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April 18, 2004
川淵発言と「王道」と
川淵会長の発言(要旨)が、J-NETにアップされていました。これは今日の混迷(と言い切ってしまいますが)を招いた元凶の一つであると言えるでしょう。これはJ-NETでそれについて考えてみた文章です。ここに再録しておきます。
まずは川淵さんの発言を分解してみましょう。
1)前任者の時はまずシステムを決めて監督の言う通りにやっていた。
2)選手は指示待ちだった。
3)これでは世界を勝ち抜けない。自分で考える力を伸ばさないといけない。
4)そのために選手には管理じゃなくて自由を与えて自分で考えられるようにした。
5)その適任者がジーコだった。
これは、一つ一つのテーマも正しいかどうか疑問が残るものですが、ひとつながりの議論としては相当に成立していない、誤った考え方だと思います。
特に1)と2)の間の因果関係、その普遍性が、過度に一般化されていると思われます。
言葉を足して言うと、(そして、あえて悪く言うと・笑)
「トルシェ監督は、自分の決めた戦術を選手に強要する監督だった」
「ゆえに、選手は指示待ちになってしまった」
ということでしょう。これは、川淵氏の頭の中では(笑)、おそらく正しいのでしょう。
しかし、
「よって、トルシェと同じような、戦術を重視する監督ではいけない」
「そのような監督では、選手がまた指示待ちになる」
と考えてしまったことが誤りなのです。
トルシェほどではなくても、戦術を重視する監督は世界中に、そして非常に多くいます。そういう監督の下では、選手は常に指示待ちになるのでしょうか?フランスは、オランダは、イタリアは、アルゼンチンは?日本よりも高度な戦術徹底を行っている国の選手は皆、指示待ちなのでしょうか?
いうまでもなく、答えは、否です。
仮に現状、2)や3)の問題点があったとしても(私はそんなものはないと、磐田や鹿島を見ると思うのですが)、戦術重視型(仮にそう分類します)の監督が来ると常にそうなる、ということではない、ということです。世界には、戦術重視型の監督の下で、選手が自分で考えているチームはいくらでもあります。
さらには、2)や3)の問題点を解決するために、フル代表で4)選手には管理じゃなくて自由を与えて自分で考えられるようにする。のような方法を取る、というところがおかしいと思います。
言うまでもありませんが、代表チームには時間がありません。たまに集まって試合を行うだけの代表チームで、「指示待ちで自分で考える力が足りない」選手を、「指示がなくても自分で考える選手」へと変えていくことは、効果が上がりにくいだけでなく、チーム作りにとって重要な他のことがおろそかになる点で、問題が大きいと私は思います。
(またそもそも、「完成された大人の選手に、管理ではなく自由を与えると自分で考える力が伸びる」というのは幻想ではないかと思います。市原のオシム監督は、多くの選択肢を練習の中で与え、「考えさせる」ようにする高度な練習メソッドを持っていると聞きます。ただ自由を与え話し合いに任せるだけではなく、そのようなプロの監督の技術も、もし本当に「自分で考える力」を伸ばそうというのならば、必要になってくるでしょう)
「選手一人一人の考える力を伸ばす」ことは、育成や時間の取れるクラブで行うべきことです。そして、世界のトップ10の日本よりも上の国は(ブラジルを除いて・笑)、どこも日本よりも上の戦術徹底度を持っています。日本がそれをおろそかにして、上にいけるはずはありません。
川淵さんは、よほどトルコ戦がショックだったのでしょうか。
もちろん私もたいへん胸が痛みましたが、今から思えば、日本よりも強い国が、先制点を奪った後引いてきて攻め崩せなかった、というだけのことなのだ、と思えます。それなのに、なぜか組織サッカーが限界だと思ってしまったり、日本の選手の「自分で考える力」に欠陥があると思いこんでしまった。それは、日本がまだまだワールドカップという舞台に対して、「ナイーブ」であるから起こったことだと私は思います。
トルコ戦ショックは、ナイーブな協会トップに、トルコ戦から逃げ出すことを、とにかくあれとは違う、変わったことをしないと、という意識を植え付け、監督未経験者を代表監督に登用するという、不可思議な人事を行わせてしまいました。それは、きちんとしたチーム作り、戦術徹底、チームマネジメント、モチベーションコントロール、メンタルマネジメントの能力が低い監督に率いられることによって、日本代表をどんどん弱くする道でした。
日本サッカーを強化すること、日本代表を強化すること、そこには近道はありません。抜け道もありません。「管理じゃなく自由」などというお題目を唱えたら、トルコ戦のような試合がなくなるわけではない。ただしっかりと足元を見つめ、育成のレベルを上げ、クラブのレベル、リーグのレベルを上げて、そこから技術の、戦術理解の、そしてメンタルの質の高い選手が、継続的に育つようにしていかなくてはならない。代表では、そういった選手たちを、体系化されたメソッド、教育、経験、実績を持つプロの代表監督が、きちんとした強化方針の下、まとめていかなくてはならない。
オマーン戦、シンガポール戦の苦戦は、私たちにそういった強化の「王道」へもう一度立ち返るべきだと、言ってくれているように思えてなりません。
それではまた。
06:53 PM [ジーコジャパン・考察] | 固定リンク
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» 日本代表は本当に指示待ちだったのか? from 感じ通信
川淵さんの発言で、トルシェ時代の日本代表は指示待ちであったという記事を見た。でも本当にそうだったんだろうか? 続きを読む
受信: Jun 22, 2006, 10:54:42 PM
コメント
トルコ戦がショックなんだったら、トルコの監督連れてきたら良かったのに(笑)。
コエリョの次はドュネスクかブルーノ・メツをリストアップとかお隣いってますよ(苦笑)。
投稿者: おりた (Apr 20, 2004, 12:24:09 AM)
ちなみにおりたさん、リストアップされているのは「ギュネシュ」じゃなかったっけか?
投稿者: ケット・シー (Apr 21, 2004, 8:11:58 AM)
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