« December 2004 | トップページ | February 2005 »

January 30, 2005

上々のスタート

flag2日本代表はカザフスタンに4-0で快勝しました。得点は玉田×2、三都主、松田(代表初得点)。ボール保持率日本62.3%:カザフ37.3%。

よかったですね!フィジカルコンディション、メンタルともに上々の出来。とにかくまずは試合勘を取り戻すことが目的の試合でしたから、怪我人もなく、4点とって快勝というのは、なかなか良いスタートといえるのではないでしょうか。

個人的に特に良かったと思ったのは、中盤のプレスですね。やはりドイツ戦で得た課題(1)(2)を、自分たちで消化しようと選手が取り組んだのでしょうか。これほど前半からアグレッシブに追い回す日本代表の姿を見るのは、久しぶりな気がしました。

また、それも一人で行くのではなく、後ろも連携が取れていて、そこにスペースを与えてしまうことが、明らかに減ってきていました。これは、大胆なラインコントロールをする松田が入った上に、慣熟のための試合ですからわざと上がり目で試合をしてみたせいでしょうか。彼が3バックから出て、早めにプレスしに行く姿も目に付きました。本当に勝負のかかった試合ではどうするかはわからないですが、今回はそこは良くできていました。

kazaf1選手の意識の高さが良く出ているなと思ったのは、ボールを失った選手が自分で激しく取り返しに行くところ。「アリバイ守備」がいなかったですね。他の選手も、一人がディレイした上でもう一人が激しく当たる、ということができていました。やはり話し合う時間でできると、選手同士の連携も深まり、「国内組」だけでもこういう試合ができるんですね。

攻撃面では、加地が良かったですね!ドイツ戦でも何度か見せていましたが、思い切りの良い上がり、上がった上での切り返し、そこからのクロス。カザフDFがややふがいなかったとは言え、どれも期待を持たせるものでした。これからが楽しみですね。

kazaf2ドイツ戦の教訓(?)がもうひとつ生きているなと思ったのが、組み立てでのワンタッチのパスが増えてきたこと。三都主も、自ら「心がけた」と言うようにワンタッチのプレーを増やしたりしていましたね。それも、受けられる位置に周りが動いているからできるのであって、合宿の成果が出ているのでしょう。

私が個人的に注目していた小笠原は、前半は守備に貢献するのがめだっていましたね。この練習の成果か、先制後はDFからのロングボールを左右のスペースに走るFWにあわせるという攻撃も多くて、前半はなかなか小笠原の良いところが出ませんでした。

また、ボランチ二人もボールを持つと下げてしまうことが多く、なかなか前を向くことが少ない。後半終了間際の、小笠原がトップ下でワンタッチで玉田にフリックを流したプレーの前のパスは、三都主からのもの。ああいうボールが小笠原に入ることが少なかった。攻撃のリズムを作るためには、ボランチからそういうボールがもっと供給される必要があります。二人のちょっとそこが物足りないところでした。

そこをジーコも感じたのか、福西がやや痛んだこともあり、後半頭から阿部を投入します。後ろからのゲームメイクは阿部にさせて、小笠原を押し上げようという意図ではないでしょうか。それが見事に決まったのは4点目。阿部のすばらしい「ラス前パス」が、すすっとDFライン前に侵入してフリーになった小笠原に通って、小笠原が前を向いて、チェックしにきたカザフスタンDFによってできたラインの乱れをついて玉田にパス、ゴール!

ogasa3阿部はああいうパスが得意な選手です。周りが見えているから、フリーになる動きを見逃さない。グラウンダーでするするーっと伸びるパスの質がよく、パススピードも十分、コースも的確だから、インターセプトされない。阿部もボランチの競争に割って入れてほしいですね。他の選手と持ち味は違うけれど、小野や稲本がいない時にも、小笠原が下がってゲームメイクをするのではないカタチを、彼は作れます。

そして、ついに大黒がデビューしましたね!得点はありませんでしたけど、右サイドでキープして加地に出したパスのコースが敵から見ると「イヤーな感じ」のコースで、非凡なものを感じさせました。こうやってチームに慣れたら、次はシリア戦でゴールをぜひ決めてほしいです。

ジーコには、この日の試合を見て、海外組をどうするかという、うれしい悩みが増えましたね。

練習で話し合い、連携を作れる国内組を中心に、コンディションの良い海外組を少し組み合わせる程度で試合をしてほしいと、私は昨年からずっと思ってきました。今回はやはり、話し合う時間の取れた国内組が、いいところを見せましたね。これに、コンディションのいい選手をトッピングして、北朝鮮戦に臨むことになるでしょうか。ジーコ監督もそうしてくれるみたいです。

ただ、昨年と違って、帰国した選手のコンディションや、実際に試合に出て貢献できるのか、活躍できるのかという部分をよりシビアに判断したい。試合勘などの問題も含めて、パフォーマンスに影響がないと思われる選手を選んでいきたい

良いことだと思います。次は2月2日(水)のシリア戦。良い準備をしてほしいですね。

それではまた。

01:31 AM [ジーコジャパン・親善試合] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (2) |

January 27, 2005

マルセイユへの旅

中田浩二選手のマルセイユ移籍が決まりましたね。彼個人としては、念願の海外移籍が実現するのだから、めでたいことですね。本人もとてもうれしそうです。

うれしい。移籍はここ3年いろいろとやってきましたが、最後のチャンスと思った。

しかし、彼を送り出す鹿島、Jリーグ全体としては、なかなか問題の残る、釈然としない移籍となってしまったことも確かですね。これは、鹿島としてはおそらく手続きの問題に不満が残り、そして日本サッカー全体としては、現行の移籍ルールで良いのか、そこが問われて来ているということでしょうね。

marseille2手続きについては、私は経緯に詳しいわけではないので誰かを非難することはしないです。ただ、問題点の一部とされている「マルセイユの提示金額」については、前回のエントリーでも見たように、「中田浩二を低く評価するがゆえのものではない」のではないかと思います。

日本では年齢に応じた移籍係数があり、それによる移籍金というものが存在するのですが、欧州のルールではそういうものはなく、契約を途中で破棄することによる違約金というかたちをとるわけです。従って、残りの契約期間に応じて金額が変動し、契約が切れた選手が移籍する時は、もといたクラブに入るお金はゼロとなるのですね。これは別に「クラブの足元を見た」とか、「相手クラブを舐めている」とか、「ルールの隙間を突いた」というようなものではなく、欧州で日常的に行われていることなわけです。

(この状況では移籍金という概念自体が存在しないために、それは選手の評価とは直結しない。海外クラブが選手を評価するのは、年俸の額と契約年数によるものだと思うべきではないのだろうか。中田(浩)の場合は鹿島と変わらない年俸、2年半という複数年契約である模様だが)

ここでの鹿島とマルセイユ、そして中田浩二選手(とその代理人)の間のずれは、

A)「契約が1月31日で切れる選手との交渉」ととらえるマルセイユ側と

B)「紙切れの上での契約は1月31日で切れるが、あくまでも自クラブの選手である中田浩二についての、クラブ間の交渉」と考える鹿島

というところにあったのではないかと思います。鹿島が、中田(浩)との口頭での契約延長の合意があったために、B)のように考えることにも理はあると思わなくもありません。しかし、正式な契約ではなかったために、マルセイユ側はA)のようにとらえたし、正式な契約を非常に重視する欧州では、それもまっとうなことなのでしょう。

このような問題が「ファミリー」であることを重視する鹿島で起こったことは、象徴的といえるかもしれません。鹿島は鈴木や柳沢の例を見ても、選手の意思を尊重し、温情的な移籍容認もしてきたクラブだと私には感じられます。それはとてもいいことだと思いますが、今回は流れの中で、結果的に不利に働いてしまった。今後このようなことがないようにするためには、契約は契約として、はっきりと形に残るようにしていく必要があるのでしょう。


■Jリーグの未来を見据えて

そしてもうひとつの問題、Jリーグ全体や、日本サッカー全体の中では、このテーマはどう考えるべきでしょうか。鹿島の牛島社長

鹿島だけの問題じゃない。プロテクトなども考えないと、次々起こる可能性がある。

というように、この問題はさらに広がっていく可能性を秘めています。中澤も海外移籍をにらんでの半年契約にしたらしいですし、これからも海外志向のある選手たちは、自らの移籍しやすさを優先し、複数年契約を拒否することが多くなるかもしれません。そうなると、移籍金ゼロで海外へ移籍する選手が、どんどん出てくることになってしまう。

