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October 25, 2004

功労者をめぐる議論百出

しかしまあ、ジーコの功労者招集案は、なんとも賛否両論のようですね。

■私はこの件に関しては基本的に、「騒ぐようなことではない」というスタンスです。

1)まだ召集そのものが発表されたわけではないこと。
2)何と言っても、やはりこれは消化試合の話であること。
3)ジーコ監督が日本におらず、その真意がわかりにくいこと。

というようなことが理由ですね。ジーコ監督は今日本にいないわけで、帰国してからJリーグのビデオを見て、唐突に(笑)大黒と大久保を呼ぶかもしれないじゃないですか。まだ声高な批判には早いのじゃないかと思います。

■この件に関し、中澤が意見を言ったという報道があります。中澤の発言は、

シンガポール戦はこれまで控えだった選手を起用してほしい。アジア杯で勝てたのも彼らが腐らずにチームを支えてくれたから。戦力も底上げできる

ということで、まことにもっともなことと言えます。ただ、これに関しても「功労者」と「これまで控えだった選手」を組み合わせて起用することもできるわけですね。選手発表がない段階で「功労者」か、「サブを起用」か、二者択一で考える必要はないのではないかと思います。

ジーコは「功労者」の候補について、カズ、ゴン、秋田、沢登、小村、というところを考えているようですね。他に山口や名良橋あたりも候補になるでしょうか。仮にジーコの言及した5人が起用されるとすると、

---カズ---ゴン---
--沢登-----藤田--
--小笠原---遠藤---
三都主-秋田-小村-三浦淳
-----曽ケ端-----

というようなことになり、これは「功労者とサブのミックス」ということができるでしょう。これがそれほど問題であるのかどうか?

■確かに、この試合にいわゆる「若手」を呼んで、今後のために日本サッカーの底上げをしておくというのは、一つの合理的な強化法といえます。これは、現状のチームにサブが足りないから、ということでは「なく」ですね。海外のチームとの試合経験を、少しでも多くの選手に経験させておく。それが日本サッカー全体のためになる、ということまで、代表監督は考えてもいい。もちろん、その中から代表にフィットするような人材が現れたら、戦力の底上げにもなるわけですし。

しかし、ジーコ監督は武藤さんが「ジーコ氏は信念を持って『その場主義』を貫いている」とおっしゃるように、あるいはサカマガ997号の西部さんが

(ジーコ監督は)今日がなければ明日はないという1戦必勝主義者だ。前監督がすべては明日のためにと、今日を使ったのとは正反対のアプローチである

と書かれているように、信念を持って「目先の1勝主義」を貫いているのであって、ここでこれまで代表召集経験のない選手を呼んで起用するということは、その範疇には入らないのでしょう。よいか悪いかはともかく、ジーコはそういう監督なのだ、ということです。

■そして、現在の侃々諤々の議論は、やはり「そこ」に起因するものと考えた方がよさそうです。アジア相手にも下がった最終ラインで対応し、セットプレーに頼ってアジアカップで優勝、1次予選も通過しました。が、その内容は、最終予選を見据えて、これでいいのかどうか。「目先の1勝主義」的には、なにも問題がないのでしょう。このままで最終予選も戦える、勝ち抜けると考えている。しかし、現在のチームだけではなく、日本サッカー全体の将来を考え、ドイツでのパフォーマンスも考えた場合、つまり目線を高く持った場合には、やはりよりいっそうの向上を目指して欲しい。そのためにシンガポール戦を使って欲しい、ということになる。その乖離、主義と目線の差が、現在の議論百出を生んでいるのでしょうね。

繰り返しますが、私は、今回の召集案自体は「騒ぐようなことではない」と思っています。しかし同時に、これまでのジーコ監督と、その周辺の議論すべてを集約したような、興味深い事例であることだなあとも思っています。

■さて、この記事に関連するいくつかの議論ですが・・・。

まず、「フェスタ(お祭り)だ」という部分に関しては、それほど過敏に反応することではないのでは?と思います。もしかしたらブラジルでは、消化試合一般のことをそう呼ぶのかもしれないじゃないですか(笑)。言葉が違うのですから、ニュアンスも違うでしょう。

若手選手らを起用すべきとの声には「失礼な言い方だが(格下の)シンガポールではテストの機会にならない」と反論した。

これについても、「ジーコ監督のやり方ならば」そうでしょう、と思います。選手が話し合って連携を作っていくチームで、いきなりぽっと入れられた若手が、しかもこれまでのサブの選手と組み合わされて、テストになるでしょうか?シンガポールが相手だからということではなく、この試合自体の位置づけとして、私もそう思います。

