体としては、なかなか問題の残る、釈然としない移籍となってしまったことも確かですね。これは、鹿島としてはおそらく手続きの問題に不満が残り、そして日本サッカー全体としては、現行の移籍ルールで良いのか、そこが問われて来ているということでしょうね。

marseille2手続きについては、私は経緯に詳しいわけではないので誰かを非難することはしないです。ただ、問題点の一部とされている「マルセイユの提示金額」については、前回のエントリーでも見たように、「中田浩二を低く評価するがゆえのものではない」のではないかと思います。

日本では年齢に応じた移籍係数があり、それによる移籍金というものが存在するのですが、欧州のルールではそういうものはなく、契約を途中で破棄することによる違約金というかたちをとるわけです。従って、残りの契約期間に応じて金額が変動し、契約が切れた選手が移籍する時は、もといたクラブに入るお金はゼロとなるのですね。これは別に「クラブの足元を見た」とか、「相手クラブを舐めている」とか、「ルールの隙間を突いた」というようなものではなく、欧州で日常的に行われていることなわけです。

(この状況では移籍金という概念自体が存在しないために、それは選手の評価とは直結しない。海外クラブが選手を評価するのは、年俸の額と契約年数によるものだと思うべきではないのだろうか。中田(浩)の場合は鹿島と変わらない年俸、2年半という複数年契約である模様だが)

ここでの鹿島とマルセイユ、そして中田浩二選手(とその代理人)の間のずれは、

A)「契約が1月31日で切れる選手との交渉」ととらえるマルセイユ側と

B)「紙切れの上での契約は1月31日で切れるが、あくまでも自クラブの選手である中田浩二についての、クラブ間の交渉」と考える鹿島

というところにあったのではないかと思います。鹿島が、中田(浩)との口頭での契約延長の合意があったために、B)のように考えることにも理はあると思わなくもありません。しかし、正式な契約ではなかったために、マルセイユ側はA)のようにとらえたし、正式な契約を非常に重視する欧州では、それもまっとうなことなのでしょう。

このような問題が「ファミリー」であることを重視する鹿島で起こったことは、象徴的といえるかもしれません。鹿島は鈴木や柳沢の例を見ても、選手の意思を尊重し、温情的な移籍容認もしてきたクラブだと私には感じられます。それはとてもいいことだと思いますが、今回は流れの中で、結果的に不利に働いてしまった。今後このようなことがないようにするためには、契約は契約として、はっきりと形に残るようにしていく必要があるのでしょう。


■Jリーグの未来を見据えて

そしてもうひとつの問題、Jリーグ全体や、日本サッカー全体の中では、このテーマはどう考えるべきでしょうか。鹿島の牛島社長

鹿島だけの問題じゃない。プロテクトなども考えないと、次々起こる可能性がある。

というように、この問題はさらに広がっていく可能性を秘めています。中澤も海外移籍をにらんでの半年契約にしたらしいですし、これからも海外志向のある選手たちは、自らの移籍しやすさを優先し、複数年契約を拒否することが多くなるかもしれません。そうなると、移籍金ゼロで海外へ移籍する選手が、どんどん出てくることになってしまう。

それは、Jリーグにとって大きなマイナスではないか。日本が、完全な選手輸出国になり、ほかの輸出国、フランスやオランダやブラジルのように、自国リーグに代表級の選手が一人もいないなどということになるのではないか。しかもその際に、移籍金という形でクラブの財政を支えることもできなくなってしまうのではないか。有力選手を獲られ、クラブとして適切な代価を得られないということになると、クラブがどんどん貧窮化し、魅力あるサッカーを見せることができなくなって行ってしまうのではないか。

川淵会長もこれを問題視し、方策を考えていくようです。まずできることは、各クラブの意識改革ですね。複数年契約を今以上に重視し、有力選手にはなるべくそれを結ぶこと。情の面で問題はあるが、選手から得られる利益を最大化するには?という視点を持つこと。そしてさらに、現時点での制度改革の川淵案としては、

海外移籍を希望する選手には、所属クラブが複数年契約を結び、契約が切れる前年までに契約を更新していくなど

というものがあげられています。つまり、契約切れ状態を作らせないということですね。そういうことに規約上の拘束力を持たせることができるのか、選手が拒否したらどうするのか、「海外移籍を希望する選手」というのをどうやって区別するのか。プロテクトしなくては、という点は基本的には同意なのですが、そういった点を解決しないといけませんね。

contractというのも、結局すべては選手の「欧州でプレーしたい」という気持ちからスタートすることだからです。それがある以上、選手はプレーのレベルが上がるにつれ、海外を意識するようになる。そして「行けるものならなるべく行きたい」という気持ちから、自分に対する海外クラブのハードルを下げたくなる。複数年契約を拒否するようになる。

これを押しとどめるには、日本サッカーが、Jリーグが、そして各クラブがレベルアップし、選手に「海外でやるよりもJ」と思わせるような存在にならなくては、究極の解決にはならないでしょう。そして、そこから生まれる選手が海外で高評価され、「複数年契約の途中でも高い違約金を払っても獲得したい」と思われるようにならないと。

プロ野球でも、選手の大リーグ流出が続いています。私は野球のことにはまったく詳しくないのですが、ある選手に聞いたところ「大リーグには本当の野球がある」と言っていました。向こうでやることが、お金とか関係なく、「」なんだ、と(お金のくだりはどこまでホントかわかりませんが・笑)。そのときの選手の顔は、非常に無邪気な、単なる野球少年のそれと化していました。

そういう流れを制度によって押しとどめようというのは、どうもあまりうまくいくような気がしません。夢にタガははめられないものですから。もちろん、Jリーグの没落を招いてしまうのは問題ですから、制度の変更も必要でしょう。しかし、もっともっと根本的なことに、日本サッカー界も全力をあげて取り組んでいかないといけないということも、今回改めて考えさせられたことでした。

それではまた。

10:03 PM [サッカー] | 固定リンク

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