それは、Jリーグにとって大きなマイナスではないか。日本が、完全な選手輸出国になり、ほかの輸出国、フランスやオランダやブラジルのように、自国リーグに代表級の選手が一人もいないなどということになるのではないか。しかもその際に、移籍金という形でクラブの財政を支えることもできなくなってしまうのではないか。有力選手を獲られ、クラブとして適切な代価を得られないということになると、クラブがどんどん貧窮化し、魅力あるサッカーを見せることができなくなって行ってしまうのではないか。

川淵会長もこれを問題視し、方策を考えていくようです。まずできることは、各クラブの意識改革ですね。複数年契約を今以上に重視し、有力選手にはなるべくそれを結ぶこと。情の面で問題はあるが、選手から得られる利益を最大化するには?という視点を持つこと。そしてさらに、現時点での制度改革の川淵案としては、

海外移籍を希望する選手には、所属クラブが複数年契約を結び、契約が切れる前年までに契約を更新していくなど

というものがあげられています。つまり、契約切れ状態を作らせないということですね。そういうことに規約上の拘束力を持たせることができるのか、選手が拒否したらどうするのか、「海外移籍を希望する選手」というのをどうやって区別するのか。プロテクトしなくては、という点は基本的には同意なのですが、そういった点を解決しないといけませんね。

contractというのも、結局すべては選手の「欧州でプレーしたい」という気持ちからスタートすることだからです。それがある以上、選手はプレーのレベルが上がるにつれ、海外を意識するようになる。そして「行けるものならなるべく行きたい」という気持ちから、自分に対する海外クラブのハードルを下げたくなる。複数年契約を拒否するようになる。

これを押しとどめるには、日本サッカーが、Jリーグが、そして各クラブがレベルアップし、選手に「海外でやるよりもJ」と思わせるような存在にならなくては、究極の解決にはならないでしょう。そして、そこから生まれる選手が海外で高評価され、「複数年契約の途中でも高い違約金を払っても獲得したい」と思われるようにならないと。

プロ野球でも、選手の大リーグ流出が続いています。私は野球のことにはまったく詳しくないのですが、ある選手に聞いたところ「大リーグには本当の野球がある」と言っていました。向こうでやることが、お金とか関係なく、「」なんだ、と(お金のくだりはどこまでホントかわかりませんが・笑)。そのときの選手の顔は、非常に無邪気な、単なる野球少年のそれと化していました。

そういう流れを制度によって押しとどめようというのは、どうもあまりうまくいくような気がしません。夢にタガははめられないものですから。もちろん、Jリーグの没落を招いてしまうのは問題ですから、制度の変更も必要でしょう。しかし、もっともっと根本的なことに、日本サッカー界も全力をあげて取り組んでいかないといけないということも、今回改めて考えさせられたことでした。

それではまた。

10:03 PM [サッカー] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (7) |

January 25, 2005

中田(浩)選手移籍続報

中田浩二選手の移籍に関しては、新たな記事が出てきました。

鹿島側は中田(浩)選手に、「残留か、ゼロ円移籍か」の決断を求めているとのこと。ゼロ円移籍ということは、これはおそらく鹿島としてはほぼ「縁が切れる」くらいのことなのでしょうね。それもあって、中田(浩)選手は、

育ててくれたのも鹿島。ただ行きたいという強い気持ちは変わらない。

と、非常に悩んでいるようです。

先日のエントリーに書いた「国際ルールでは、契約期間が切れると無償で移籍できる」ということですが、これは武藤さんが記事でかかれたように、ボスマン判決という「EU内で通用するもの」が出発点であったと思います。これが全世界的に適用されているかどうかは、先日書いた時には私は知識がありませんでした(その後武藤さんは訂正記事を書かれています。すばやい対応、見習いたいです)。

実際にはどうか、調べて見るとFIFAのこのページに行きつきました。ここでは「無償で移籍できる」とは書いていないのですが、

契約期間が切れている場合は、その選手の所属するサッカー協会は移籍証明書を発行すること(大意)

などとなっていて、契約の切れた選手を拘束できる条項はなく、どうやらやはりFIFAのルールでは、「契約の切れた選手は無償で移籍できる」ものではないかと思われます。私も英語が得意ではないので、間違っているかもしれませんが…(もし誤りであったらご指摘願います)。

さて、もう一つ気になるのが、一部のスポーツ新聞などで

契約の切れている選手は、欧州の移籍期間が終わっても移籍できる

と書かれていることです。ご存知のように中田(浩)選手の契約は1月31日まで、そこを過ぎるとフリーになるのですが、欧州の冬の移籍期間が同じく1月31日までで閉まってしまうので、そう簡単にフリー移籍はできないものだと私は思っていました(いくらなんでも、欧州との時差の、空白の何時間かで移籍はしないでしょう)。例えば6月まで待って、そこで契約とか、ですね。

「契約の切れている選手は、欧州の移籍期間が終わっても移籍できる」…これは本当なのかどうか?先のFIFAの条文を読んでも、どうにも理解ができません。もし本当なら、2月1日以降にマルセイユと中田(浩)選手は焦らずに契約をすればいい、ということになりますね。…本当なのでしょうか?

そう考えると先の、鹿島が中田(浩)に求めている「残留か、ゼロ円移籍か」という条件が意味を持ってくるように思えます。もしかすると、

1)日本もFIFA―ボスマンルールに従わなくてはならない。(仮)
2)2月1日以降も、契約の切れている選手は移籍できる。(仮)
本当かどうか分からないので(仮)としています。

という二つの条件から、「手続き面で中田(浩)選手を引き止めるのは無理」という状況ができあがっていて、問題は中田(浩)選手の気持ち一つ、になっているという事の顕われなのかもしれません。あくまでも、もしかすると、ですが。

いずれにせよ、もうすべては中田浩二選手の「気持ち」にかかっているということでしょうね。私は、海外移籍をかならずしも奨励する物ではありません。日本選手が、出場機会を得られずベンチを暖めることが多い状況は、向こうで評価を得ることの難しさを示しています。海外への挑戦は、もちろん意義はあるが、選手が失ってしまうものも多いと思うからです。

しかし、逆にこれは千載一遇のチャンスであることも確かですね。トルシェ監督はマルセイユにずっといるとは限らないわけですが(笑)、いる間は他の監督よりも現時点で中田(浩)をよく知っており、おそらく試合に出場させる可能性もより高いであろうと考えられます。これからも移籍の話は来ると思いますが、こういう機会はそうそうないでしょう。

しかし、お世話になったクラブに移籍金を残せないということも、中田浩二選手としては心苦しいでしょうね。あとは彼にとって、サッカー人生をどう考えるかという事でしょうか。どちらを選ぶにしても、悔いのないようにして欲しいものですね。

それではまた。

07:13 PM [サッカー] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (8) |

January 23, 2005

日本にもボスマン判決の波が!

うわさの中田浩二選手のマルセイユへの移籍ですが、中田(浩)選手自身は行きたいようですね。しかし、

鹿島に何年もお世話になっているし、勝手にいくわけにはいかない。うまく話し合えればと思う。
とも考えているようです。

中田(浩)選手と鹿島の契約は1月31日まで。新たな契約を結んでいないので、そこを過ぎれば中田(浩)選手はフリーとなり、どこのチームへでも無償で移籍(移籍金ゼロで!)できるのです。それが国際的な現在の移籍のルールになっているそうです。これは「選手の権利を守るため」に、ボスマン判決以降、実施されているルールであるようです。

考えてみれば、「労働者の権利」としては当たり前のことかもしれません。例えば「私がA社との契約を終えた後でも30ヶ月、A社から次の会社との契約について拘束される」と思うと、とんでもないことのように感じられます。かつては「保有権」という形でクラブの力が強かったわけですが、それでいいのか、という見直しが、ボスマン判決以降になされたということでしょうね。

翻って日本では、移籍に際し、まず「年齢別係数」というもので、移籍金を算出します。次のように定められているようです。

移籍先クラブ J1 J2 JFL
移籍元クラブ J1 J2 JFL J1 J2 JFL J1 J2 JFL
満16歳以上 満22歳未満 10.0 2.5 9.0 2.5 9.0
満22歳以上 満25歳未満 8.0 2.0 4.0 2.0 4.0
満25歳以上 満28歳未満 6.0 1.5 3.0 1.5 3.0
満28歳以上 満30歳未満 3.0 0 1.5 0 1.5
満30歳以上 満31歳未満 1.0 0 0.5 0 0.5
満31歳以上 0 0 0 0 0

中田(浩)選手は25歳以上、28歳未満に相当し、係数は6倍。仮に5500万円の年俸だと、3億3000万円になるのですね。さらにこれは、契約期間満了後も30ヶ月間(2年6ヶ月)は請求できることになっています。しかしこれは日本国内だけのルールであり、国際的には通用しないわけです。

