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August 09, 2004
アジアカップ総括(1)
アジアカップ2004は、日本の優勝で幕を閉じた。
この大会を終えて、「アジアのレベルは下がったのか、上がったのか」という議論が見られる。確かに4年前と比べて、この優勝はどのように考えるべきなのか、という視点に立つと、そういう疑問がわいて来るのも当然というべきだろう。
結論からいうと、私は「2000年大会とレベルは変わらない」と考えている。
個別に見ていくと、かつて中間レベルだった国は真摯に努力をし、レベルアップをはたしているが、かつての「強豪国」はさまざまな理由により停滞し、レベルを向上しえていない、という状態であるように私には見えた。つまり「底上げ」はあったが、「総合してのレベルアップ」があるわけではない、ということになる。そういう意味では「グループリーグ突破がより厳しくなった大会である」という事が出来るだろう。
日本と対戦した中間層の国でもそのレベルアップは見られ、オマーンとヨルダンでそれが顕著であった。ただしヨルダンは、日本との対戦以前は守備をしっかり固めるタイプであり、韓国との試合ではシュートを多く受けながらGKのセーブで切りぬける、という戦い方だった(参考:韓国0-0ヨルダン、ヨルダン2-0クウェート、ヨルダン0-0UAE)。日本との対戦時にそのよさがさらに発揮された(日本の調子の悪さが彼らをよく見せた)という部分は忘れてはならないが。
どちらの国も、守備においても攻撃においても組織的に行ない、守備では前線から精力的なプレッシングをかけ、攻撃でも何人もが連動して動きながら、ボールを動かしていくサッカーを実現していた。オマーン戦後に選手が「日本のやりたいサッカーをやられてしまった」と言ったとおりである。どちらの国とも日本はほぼ互角、オマーンにはシュート数で倍を打たれ、ヨルダンとは120分で決着がつかなかった(PK戦で勝利)。
逆に、日本やイラン、韓国、サウジアラビアといった「アジア4強」は、それぞれさまざまな理由により停滞しているようだ。どの国も組織よりも個人で打開を図るチームになっていた。もちろんそれがもともとのアジアのサッカーであり、4年前の日本をはじめ、今回のオマーンやヨルダンのサッカーの方が新風であるということも言えるのだが。そういう「個に頼った」やり方では、レベルアップのためには新しい強力な「個」が出てこないとはじまらないわけで、何人かの「個」は素晴らしかったが、全盛期を凌駕するまでにはいたらなかったということだろう。
ここで特に一つ記しておきたいのが、2002年の韓国の躍進についてである。「コンディションのワールドカップ」(2002年W杯総括)にも書いたのだが、2002年W杯前、韓国は半年間自国リーグを休止し、数ヶ月に及ぶ特別強化合宿を行なった、という事に注目したい。
コンディション作りの重要性や、連携を作るための合宿の期間が大事であることなどは、この2年で(ジーコジャパンの不振の原因を追求する中で)日本のサポの間でも強調されるようになって来たことである。その現在の認識から考えると、高音多湿のアジアで、チャンピオンズリーグ終結からまもなく行なわれたW杯において、そのような特殊強化を行ったチームが躍進するのは、これは非常にロジカルなことと言えないだろうか?
私は韓国のベスト4の背景には、この長期間の特殊合宿、そこで行なわれた集中フィジカルコンディション・トレーニングが、かなり影響していたと考えている。それがなければ、あそこまでの躍進は難しかったのではないだろうか。韓国の「W杯ベスト4」は、そのような強化法による瞬間最大風速なのであって(それが悪いと言うわけではない・笑)、韓国のサッカー全体がそこまでレベルアップしたわけではないのである。
このように考えると、「2000年レバノンアジアカップで3位に入賞した時に比べ、2002年W杯ベスト4を通過したあとでも、韓国の実力はそれほど変わらない」、ということが言えるだろう。今回のアジアカップでのベスト8敗退は、韓国の人々にとっては不満だろうが、監督後退直後でもあり、不思議なことではないのである。もちろん、W杯で得た自信、海外で活躍する選手たちを輩出する選手層のレベルアップというものはあるが、それは強化策をおろそかにすれば、打ち消されてしまう可能性もある、ということだろう。
さて、本題にもどると、
「アジアカップ2004は、2000に比べて同程度のレベルである」
「中間層のレベルアップはあったが、強豪国は停滞していた」
と私は考える。
日本のグループリーグ突破は中間層のレベルアップにより難しくなった。サウジアラビアはウズベキスタンに行く手を阻まれ、クウェート、UAEはヨルダンの後塵を配した。ベスト4はそれでも日本、中国、イラン、バーレーンであり、やはり選手層の厚い、経験豊富な強国がからんで来ることになったが、これは中間層のレベルアップも、まだその壁を突破するにはもう一歩ということだろうか。
今回の結果を受けて、オマーン、ヨルダン、ウズベキスタン、バーレーンといった国々が合理的な強化策の効用を再認識し、それに力を入れ続けると、アジアの底上げはさらに進むであろう。また、今回はさまざまな理由により停滞したかつての強国たちが、やはり合理的な強化プログラムの必要性に気づき、それに邁進すれば全体としてのレベルアップも進むことになろう。しかし、後者については、日本を筆頭に、なかなかそのような合理的強化に専念できない事情もあり、向上できない可能性も高いと考えられる。
