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August 11, 2004

アジアカップ総括(2)

湘南蹴鞠屋さんや武藤さんが、「ジーコジャパンの強さ」について検証しようとしておられる。これは非常に重要なことであるし、私もそこに加わりたいと思うのだが、一足飛びにそこに行く前に、まずは日本代表の6試合を、駆け足であるけれども振り返ってみたい。

■オマーン戦

オマーンは組織的にプレスをかけて来て日本を高い位置から自由にさせず、さらに連動した第3の動きでパスをまわしていく攻撃を仕掛けてきた。結果、シュート数で16対8と、ほぼ圧倒された試合展開となった。

苦戦の原因はまず何よりも選手が動けなかったことであろう。次にオマーンが守ってくるのではないかという予断があったこと。そして、もちろん、オマーンの連動した攻撃に対抗するプレスの組織力を持っていなかったことでもある。

これは意図した大人の戦い方なのだ、という意見もあったが、選手の反省の弁を聞いているとそうは思われない。もちろん大人の戦い方をしようとした部分はあったが、それ以上にやられてしまったという感が強い。オマーンの最後の詰めの甘さに助けられた部分は大きいと思う。

この試合での中村の得点は敵のクリアミスから。そこから素晴らしい切り返しでペナルティエリアに侵入、アウトにかけた素晴らしいシュートを敵ゴールに流し込んだ。圧倒されながらも勝利したこの試合の勝因は、敵のミスを見逃さない、そこできっちり決めることのできる中村選手の存在であるということができるだろう。以前は日本代表は、「ミスに漬け込まれ」「敵はミスからのチャンスをきっちりと決めてくる」「それが世界との壁なのだ」と言われていたものだが、オマーンとの間ではそれが逆転していたわけである。

■タイ戦

試合は先制されて始まった。オマーン戦でも同様だったが、プレスがかかっていない時には、カバーを重視する3バックはどうしても押し上げられない。ボランチとの連携が取れていないとバイタルエリアを明け渡してしまうことになる。そこを突かれスティーにミドルシュートを決められてしまう。

その直後、中村選手のFKで同点。さらに試合を優勢に進め、FKやCKがらみで中澤、福西、中澤と点を追加、実力差どおりの危なげない勝利と言えた。勝因は、セットプレーからの4得点。日本のセットプレーは大きな武器となった。

■イラン戦

一進一退の攻防ながら、イランも無理せずとも決勝トーナメントに進めるわけで、注文どおりの引き分けとなる。この試合、決勝トーナメント進出は決まっていたにもかかわらず、先発メンバーは変更がなかった。

■ヨルダン戦

そのつけは決勝トーナメント一回戦のヨルダン戦で出たのではないか。韓国との試合では雨あられとシュートを打たれながらGKのセーブで引き分けに持ち込んだヨルダンだったが、日本との試合では開始から攻勢に出た。中盤の高い位置からのプレスも精力的だった。運動量で大きく劣る日本はそれを打開できなかった。先制はヨルダン。日本も直後にFKからゴール。

その後はヨルダンペースとなり、日本はボールポゼッションを確保できない。単発のチャンスはあったが、全体としては圧倒されたといっていい出来だった。この試合もプレスがかからず、中盤は間延びし、2トップは孤立し、フォローや押し上げも少なく、前線にボールが納まらないために波状攻撃を受けるという悪循環だった。川口のセーブをはじめ守備陣の奮闘で、何とか失点を最小限に抑えていたが、得点もできず、120分間戦い抜いた後のPK戦で、二人はずした後の驚異的な巻き返しは記憶に新しい。

PKはかなりが運であるともいう。この試合の勝因をあげれば、なんとか失点を抑えたこと、PK戦で圧倒的不利になっても選手が落ち着いて決めることができたことがあげられるだろう。ひるがえって、PKを2本先に決めた後のヨルダンの選手は精神的に緩んでしまったように感じられる。この辺は若さが出たか。

■バーレーン戦

これまでに比べると(選手が「入り方を考えよう」と話し合ったという)試合の入り方はよかったと思われるが、ここでも先制される。取り立ててすごいパス、スーパーシュートというわけではない。中盤でパスを出されたMF、ペナルティエリア内でマークしていながらシュートを許したDF、どちらも疲労から来るミスではないかと思う。

その後は日本も当然攻勢に出る。バーレーンはオマーンやヨルダンに比べるとプレスもゆるく、守備陣もバランスを崩しており、攻略が難しいチームではなかったが、前半は得点できないうちに、遠藤が退場になってしまう。