以上のことから、国際的なルールでは「あと2週間たてば無償で移籍できる」中田(浩)選手にたいし、マルセイユは8000万とも、2600万ともいう移籍金を提示しました(ダバディさんは、「3000万は誇張」と言っていますが)。一部では「日本を舐めてる!」という意見もあったようですが、以上の欧州ルールから考えると、そういうわけではないようです。マルセイユの強化担当ドュウフ氏も、単に国際慣行で妥当と思われる金額を算出しただけなのでしょう。

欧州では、「移籍金ゼロでの移籍」を避けるために、有力選手には複数年契約を結ぶことが当たり前になりました。そうすれば、残りの契約期間に応じて移籍金を得ることができるためですね。そうでなければ逆に、契約の切れた選手を、彼の意に反して引きとどめる手段はないわけです。このあたりはJ-KETでの、欧州在住者さんとのやりとりで、理解が深まった部分ですね(リンク先はスレッド全部になっています。真ん中より少し下、[23465]の書き込み以下をご覧ください)。

日本では、まだそれほど選手の大型移籍が一般的ではなく、また終身雇用制度の精神的影響や、「チームから受けた恩」などを選手が重視している状況、そして先の国内での移籍金基準、30ヶ月ルールなどにより、クラブがこのことに危機感を感じることが少なく、複数年契約や、契約途中での契約期間延長がそれほど重視されてこなかったという経緯がありますね。鹿島もそうだったのでしょう。

Masatoさんは-「鹿島のフロントの無策」が原因。-と書かれていますが、さすがにそう言い切ってしまうのはかわいそう(泣笑)と私は思います。が、そういう側面も完全には否定できないなとも感じます。これからは各クラブも、いつこういうことが起こっても大丈夫なように、複数年契約などの方策をもっと練っておかないといけませんね。選手の側の気持ちとしては、やはり、海外でやるのが夢である選手は多いでしょうから。

代理人の田邊伸明さんのBLOGのコメント欄では、より突っ込んだ議論がなされており、「選手が、複数年契約を希望しない」という状況も報告されています。それによって、将来の海外移籍をしやすくしようという考えのようです。これについてはクラブ側ががんばって、「選手の海外へ行きたいという気持ちを上回る条件」を、何とかして提示しないといけないのでしょうね。

それが金銭なのか、契約年数なのか、それ以外のもの、例えば海外に負けないほどのサッカーの質、チャレンジングな目標などなのかは、わからないところですが・・・。世界クラブ選手権への挑戦なども、その中に入ってくることでしょう。それらを含めて、Jリーグが、Jのそれぞれのクラブが、「海外移籍よりもすばらしい」ものとして選手に選ばれるようになる、そういう時代が早く来てほしいものだと思います。

ただ今回は、マルセイユ側の説明不足もあり、鹿島も感情的に受け入れることができない状態となっているように思います。そうなると、中田(浩)も「鹿島から受けた恩」などを考えて、今回は見送るのじゃないかなあ。私も円満に決着すれば移籍したほうがいいと思うけど、もめるようなら、見送ったほうがいいと思いますね。日本代表で活躍すれば、まだまだ海外移籍のチャンスはやってきますよ。

それではまた。

06:27 PM [サッカー] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (5) |

January 20, 2005

北朝鮮ってどんなチーム?

untitile01だんだん北朝鮮戦が近づいてきました。なかなか情報の少ない、われわれにはうかがい知れないチームであったりもするわけですが、各所で出てきた情報を整理しておきたいと思います。





・北朝鮮代表は、W杯1次予選直前に「4・25体育団」という単独チーム中心の編成になったらしい。
・「4・25体育団」は、軍管轄のチーム。
・元スター選手のユン・ジョンス監督が率いる。
・日本から、李漢宰(リ・ハンジュ/広島)、安英学(アン・ヨンハ/新潟→名古屋)の二人が加わっている。
・W杯1次予選では、グループ5(UAE、イエメン、タイと同組)。3勝2分け1敗でトップ通過。

■1次予選での成績

2004/02/18 △1-1 vs イエメン (アウェー)
2004/03/31 △0-0 vs UAE (ホーム)
2004/06/09 ○4-1 vs タイ (アウェー)
2004/09/08 ○4-0 vs タイ (ホーム) ・・・アン・ヨンハ2得点
2004/10/13 ○1-0 vs イエメン (ホーム)
2004/11/17 ●0-1 vs UAE (アウェー)

さて、サッカーダイジェスト767号に慎武宏氏の北朝鮮レポートがあります。その中で、北朝鮮サッカー協会のアシスタント・ゼネラルセクレタリーのリ・ガンホン氏が、北朝鮮のサッカーの特徴を話しています。

朝鮮サッカーの特徴は、スピードと機動力。代表もその伝統を受け継いでいるが、国内では3-5-2を採用するチームが多い中、現代表は4-4-2を基本システムにしている。守備ラインは深く、中盤はダイヤモンド型で、サイド攻撃で相手を崩していくオーソドックスなサッカーです。どちらかというと、カウンターよりもしっかりパスをつないでゲームを組み立てるスタイルです。

とのこと。ただサッカーマガジン1010号では前大韓協会技術委員長のイ・ヨンス氏が、「北朝鮮の伝統的なスタイルはカウンターサッカーです」と語っています。カウンターかつなぐサッカーなのか?イメージ的には後者のような気がしますね。以前にもご紹介したこちらでは、

朝鮮サッカーとは体力をベースとした、全員攻撃・全員守備を身上とするもの

ユン監督は「ロングボール、カウンターがベースのイングランドスタイルを加味している」

とのことですが・・・。

中心的な選手とフォーメーションはこのような感じのようです。

northkorea

注目選手は、2トップのホン・ヨンジュとキム・ヨンス。1次予選で4得点のホン・ヨンジュがポストプレーヤーで、キム・ヨンスがスピードのある選手らしいです。そして、こちらでもふれられていたボランチのキム・ヨンジュン。視野が広く、的確な配給をするようですね。

そして、Jリーガーの李漢宰(リ・ハンジェ)と安英学(アン・ヨンハ)。クラブではどちらかといえば守備的な位置でプレーする二人ですが、こちらのインタビューによると、代表ではトップ下と中盤左サイドを担い、攻撃面でのプレーを求められているようです。リ・ハンジェがトップ下で「得点を挙げることと、前線へのパスやコンビネーションを」、そしてアン・ヨンハが左サイドで、「左からのクロスというよりも、中へ切れ込んでのシュートを」ということのよう。

ポイントはぜんたいに小柄なチームであるらしいこと。2トップがそれぞれ175センチ(ホン・ヨンジョ)、171センチ(キム・ヨンス)、日本ゴール前の制空権は問題なさそうです。中澤がどんなボールでもはじき返してくれるでしょう。そのほかにも、キム・ヨンジュン(180センチ)をのぞくと、小柄な選手が多いということなので、アジアカップ優勝の原動力でもあった「中村の左足から中澤、福西、鈴木などが合わせるセットプレー」が、てきめんに威力を発揮できるかもしれませんね。

もちろん、北朝鮮がどうくるかということ以上に大事なのが、日本がどれだけしっかりと準備をできるか、ということですね。日本ではJ開幕前ということもあり、コンディションの問題があります。そして直前合流となる海外組との連携の問題も。しかし、その部分のチーム・マネジメントについては、現時点ではもう選手も現行のやり方に十分慣れているでしょうから、それで上手くいくことを期待したいと思います。

そしてさらに、もうひとつ重要なことがありますね。守ってカウンター、というチームと対戦するときに一番問題になってくるのは、無得点で過ぎていく中でのあせりです。あせればあせるほど、自分で自分を追い詰めてしまう。そしてそれも、昨年のアジアカップや1次予選の経験を通して、選手は対処法を見つけていますね。「いいサッカーができなくても、最後に勝てばいいんだ」という落ち着きは、頼もしい限りです。

油断はいけませんが、まずは平常心で、昨年のやり方をしっかりと再び発揮することが重要ですね。それさえできれば、よい結果が必ずついてくると思います。

それではまた。

08:13 PM [ジーコジャパン・最終予選] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0) |

January 19, 2005

バーレーンはそれほど組織的?

nightちょっと古いのですが、興味深い記事を見つけました。Number618号の、永井洋一氏の記事です。

全体としては「アジア最終予選で、日本は苦戦しても突破するだろう」という趣旨ですから、大いに賛成です。特に去年獲得した「カバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」という強みを発揮することができれば、アジアにおいての4.5枠ですから、まず問題なく突破できると信じています。