ジーコである以上、代表の世代交代はゆっくりとしたものになるでしょうし、それによって後続の世代は国際経験が少なくなりますね。一つの代表チームのことだけじゃなく、そういうところまで考えて「日本全体の底上げのために」若手を起用することはあってもいいのですが、もちろんそれはジーコ監督のミッションには入っていないことです。ただ我々サポとしては、「ジーコ以後」のことまで考えなくてはならず、そうすると背筋が薄ら寒くなってきますね(笑・・・えないけど)。

■ところで、私がこの記事を読んでちょっと思ったのは、「少なくとも現時点では、『魂の継承』話は出てきていないなあ」ということでした。「功労者」を呼ぶことは、彼らの最終予選の経験や、代表の重さを体得していること、いわゆる「魂」を、現在の代表選手に注入させるためだ、という意見があるのですが、少なくとも現時点まではジーコ監督はそれを口にしてはいないですね。ただ「日本サッカーの歴史に貢献してくれたことに感謝するため」と言っているようです。ジーコ監督の真意がどの辺にあるのか、これからちょっと注目ですね。

■さて、、その「真意」の問題です。呼ばれる選手はどういう気持ちなのか、ということがあります。カズは、

正直言って予想もしていなかった。Jリーグで活躍しないと呼ばれないと思っていたので(今季はPK1得点)。その部分では複雑。
呼ばれれば、日本代表が勝つためにやりたい。

と、前向きなコメントを残していますが、やはり複雑であることも吐露しています。これは(ソースは失念しましたが)選手が「どういう理由で呼ばれるのか、教えて欲しい」という趣旨のことを語っていたのと同じことであると思います。サカマガの千野さん

噂されている召集組、カズや中山たちにも失礼になる。

 カズや中山らは、代表チームに誇りを持っている。現役である彼らは、今でも代表に呼ばれることを目標にプレーをしているはずである。しかし、代表に呼ばれることはあくまで実力でなければ意味がない。

 今回のプランだと彼らを招集することは、功労者への感謝ではなく、温情になってしまう。

と、書かれているように、

「現役の日本代表は、その時のパフォーマンスが日本最高だから選ばれるのだ」
「だから、自分も他の多くの選手も、それに値するプレーをしようと日々頑張っているのだ」
「今の自分のプレーがそれに値するかどうかは、自分でわかっている」
「にもかかわらず『功労者』として呼ばれるということは、『温情』ということではないか」

ということであると思うのです。これが「呼ばれる選手に失礼」かどうかはわかりませんが、個人的には私だったら、そのような形で自らが誇りを持っていた舞台には立ちたくないなあ、と思います。

私が先日「違和感」として、唯一引っかかったのはこの点ですね。呼ばれる選手たちには、気持ちよくプレーできるように、しっかりと理由を説明してあげて欲しいものです。ジーコ監督が自ら面と向かって話せば、きっと選手たちは理解できると思うのですが、そういう意味では先に新聞辞令が出てしまったことが、今回の問題を複雑にしましたね。現在のこの問題をめぐるサポの議論は、ちょっと本人たちにかわいそうなことになっているように思います。ここはまさに功労者たちへのリスペクトをこめて、少し静観するようにできないものでしょうか。

■最後に、仮にこの召集案が実現したとしても、これで「功労者への感謝」を示すことを終わりにしないで欲しいものだと、協会に強く要望したいと思います。千野さんのコラムにあるように、これを契機に代表引退試合などを整備して、しっかりとした「感謝を示す」機会を作って欲しいですね。その方がよほど大事なことだと思うのですが。

それではまた。

12:48 PM [ジーコジャパン・考察] | 固定リンク

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コメント

>ジーコである以上、代表の世代交代はゆっくりとしたものになるでしょうし、それによって後続の世代は国際経験が少なくなりますね。一つの代表チームのことだけじゃなく、そういうところまで考えて「日本全体の底上げのために」若手を起用することはあってもいいのですが、

全体に現在の論点すべてを網羅していて唸る他ないわけですが(笑、特にこの部分はまさに、まさに、と思いました。ジーコは国際経験豊かな選手たちを食い尽くそうとしていますが、その後の世代にはなにも残さないですね。今「サブは充実してる!」と思っているだろうジーコ、もう少しそういう先まで見て、選手起用をして欲しいです。

投稿者: 雫石 (Oct 25, 2004 6:42:47 PM)

雫石さんこんにちは。コメントありがとうございます。まあ、トルシェも「ジーコは貯金に手をつける」と言うようなことを言っていましたし(笑)。
これはやはり無尽蔵に名選手が湧き出てくる、ブラジルならではのやり方なのでしょうか?

投稿者: ケット・シー (Oct 29, 2004 2:31:55 AM)

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