このように、「底上げはあったが全体としてのレベルは変わらない」という2004アジアカップであった。では、そこでの日本代表の戦いぶりはどのように考えられるべきだろうか。
(続く)
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受信: Aug 10, 2004, 8:17:47 PM
コメント
韓国の監督交代を後退と評価してはかわいそうではw
韓国は、日本に比べ、いち早く監督を交代し再出発を図りました、そして今回のアジアカップで好成績を収められず、危機感いっぱいでしょう。
これで、韓国のWC予選突破は確実でしょう。
それに比べ、日本は優勝をして浮かれているが、内容は喜べるものではなく、WCが遠ざかっていくような気がしてなりません。
投稿者: RYU (Aug 10, 2004, 11:44:21 AM)
少なくともマスメディア、ジーコには危機感がないですね。(期待もしてないのだが)
私は今回の一件でクラブチームに不満や不信が根付たと考えています。
もう明言こそしてないまでも、Fマリノスあたりは明らかに自衛策を施してJFA(代表)とは接しているように感じます。
あと3バックの両CBの攻め上がりをやたらとやらせてますが、チャレンジとしては認めますが、アレはボランチ(守備的MF)のカバーリングが適切にされていないと恐らくマチャラあたりはカウンターでそのスペースを狙うと考えます。
ジーコはひらめきや独創性というこだわりに執着するあまり、リスクマネージメントに対して軽視している面があるのが気掛かりです。
墓穴にならなければ良いのですが・・・
投稿者: 弥七郎 (Aug 10, 2004, 1:10:35 PM)
RYUさんコメントありがとうございます。
後退は単純な誤字です(笑)。まあ交代直後は、監督もチームを作りきれていないだろうから、ベスト8敗退は仕方ないだろう、ということですね。
弥七郎さんコメントありがとうございます。
クラブチームのことはわかりませんが、協会上層部に危機感がないとすると、これからも日本はこのままである可能性が高いということでしょうね。うーむ。
投稿者: ケット・シー (Aug 10, 2004, 2:42:16 PM)
御意見、興味深く拝読致しました。
もし可能でしたら、今回のアジアカップで唯一特殊な
臨み方=五輪の準備(アルゼンチン、パラグアイのコパアメリカと同様に)をしたイラクについてもお考えを伺えたらと思います。
投稿者: myth (Aug 10, 2004, 10:40:55 PM)
>「アジアカップ2004は、2000に比べて同程度のレベルである」
「中間層のレベルアップはあったが、強豪国は停滞していた」
と私は考える
これって矛盾してませんか
投稿者: ジャック (Aug 11, 2004, 12:26:45 AM)
mythさんコメントありがとうございます。
申し訳ないのですが、イラクに関しては情報も集めておらず、試合も見れていないので、言及することは避けたいと思います。
全体としても、あくまでもこれは一大会での評価に過ぎず、例えばイランはガルフカップではまったく違うサッカーをしている、などの可能性もあります。「一大会ですべてを確定的に言えるわけではないですが」という一文を付け加えさせてください。
ジャックさんコメントありがとうございます。
矛盾していますか?別の言い方をすると、「以前は10段階評価で4をとる国が多かったが、今回は6を取るようになってきた。しかし、以前から8を取っていた国々は8のままである」ということなのですが。
私は「レベルの高い大会」というには、最高レベルが向上している必要があるかな、と思ってこのように書きました。例えば決勝トーナメントで、レベル9同士、10同士の試合が見られれば、それは「アジアのレベルが上がった」と言えるでしょうけれども。
投稿者: ケット・シー (Aug 11, 2004, 1:18:10 AM)
ケットさん、コメントありがとうございます。
このアジアカップが練習機械さえまともにないイラク
にとってどういうものであったか、アテネでは包装機会ががかなり多いですので、そちらで注目してみたいと思います。
あと、イランははガルフカップには出てませんよ。
イランが出るのは西アジア選手権ですね。
(イラン、ヨルダン、イラク、シリア、レバノン、パレスチナ)
投稿者: myth (Aug 11, 2004, 9:12:15 AM)
そうですね。イラクはもともと選手の能力も高く、4強に次ぐ位置にいる国だと思います。これから政治が安定して行ったらどういうサッカーをするようになるのか、要注目ですね。
ガルフカップについては、酔っ払っていたための事実誤認でした(恥)。あいすみません。ガルフカップはサウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーン、UAE、クウェート、イエメンでしたね。ガルフカップではサウジが無敗で優勝しているわけで、その辺が一大会では確定的なことを言えないという理由でもありますね。
投稿者: ケット・シー (Aug 11, 2004, 11:31:41 AM)
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