ところで気になったのが、次の一節です。

チーム全体がコンパクトにまとまり、前線から積極的な守備をし、奪ったボールは手数をかけずに早めに前線に送る。選手は「約束事」を忠実に守り、全員がよく動き、チーム全体に勢いがある。格上の相手にも「自分たちのサッカー」を貫き、試合展開はスピーディーである。オマーン、バーレーン、ヨルダンら、アジアで急成長したチームの姿だ。

これについては、「本当かなあ」とちょっと疑問を抱かされます。

オマーンは確かにいくぶんそういうチームでしたが、五輪予選でも、アジアカップでも、私はバーレーンにコンパクトネスを特に感じませんでした。前線からの積極的な守備というよりも、後方で人数をかけて守っているという状態が長く続いていたと思います。また、時間がたつにつれ間延びして、アジアカップでは10人の日本とオープンガードの殴り合いのような試合を演じていましたね。

ヨルダンについては、確かに日本戦では前線からプレスをかけてきました。いいサッカーをしていましたね。しかし、その前のヨルダンvs韓国戦では、ずっと自陣にはりついて、韓国の猛攻をやり過ごす、という戦いをヨルダンはしていました。日本人選手もそれらの試合のビデオを見た後には、

「彼らは人数をかけて守ってくる。注意しないといけない。(宮本)」
「ヨルダン戦は我慢でしょうね。人数をかけて守備をすると思うし、焦らず冷静に攻めの形を作れるかどうか。(三都主)」

などと、「引いた相手をいかに崩すか」が課題だと発言していたくらいです。

しかし、ヨルダンの監督は、試合後に「日本はDF3人に頼りすぎているから、攻撃的に出た」と言っていて、この「べた引きの韓国戦→積極的にプレスをする日本戦」の内容の変化は「日本を研究した上での意図的なもの」だったようです。(元のソース先が消えているので、それを確認したときの過去の掲示板の書き込みをリンクしてあります。)このことを見ても「ヨルダンが普段から、永井さんの言うようなチームかどうか」はけっこう疑問であると思います。

もうひとつ同じようなことで、疑問なのがここですね。

 W杯アジア最終予選では、「約束事」でチームが見事に統一されたバーレーン、北朝鮮と対戦することになった。アンチジーコ派が最も好むチームスタイルを持つ相手だ。

上記のように、バーレーンはそれほどコンパクトではなく、基本的には引いて守って身体能力を生かしたカウンターという、スタンダードなサッカーをするチームのように思います。その割りにディフェンスもそれほど組織的ではなく、穴が多かった印象です。「約束事で見事に統一された」と言うほどかなあ?北朝鮮については、永井さんはどのような試合を見てそういうチームだとおっしゃっているのでしょうか?サッカージャーナリストとして、普通よりも試合を見ることは多いでしょうから、しっかりと情報を集めて書かれているのでしょうね。私たちには情報があまりないので、対戦してみるまではわかりませんが。

それにしても、永井さんも

それでも「型」と「約束事」が大好きなマニュアル愛好者からは散々の非難を浴びている。
(中略)
アンチジーコ派が最も好むチームスタイルを持つ相手だ。

こんなふうに、何かの風潮に関して「仮想敵」を作って、その仮想の意見に反論するのは、あまり意味がないと私は思うのですけどね。「誰の考えのどの部分に反論する」ということを明確にしないと、どこにもない意見に対して議論を吹っかけることになってしまう可能性もあります。さまざまな人がそれぞれに少しずつ違うことを言っているのだし、それをまとめてこのように決めつけて、0か100かのレッテル張りをするようでは、それぞれの意見の相互理解も妨げてしまうでしょうに。

「型」と「約束事」も大切です。そうでなかったら何でドイツがあんなに約束事の多いサッカーをするのでしょう?そしてもちろん、それを越えたところにあるメンタルや、自信、落ち着きもすごく大切。ジーコはそれをもたらそうとしている。そういうものを両方評価して、その両方が日本代表に備えられるように期待、激励、要求することが、建設的というものなんじゃないでしょうか。

いずれにしろ、

日本代表は彼らとの戦いで確実に苦戦するだろう。しかし、勝負のポイントを押さえるのは日本代表だと信じている。

この部分は大いに同感です。個のチカラで勝る日本、多少苦戦したとしたとしても、アジアカップを制したサッカーができれば、確実に4.5枠に入ることはできると思います。ただ心配なのは、ドイツのように「個のチカラで勝る敵が、組織的に戦ってきた時」なんですよね。まあそういう相手と対戦するのは2006年の本大会においてでしょうからとりあえずは置いておいて(笑)、今は迫ってきた北朝鮮戦の勝利をただ祈りたいと思います。

それではまた。

08:25 PM [ジーコジャパン・考察] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0) |

January 17, 2005

ヒデとプレス

ジーコ監督が、シリア戦に中田ヒデを呼ぶかもしれないことを示唆したそうです。

(中田ヒデの代表復帰は?)「難しい状況だが、トレーニングマッチが2試合ある。シリア戦に来て、1回出てくれればいいが…」

これは、J-KETで弥七郎さんのおっしゃっているとおり、「そこで合流できなければ、北朝鮮戦には間に合わないだろう」という認識を示したものだと思います。やはりしばらく代表から離れていたわけですから、最低一回はすり合わせの機会を作らないといけないというのは、これはきわめて常識的なことと言えますね。

1月17日 宮崎合宿開始
1月29日 カザフスタン戦(横浜国際)
2月2日  シリア戦(埼玉スタジアム)
2月9日  W杯最終予選 北朝鮮戦(埼玉スタジアム)

ヒデは言うまでもなく、非常に能力の高い、日本代表にふさわしいレベルの選手です。コンディションさえ戻れば、再び代表に名を連ねることは、私は当然だと思います(ついでに言えば、私は彼のプレーが大好きです・笑)。しかし、北朝鮮戦に起用すべきかどうか、あるいは、最終予選の戦いに組み込むべきかどうか、というのは、議論の分かれるところでしょう。

彼は、非常に確固とした「彼のサッカー観」を持っていますし、彼が代表に入るならば必ずそれを実現しようとするでしょう。そしてそれは、去年のジーコジャパンの勝ちパターン「カバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」というものに、多少の修正を強いるものになるのではないかと思えるのです。

ジーコジャパンは、2003年のコンフェデレーションズカップで「プレスが効いたよい試合」を見せたのですが、それはヒデが主導したものだったと、私は思います。ヒデが代表に入るならば、必ずああいうことを実現しようとするでしょう。しかしその後、特にたとえば2004年2月のオマーン戦では、海外組(含むヒデ)との合流が遅れてしまったこともあり、その試合内容は再現されず、低調な試合内容となってしまいました。

それはその後も続く「プレスしようとするMFと下がるラインの間に広がるスペース」という問題が明らかになったものでした。

vital

ぽっかりとあいてしまったバイタルエリア

1: ボランチがプレスに参加している。
2: もう一人のボランチがDFラインの前に帰らない。
3: アウトサイドが絞らない。
4: 攻撃陣は攻め込んだまま戻らない。
(もちろんこれは、ジーコジャパンが常にこうなっている、ということではなくて、時としてこのようになってしまっている典型を図示したものです)

私は2月のオマーン戦も、先日のドイツ戦もスタジアムの上のほうの席から見たのですが、下がっていくディフェンスラインの前にぽっかりと丸い、誰もいないスペースができてしまう現象はまったく一緒でした。オマーンではバシールが、そしてドイツではバラックがそのエリアでフリーになっていたわけです。

ドイツ戦にはもちろんヒデは不在でしたが、試合を見てみると鈴木や小笠原、稲本が高い位置からプレスに行こうとしているのは見て取れますし、選手個々は「今日はプレスしよう」と考えていたことは確かだと思います。しかし、それが組織立っていず、個人で行ってかわされてしまうと、そこには下がっていくDFラインの前にぽっかりと空間が広がってしまっているのですね(これはアルゼンチン戦の記事ですが)。

やはり、「選手間の話し合いでチームを作る」ジーコジャパンの場合、話し合う時間がないと(オマーン戦、ドイツ戦)、プレッシング戦術のための意思疎通は難しいようです。むしろ「高い位置からプレスをかけよう」とすることこそが、「ぽっかりあいたバイタルエリア」を作る原因となってしまっているとも言えます。アウェーオマーン戦前の市原ユース戦での苦戦も、「プレスをかける加減があいまいだった(宮本)」ことによるものでした。

これを避けるためには、アジアカップやアウェーオマーン戦のように、いっそプレスを放棄してしまい、引いて守ることを基本とするほうがいいかもしれません。それならば、「カバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き」という、アジアを制した時の特質が、十分に発揮できるでしょう。

