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January 07, 2005

À la prochaine Philippe.

lightもうネット的には旧聞に属するかもしれませんが、中田浩二選手がマルセイユの練習に参加するようですね。移籍も可能性に入っているようです(スポーツ新聞の記事なので、まともに取り合いすぎるのも危険ですが・笑)。

トルシェは彼を左CBとして重用したわけですが、それは正確な左足でのフィードを買っただけではありません。首を振ってしっかりと周囲の状況を確認できる能力や、1vs1できちんとディレイでき、間合いに入った敵のボールをかっさらって行く能力など、中田浩二選手は体格がそれほど大きくなくても、近代的なCBとしての総合力が優れているという理由がありました。彼がフランスリーグに移籍して活躍できれば、日本のDFも国外で通用するという自信になりますね。

ところで、トルシェネタが一つ出たので、以前にSolvalofootさんからトラックバックいただいた議論にお返事をしたいと思います。お返事が大変遅くなってすみません>Solvalofootさん。もとの議論の方はこちら、いただいたトラックバックはこちらです。

私とSolvalofootさんの最大のすれ違いは「トルシェ戦術は高度か否か」ということであると思います。Solvalofootさんが最初に私に質問されたときに引用された、

98年の就任時点でトルシェが日本代表にもたらそうとしていたコンセプトは、先進的に過ぎるものだと思っていました。
当時の日本代表の実力から離れた高度なコンセプトを実現するには、練習のための合宿がやはり必要でした。
「トルシェに引き上げられた日本代表」

は、こちらからのものですよね(リンク先の文章を書いたのは、02年10月です)。

この文章が書かれた文脈においては私は、「トルシェの目指そうとしたコンセプトは、98年当時の日本から見て高度なものであった」と書いているに過ぎません。トルシェ戦術、トルシェ本人についての最終的な評価を下しているわけではないのです。例えて言うなら

A:受験生に「この参考書は、君には高度すぎるかもしれないよ」と言う場合
B:「この参考書は世界の参考書界でも高度なものである」と言う場合

私はAの文脈で話しているのですが、Bのように捉えられているのがすれ違いの原因なのですね。私は「トルシェの戦術は世界のサッカー界から見て高度なものだ」などとは一度も思ったことはないし、書いたこともありません。彼のコンセプトのほとんどは、世界から見て別に特殊なものではない、と思ってはいますけどね。3バックでラインディフェンスをやるところがちょっと珍しいかな、というぐらいでしょう。

私が上のAの文脈で言っていることは、「98年当時の日本にとって、『ラインを上げてコンパクトに、攻撃的な守備で世界と戦う』ということ自体が、高度であった」ということなのです。98年当時の日本は「アジア第3代表」だったのですから。そして少なくともトルシェがそれを目指したこと、4年間に日本代表に戦術が浸透し、それが実現できた(本番の・笑)試合がいくつもあったことは確かであると、私には思われます。

たまたまトルシェであり、フラット3でしたが、仮にあの時ベルガーさんが来て、フラット4を、それによるアグレッシブなコンパクトフィールドでのプレスサッカーを導入しようとしたとすると、やはり私は「98年の就任時点でベルガーが日本にもたらそうとしていたコンセプトは、先進的に過ぎるものだ」と思ったことでしょう。それはモウリーニョさんでも、デルネリさんでも、いっそサッキさんでも(笑)同じなのです。

そして彼の言うラボに、その戦術にあう選手を招集し続けたし、その戦術に合うように教育していったわけです。(Solvalofootさん)

トルシェの戦術は、最終ラインを3人で構成する点を除けば、世界で見てそれほど特異なものであるとは、私には思われないのですね。

デルネリ・キエーボのアグレッシブなラインディフェンスもよく似ていたし、新潟で見たギー・ステファン監督(フランス人)のセネガルも同様のラインコントロールをしていました。高く保つ3バックにはビエルサ・アルゼンチンがありました(試合をスタンドからホームビデオで取って来たのですが、ラインの高さがよくわかります。いずれ研究してアップしたいと思っているのですけど、時間が・・・苦笑)。欧州でサッカーを見てきた方からは、「3バックのときのオランダも同じようなラインコントロールをしていた」というご報告もありますね。コンパクトフィールドで、高く位置するラインディフェンスで、アグレッシブに戦うチームはその他にも数多くあります。

そして、トルシェ戦術で必要とされる能力は、それらのチームでもほぼ同様に必要とされると、私は思っています。

■DFで言えば、ラインの上下動の原則を理解すること、ラインを維持しながらピッチ全体を見回し、自分で危険を判断する個人DF戦術など。

■MFでは、しっかりとした個人戦術でプレッシングをする能力、ボールの動きを見ながらポジションを移動し、よい体勢でパスを受ける動きを連続する能力、もちろんそこからのトラップ、パス能力、そしてスペースがあれば前線へフリーランニングする能力など。