10人になったことで、選手たちが一人一人より「走る」ようになり、後半には小笠原を入れて起点を増やす。後半開始直後、FKから中田浩二選手のヘディングシュート、同点。さらに中田から玉田へのスルーパス、玉田の素晴らしいシュートで逆転。このあたりは内容もよくなってきていたのだが、リードしたことで気が緩んだか、再びバーレーンにチャンスを多く作られ、そのうちのひとつ、Aフバイルのスライディングシュートを決められてしまう。ここで同点なのだが、日本はカウンターの掛け合いに応じてしまい、やはり見事なカウンターで逆転されてしまう。この被カウンターの際も、DF陣の足が疲労からよれているように見える。

後半終了間際の逆転弾に、もう巻き返すことは難しいかと思われたのだが、日本は三都主のクロスにセンターバックの中澤が思い切った攻め上がりを見せ、終了ぎりぎりに同点弾!さらに延長開始後、玉田がロングボールにうまく体を入れ、そのまま敵陣裏に抜け出しGKと1対1になり、ゴール。その後はバーレーンも最後の攻勢に出て、延長だけで7本のシュートを(日本は2本)打つが、日本は何とか逃げ切った。

バーレーンは、少なくともこの試合ではプレスもかけず、最終ラインも不安定なチームであった。ただ、日本のDF陣も疲労からか機能性を低下させており、もちろん10人になってしまったことの不利はあろうが、先制点をはじめ3点を奪われたことで苦戦してしまった。日本の勝因としては「最後まであきらめない気持ち」と言われる。確かに中澤の同点弾はそのたまものであろう。

■決勝中国戦

中国のレベルは、この大会では韓国、イランに比べると一段落ちるという印象だ。組織的ではあるが、攻撃に怖さがない。ホームであることから決勝に進出したという部分は否めないだろう。

日本は序盤から攻勢をかける。再びFKから、鈴木が折り返し福西がゴール。サイド攻撃から1点を失うが、やはりセットプレーから中田浩二選手が押し込んでゴール。中国は次第に焦りからかバランスを崩して行き、サイド攻撃も遅くなり、どんどん怖さがなくなった。守備も集中力を失い、終了間際にはラインコントロールを忘れたラインの裏へ玉田が抜け出し、そこへ中村が見事なパス、とどめの3点目を奪った。

以上、簡単にアジアカップの各試合を振り返ってみた。これまで書いてきたことの繰り返しになった部分もあるが、こうしてみてみると2004年アジアカップにおける日本代表の戦いぶりのキーワードが浮かび上がってくるのではないだろうか。それはカバーを重視した守備、セットプレー、個人能力、そして落ち着き、である。

(続く)

03:39 AM [ジーコジャパン] | 固定リンク

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コメント

ケットシーさん、続きを楽しみにしています。
「ジーコジャパンの強さ」の理由を検討する前に、皆何を基準に話をしているのでしょうね?
①トルシエジャパンとの比較(強くなったかどうか)
②世界基準:WC予選通過、決勝トーナメント進出、ベスト8
③アジアでの順位

私の見解
①に対して、前回アジアカップでは圧倒的な危なげない優勝で、アジアのレベルが低すぎると言わしめた。
今回は、組み合わせと運で勝ちあがったといわれても仕方が無い。
②に対して、オマーンにあわや負けかと言う展開で、WCでは通用しない(韓国除く)アジアの国を相手に接戦ばかりで圧倒して勝ったのはタイと中国のみ。
③については、かろうじて確保

 ③を持って強いジーコジャパンとするなら、そんな理由を検討しても意味が無いと思われます。
 われわれの目標(少なくとも私の)は、WCベスト8以上ではないのか。そうであるなら(違う人は仕方ないが)、それを基準に話をして欲しいなと思います。

投稿者: RYU (Aug 11, 2004, 3:39:51 PM)

RYUさん

1に対して。
前回は圧倒してません。
ウズベキには大勝しましたが、中国とは接戦。
決勝のサウジ戦では、日本が圧倒されてました。今一度、重い出してみてはいかがですか?

投稿者: kame (Aug 12, 2004, 10:56:04 AM)

ちなみに、2000年アジアカップ、中国との試合はシュート数15対9で日本が上回っていますね。決勝サウジ戦でも、15対15でイーブンです。だからどうということはないですが(笑)。

投稿者: ケット・シー (Aug 12, 2004, 12:11:19 PM)

www.skyperfectv.co.jp/sports/soccer/column/yoshiyuki_osumi/yoshiyuki_osumi_000044.html
大住氏に言わせると、イタリアのよう。

投稿者: そんそん (Aug 13, 2004, 8:46:37 PM)

そんそんさん、コメントありがとうございます。
「結果が出ないイタリアは最悪のフットボール」だそうですから(笑)、ジーコジャパンも結果を出せたのでよかったですね。

投稿者: ケット・シー (Aug 14, 2004, 4:26:42 PM)

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