しかし、それはヒデのサッカー観とはフィットしないのではないかと、私は疑問に思います。ヒデは、大住さんの考えとは違い、「まずはよい内容のサッカーを求めていく」「それが、勝つ確率を高める」という考え方をする選手だと思えるからです。彼を入れるかどうか、ということは同時に、昨年のやり方にどこまで変更を加えるか、あるいは、ヒデに昨年のやり方を理解してもらうか、ということでもあるのではないでしょうか。

北朝鮮、バーレーン相手には、

あまりプレスしないで待ち受けて奪って、そこから個人技を生かして攻める、あるいはセットプレーを重視する。

というやり方で大丈夫だと私は思います。問題はイラン相手の時でしょうね。イランにどうしても勝たなくてはいけなくなった時は、本当はきちんとプレスができたほうがいい。それを、どこまで作れるか、そのためには、ヒデを入れたほうがいいのか否か。そこまで考えなくてはいけない状態にはならないことを願いたいですが。

以上の考察とは別に、ヒデが一日でも早く回復し、また万全のプレーを見せてくれることを祈ります。

それではまた。

04:18 PM [ジーコジャパン・考察] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (3) |

January 14, 2005

ニュースいろいろ

marseilleご存知のように中田浩二選手がマルセイユの練習に参加しているのですが、店頭で見たスポーツ新聞では大々的に、まるで移籍が決定的であるかのように書いてありましたね。よほど話題が少ないのでしょうか(笑)。

ガゼッタさんは1月13日の日記で、「ロングフィードを期待しているのか?」という趣旨で書かれていて、こちらでは、フランス語に堪能、フランスリ-グでの試合にも詳しい発汗さんが、「ボランチではないか」と考察をされていますね。

私は単純に「左足の使える選手を求めている」のじゃないかなと思います。欧州の監督はかなりかたくなに「左側には左足の選手」と決めているような人がいますよね。中田浩二選手は、左アウトサイド、左CB、ボランチの左側、もしや4バックなら(ないだろうけど・笑)左サイドバックなど、さまざまなポジションで起用できると思っているのではないでしょうか(もちろんその左足の正確さ、1vs1の基本の高さなどは前提にして、ですけどね)。

マルセイユの公式サイトのほうでも、練習風景の写真入で紹介されているようで、これはかなり期待されていることは間違いないような気がします。

実際に決定するかどうかはまだまだわからないと思いますが、後ろのほうの選手の移籍は戸田以来ですし、もしや左CBで起用されるとなるとディフェンダーの移籍第1号ですよね。楽しみに続報を待ちたいと思います。送り出す鹿島のほうは複雑でしょうけど・・・。

muraiBNさて、以前にご紹介した「村井をこのまま行かせていいのか」ですが、主催者の一人Friskさんのほうから、村井へのメッセージを渡しに行ったご報告があがってきています。こういう活動も、それをきちんと受け入れ、話をしてくれるクラブ関係者の方も、ともにすばらしいですね。すべてが上手く回っていくことを祈っています。

それと、第4回フットボールカンファレンスの宇都宮徹壱さんのレポートが出ていますね。やはり審判問題のセッションが印象が強かったようで、その部分が中心です。宇都宮さんの冷静な筆致の感想に基本的には同意なのですが、ただ、判定に関する議論は「審判のほとんどがまだ一種のアマチュアである」という点がこれまでは障害になってきたのではないかと思います。その点をどう打破していくか、いずれまた考えてみたいと思います。

もうひとつ、北朝鮮が海南島で合宿を開始したようですね。

さらに北朝鮮チームが、日本メディアの動向に強い警戒心を示し「写真撮影は仕方ないが、選手やコーチへの取材は絶対に受けない」とする役員のコメントを紹介した。

うーむ、いわゆる「ヴェールに包まれている」という奴ですか。メディアのほうは早速手ごわさをアピールしているようですが、こういう報告もあります。

北朝鮮なんて「フツー」だぜ!

とのことなので(笑)、もちろん油断はいけませんが、過度に恐れすぎることもないでしょう。きちんと準備をして、アジアカップの時の日本の「落ち着き」を再現できれば、

 小柄でスピーディーな攻撃陣は脅威になりうるが、なにせ攻撃がワンパターンなのだ。守備もイージーなクリアミスが目立った。(中略)

だが、逆にこの「ヨン様」のラインが断たれると、攻撃はワンパターン化する。UAE戦では後半13分に先制され「ヨン様」に疲れが出始めると、やみくもに相手の深いDFラインにスピードで突っ込み、自滅した。

この日は、1次予選の得点王ホン・ヨンジョが欠場したが、基本的には小柄で一本調子のチームであることには違いはないだろう。

というチームらしいですし、きっちりと勝ち点3をあげることができると思います。選手、監督にはオフも短くなり大変だと思いますが、ここが第1の正念場ですから、ぜひしっかりと準備をして欲しいですね。

それではまた。

01:25 AM [ニュース] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0) |

January 13, 2005

高校選手権のすばらしさと今後

logohighschool2いやあ、白熱した、気持ちの伝わってくるいいゲームでしたね!両校の選手、関係者の皆様お疲れさまでした。そして鹿児島実業、優勝おめでとう!(ちょっと遅れてしまいましたが)

鹿実岩下君、市船渡辺君の統率するDFラインが組織的によく守り、相手の攻撃の芽を中盤で摘む。ようやくそこを突破しても、数少ないチャンスは最後の瞬間に体を張って守る。両者守備がいいので、なかなかチャンスを作ることができません。

鹿実のほうが大きな展開、裏への意識やダイレクトプレーの意識が高く、押している時間が長かったですね。全体として、攻める鹿実、守る市船という構図だったでしょうか。市船は、準決勝でも感じた展開の小ささ、スピードの遅さ、要所で足元、足元へのパスになるところが、鹿実の速い、体を張ったプレスに引っかかってしまい、持ち味が出せない状態でした。

しかし、それでもしっかりと守り、結局両者ゆずらず0-0で延長へ。

延長でも、このハードスケジュールにもかかわらず、走り続ける、プレスをかけ続ける選手たち。すごいですね。

そして結局延長でも0-0のままタイムアップ、PK戦に突入します。鹿実GK片渕君が市船の3人目のキッカーを読みきって右へ飛んでセーブ、さらに市船の4人目がポストにキックを当ててしまい、鹿実の優勝が決まりました。PK船を何度も経験してきた今年の市船、その分研究されてしまったでしょうか。

なかなかビッグチャンス、シュートチャンスの少ない試合でしたが、これだけ楽しめたのはやはり両者の気持ちがびんびん伝わってくる試合振りからでしょう。

アナウンサーがしきりと「高校サッカーの素晴らしさ」を強調するんですが、そんなものいりませんよ(笑)。言葉で言われるよりも、見ていればわかるから。そういう試合でしたね。

さて、こちらに高校選手権の、川端暁彦さん(エル・ゴラッソ)の総括があります。こちらに書かれているとおり、高校生年代のタレントがJクラブのユースチームにシフトするようになって来たのが、今大会の小粒感につながってきているのでしょうね。

高校選手権は日本テレビが放映してくれて注目度も高かったですね。しかし、最近次第にJユースに押されてきていることが、ここ数年選手権の実況アナが試合中に何度も「仲間と出会えて青春を燃やせる高校サッカー部は素晴らしい」と強調する理由のひとつなのでしょう。

しかしやはり、Jリーグが創設されたことで、サッカー選手の大舞台、大目標が変わって来、「高校選手権が最終目標」ではない選手が増えてくるのは、これは時代の趨勢というものでしょう。優秀な選手であればあるほどそうなるはずで、そういう選手が高校サッカー部ではなくJユースを選ぶことが出てくるのも、「選択肢の広がり」としては素直な姿ではないかと思います。

そうなると、これまでのように有力高校に人材が集中するということはなくなりますから、全体としては注目が拡散する、高校選手権への注目度は相対的に低下していく、ということになりますね。これも自然なことだと思います。これからはそれほど過度な注目を集めることなく、「高校サッカー部にとっての晴れ舞台」として、選手権は存在していくようになるのでしょうね。

優勝した鹿実の松沢総監督がTVのインタビューに答えて、「高校サッカー仲間として、高校サッカーを盛り上げたい」とおっしゃっていました。この日の選手たちの、監督の姿に感動した身からすると大きく頷いてしまうのですが、冷静に考えると、高校選手権自体の注目度がかつてのようになることは、基本的には難しい。そしてそれはそれでもよいのだ、と私は思います。

それとは別に、トッププロを目指す選手はJユースに進路を取ったり、あるいはやはり有力校で切磋琢磨する道を選んだりと、これまでよりも幅の広い選択肢をもつことができる。それもよいことだと思います。そして、高校サッカー部の有力校は、それらのトップレベルを求める選手たちから、自分の実力を最大化できる進路として「選ばれる」存在にならなくてはならないわけですね。

でも、この日の決勝を見ていたら、こういう素晴らしい指導者の皆さんがこれだけの情熱を傾けておられるのだから、これからもそれはきっとできるに違いない、そう思いました。

ところで、ユースの育成の話に関しては第4回フットボールカンファレンスのほうでまたいろいろと講演があったようです。実際に講習を受けられた湘南蹴鞠屋さんがレポートをしてくださっています。エル・ゴラッソでも今後報告があるとのこと。楽しみですね。

それではまた。

02:14 AM [サッカー] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0) |

January 10, 2005

大久保、胸を叩く

mallorcalogo大久保選手がスペインリーグでなんとも鮮烈なデビューを飾りました。1得点1アシスト、すばらしい、文句のつけようのないデビューだと思います。うれしいですね!