■FWでいえば、ボールの動きを見た動き出しによってパスを引き出し、速い攻撃につなげる能力、適切なタイミングでポストに入り、キープする能力、前線からのプレッシングに参加する能力などなど。

それらは「ラインを上げてコンパクトに、攻撃的な守備で戦う」コンセプトを目指すチームでは必ず必要とされるし、むしろ現在のサッカーでは必須の能力といってもいいかもしれません。

また、ネット上のソースがなぜか(笑)消えてしまったんですが、中村選手がレッジーナ移籍後の関西のニッカンスポーツにおけるインタビューで、「こっちでは守備もしなくちゃいけないし、戦術も守らなくてはいけない(大意)」と、答えていた記事を読んだことがあります。欧州の試合を見ても、しっかりとしたラインディフェンスで、きちんとプレスをかけて戦うチームは、選手の動きが整備よくされているのが見て取れることがありますね。トルシェがやっていたことは、それらのチームで普通に行うことがほとんどでしょう。最終ラインが3枚であること以外は(笑)。

ところで、これと関連してこちらのエントリーの

ジーコが代表監督に就任して、チーム全体の約束事がないと代表選手といえどバラバラになっていた。トルシェが重んじた戦術が、真にサッカーの基本に即したものならこんな事態にならなかったはずではないか?あんなに繰り返した判断力を高める、コミュニケーション能力を高めるトレーニングがサッカーの真理に即したものなら、その後の監督が誰であれもっとコミュニケーション能力が高くて有機的な代表チームであり続けたはずだ。

この部分ですが、それはちょっと無理というものでは(笑)?例えば、ベンゲル監督の戦術は欧州でも普遍的なものの一つだと思いますが、ベンゲル監督が去った後のグランパスにはそれは残ったでしょうか?サッカーのチーム、戦術はきわめて有機的なもので、しっかりと練習を繰り返していないと、いったん身についた戦術も機能させられなくなってしまうものだと思いますよ。選手の顔ぶれも変わり、形成するべき共通理解の相手も変わっていくのですから。

さて、私は上記のようにトルシェ監督の戦術を「取り立てて高度ではないが、普遍的な要素を多く含む、普通の戦術の一つ」と考えています(98年当時の日本から見ると相対的に高度ではありましたが)。ですから、それを若い選手たちに徹底させたことは、よいことであったと思っているのです。ドイツ戦の後、高原も小笠原も「やっぱりこういう相手には前線からプレスしていかないとダメだよな」と言っていましたね。トルシェ戦術かどうかはともかく、今後日本代表が再びそういうサッカーを志向していってくれると、私としてはうれしいです。

あといくつか、ピンポイントで(笑)。

小野はサイドにおいやられていて、中村はベンチにもいなかった。(Solvalofootさん)

中村選手は怪我でしたよ。W杯明けのJリーグ1試合目も欠場していましたね。

ちなみに4-2-3-1はもう流行遅れですか(笑)。

ああいやいや(笑)、4-3-3が増えてきたとか、ちょっと潮流が変わってきたかな、という程度だと思います。まあ、あまり重要なことではないと思いますが。

しかし、当のトルシェ本人がマルセイユでやればこの後の展開は分かりませんね。

ちなみに、西部さんは著書「スローフット(リンクはアマゾンアフェリエイトです)」のなかで、かつてのマルセイユのアラン・ペラン監督は「フラット3」を用いていた、と書かれていますね。マルセイユはフラット3好きなのかな(笑)。

きっかけになるとは思っていませんが、ジーコへの考え、トルシェへの評価、もっと多様な雰囲気になっていけばより代表をとりまく空気がおもしろくなっていくと考えています。ジーコも神様ではないし、トルシェもただの過去の人ではく、さよならなんてまだ出来ないと思いますので。

そうですね。でも最近は、相当多様な雰囲気になってきているように、私は思うのですけどね。やはりアジアカップという真剣勝負の本番で結果を出したことは大きいですよ。私も「ジーコはなぜ勝てたのか」を考えるのは、非常に重要だと思っています。それが今年の最終予選にもつながってくるわけですしね。

ただ私は、「トルシェではここが不満だった、ジーコではそこが解消されている、だからジーコがいい」という議論では、ジーコもかわいそうだと思いますけどね。これからは、ジーコはジーコとして、そのよい点もよくない点も評価する、そうしたほうがよいのでは、と思っています。

トルシェもマルセイユに就職したことだし、"À la prochaine Philippe"、でいいのではないでしょうか(笑)。

また、大変長くなってしまいました。それではまた。

06:42 PM [トルシェ・考察] | 固定リンク

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