大久保はルイス・ガルシアと2トップのような、1トップ下のような形で先発します。敵は今期13位と低迷しているとはいえ強豪デポルティボ・ラコルーニャ、試合はマジョルカホームでありながら、デポルティボがボールを支配する展開で始まりました。

mallorcamenber

大久保には最初は今ひとつボールが回ってこず、また本人のプレーも硬かったような印象があります。しかし、30分くらいに大久保がキープしてファウルをもらったプレー、その後、右サイドでヒールで流したトリッキーなドリブルをしようとして敵に引っかかったあたりから、チームメートが「こいつ、やるじゃん」と見る目を変えたような感じがしました。

大久保にボールが回りだし、彼の技術でボールを落ち着け始めると、次第にマジョルカペースの時間も長くなってきます。彼がデビュー戦ながらも自信を持って、自分の技術を臆さずにしっかり発揮しようとしているのが、上手く機能し始めているようでした。

後半8分、デポルティボのルケが中盤から長いドリブル、ディエゴ・トリスタンがポストになってヒールで浮かせてラインの裏へちょこんと出したパス、スピードを落とさずに入ってきたルケが軽くシュートして、デポルティボが先制します。

Deportivomenber

その後、11分、右サイドから大久保、アーリー気味のクロスを中央へ、ルイス・ガルシアがDFと競り合いながら、技巧的なふわっと浮いたヘディングシュートを決め、マジョルカが追いつきます。大久保、リーガ初アシスト!

もうこのあたりでは完全に大久保はチームの信頼を勝ち得たようで、ボールを奪ったらまず大久保を見る、という気持ちにほかの選手がなっているのじゃないかというぐらい、ボールがよく回ってきます。特にDFラインの裏にボールを出し、大久保を走らせてそこから攻めを構築する、というやり方でマジョルカはペースをつかめるようになっていきます。

しかし、17分にデポルティボ、ムニティスが右サイドから中へ切り込みつつ左足の強烈なシュート、GKがはじいたところをルケがドカンと押し込み、再び追加点を上げます。これで1-2

ookubogoalその直後、右サイドから早いリスタート、カンパーノのクロス、中央にはアランゴと大久保、大久保はキーパーとDF二人を前にして、下がりながらGKの上を抜けてゴールの上のほうに突き刺さる難しいヘディングシュート!ゴール!大久保、リーガ初得点!

(左は、そのプレーの雰囲気の画です。稚拙ですみませぬ。クリックすると拡大します。それと、こちらに、ゴールシーンがあります。何度見てもすばらしい(笑)

その後も一進一退の攻防が続きますが、もう攻撃はほぼ大久保中心といっても過言ではないくらい。何度もチャンスを迎え、何度もチャンスを演出。しかし、そこはデポルティボのDF陣、集中してなかなか追加点は許しません。

33分には、大久保へスルーパスが出てました。デポルティボのDFにカバーされてしまうのですが、もうサポは大歓声!サポーターの信頼と、大きな期待もこの試合で大久保は勝ち得たようです。

結局試合は2-2で終了。大久保はそのスピードと技術、そしてハートで、マジョルカの大きな戦力となりうることを、この試合でとりあえず証明したといえるでしょう。ゴール後、サポーター席に向かってドンドンと胸を叩く大久保。やっぱりハートだ、このマークだ、ということでしょうか。

試合後のインタビューでは「ゴールが決まった瞬間は夢かと思いましたよ」「試合前は何も考えていなかったです。あれ、Jリーグかなあ、みたいな感じで」と相変わらず(笑)。そこも頼もしいですね。

新年早々、なんともうれしいニュースですね。それではまた。

05:08 AM [サッカー] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (4) |

January 08, 2005

村井!

muraiBNジェフの村井選手が、磐田に移籍するか?という報道が出ていますね。まだチームから正式アナウンスはない状態ですが。

これに対して、「村井をこのまま行かせていいのか」という活動が、イヌゲノムさんと黄色イヌさんのところで行われるみたいです。掲示板形式で、村井選手へのメッセージを集め、それをクラブのほうへ届けようというものです。

掲示板の方を見ましたが、皆さんすばらしく熱い書き込みで、私は感動してしまいました。

私はJEFサポではありませんから、「行かせるべきか否か」については話をできませんが、このように愛される村井選手はすばらしいなあ、と思いました。

興味のある方はどうぞ覗いてみてください。そして、趣旨に賛同される方はぜひメッセージをどうぞ。

09:29 PM [Jリーグ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0) |

高校選手権準決勝

■国見の最大の敵は、風?(笑)

logohighschool2高校選手権準決勝は、国見vs鹿実という九州対決となりました。

試合前の予想としては、国見の強さに鹿実がどう対抗するか、というものだったと思いますが、試合は立ち上がりからそれを覆す展開となります。

前半、国見は逆風で、いつものサイドにロングボールを送り込んで基点を作るプレーが上手く行きません。ロングボールが途中で失速しちゃうんですね。それプラス、鹿実のディフェンスラインを岩下君がうまくラインコントロールして、スペースを作らせない。「最大の敵は風ではなく、巧妙な鹿実DFラインだった」と言うべきですね。前半はそれで国見は苦労していました。

逆に、鹿実は国見のお株を奪うようなロングボールを左右スペースに送り込む。バランスがいいので、そこからのこぼれも拾えていく。国見のマンマークディフェンスは、2列目3列目から連動して攻撃されて混乱していましたね。そうして鹿実は、前半の前半、相当国見を自陣に押し込んでいました。国見は忠実にセーフティーなクリヤーを心がけるのですが、そこから鹿実はロングスローを山のように飛ばす(笑)。

そうこうしているうちに、西岡君がこぼれだまをゴール前に送り込んだクロスが、風に乗ってそのまま国見ゴールへ飛び込んでしまう。キーパーは戻りながら手を伸ばしたんだけど、跳ね返せなかった。鹿実先制

その後一瞬流れが国見ペースになるんだけど、またすぐに取り戻される。そしてそれまでと同じような展開に。前半終了間際、国見はテクニックのある本吉君を入れる。何とか中盤で基点を作ろうという意図でしょうね。

後半、サイドが変わって、風上に立つ国見。ところが、本吉君を入れたことがここで効果を発揮してしまい、後半になってもいつものロングボールよりも中盤を経由した戦いを選択してしまいます。そうではないんだ、ということでしょうか、「ハーフウェーラインあたりからでもロングクロスを入れろ」と国見選手に指示が出たようです。しかし、なかなかそれもできていかない。時間とともに、確かに攻めの圧力は増していくんだけど、岩下君を中心にあわてずしっかりと守る鹿実。

鹿実は、山下君と栫君、坪井君のコンビから、特に栫君がしばしばチャンスを迎える。後半でGKとの1対1が2、3回ありましたね。どうにも決められなかったですが。しかし、その栫君の決定的チャンスから迎えたCK、そこからのこぼれをボランチ赤尾君が見事なミドルを決めて(DFに当たりましたが)、2点目

国見は「利き足は頭」という中筋君を入れてロングクロスからの攻撃をさらに強化しようとしますが、これもなかなか機能しない。さらに、GKにキックがいいという菅君をいれ、FKのシーンでは彼が蹴ったりもしたのですが、それも功を奏さず試合終了。

国見は決勝進出ならず、鹿実のバランスのよさが目立ったゲームでした。岩下君のコントロールするDFラインだけではなく、ボランチやアウトサイドのポジション取りもよかったですね。DFラインがボールをクリヤーするたびに、アナウンサーの「また岩下だ」という声が印象に残りました(笑)。


■テクニック・ポゼッション・ミラーゲーム?

kokuritu第2試合は星稜vs市船、第1試合とはうって変わってグラウンダーのパスを足元でつなぐサッカーの応酬になりました。まるでチャンピオンシップと天皇杯決勝の対比みたい?(笑)どちらのチームもよくコントロールされた4バックで組織的に守備をして、そこからテクニックを生かして攻めていくという点でよく似ていました。

序盤、星稜がロングスローからこぼれだまをシュート、それをエリア内で受けてまたシュート、というプレーで早々に得点をしてしまいます。市船DFの死角から現れた田宮君は見事でした。

そこからペースの奪い合いになりますが、序盤は星稜ペースかな。そこからあせらず落ち着いてペースをつかみにかかる市船。次第に市船の守備が星稜の攻撃を上回るようになって、市船の左サイドに基点ができ、そこから右へ流したボールが小山君に。うまく横へ切り替えしてシュートコースを開いてゴール

前半は1-1とはいえ、市船優位で終了ですね。

ただ、第1試合と比べると全体に展開がやや小さかったように思いました。それと市船の、自陣でつなぐときのショートパスのスピードがえらく遅いのが気になりましたね。受ける選手のトラップミスを気遣ってなんだろうけど、ちょっとどうでしょうか。むしろ敵に狙われやすく思えます。そういう意味では、同じテクニック派でも、星稜のほうが力強さやスペースへの意識を感じさせてくれました。

後半も市船ペースに思えました。星稜の本田君はゴール近くでは消されていて、下がり目から何度かいい「組み立ての第一歩」のパスを出すのですが、違いを作り出せる選手はゴール前にいたほうがよかったか。なかなか攻撃が展開していかない。

そんななか、足のものすごく速い白山君が市船に投入されます。星稜のDFラインの背後へのスルーパス、遅れてスタートした白山君があれよあれよとDFを追い抜いてGKと1vs1、それを冷静に決めてしまいます。これはちょっとすごいゴールでした。これで2-1と市船が逆転

そのまま時間が過ぎていく中、星稜は最後の攻めに出ました。橋本君がドリブルで強引に仕掛けていく、本田君がエリアの中でテクニックを発揮する。あわやPK、というシーンもありましたが、なかなかその攻めが点に結びつかない。しかし、この辺の攻めの大きさ、迫力、技術は私には今回の市船よりも魅力的に見えました。まあ判官びいきかもしれませんが(笑)。

しかし、後半ロスタイム、最後のワンプレーとなるだろう星稜のCK、選手全員が市船ペナルティエリア内へ。ファーまでするすると抜けていったボールを大畑君6がトラップ、冷静なシュートがゴールに吸い込まれました。もうホントにホントに最後の瞬間。市船がボールをセットし、キックオフした瞬間にホイッスル、タイムアップ。

そこからPK戦で、4-5で市船の勝利でした。しかし、PK戦の途中、5人目まで終了したところで中継を打ち切るTV局には、日本全国のTVの前で怒りの声が上がったことでしょう。各局とのバランスで致し方ないことかもしれませんが、十分に予想できることなのですから、事前にもっと調整をしておいてほしいものです。

準決勝は両試合とも、「かみ合う」チームとの対戦となって、しかもどちらにも意地や夢があり、熱く、とても見ごたえのあるゲームとなりました。

決勝は鹿実vs市船。ともに伝統校、しかしスタイルはけっこう違いそうで、これも楽しみですね。

それではまた。

04:53 PM [サッカー] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1) |

January 07, 2005

À la prochaine Philippe.

lightもうネット的には旧聞に属するかもしれませんが、中田浩二選手がマルセイユの練習に参加するようですね。移籍も可能性に入っているようです(スポーツ新聞の記事なので、まともに取り合いすぎるのも危険ですが・笑)。

トルシェは彼を左CBとして重用したわけですが、それは正確な左足でのフィードを買っただけではありません。首を振ってしっかりと周囲の状況を確認できる能力や、1vs1できちんとディレイでき、間合いに入った敵のボールをかっさらって行く能力など、中田浩二選手は体格がそれほど大きくなくても、近代的なCBとしての総合力が優れているという理由がありました。彼がフランスリーグに移籍して活躍できれば、日本のDFも国外で通用するという自信になりますね。

ところで、トルシェネタが一つ出たので、以前にSolvalofootさんからトラックバックいただいた議論にお返事をしたいと思います。お返事が大変遅くなってすみません>Solvalofootさん。もとの議論の方はこちら、いただいたトラックバックはこちらです。

私とSolvalofootさんの最大のすれ違いは「トルシェ戦術は高度か否か」ということであると思います。Solvalofootさんが最初に私に質問されたときに引用された、

98年の就任時点でトルシェが日本代表にもたらそうとしていたコンセプトは、先進的に過ぎるものだと思っていました。
当時の日本代表の実力から離れた高度なコンセプトを実現するには、練習のための合宿がやはり必要でした。
「トルシェに引き上げられた日本代表」

は、こちらからのものですよね(リンク先の文章を書いたのは、02年10月です)。

この文章が書かれた文脈においては私は、「トルシェの目指そうとしたコンセプトは、98年当時の日本から見て高度なものであった」と書いているに過ぎません。トルシェ戦術、トルシェ本人についての最終的な評価を下しているわけではないのです。例えて言うなら

A:受験生に「この参考書は、君には高度すぎるかもしれないよ」と言う場合
B:「この参考書は世界の参考書界でも高度なものである」と言う場合

私はAの文脈で話しているのですが、Bのように捉えられているのがすれ違いの原因なのですね。私は「トルシェの戦術は世界のサッカー界から見て高度なものだ」などとは一度も思ったことはないし、書いたこともありません。彼のコンセプトのほとんどは、世界から見て別に特殊なものではない、と思ってはいますけどね。3バックでラインディフェンスをやるところがちょっと珍しいかな、というぐらいでしょう。

私が上のAの文脈で言っていることは、「98年当時の日本にとって、『ラインを上げてコンパクトに、攻撃的な守備で世界と戦う』ということ自体が、高度であった」ということなのです。98年当時の日本は「アジア第3代表」だったのですから。そして少なくともトルシェがそれを目指したこと、4年間に日本代表に戦術が浸透し、それが実現できた(本番の・笑)試合がいくつもあったことは確かであると、私には思われます。

たまたまトルシェであり、フラット3でしたが、仮にあの時ベルガーさんが来て、フラット4を、それによるアグレッシブなコンパクトフィールドでのプレスサッカーを導入しようとしたとすると、やはり私は「98年の就任時点でベルガーが日本にもたらそうとしていたコンセプトは、先進的に過ぎるものだ」と思ったことでしょう。それはモウリーニョさんでも、デルネリさんでも、いっそサッキさんでも(笑)同じなのです。

そして彼の言うラボに、その戦術にあう選手を招集し続けたし、その戦術に合うように教育していったわけです。(Solvalofootさん)

トルシェの戦術は、最終ラインを3人で構成する点を除けば、世界で見てそれほど特異なものであるとは、私には思われないのですね。

デルネリ・キエーボのアグレッシブなラインディフェンスもよく似ていたし、新潟で見たギー・ステファン監督(フランス人)のセネガルも同様のラインコントロールをしていました。高く保つ3バックにはビエルサ・アルゼンチンがありました(試合をスタンドからホームビデオで取って来たのですが、ラインの高さがよくわかります。いずれ研究してアップしたいと思っているのですけど、時間が・・・苦笑)。欧州でサッカーを見てきた方からは、「3バックのときのオランダも同じようなラインコントロールをしていた」というご報告もありますね。コンパクトフィールドで、高く位置するラインディフェンスで、アグレッシブに戦うチームはその他にも数多くあります。

そして、トルシェ戦術で必要とされる能力は、それらのチームでもほぼ同様に必要とされると、私は思っています。

■DFで言えば、ラインの上下動の原則を理解すること、ラインを維持しながらピッチ全体を見回し、自分で危険を判断する個人DF戦術など。

■MFでは、しっかりとした個人戦術でプレッシングをする能力、ボールの動きを見ながらポジションを移動し、よい体勢でパスを受ける動きを連続する能力、もちろんそこからのトラップ、パス能力、そしてスペースがあれば前線へフリーランニングする能力など。

■FWでいえば、ボールの動きを見た動き出しによってパスを引き出し、速い攻撃につなげる能力、適切なタイミングでポストに入り、キープする能力、前線からのプレッシングに参加する能力などなど。

それらは「ラインを上げてコンパクトに、攻撃的な守備で戦う」コンセプトを目指すチームでは必ず必要とされるし、むしろ現在のサッカーでは必須の能力といってもいいかもしれません。

また、ネット上のソースがなぜか(笑)消えてしまったんですが、中村選手がレッジーナ移籍後の関西のニッカンスポーツにおけるインタビューで、「こっちでは守備もしなくちゃいけないし、戦術も守らなくてはいけない(大意)」と、答えていた記事を読んだことがあります。欧州の試合を見ても、しっかりとしたラインディフェンスで、きちんとプレスをかけて戦うチームは、選手の動きが整備よくされているのが見て取れることがありますね。トルシェがやっていたことは、それらのチームで普通に行うことがほとんどでしょう。最終ラインが3枚であること以外は(笑)。

ところで、これと関連してこちらのエントリーの

ジーコが代表監督に就任して、チーム全体の約束事がないと代表選手といえどバラバラになっていた。トルシェが重んじた戦術が、真にサッカーの基本に即したものならこんな事態にならなかったはずではないか?あんなに繰り返した判断力を高める、コミュニケーション能力を高めるトレーニングがサッカーの真理に即したものなら、その後の監督が誰であれもっとコミュニケーション能力が高くて有機的な代表チームであり続けたはずだ。

この部分ですが、それはちょっと無理というものでは(笑)?例えば、ベンゲル監督の戦術は欧州でも普遍的なものの一つだと思いますが、ベンゲル監督が去った後のグランパスにはそれは残ったでしょうか?サッカーのチーム、戦術はきわめて有機的なもので、しっかりと練習を繰り返していないと、いったん身についた戦術も機能させられなくなってしまうものだと思いますよ。選手の顔ぶれも変わり、形成するべき共通理解の相手も変わっていくのですから。

さて、私は上記のようにトルシェ監督の戦術を「取り立てて高度ではないが、普遍的な要素を多く含む、普通の戦術の一つ」と考えています(98年当時の日本から見ると相対的に高度ではありましたが)。ですから、それを若い選手たちに徹底させたことは、よいことであったと思っているのです。ドイツ戦の後、高原も小笠原も「やっぱりこういう相手には前線からプレスしていかないとダメだよな」と言っていましたね。トルシェ戦術かどうかはともかく、今後日本代表が再びそういうサッカーを志向していってくれると、私としてはうれしいです。

あといくつか、ピンポイントで(笑)。

小野はサイドにおいやられていて、中村はベンチにもいなかった。(Solvalofootさん)

中村選手は怪我でしたよ。W杯明けのJリーグ1試合目も欠場していましたね。

ちなみに4-2-3-1はもう流行遅れですか(笑)。

ああいやいや(笑)、4-3-3が増えてきたとか、ちょっと潮流が変わってきたかな、という程度だと思います。まあ、あまり重要なことではないと思いますが。

しかし、当のトルシェ本人がマルセイユでやればこの後の展開は分かりませんね。

ちなみに、西部さんは著書「スローフット(リンクはアマゾンアフェリエイトです)」のなかで、かつてのマルセイユのアラン・ペラン監督は「フラット3」を用いていた、と書かれていますね。マルセイユはフラット3好きなのかな(笑)。

きっかけになるとは思っていませんが、ジーコへの考え、トルシェへの評価、もっと多様な雰囲気になっていけばより代表をとりまく空気がおもしろくなっていくと考えています。ジーコも神様ではないし、トルシェもただの過去の人ではく、さよならなんてまだ出来ないと思いますので。

そうですね。でも最近は、相当多様な雰囲気になってきているように、私は思うのですけどね。やはりアジアカップという真剣勝負の本番で結果を出したことは大きいですよ。私も「ジーコはなぜ勝てたのか」を考えるのは、非常に重要だと思っています。それが今年の最終予選にもつながってくるわけですしね。

ただ私は、「トルシェではここが不満だった、ジーコではそこが解消されている、だからジーコがいい」という議論では、ジーコもかわいそうだと思いますけどね。これからは、ジーコはジーコとして、そのよい点もよくない点も評価する、そうしたほうがよいのでは、と思っています。

トルシェもマルセイユに就職したことだし、"À la prochaine Philippe"、でいいのではないでしょうか(笑)。

また、大変長くなってしまいました。それではまた。

06:42 PM [トルシェ・考察] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (2) |

January 03, 2005

あけましておめでとうございます

V6010011あけましておめでとうございます。みなさま、旧年中は大変お世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。

元旦の天皇杯はなかなか見て楽しい試合でしたね。ヴェルディのショートパスをつなぐサッカーが、再び覇を唱えたのは、これからのJのサッカーの幅を考えても、楽しみが増えたわけで喜ばしいことと、おとそ気分で(笑)寿いでおります。ただ、どうにも判定が・・・。

さて、新春ですので、私の新年の願いをここに書き記させていただきたいと思います。初詣では、これを覚えておいて祈念しようというわけです。ちょっと多くなってしまって神様もお困りになるかもしれませんが・・・。

1.なによりも、世界で災害がなく、平穏に生きていかれる一年でありますように。

新年早々、スマトラ沖地震の津波による被害がとても大きいというニュースが連日飛び込んでくるのですが、まずは被害がこれ以上広まらないことを、また被害を受けた地域の一日でも早い復旧を、そして今年はあのようなことが、地震も、台風も、そのほかの自然災害も、いっさいない年になって欲しいと、切に、切に願います。私は非力で何もできないのですが、一応ローソンで募金をしてまいりました。

2.人の行為で苦しむ人が、少しでも早く減り、最終的には一人もいなくなりますように。

戦争や、圧制や、テロなど、さまざまな人の行為で苦しむ方々が、少しでも早く、そして一人でも多く救われますように、本当に心の底から願います。方法論にはいろいろな意見があるでしょう。例えば拉致問題はどのように解決するべきか、議論は紛糾すると思います。しかし、目的はただ一つ、とにかく苦しむ人を減らしたい。そちらに向かって世の中が大きく前進していくことを切に祈ります。

3.サッカー日本代表が、ドイツ出場を決め、日本サッカーがさらに発展しますように。

W杯出場枠は広がっているので楽観しているのですが、それでも何が起こるかわからないのが予選だと思います。方法論についてはいろいろな意見があるでしょう。例えば、日本の強化策について、議論は百出すると思います。しかし、目的はまず、とにかくW杯出場を決めること、そして日本のサッカーが発展すること。そちらに向かって日本サッカー界全体が大きく前進していくことを切に祈ります。

4.退場によってゲームが壊されてしまう試合がなくなりますように。

天皇杯は、ヴェルディの小林慶行選手が退場になるまでは本当に拮抗した好試合だと思って楽しんで見ていました。しかし、2枚目のイエローによって10人になってしまうと、好試合を楽しむどころではなくなってしまいます。同じようなことは最後のチャンピオンシップでもありましたし、ザスパ草津の天皇杯の試合でもありました。その他、Jリーグの多くの試合でも。

私は、一つ一つのジャッジが正当であったかどうかを議論するつもりはないし、一人の審判を非難するつもりもありません。もともとどちらかといえば審判の判定には異議を唱えたくない方なのです。しかし、ここ最近さすがに「カードによってゲームが壊される」ことが多すぎないですか?天皇杯はその典型的な例ですが、それによってJリーグの「見るゲームとしての質」が落ちてしまうと、回りまわって興行としてのJリーグに大きなマイナスの影響を与えるに違いありません。

この問題については、また考察してみたいと思いますが、願い事としてはまず、「カードで壊されてしまう試合が減ること」ですね。今年はそれを祈り、かつ、声を上げていきたいと思います。

5.アジア最終予選のTV中継がまともになりますように。

昨年も代表戦のTV中継の、実況アナウンサーの質に悩まされた一年でした。今まさにピッチ上で日本がチャンスになりかけたり、ピンチになりかけたりしていても解説者と雑談したり、自分の手元にある資料を朗読することに忙しい実況アナたち。はっきり言いましょう。あなたたちは間違っています。

ピッチで起こっていることを過不足なく伝えることがあなたたちのまず第一の役割であり、それによってサッカーという競技の魅力、あるいは代表戦の興奮を伝えていくのが最終的な目的でしょう。しかし、あなたたちが煽ろう煽ろうと声を張り上げても、それはできません。ピッチの上のことと関係なくそれをされても、見ている側はしらけるばかりです。

サッカーの魅力はまずピッチの上にある。それを理解して実践する実況アナウンサーが一人でも増えてくれること。今年はそれを祈り、かつ声を上げていきたいと思います。


私の2005年年頭の願い事は以上です。大きなことも、小さなこともごたまぜですが、今の正直な願いです。「神は自ら助くるものを助く」といいます。以上の願いに対して、私も非力ながら、できることを日々精進していきながら、考え続けたいと思います。

それではまた。

08:48 PM [ご挨拶] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (2) |